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クラウド経済学入門 - クラウド投資の ROI を評価する

2023年7月14日
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Google Cloud Japan Team

クラウド経済学の世界へようこそ。ここでは、クラウドへの投資の効率や効果を測定する方法について説明します。

※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

かつて企業は、主として IT 費用を節約するためにクラウドを採用していました。今でもそれは重要な要素ですが、現在は、イノベーションの側面からの重要性が増しています。たとえば、消費者の嗜好をリアルタイムに把握、動的なサプライ チェーン管理、脅威インテリジェンスの特定、最新の AI(一般的な AI と新しいジェネレーティブ AI の両方)といったユースケースにとって、クラウドは欠かせない存在となってきています。

クラウドやビジネス、その他のあらゆるものが加速度的に変化し続けるなかで、企業のリーダー達は、移行を開始した当初に思い描いていた通りの、クラウドの価値や利点を得られているか、あらためて検討するようになってきています。IT の投資収益率を適切に測るにはどうすればいいのでしょうか。また、投資を継続的に最適化し、価値を確実に得ながら長期的に増やしていくには、どうすればいいのでしょうか。

それはクラウド経済学の問題です

ここでは、クラウド経済学を使って、クラウドの投資効果、効率、投資収益率を可視化したり、ビジネスとテクノロジーの目標を合致させることができているかどうかを確認する方法を紹介します。クラウド経済学は、IT の費用およびパフォーマンスを測定、評価することで真の価値の獲得を目指す新しいアプローチです。

Cloud Econ 101(クラウド経済学入門) へようこそ。想定どおりにことが運んでいるかどうかを確認するには、IT への投資を評価、採点する必要があります。

クラウド コンピューティングの価値の源泉

クラウドの根本的な価値は、IT チームやビジネス ユーザーが、以前は利用できなかった機能や、従来のオンプレミスのテクノロジーやアーキテクチャでは費用の観点から利用が難しかった機能を使えるようになるところにあります。たとえば、グローバル規模の変動する需要に合わせてコンピューティング リソースをすばやくスピンアップ / スピンダウンする、ユーザーの興味の移り変わりやサプライ チェーンの影響をトラッキングするためにコンピューティングおよび分析プラットフォームを自動スケーリングする、AI や ML(機械学習) の最先端技術(自然言語処理や IoT との統合など)を取り入れるといったことが可能になります。

クラウドがもたらすメリットは、以下のように大まかに分類できます。

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IT 投資の最適化: クラウドは、オンデマンドかつ動的な技術インフラストラクチャを基盤としており、必要なときに必要な分だけ費用を支払えば済むのが特徴です。したがって、費用のかさむデータセンターなどの減価償却資産への投資を回避しながら、適切なサイズのコンピューティング環境をほぼリアルタイムでプロビジョニングすることが可能です。これにより、IT インフラストラクチャ関連の支出を劇的に削減できる可能性があります。さらに、DevSecOps のようなベスト プラクティスの促進にもつながり、IT 関連の各部門が密接に連携しながらアプリケーションの開発、運用、保護に取り組めるようになります。結果として、プログラムおよびサービスの機能の改善、デプロイの迅速化、セキュリティの強化につながります。

運用費の削減: 前述のように、IT 投資を最適化することで IT 費用の全体的な削減がもたらされます。一方で見逃されがちなのが、クラウド コンピューティングによって、IT への投資を余すところなく活用できるようになる、という事実です。たとえば、AI / ML ベースの最先端の自然言語処理技術は、費用の削減という直接的な形ではなくても、現場業務の自動化および効率化や、コラボレーションの促進といったメリットをもたらします。適切なデジタルツールを整備することで、結果的に従業員の生産性が向上し、長期的に見て、フルタイム従業員やプロセスのコスト上昇を抑えることができます。

収益の増加: クラウドの IT インフラストラクチャのスピードとスケールを活用することで、企業は新しい製品やサービスのプロトタイプを迅速に作成できるようになります。アプリケーションや機能の開発スピードを上げ、これらのプロジェクトをクリックひとつで世界中にデプロイできるような仕組みを取り入れることで、組織は新たな収益の可能性を広げることができます。オンデマンドで世界中の拠点にインフラストラクチャを提供できることは運用コストの一層の削減につながり、各地にデータセンターを構えるといった大規模投資を回避しながら新しいマーケットに参入することが可能になります。さらに、データと分析や、API プラットフォーム、AI / ML 分野の最新技術を取り入れることで、機能およびサービスの差別化や、顧客との関係強化といった効果も期待できます。

多くの企業は、クラウドへの移行を終えた後にこうした利点を実感していますが、これらの利点が企業としての全体的なパフォーマンスにどのように影響を及ぼしているのかは、一部の経営幹部にはすぐに理解されないことがあります。組織におけるクラウドの恩恵を最大化するには、クラウドから得られる価値を正しく理解する必要があります。そのうえで価値を最適化することで、費用削減や成長といった継続的効果を得られるようになるでしょう。

クラウド経済学とは

クラウド経済学は、企業がクラウドへの投資から得られる価値を分析、管理するために使用できる、一連のフレームワークおよび指標からなります。言い換えると、テクノロジーへの投資とビジネスのパフォーマンスの相関関係の理解を助けるものです。クラウド経済学は、クラウド テクノロジーが IT 投資、運用費、収益増加に及ぼす影響をわかりやすい言葉や測定値で示すことで、その真価を測ることを可能にします。

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意思決定者がデジタル テクノロジーの投資収益率を見極めるにあたっては、クラウド経済学による評価作業が欠かせません。しかし、クラウドから得られるメリットをすべて定量化、測定、管理することは困難を伴います。これについては、今後の連載で取り上げます。

投資会社が競合他社との比較のうえで自社のポートフォリオのベンチマークを行うように、企業は各業界内で自社の IT 投資についてベンチマークを行う必要があります。

まとめると、クラウド経済学は以下の 3 つの基本的な問いに答えます。

  • テクノロジーにどのくらい投資すべきか?

  • 何に対して投資すべきか?

  • その投資は会社の成長と収益性をどのようにサポートするのか?

次号、Cloud Econ 102 では、クラウドを早期に導入した 5 社の事例を詳しく見ていくとともに、これらの企業がクラウド導入によって得られた価値を測定、管理するために使用している指標を紹介します。

- Google Cloud、金融サービスリード、カスタマー バリュー&トランスフォーメーション顧問 James Tsai

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