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クラウド経済学 - インフラストラクチャの弾力性はなぜ重要?

2023年10月23日
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Google Cloud Japan Team

好況時にイノベーションを推進する場合でも、不況時にコストを抑制する場合でも、クラウドのスケーラビリティは不可欠になりつつあります。

※この投稿は米国時間 2023 年 9 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

クラウド経済学へようこそ。新しいセッションの始まりです。

前回は、クラウド コンピューティングが企業の財務パフォーマンスの向上、特に、収益増加、コスト削減、テクノロジー投資の最適化にどのように役立つかを解説しました。また、IT 投資の指標をビジネス パフォーマンスに結びつけるためのフレームワークについても取り上げました。

今回は、クラウド コンピューティングを採用することで、全体的な IT 投資収益率だけでなく、財務上の対応力も向上させる方法について説明します。これにより、景気後退時にコストを削減し、成長期にトランザクションコストを最適化できます。

クラウド コンピューティングを活用することで、景気後退時の迅速なコスト削減と、成長期のトランザクション単価の最適化が可能になります。この二重の効果により、企業は単に最適化を図るだけでなく、より即応性の高いコスト構造をビジネスに組み込むことで、営業利益率を長期的に安定させることができます。

コストの即応性に劣る従来のインフラストラクチャ

かつてはオンプレミス環境が企業の IT のバックボーンを形成しており、企業が基盤となるテクノロジーのコスト構造を素早く効率的に変更できるかには、従来のインフラストラクチャが大きく影響していました。多くの組織がクラウドに移行する一方で、この移行による経済的メリットはまだ十分に理解されていません。

オンプレミス環境に容量を追加するには、綿密な計画と多額の先行投資が必要です。また、休日などに発生するピーク需要を事前に予測し、急増に対応するためにオーバープロビジョニングを行う必要があります。規制の厳しい金融機関などでは、直近の既知のピーク需要の 2~3 倍の容量をオーバープロビジョニングしている場合もあります。オンプレミス環境について Google が実施した最近の分析によると、目標値がその 3 倍近くあるにもかかわらず、組織全体の平均 CPU 使用率は最高でも約 23% でした。つまり、設置された容量の最大 3 分の 2 が無駄になっていました。

インフラストラクチャなど、大規模な資本的支出の対象の最適寿命は 4~5 年の傾向があり、需要の変動にかかわらず、企業の損益計算書に絶えず影響を与えます。言い換えれば、需要が低いときでも、ビジネスにかかるコストは変わらないということです。

インフラストラクチャのオーバープロビジョニングは、資本を無駄にするだけでなく、電気、冷却、メンテナンスなどの運用コストを増加させます。なんらかの形で成長が既存の容量を上回った場合、拡張には何か月もかかり、場合によっては事業運営の中断が必要になります。さらに悪いことに、その間に新たなビジネス チャンスを逃したり、カスタマー エクスペリエンスに悪影響を及ぼしたりすることも多く出てきます。

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上のグラフは、ある大手金融機関における収益と収入に対するコア テクノロジーのコストについて、四半期ごとの変化を表したものです。注目すべきは、テクノロジーのコストがビジネスの好不調にほとんど影響を受けていないことです。

多くの企業は、収益性を高める要因として、コストを一定に保ちつつ収益の増加を見込めるシナリオ(このことを営業レバレッジと呼んでいます)があることが理由で、テクノロジーにかかる固定費をメリットと勘違いしています。通常、このことは、一部の固定費については理にかなっていますが、テクノロジーについては、トランザクションあたりの平均コストが高すぎると言えます。より簡単に言うと、システムの容量の 3 分の 2 を使用していないにもかかわらず、トランザクションごとに未使用分のコストを余分に支払っていることになります。

不況で需要が落ち込むと、オンプレミスの IT 支出は固定費であるため、コストを削減することが難しくなります。Rubin Worldwide が実施した最近の分析によると、IT 予算の 20% 以上が資本的支出に費やされており、損益計算書に何年にもわたって影響を与えていることがわかりました。その結果、不況時でも IT インフラストラクチャのコストを削減できず、より重要な(そして、しばしば過剰に活用されている)リソース、つまり労働力を削減することになります。

典型的な IT 損益計算書におけるコストの即応性の例

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クラウドベースのインフラストラクチャに移行すると何が変わるのか

従来の IT インフラストラクチャの主なデメリットを確認したところで、次はクラウドに移行することによる経済的メリットを見ていきましょう。

インフラストラクチャの即応性の向上

固定されたオンプレミス環境とは異なり、適切に設計されたクラウド インフラストラクチャは、ほぼリアルタイムのニーズに応じて使用量と支出を自動的に最適化します。クラウドのスケーラビリティと従量課金制モデルにより、需要がピークに達する好況時にはオンデマンドでコンピューティング リソースを稼働させ、その後トラフィックの減少に応じてスケールダウンすることで、アイドル状態の容量に対する余計な支出を防ぎます。数か月分または数年分の過剰な容量を事前に購入する代わりに、現在のワークロードに基づいて料金を支払うことで、使用していないサーバーに対して無駄な支出をする必要がなくなります。

コストのアトリビューションの改善

クラウドはコストの最適化に役立つだけでなく、従来の IT 環境と比べて財務上のアトリビューションを改善できます。クラウド プラットフォームは、プロジェクト レベルの詳細な使用指標により、予測アルゴリズムの強化やコスト配分の指針として使用できる、変動費に関するより深いインサイトと透明性を提供します。たとえば、インフラストラクチャのコストをプラットフォームのアクティビティに直接関連付けると、収益ベースまたは従業員ベースのコスト配分スキームよりも、より効果的かつ高い信頼性で収益性の推進要因を明らかにできます。

多くの企業は、テクノロジーにかかる固定費をメリットと考え、収益性を高める要因であると勘違いしています。しかし、システムの容量の 3 分の 2 も使用していなければ、トランザクションごとに未使用分のコストを余分に支払っていることになります。

より少ないコストで成長とイノベーションを推進

クラウドのメリットとして最もわかりやすく広く知られているのは、イノベーションを推進できることです。具体的には、クラウド プラットフォームを利用することで、大規模な先行投資を行うことなく、新しい製品、サービス、テクノロジーを試すことができます。ビジネスが成長するとインフラストラクチャも成長します。これは多くの場合、世界規模で起こります。たとえば、オンデマンド ストリーミング サービスを開始しようとしているメディア企業は、クラウド インフラストラクチャを利用することで、小規模で開始して世界中に急速に拡大することができます。また、新しい IoT 製品を展開しようとしている企業は、即座にスケーリングして迅速な導入に対応できます。

企業は容量の制限を心配する代わりに、イノベーションや顧客のニーズを満たすことに集中できます。予想よりも成長が鈍化した場合や、ビジネスの方向転換が必要になった場合でも、クラウドでは高額なコストをかけることなく、ビジネスのペースに応じてインフラストラクチャを柔軟に適応させることができます。

まとめ

クラウドは、好況時であっても不況時であっても即応性と最適化を提供でき、利益率の改善と安定化に役立ちます。また、固定資産や過剰な容量を削減することで、効果的かつ動的にインフラストラクチャのコストをワークロードに合わせることができます。このようなスマートな最適化アプローチにより、企業は成長とイノベーションの機会を迅速に活用するために必要な、財務上の柔軟性とアジリティを得ることができます。

来月は、クラウド経済学シリーズの最終回として、これまでの研究を振り返り、マクロ経済への影響を考察します。

- Google Cloud、金融サービスリード、カスタマー バリュー&トランスフォーメーション顧問 James Tsai

- Rubin Worldwide、CEO Howard Rubin 氏

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