Vodafone、Google Cloud でデータから引き出したビジネス価値を最適化
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 4 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 既存のオンプレミス インフラストラクチャではデータから引き出せるビジネス インテリジェンスが制限されることに不満を感じていた Vodafone は、より利用しやすく、スケーラブルなクラウド ソリューションへの切り替えを決定しました。ここでは、Vodafone のデータ分析担当責任者である Osman Peermamode 氏が、Google Cloud への移行で費用効率を確保しながらサービス パッケージを進化させ、ビジネスの価値を最適化して、顧客により高度なソリューションを提供できるようになった同社の事例を紹介します。
Vodafone がモバイル ネットワーク企業であることはよく知られています。世界中に 300 万人を超えるお客様を抱える弊社は、まさに世界最大級のモバイル通信企業の一つです。しかし、Vodafone の事業はそれだけにとどまりません。2,800 万人以上にブロードバンド、2,200 万人以上にテレビ視聴サービスを提供し、1 億 4,000 万以上の IoT 接続で企業のデジタル トランスフォーメーションに貢献しています。弊社のモバイル送金サービス M-Pesa は、アフリカ全体で 5,000 万人以上の方に利用されています。
これらのサービスにはすべて共通の目的があります。これらは Vodafone が実現する次世代の接続上に構築され、誰もがアクセスできる、持続可能なデジタルの未来を創造しています。このビジョンの中心にあるのがカスタマー エクスペリエンスであり、データはお客様との関係を持続させる鍵となります。しかし、データだけでは十分ではありません。データを安全に処理し、組織全体で利用できるようにすることも必要です。そこで 2019 年、弊社は Google Cloud と協力して、データがもつ真の価値を引き出すことにしました。
Nucleus で誰もが Vodafone のデータを使えるようにする
もちろん、データの活用は Vodafone にとって新しい領域ではありません。弊社では以前からデータの分析情報を使ってパッケージを最適化したり、ユーザーへのサービス提供の内容をカスタマイズしたりすることで、顧客維持率を向上させてきました。しかし、クラウドへの移行前は、収集したデータが非常に断片的で費用もかかっていました。データはオンプレミスのインフラストラクチャ上にサイロ化して存在し、すぐに古くなり、データセットは何回もコピーされて、非効率なだけでなく、データの品質と信頼性を低下させていました。
そこで Nucleus の登場です。BigQuery、Dataproc、Cloud Data Fusion などの Google Cloud プロダクトを利用した Nucleus は、Vodafone の全データを統合する統一データ プラットフォームです。異なるデータ ウェアハウス間で調整を行うのではなく、信頼できる唯一の情報源を確立し、組織全体からデータにアクセスできるようにしました。これにより、事実に基づく意思決定がサポートされ、費用削減、オペレーションの合理化、世界にある Vodafone のマーケット全体での新しいサービスやプロダクトの迅速な提供が可能になります。
Nucleus は主に 3 つのコンポーネントで構成されています。まず、すべてのデータを格納する Neuron があります。データは 70 ペタバイトあり、さらに増加しています。そして、ハイブリッド クラウド システムの先駆けである Dynamo があります。これにより、世界中のあらゆるオンプレミスのリポジトリから Google Cloud にデータを簡単に移動できます。1 日あたり約 50 TB のデータを処理でき、これは HD フィルムの 25,000 時間分に相当します。最後に、Vodafone の共通データ プラットフォームがあります。このプラットフォームでは、ビジネスのあらゆる分野の元データと体系的なデータの両方へのアクセスが可能で、構築した機能を市場全体に即座にデプロイすることができます
カスタマー サービスの水準を引き上げる
弊社は Nucleus および Google Cloud との継続的なパートナーシップによりデータへのアプローチを変革しています。大幅に低い費用で新しい規制要件を満たすことができる体制を整え、次世代のデータおよび分析プロダクトに情報を提供する高品質な分析情報を生成することで新たな可能性を引き出しました。とりわけ興味深いのは、これらのデータ機能を活用することで、お客様にわかりやすく、継続的に収益も確保できる 700 以上の具体的なユースケースがすでに確認されていることです。
成功への鍵となる顧客ロイヤルティを見てみましょう。Nucleus はすでにビジネス インテリジェンスのデータ取り込みを 36 時間から 25 分まで短縮して、顧客の行動の変化に対する対応力を格段に向上させています。たとえば、モバイル ユーザーが不必要なローミングの費用を支払っている場合、ほぼリアルタイムで問題を特定し、その費用を節約してもらうことができます。スピードアップを必要としている顧客を自動的に察知して、接続に問題がある可能性がある場合に積極的に連絡を取ることもできます。全体的に、カスタマー サービスの水準が上がりました。
価値を引き出し、収益性を上げる
顧客の満足度が高ければ収益性も上がります。弊社は高度にパーソナライズされたコンテンツ、アプリ、および特典を提供できます。また、ほぼリアルタイムで不正行為を検出することにも長けています。
Google Cloud を使用して生成されたデータの分析情報を利用すれば、顧客をより総体的に理解することができます。各家庭に合わせたサービスをカスタマイズしたり、新しいサービスを提案したりすることも可能です。Nucleus からのデータ分析情報を使用してキャンペーンや顧客管理を改善することで、私たちは未開拓の価値を引き出しています。
新しいデータ プラットフォームでは、弊社のチャネルや小売店の収益性の概要をさらに詳しく把握することも可能です。これにより、無駄な出費を省き、販売店での顧客のニーズを中心に据えたサービスが可能となり、最も必要とされる場所に販売店を出店して、一部の市場では店舗の収益性を高めることができました。
データドリブンなサステナビリティで変化を加速させる
データのより深い把握は、社会と地球にポジティブな変化をもたらすという弊社のミッションの支えにもなります。Google Cloud では、温室効果ガス排出量の削減から、再生可能エネルギー源、使用するエネルギーの割合に至るまで、弊社のすべてのサステナビリティ KPIs をより適切にモニタリングすることができます。また、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)への取り組みを支援するために、安全かつ匿名で集計された携帯電話信号データを使用して行政機関や援助団体をサポートするなど、世界的な健康問題の解決にも貢献しています。現在では、弊社は病気の感染拡大を抑制するために、さらに詳しい分析情報を提供できるようになりました。
これらは、魅力的な新しいプロダクトの提供、費用削減、オペレーションの一元化を実現している 700 のユースケースのほんの一部にすぎません。弊社は Google Cloud とともに、Nucleus でデジタルの未来の基盤を構築しています。両社の約 1,000 人の社員がしっかりと協力して行う、あらゆる人が利用できるデジタル技術という共通のビジョンに触発された取り組みです。Vodafone と Google Cloud の結集力を活用することで、私たちはこれからも、人、組織、コミュニティのためにサービスを変革していきます。
Google Cloud の通信業界に対する支援について詳しくは、こちらをご覧ください。
- Vodafone、データ分析担当責任者 Osman Peermamode 氏