The Prompt: AI 導入の容易性、管理性、カスタマイズ性を高める
Google Cloud Japan Team
変革をもたらすジェネレーティブ AI の最新トレンド
※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
このところ、ビジネス リーダーたちの間では、ジェネレーティブ AI が話題の中心となっています。急速に進化を続け、変革をもたらすこの分野の話題をフォローできるよう、「The Prompt」と題したシリーズを通じ、Google がお客様やパートナーと接するなかでの気づきや、Google の AI の最新動向を紹介していきます。今回は、Google Cloud の AI &ビジネス ソリューション担当グローバル VP の Philip Moyer が、ジェネレーティブ AI を導入する組織向けの 3 つのテーマ(容易性、管理性、カスタマイズ性)を紹介します。
Google I/O での AI に関する発表に続き、今回のシリーズ「The Prompt」では新しいコラボレーター、すなわち Google Workspace のジェネレーティブ AI を取り上げます。
本シリーズ「The Prompt」の多くの記事は、さまざまな領域にまたがる執筆チームの自由な対話から生まれたものです。以前から、AI を活用した Google Meet の音声文字変換機能を使用して、こうしたディスカッションを記録してきましたが、今回は Workspace の新しいジェネレーティブ AI 機能を使用することにしました。これにより、とりとめのない文字起こしテキストを、焦点の合った一貫性のある記録にわずか数分で変換できるようになりました。話が逸れた場合でも、Workspace の要約機能が私たちの話の軌道を修正し、会話に繰り返し出てくるテーマを特定してくれます。このブログ記事の最終原稿こそ作成しませんでしたが、AI のおかげで下書きと編集のプロセスにかかる時間を節約できました。このワークフローを採用した今、以前の方法に戻る気にはなれません。
そこで今回は「ジェネレーティブ AI の導入」について取り上げたいと思います。
ジェネレーティブ AI の導入にあたり、各組織の経営幹部は優れた基盤モデルが必要であることを少しずつ認識するようになっています。また、堅牢な管理機能と安全機能、パーソナライズされた体験を生み出す明確で迅速な方法が備わっており、導入が容易であることも求められます。このコラムでは、こうした特性について調査し、Google Cloud が開発し、Google I/O で披露した戦略に関連付けて解説します。
ジェネレーティブ AI には容易に導入できることが求められる
私は過去に「あらゆるケースに対応できる単一のモデル」はありえないと考えていると述べました。基盤モデルは追加のトレーニングなしで下流タスクを処理できるため、さまざまなシナリオに対しすぐに使用できますが、多くのユースケースでは、特殊なドメインに合わせて微調整されたモデル、さらなるカスタマイズを行うためのツール、費用とレイテンシのさまざまな要件に適合する幅広いモデルが必要になります。さらには、それらすべてが容易である必要があります。
Google I/O での発表はこうしたニーズを反映するものでした。本番環境における最新かつ最も多機能なモデルである PaLM 2 は、さまざまなサイズのモデル ファミリーを網羅するだけでなく、専門的な需要のある特定のタスクに合わせて調整されたさまざまなサービスを支えています。これには、コード生成用の Codey モデル、医療およびライフ サイエンス用の Med-PaLM 2、セキュリティ用の Sec-PaLM が含まれます。また、Vertex AI の Model Garden は、Google の多くの基盤モデルだけでなく、サードパーティのオプションへのアクセスも提供しているため、各組織では本番環境のさまざまなモデルを活用し、ジェネレーティブ AI 戦略を構築しています。
アクセスはソリューションの一部にすぎません。繰り返しになりますが、簡単に実装できる必要もあります。
Google は、AI を扱った経験の有無や、高度なデータ サイエンス チームを擁する組織であるかを問わず、さまざまなお客様のニーズを反映するプロダクトでこの目標に取り組んできました。
たとえば、Gen App Builder を使用すれば、開発者は基盤モデルを活用して、ジェネレーティブ チャットや検索アプリをわずか数分で構築できます。利用の開始にあたっては、データ サイエンスの経験はもちろん、大規模なコーディングも必要ありません。一方、より詳細なモデルのカスタマイズとデータ サイエンスの作業向けに、Vertex AI は開発者に配慮した API だけでなく、モデルのチューニング、プロンプト エンジニアリングなど、従来であればデータ サイエンス上の高度な専門知識を求められたタスクの複雑さの多くを抽象化するインターフェースも提供します。
ジェネレーティブ AI は管理可能で、安全保護対策が備わっていることが求められる
使いやすさについては、前回の、組織は基盤モデルだけでなくプラットフォームにも投資する必要があるというブログのテーマでしたが、これはジェネレーティブ AI を安全に導入する場合にも当てはまります。
安全性の一つの側面として、企業での使用に必要なガバナンス、監査、コンプライアンス、セキュリティ、プライバシーに関連する機能がすべて組み込まれている必要があります。これらは、AI に関する原則に裏付けられたすべての Google Cloud プロダクトで優先される必須事項です。一方で、こうした機能がどのような役割を担うかという側面も重要です。
たとえば、基盤モデルをカスタマイズすると、出力を安全かつ効果的になものにすることができます。ただし、すべての形式のカスタマイズがすべてのユースケースについて同等に効果的であるとは限りません。また、すべての方法に同等のスケーラビリティがあり、MLOps ワークフローに容易に統合できるとも限りません。
これが、MLOps ツールとさまざまな調整メカニズムの両方を Vertex AI に組み込んだ理由の一つです。これには、人間の入力を簡単にモデルの微調整に統合できる「人間のフィードバックからの強化学習(RLHF)」を提供する最初のハイパースケール クラウド プロバイダであることも含まれます。同様に、Gen App Builder を使用すれば、ジェネレーティブ AI の出力を特定のデータソースに制限することが容易になり、大規模なモデルの焦点と精度を維持することができます。
使いやすさとともに、管理可能、トレーニング可能、更新可能なモデルに裏付けられた安全性を重視した実装も重要です。
ジェネレーティブ AI の最良のユースケースは、カスタマイズ性のあるもの
企業のリーダーたちとの最近のコミュニケーションから、効果的なジェネレーティブ AI の実装は、多くの場合、カスタマイズ性のあるものであるという主張を受け入れる人が増えているように感じます。
Google I/O では、こうした主張に沿ったさまざまなプロダクトを発表しました。たとえば、Duet AI for Google Cloud や Duet AI for Google Workspace の常時稼働 AI コラボレーターなどは、ユーザーが実行しようとしているあらゆる作業に対し、状況に応じた AI コラボレーションを提供します。また、Magic Editor では、AI を使用して写真を編集し、大切な思い出をより良い形で記録するといった、有意義なデジタル インタラクションを強調しました。さらに、Vertex AI や Gen App Builder などのプロダクトを使用すれば、自社のユーザーに合わせたアプリケーションを簡単に作成できるようになります。
Duet for Google Cloud がどのように AI を活用して、Google Cloud ユーザーにとってよりカスタマイズ性に優れた体験を実現しているのかについて詳しくは、次の動画をご覧ください。Duet for Google Workspace についてさらに詳しく知りたい方は、Google I/O 基調講演のデモをご覧ください。
ジェネレーティブ AI はまだ歩みを始めたばかり
お客様とのコラボレーションを通じて、このテクノロジーの素晴らしいポテンシャルから恩恵を得ることを組織が望んでいることがわかりました。しかし経営幹部は、ユースケースやテクノロジーの観点から、どこから着手すべきかを必ずしも把握できているわけではありません。活用しやすく迅速なジェネレーティブ AI の導入、さらには高度なトレーニング、微調整、カスタマイズ、MLOps に至るまで、お客様のニーズは幅広いものであると Google は考えています。このテクノロジーは、ビジネスが置かれている状況に対応し、成熟させるためには選択肢と柔軟性を提供する必要があります。Google のジェネレーティブ AI プロダクトがお客様の手元で実際に使用されることで、私たちは多くのことを学んできました。Google I/O は重要な一日でしたが、さらに多くのことを共有できる日が遠からずやってくるでしょう。
Google の AI に関する最新情報(※ 英語のコンテンツを含みます)
Google Cloud は、ジェネレーティブ AI の新しいトレーニングを展開しています。詳細と受講方法については、こちらブログ記事をご覧ください。
Google Cloud は Target and Lead Identification Suite を発表しました。この AI ツールを使用して、ライフ サイエンス研究者はアミノ酸の機能をより適切に識別し、タンパク質の構造を予測できます。また、Multiomics Suite は、ゲノムデータの発見や解釈に加え、個別化されたゲノム治療の設計を行えるツールです。詳細については、こちらのブログ記事を参照してください。また、CNBC の発表に関するこちらの報道もお見逃しなく。
Google Research は、新しい知見、技術、アプローチを迅速に発表し続けています。今週のハイライトには、Google の Responsible AI and Human-Centered Technology チームの People + AI Research グループの紹介や、多様な肌の色をより適切に処理できる公平なコンピュータ ビジョン モデルの構築に役立つ新研究、AI アシスタントの強化学習の進歩(目標に向けてマルチターンの会話をプランニングし、会話の流れに対応できるようにする)などが含まれます。