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AI でビジネス レジリエンスを構築するための 5 つの質問

2023年9月7日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

AI は、ここ 5 ~ 10 年でビジネス用語として定着してきましたが、既存の企業やスタートアップによる技術的な進化のおかげで、最近このトピックに対する関心が爆発的に高まっています。AI は、ほとんどの企業が急ぐことなく研究していたテーマでしたが、一夜にして、本格的に取り組み、実質的な価値を引き出す必要がある重要事項となりました。しかし、テクノロジーの進歩が急速であるため、簡単ことではありません。

AI 活用の機運が高まっているにもかかわらず、多くの企業では明確な AI 戦略を持ち合わせていません。この不確実性は、需要予測、パーソナライズされたサービス、異常検出などの確立された AI ユースケースにも当てはまりますが、特に新たな生成 AI 機能や大規模言語モデル(LLM)を導入する場合に顕著になります。

今日のマクロ経済環境と競争圧力の高まりを踏まえ、組織はビジネス レジリエンスの問題を解決する方法を模索しています。イノベーションが急速に進んでいることを考えると、AI への無関心にもつながりかねない様子見の姿勢を取ってはいられなくなりました。生成 AI と LLM の価値を実現する競争には、特にこれらの新しいテクノロジーを活用して財務的なレジリエンスを高めることを計画している場合、実践的な投資と統一されたビジョン、経営幹部からの支持が不可欠です。

このことを念頭に置いて、AI 投資による価値創造を加速させる効果的な道筋を明らかにするために、すべての組織が答えるべき 5 つの問いをまとめました。

1. あなたの組織はなぜ AI を追求するのか?

すべての組織、特に個々の事業部門が高度なモデルを開発する必要はありません。 たとえば、ある金融サービス会社が、競争上の差別化要因として独自の不正検出ソリューションを開発・調整することを決定し、それと同時に、コンタクト センター最適化のために、既成のソリューションの購入を決定するかもしれません。


AI に投資する根本的な動機を明確にすることで、どこに、どのように投資するか、また AI 機能をどう構築するか、提携して活用するのか、購入してしまうのかを意図的に選択できます。この質問に答えることで、AI への投資と企業戦略との整合性を図るだけでなく、組織全体の意思決定を簡素化することが可能になります。

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AI へのさまざまなアプローチに関する次の 3 つの例を考えてみましょう。

  • 米国を拠点とする家庭用品の小売業者は、Google の機能、Retail Search ソリューションを活用することで、数百時間の開発時間を費やすことなく、数か月はおろかたった数週間で AI ソリューションをデプロイできるようになりました。その結果、開発チームは他の価値の高い取り組みに心置きなく注力することができるようになりました。AI を活用した検索を採用することで、ルールベースの最適化と比較して、検索収益が 10% 増加しました。

  • Wendy’s は、Google Cloud の事前トレーニング済み AI モデルをカスタムデータで活用することで、デプロイの加速と数年はかかるモデル開発時間の削減、AI への迅速な参入を実現しました。IT 部門がゼロからプロジェクトを構築するのを待つのではなく、フランチャイズがビジネス上の問題や機会に対応できるようになるため、モデル開発の加速は Wendy’s にとって非常に重要でした。

  • Etsy は Vertex AI とその他の Google Cloud サービスを採用し、エンドツーエンドの機械学習(ML)プラットフォームを構築しました。これがマーケットプレイスで活用され、最先端の検索、広告、商品のレコメンデーションによるパーソナライズされたエクスペリエンスを生み出しています。Etsy では、チームが任意の ML フレームワークを使って自由に検証を行えるようになっただけでなく、この新しいプラットフォームによりアイデアの発案から実際の ML を用いた検証までにかかる時間が 50% 短縮されたと推定しています。

2. 今、AI 導入のどの段階にいるのか?

組織によって、AI 導入の段階はさまざまです。メールやオフィス プラットフォームから、サプライ チェーン、本番環境ソフトウェアに至るまで、あらゆるものに AI が組み込まれている昨今、それは当然のことです。しかし、さらに戦略的な観点から見ると、成熟した AI 企業と新興の AI 企業との間では、導入にかなりのばらつきがあります。この質問によって、組織の AI 機能の現状を特定し、ギャップが存在する可能性のあるポイントを特定できます。

Google Cloud のお客様が AI 環境における自身の立ち位置を把握できるよう支援する際、私たちはプラットフォーム、ツール、データへのアクセスと品質、文化、ビジネス プロセスにわたるお客様の AI 機能を理解するために、6 つの側面に注目します。興味深いことに、これらの側面により、従来型の AI テクノロジー全般に習熟するだけでなく、生成 AI などの新しいテクノロジーに備える方法も明らかになります。

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  • リード: AI 戦略が経営陣によってどの程度支持されているか。またそれがチーム体制、予算決定、企業ビジョンにどの程度反映されているか。

  • アクセス: データ マネジメントが AI を実現するための鍵であることを組織がどの程度認識しているか、またチームがデータやその他の ML アセットをどの程度共有、発見、再利用できるか。

  • 安全性: データと ML サービスを不正アクセスからどの程度保護できるか。責任基準、規制基準、プライバシー基準を確保する制御、ガバナンス、その他の戦略を含む。

  • スケール: 品質や費用を犠牲にすることなく、より多くのデータ、より多くのモデル、より高速なデータ処理に対応してスケーリングできる、クラウドネイティブの ML サービスをどの程度使用しているか。

  • 自動化: 大規模な AI モデルを確実にトレーニング、デプロイ、追跡、モニタリングするために、本番環境でのデータと ML パイプラインをどの程度自動化しているか。

  • 学習: 組織で AI 戦略の実行に必要な人材とスキルを確保するためのスキルアップ、採用、提携へのアプローチの質と規模。

これら 6 つの側面を評価することで、自社の能力がどのレベルにあるか、どのような分野の改善が必要かを包括的に把握でき、ビジネスへの影響を高めるためのプロジェクトの優先順位付けが容易になります。たとえば、Google は世界的な HR ソフトウェア プロバイダのトップレベルの AI およびデータ技術者 20 名を対象に評価を実施し、3 つのワークストリームにわたって 12 の成長機会を特定しました。この評価と関連する目標を武器に、この企業のデータおよび AI 担当バイス プレジデントは、今後 24 か月間で実行可能な戦略を作成し、最終決定することができました。

3. 優先的に AI を活用すべきユースケースとは?

AI の導入が急務となっている一方で、新しいテクノロジーによって財務レジリエンスを高めるには、適切なユースケースを選択することが不可欠です。AI の潜在的なユースケースに関して、次の問いを考えてみましょう。

  • 20 万に及ぶマーケティング広告ひとつひとつに生成 AI を活用する必要があるのか。それとも従来の AI 手法で広告パフォーマンスを最適化することはできるのか。

  • 顧客のライフタイム バリューのモデリングは、多額の AI 投資に値するものか(重大な差別化要因となり得るのか)。

  • 高度な需要予測モデルの開発にリソースを投資する前に、それが包括的なサプライ チェーン プロセスにどのように適合するかについて、在庫チームとフルフィルメント チームとの調整がとれているか。また、需要予測の信頼性を高めるために、十分に強力なデータ基盤が準備されているか。

結局のところ、新しいテクノロジーへの投資は、次の流行を狙うのではなく、ビジネス価値を最大化する方法を優先しなければ、投資が期待を下回ることになりかねません。

では、どのように AI のユースケースに優先順位をつければよいでしょうか。

従来は、プロジェクトの潜在的な価値と、それに要する時間や労力を比較していたかもしれません(例: 価値 vs 労力)。このアプローチでは、通常、労力が少なく価値の高いユースケースを優先することになります。AI の場合は、このおなじみのフレームワークを少し異なる見方で捉え、実現可能性と実用性を比較することをおすすめします。データと AI には、有効なモデルを構築するために必要なものが揃っているでしょうか?揃っているとして、自社のビジネスチームと運用チームがそこから価値を引き出せる可能性はどのくらいでしょうか?

データと AI には、有効なモデルを構築するために必要なものがすべて揃っているでしょうか?揃っているとして、自社のビジネスチームと運用チームがそこから価値を引き出せる可能性はどのくらいでしょうか?

この新しいフレームワークでは、現在の機能に最も適したユースケースをランク付けしやすくなり、実際にビジネス価値を実現できるようになります。このフレームワークに他の側面を追加すると、本番環境モデルの潜在的な価値(AI 投資に対する ROI)や新しいモデルの実装費用(デプロイにおけるモデルあたりの費用)など、ユースケースの影響をより深く理解できます。

現在、企業はさまざまな方法で独自に AI を導入していますが、既存の技術スタックとデータをどのように組み込むかが、目標達成の成否を分ける最大の差別化要因となり得ます。

4. どのように実現するのか?

戦略の明確な実行計画を念頭に置くことは、組織の水平的能力を高め、実際にビジネス上のメリットを得る鍵となります。

本番環境への導入に至らないモデルを作ってしまうリスクは、現実にあります。お客様へのインタビューによると、モデルの構想から本番稼働まで、7 日から 18 か月かかるケースがあります。ハイリスク・ハイリターンの考え方で AI を実装すると、今後の AI 投資に勢いと整合性をもたらす、より価値のある即効性の高いチャンスを見落とす可能性があります。

モデル構築にいきなり取りかかるのではなく、Vertex AI などの最新の AI プラットフォームに投資する方が得策です。適切な AI プラットフォームと運用モデルを選ぶことで、費用と本番稼働までの時間が大幅に削減されます。実際、AI がより多くのアプリケーションで実現可能な選択肢となることで、AI のデプロイ費用は、ビジネスで AI が果たす役割を根本から変えるほどに下がる可能性があります。

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日本の通信・印刷会社である凸版印刷は、オンプレミスの手動 AI ソリューションから Vertex AI に移行することで、モデル構築と予測コストを 90% 削減しました。さらに、Vertex AI の事前トレーニング済みモデルはさらに高い精度を示し、日常のプロジェクトでより簡単に使用できるようになりました。これまではエンジニアとデータ アナリストだけが AI 活用に携わっていましたが、マーケティング メンバーも直感的にツールを利用できるようになり、組織全体に AI を効果的に普及させることができました。

うまくいかないかもしれない複雑でコストのかかる AI プロジェクトの代わりに、小規模で漸進的な改善に集中でき、それらをより頻繁に推進することで、アジリティとイノベーション能力が劇的に向上します。急速なペースで進化する AI テクノロジー、特に生成機能では、テクノロジーそのものではなく、いかに早くモデルをトレーニングし、実際にソリューションをデプロイできるかが重要になります。

5. いつ成果が得られるか?

説明責任を負うことは、AI 導入の成功の証であり、この問いは、導入の取り組みを、明確に定義された業績評価指標やビジネスへの影響と結びつけるのに役立ちます。技術的な改善も業務的な改善も、ビジネス関係者が納得し理解できるような具体的な指標に置き換えて追跡する必要があります。

上述以下のマトリックスは、適切な投資を行っているかどうかと、AI モデル開発の速度を理解するのに有効です。たとえば、AI への投資とモデルの実現率が高い組織は、一般的にトランスフォーメーション リーダーとみなされます。それに比べ、AI への投資率が低く、モデルの実現率が低い組織は、遅れをとっている可能性があります。

適切な KPI により、ボトルネックを特定して AI 投資を継続的に最適化していくことができます。さらに、チーム全体のクラウドや AI サービスに対する支出の可視性を高めるために、モニタリングを設定することも、コストを抑えるために重要です。特に、使用量を各チームに割り当てることで、必要なところに公平に配分しながら、費用を管理できるようになります。


ヘッダ画像は midjourney で「原色 + 緑で描かれたビジネス レジリエンス」のプロンプトを使用して作成した。

- Google Cloud、カスタマー バリュー ハブ、AI ソリューション担当責任者、Amy Liu

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