コンテンツに移動
Transform with Google Cloud

最高の IT 企業をベンチマークしていないなら、自社の IT が真にパフォーマンスを発揮できていると言えるだろうか?

2023年9月7日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/cloud-econ-103-benchmarking-it-performance.max-2600x2600.jpg
Google Cloud Japan Team

他の資本投資と同様に、クラウドも社内の指標だけでなく、競合他社の取り組みにも照らし合わせて評価する必要があります。

※この投稿は米国時間 2023 年 7 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

クラウド経済学へようこそ。以前のセッションでは、IT 支出を業績への投資として扱うという考え方を解説しました。「クラウド経済学を実践するためにリーディング企業 5 社が行ったこと」では特に、長期的なパフォーマンスの影響を測定するための基本的なフレームワークについて解説しました。今回は、このフレームワークとその主な指標、そして短期的および長期的な最適化の機会を特定するために、自組織のパフォーマンスと先進的な同業他社のパフォーマンスの両方をベンチマークとして影響を測定する方法について詳しく解説します。

結局のところ、投資家や組織は何世紀にもわたって、ポートフォリオのパフォーマンスを測定するために株価指数を頼りにしてきました。IT 支出を企業内の重大な投資クラスとして扱うようになるには、ビジネスリーダーにとって不可欠な発想の転換であり、クラス最高の組織をベンチマークとして自社の IT の有効性を計測することは重要なステップとなります。


パフォーマンス測定フレームワークの開発

Google の測定フレームワークと指標は、先に述べたように、投資レベル、配分、IT 投資の影響に焦点を当てています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/cloud-economics-104-top-peer-firms.max-1000x1000.png

このフレームワークは、以下の項目間のつながりを強化し、強調することを目指しています。

  • IT への投資: 収益や収入に占める IT 投資の割合の測定

  • 運用費の改善: 運用費 OPEX に占める IT 投資の割合

  • 成長エンジンの新規構築: 技術スタックの運用に費やす金額と、技術スタックの成長と変革に費やす金額との比較(会社の運営と変革への投資の比較)、およびアプリケーション開発費用とアプリケーション サポート費用との比較

  • 財務上の成果: IT 投資額 1 ドル当たり、および従業員 1 人当たりの収益と収入の追跡

IT 投資がうまい企業は、一般にテクノロジーへの投資額が少なくなりますが、この投資は収益の下支えと成長、そして運用費の支出抑制に与える影響を最大化させています。そして、その影響は最終的に企業の営業利益率に現れます。

ここでの一般的な結論は、企業は IT 投資の最適化を図り、営業利益率の成長という形でリターンを得るべきであるということです。これは、何に投資するかだけでなく、どのように投資を活用して事業を前進させるかにも焦点を当てることで、達成できます。たとえば、自動化や成長イニシアチブに投資する際には、技術的負債の増加、コンピューティング環境の過剰なプロビジョニング、サイロ化や冗長システムの構築なども避ける必要があります。

ピア ベンチマークによる投資ベースラインの設定

1880 年代に金融系の出版社が初めて株価指数を刷り始め、これにより投資家は市場に照らし合わせて保有株を評価できるようになりました。それまでは、その月に個々の鉄道や石油の保有株の価値が 10% 上昇していれば、それは良いことでした。しかし、指数全体が 30% 上昇していたとしたら、それは実際には、競合他社と比較して自己の投資先である企業の株価の上昇率が劣っていたことを意味するのです。

それ以来、何世代にもわたる投資家が ROI をより正確に把握するためにベンチマークを使用してきました。また、テクノロジーへの投資に関しても、ビジネス リーダーや IT リーダーにとって同様の教訓が当てはまると考えています。クラウドや IT 支出が純利益に貢献しているかどうかを知るだけでなく、自社の技術スタックがクラス最高の同業他社と比較してどのようなパフォーマンスを発揮しているかを知ることも重要です。

では、クラス最高の同業他社とはどのような企業を指すのでしょうか?Google ではこれを、同様のバリュー チェーンと運営モデルを持ち、自社と同一の業界においてトップ 10 に入る営業利益率を達成している企業と定義しています。たとえば、リテールバンクは、銀行業界で営業利益率がトップ 10 に入る他のリテールバンクをベンチマークとして自社と比較する必要があります。

これが実際にどのようなものかを下図に示します。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/cloud-economics-104-top-firms-performance.max-1000x1000.png


これらのグラフが示すように、ある特定の業界において営業利益率がトップ 10 に入る企業と、平均的な営業利益率の企業の IT 投資パフォーマンスには明らかな差があります。この例は、上で解説した結果を示しています。すなわち、営業利益率がトップ 10 に入る組織は、IT への投資額は全体として少ないのですが、より効率的かつ効果的なテクノロジー主導のインパクトを生み出しており、その結果、投資した IT 予算 1 ドルあたりの収益性がはるかに向上しています。

自社の投資ベースラインの設定

同業他社をベンチマークとした評価を開始する前に、自社内の IT 投資パフォーマンスのベースラインを決定する必要があります。

これは、組織の財務グループ、テクノロジー グループ、オペレーション グループ全体で KPI の適切な組み合わせとその定義を擦り合わせることから始まり、その後、どの同業他社と照らし合わせて自社のパフォーマンスを評価するかを決定します。組織全体の大規模なクラウド変革の一環として、技術部門とビジネス部門の利害関係者が団結して、ベンチマークを特定して定量化することで、組織が変革に取り組む理由と達成すべき成果の大きさについて、自然と足並みが揃うようになります。

このフレームワークと関連する KPI には特別な利点があると考えていますが、多くの場合、それだけでは成功を評価するのに十分ではありません。IT 投資の効率と効果をさらに追跡するために、他の指標を取り入れることも可能であり、また取り入れるべきです。これには、サービスの提供先である顧客ごとの IT 支出の測定、トランザクションの処理件数や実行件数の測定、またこれらの指標が時間の経過とともにどのように調整され、変化していくのかを測定することも含まれます。

残りのプロセスは、KPI を実現するためのデータ収集と、結果をまとめて解釈し、その意味するところの整合性を確保することが中心となります。このプロセスの核となる課題は、同業他社のパフォーマンス データを見つけることです。

Rubin Worldwide のような組織は、参加者から提供を受けた情報のほか、独立した調査によって裏付けされた情報を集めて、この種のベンチマークを以前から実施しています。現在 Google Cloud でも、クラウド サービスをご利用のお客様に対し、営業利益率がトップ 10 に入る同業他社をベンチマークとして IT 投資を評価する機能を提供しています。(トップクラスの同業他社をベンチマークとしたお客様の IT の評価を開始する方法の詳細については、cloudecon@google.com までお問い合わせください。)

パターンと意味合いの特定

パフォーマンスを分析する際に重要なのは、単一の指標でテクノロジー投資のパフォーマンスの全貌を語ることはできない点に留意することです。Google が示したフレームワークは、健康診断での血液検査のようなものだとお考えください。高いコレステロール値は、潜在的な問題の兆候かもしれませんが、1 回の検査だけでは、食事を変える必要があるのか、運動習慣を改善する必要があるのか、遺伝的問題のために薬を服用する必要があるのか、またはその組み合わせによる対策が必要かどうかを判断することはできません。

IT 投資のベンチマークも同様です。これは正しい最初のステップですが、最後のステップではありません。

ベンチマーク演習で起こり得る結果のすべての順列を概説することは不可能ですが、Google の顧客ベース全体でいくつかの一貫したパターンが現れるのを確認しています。

  1. IT 投資を最適化し、利益率を高める: 収益や収入に占める IT 投資の割合を単独で見ても、同業他社と比べて支出が多いか少ないか以上のことはわかりません。ただし、こうした情報は、より多く投資する余地がある(同業他社よりも割合が低い場合)、またはより少ない資金でより多くのことができるはずである(同業他社よりも割合が高い場合)ことを示す数ある手がかりの中の最初の手がかりになります。

    これは、IT 投資の実行に費やした 1 ドルあたりの収益や収入など、他の指標(コア フレームワークには含まれていないもの)と組み合わせた場合に特に当てはまります。また、この指標は、継続的な収益と利益率を支える中核的な IT 投資の効率を測定するのに役立ちます。ここでの数値が低い場合は、同業他社に比べて技術的負債が相対的に多いか、他の企業よりも効率の悪い環境を運営していることを意味している可能性があります。

  2. 自動化に投資して、費用を削減する: 前述のとおり、重要な指標の一つが、運用費(OPEX)に占める IT 支出の割合です。この指標は、ビジネスの運営における IT 以外のリソースや資本(特に人材)への依存度を把握するための最適な方法です。

    同業他社と比較して、全体的な IT 投資や OPEX への支出が少ない、または従業員 1 人当たりの収益が少ない場合は、自動化や拡張にもっと投資して IT 以外の費用を削減し、全体的な利益率を改善する余地がある可能性があります。

  3. IT 投資全体を増やすことで、成長を可能にする: IT 投資が全体的に減少している場合、つまり、IT 支出がテクノロジー支出の実行や改善、またはアプリケーション開発費用の削減に役立っていない場合、成長イニシアチブにより多くの予算を投資する機会を逃していることを示している可能性があります。運用への投資とその継続的な効果を追跡することで、既存の技術的負債の概要や、IT ランドスケープの合理化に役立つ改善の余地がある領域が明らかになる場合があります。

テクノロジーへの投資から価値を得るには、クラウド経済学をコントロールすることが重要です。クラウド経済学の管理は、単なる費用削減やパフォーマンス指標、同業他社をベンチマークとした KPI の測定にとどまらず、戦略的な意思決定、リソースの割り当て、最適化の道筋を示す指針を提供します。

データとベンチマークを継続的に再検討し、業界のベンチマークと比較することで、組織は IT 投資が期待どおりのリターンをもたらし続けているかどうかや、まだやるべきことが残されている可能性がある領域はどこかを判断できます。

次回のクラウド経済学では、クラウド コンピューティング パラダイム特有の IT 投資最適化への道のりにおける重要な意味合いと、クラウドのスケーラビリティと柔軟性を活用して組織のデジタル トランスフォーメーションを加速させる方法を紹介します。これらを組み合わせることで、デジタル世界における価値の実現に役立てることができます。

投稿先