AI Booster: Vodafone が大規模に AI と ML を強化する方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 7 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
世界最大の通信会社の一つである Vodafone は、最前線で次世代の接続性とサステナブルなデジタルの未来を構築しています。
このデジタルの未来を創造するためには、現時点で実現可能なことに留まらず、新しいテクノロジーと変化への大きな投資を実現する必要があります。Vodafone では、人工知能(AI)と機械学習(ML)の活用が重要な原動力となっています。これらにより、カスタマー エクスペリエンスの向上、ネットワーク パフォーマンスの改善、研究における進捗の加速化などでの予測機能を利用可能になります。
18 か月におよぶ努力の末、Vodafone は AI / ML プラットフォーム「AI Booster」をリリースして AI 機能を大規模に進化させ、大きな飛躍を遂げました。Vodafone Commercial 傘下のグローバルなビッグデータおよび AI の組織が主導するこのプラットフォームは、Google の最新技術を活用して、カスタマー エクスペリエンス、顧客ロイヤルティ、商品のレコメンデーションの最適化など、次世代の AI ユースケースを実現します。
Vodafone の Commercial チームは、以前から AI と ML の機能を進化させてビジネスの成果を上げることに注力してきました。しかし、需要が高まるにつれて、規制の厳しい業界で AI や ML を組織の基盤に組み込み、ML のユースケースを迅速に構築して大規模にデプロイすることは、言うほど簡単なことではありません。このタスクを達成するためには、適切なプラットフォーム インフラストラクチャを用意するだけでなく、新しいスキル、働き方、プロセスを開発する必要もあります。
データを Google Cloud 上の信頼できる唯一の情報源に移行させることで、データから価値を引き出すことに関して有意義な進歩を遂げていた Vodafone は、すでに効率を大幅に高め、データ費用を削減し、データ品質を向上させていました。これにより、分析やデータ サイエンスを活用してビジネス価値を生成する大量のユースケースが実現しました。次のステップは、データ サイエンスのプロセスを合理化し、技術的な成長に対応しながら、18 か国以上で 1 日に数千の ML モデルを処理できる産業用規模の ML 機能を構築することでした。
スケーリングを成功させるためには、これまでとはまったく違うことをしなければならないと考え、AI Booster のアイデアを思いつきました。
「ペースと規模でビジネス価値を最大化するために、自動化および標準化された方法でユースケースの迅速な作成と水平方向と垂直方向におけるスケーリングを実現することが当社のビジョンでした。そのために、18 か月前、一部は当時まだ発表さえもされていなかった Google の新技術をベースにした次世代 AI / ML プラットフォームの構築に着手しました。
簡単ではないことはわかっていました。周囲からは『高い目標を掲げて努力すれば、もしかしたら実現するかもしれないが…』などと言われました。現在、AI Booster は当初の予定の 2 倍の市場規模で稼働しており、非常に好調であることをとても誇りに思っています。可能な限り最高の ML Ops ツールを使用し、Vodafone の『AI Booster プラットフォーム』を作成することで、データ サイエンティストの負担を軽減し、価値を最大限に引き上げ、ユースケースの共創とスケーリングをグローバルに別のレベルにまで高めました」と Vodafone のビッグデータおよび AI 担当グローバル グループ ディレクター Cornelia Schaurecker 氏は話します。
AI Booster: Google Cloud 上にすべて構築されたスケーラブルな統合 ML プラットフォーム
Google の Vertex AI により、お客様は統合プラットフォーム内のトレーニング済みのカスタムツールを使用して、ML モデルの構築、デプロイ、スケーリングの期間を短縮できます。Vertex AI を基盤とする Vodafone の AI Booster は、Google Cloud 上に構築されたデータ オーシャンである Vodafone の Neuron プラットフォームとシームレスに統合された、フルマネージドのクラウドネイティブ プラットフォームです。
「テクノロジー プラットフォームとして、自動化、スケーラビリティ、セキュリティが組み込まれた最高水準の Google Cloud アーキテクチャをベースにした最先端の MLOps プラットフォームを構築できたことを大変誇りに思います。その結果、データ サイエンスからより多くの価値を導き出すと同時に、信頼性エンジニアリングの原則を全体に定着させることができました」と Vodafone 分析プロダクトリードの Ashish Vijayvargia 氏はコメントしています。
実際、Vertex AI はプラットフォームの中核をなしていますが、それだけではありません。CI / CD のための Cloud Build や Artifact Registry、Vertex Pipelines を自動的にトリガーする Cloud Functions などのツールにより、自動化は効率化を推進し、運用オーバーヘッド、デプロイにかかる時間を短縮する中核を担っています。現在では、ユーザーはオンライン フォームに入力するだけで、数分後には適切なガードレール、制御、承認を備えたフル機能の AI Booster 環境を受信できます。
少し前までは、モデルを概念実証(PoC)から本番環境にリリースして稼働させるまでに数か月かかることがありました。ML 運用(MLOps)に焦点を当てることで、セキュリティ面で妥協することなく、ML 導入プロセス全体で費用対効果、スピード、柔軟性が向上し、概念実証から本番環境まで最短 4 週間、80% 短縮を実現できるようになりました。
もう少し深く掘り下げると、Vodafone の AI Booster プロダクトマネージャーである Sebastian Mathalikunnel 氏は、このプラットフォームの主要な特徴を次のように述べています。「当社の包括的なビジョンは、水平方向(市場をまたがるビジネス ユースケース)と垂直方向(概念実証から本番環境まで)にスケーリングする単一の ML Platform as a Service でした。そのため、技術的にも商業的にもそれを実現できる革新的なソリューションが必要でした。いくつかのハイライトを次のとおりご紹介します。
再利用可能なパイプライン、コンテナ、マネージド サービスにより、ML ライフサイクルのコンプライアンス アクティビティ(ドリフト / スキュー検出、説明可能性、監査可能性など)を完全に自動化しました。
安全性を重視した設計をプラットフォームの中核に組み込みました。
BQML、AutoML、Vertex AI などを使用して Google ネイティブな ML ツールを利用しました。
標準化された埋め込み ML テンプレートにより導入を加速化しました。」
最後のポイントについては、Google Cloud のデータおよび AI パートナーである Datatonic が、Vertex Pipelines のリファレンス実装である再利用可能な MLOps Turbo Templates の構築に貢献し、Google Cloud 上の本番環境に対応する MLOps ソリューションの構築を加速化しました。
「当社のチームは、データと AI で複雑な課題をスケーラブルな方法で解決することに専念しています。当初から、Vodafone が AI Booster でどの程度の変化に着手しているかは把握していました。このオープンソースのコードベースを通じて、チームは Google Cloud 上で ML モデルを大規模にデプロイするための共通規格を作成しました。一人のデータ サイエンティストに対しても大きなメリットがあるのですから、これを数百人のデータ サイエンティストに拡大すれば、真にビジネスを変えることができます」と Datatonic の MLOps 担当プラクティス リード Jamie Curtis 氏は説明します。
データ サイエンティストと機械学習エンジニアのエクスペリエンスの再考
新しいテクノロジー プラットフォームが導入されたので、地域や市場を超えて採用を推進することが次の課題です。テクノロジーやプロセスの変化は、人々の役割、学習、働き方にかなりの影響を与えます。データ サイエンティストの場合、非中核的な作業は、文字どおりボタンをクリックするだけでバックグラウンドでマシンにサポートされるようになりました。データ サイエンティストは自分の得意な作業に時間を費やし、仕事に役立つ新しいツールを見つけることができます。
AI Booster によって、データ サイエンティストと ML エンジニアはすでに大きな価値を生み出し、革新的なソリューションでコラボレーションを始めています。Google Cloud を使用したクラスルーム トレーニングやオンデマンドの学習プログラムのサポートにより、AI Booster はテストと学習の文化も形成しています。
協力することで実現
制作に 18 か月かかった AI Booster は、Vodafone、Datatonic、Google Cloud 各チームの献身的な取り組みなしには実現しませんでした。世界中の Google 社員が Vodafone のジャーニーのサポートに携わり、プラットフォームが次の進化を構築できるよう支援を続けています。
Cornelia 氏は、「これらをすべて実現することができたのは、当社の要求に柔軟に耳を傾け、結果としてプロダクトの調整までしてくれた Vodafone と Google Cloud の素晴らしいテクノロジーとチームのおかげです」と強調します。テストと迅速な調整を奨励する「Spirit of Vodafone」という信念とともに、当社のお客様やビジネスにとっての価値を最適化できます。また、このジャーニーを通して非常に重要なパートナーであった Datatonic 社、そして貴重な資金提供をしてくれた Intel 社に多大な感謝を捧げます。」
Google と Vodafone のパートナーシップは今後もますます強固なものとなり、共にデジタルの未来を加速させ、人々がつながりを維持するための新しい方法を見つけていきます。
「Vodafone と Google Cloud の発展的な関係は、世界をリードする通信企業になるための進化における最重要項目です。顧客ロイヤルティの向上やカスタマー エクスペリエンスの強化といったビジネス上の課題に対して、より迅速でスケーラビリティの高いソリューションを創出するための近道となると同時に、Vodafone は AI とデータ サイエンスの最前線に立つことができます」と Vodafone のビッグデータおよび AI、イノベーション、ガバナンス担当グローバル責任者 Cengiz Ucbenli 氏は言います。
Google Cloud が Vodafone をサポートするために行っている作業の詳細については、こちらをご覧ください。進化し続ける Vertex AI の機能を確認するには、最近開催された Applied ML Summit に関する投稿をお読みください。
- Telco EMEA テクニカル アカウント マネジメント責任者 James Ma