クラウド FinOps でジェネレーティブ AI 投資を最大化する方法

Google Cloud Japan Team
ジェネレーティブ AI に対して戦略的な財務アプローチをとることは、健全な投資と最大限の価値の確保に役立ちます。何から着手すべきかを見ていきましょう。
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ジェネレーティブ AI の時代が到来しているなか、企業の IT について週末のバーベキュー、国会、深夜のテレビ番組などでこれほど話題になったのは何年ぶりでしょうか。2000 年問題の頃以来かもしれません。
この斬新なテクノロジーが持つ変革のパワーを考えれば、注目が集まるのは当然のことです。今日のマクロ経済環境や増大する競争圧力も加わり、組織が「様子見」の戦略をとる余裕はもはやありません。同時に、現在の露出と熱狂により、組織は、報われない可能性のある AI 投資を促され、機会損失やビジネス目標が達成できないという結果に導かれる可能性があります。
ジェネレーティブ AI はイノベーションのペースが速いため、企業がビジネスの価値を実現し、競争に打ち勝つには、AI への取り組みに焦点を移して投資する必要があります。しかし、ジェネレーティブ AI の活用には特有の課題が伴います。特に気をつけなければならないのは、クラウド費用の急増です。
費用が高くなる理由のひとつとして、ジェネレーティブ AI のプロジェクトがしばしば大量のコンピューティング パワーとデータ ストレージを必要とすることが考えられます。適切なアプローチ、特にクラウド FinOps の実践により、組織は費用を抑えながら目標とするビジネス価値を実現できます。

ジェネレーティブ AI の投資価値を最大化する方法
ジェネレーティブ AI モデルひとつですべての問題を解決できるわけではありません。また、大きければ良いというものでもありません。シンプルな質問に答えるために、1 兆個のパラメータ規模のモデルは必要ありません。実際、特定のタスクにおいては、抽出や強化学習などのツールによって、小さなモデルが大きなモデルよりも優れたパフォーマンスを発揮することもありえます。Google Cloud では、ユースケースに応じて、適切なタイミングかつ費用で最適なモデルへのアクセスを提供します。
ニーズに合ったモデルを選択する: すべてのモデルが同じように作られているわけではありません。特定のタスクに適したモデルもあれば、そうでないモデルもあります。慎重に検討し、自社の特定のユースケースに適したモデルを選択してください。
適切なツールを使用する: ジェネレーティブ AI への投資効率を最大化させるために利用できるさまざまなツールがあります。業務に適したツールを使用するようにしてください。
適切なデータでモデルをトレーニングおよび調整する: データの品質と整合性はモデルのパフォーマンスに大きな影響を与えます。モデルの調整とトレーニングには、高品質でクリーンなデータを使用してください。
モデルのパフォーマンスをモニタリングする: モデルのトレーニングが完了したら、そのパフォーマンスをモニタリングすることが重要です。モニタリングにより、モデルを改善できる領域を特定できます。
ジェネレーティブ AI を他のテクノロジーと組み合わせて使用する: ジェネレーティブ AI はパワフルなツールですが万能ではありません。他のテクノロジーと組み合わせて使用することで、よりパワフルなソリューションを生み出すことができます。
コストを意識したアーキテクチャを念頭に設計する: 設計段階では、コストを念頭に置いてジェネレーティブ AI ソリューションを設計します。たとえば、Google Cloud Function などのサービスを活用すると、全体的なコストを削減できます。
クラウドの費用の最適化は、継続的な課題として考える必要があることに留意してください。そのため、ジェネレーティブ AI モデルを定期的に見直し、ワークロードの需要やビジネス要件の変化に合わせて戦略を修正することは、Google Cloud の FinOps フレームワークの重要な構成要素であることを忘れてはなりません。
どこからはじめるべきか?
ジェネレーティブ AI のプロジェクトに取り組む際、テクノロジー リーダーやビジネス リーダーは下記の質問について考慮する必要があります。
ジェネレーティブ AI への投資を理解し、最大化するための基盤はありますか?
ジェネレーティブ AI の費用を管理するために適切な財務管理の仕組みはありますか?
ジェネレーティブ AI のユースケースのビジネス価値をとらえ、最大化させる方法を知っていますか?
新しいジェネレーティブ AI のユースケースを導入するための適切な費用モデルとガバナンス プロセスはありますか?
収益、成長、カスタマー サクセスなどに寄与しないジェネレーティブ AI のユースケースを評価して非推奨にするためのフィードバック ループを導入できていますか?
Google は、ジェネレーティブ AI をテストしているお客様との定期的な対話の中で、こうした課題について検討してきました。その過程で、Google Cloud コンサルティングの FinOps プラクティスでは、このようなビジネス上および財務上の課題に対処するための重要なサービスを数多く開発してきました。
ジェネレーティブ AI のためのクラウド FinOps 評価
クラウド FinOps 機能の財務的な準備状況を評価します。これは、ジェネレーティブ AI の費用を管理するための、人材、プロセス、テクノロジー全体にわたります。ジェネレーティブ AI のための Cloud Front Door
財務、テクノロジー、プロダクトの各チームが協力して支出に関する意思決定ができる、スムーズなゲートウェイを確立します。これにより、費用と価値に基づいてジェネレーティブ AI のユースケースを導入できます。ジェネレーティブ AI の実用的な費用管理の推奨
財務チームとテクノロジー チームに費用管理ツールを提供し、ジェネレーティブ AI サービスのクラウド支出を理解、管理、最適化するために活用します。
組織は、クラウド FinOps を通じて適切な財務ガバナンスを導入することで、ジェネレーティブ AI の価値を最大化し、ジェネレーティブ AI への投資によって持続可能なビジネス価値を生み出すことができます。ジェネレーティブ AI の実践にクラウド FinOps を採用することで、組織は以下のことが可能になります。
企業全体で組織のサイロ化を解消し、ジェネレーティブ AI の先進的な実践に対する認識を高める。
Google ネイティブのツールを使用してジェネレーティブ AI の費用管理機能を促進する。
費用最適化の推奨事項を即座に実行することで、ジェネレーティブ AI への投資価値を最大化する。
ジェネレーティブ AI は、単にホットなトピックというだけではありません。業界を問わず世界中で関心を集め、活発な投資が行われていることを考えると、もはやビジネスにとって不可欠なものとも言えます。組織は取り残されることを望んでいませんが、費用を押し上げたり、時間や人材を無駄にしたりするような不適切な投資も望んでいません。
適切な FinOps アプローチをとることで、推進する価値のあるプロジェクトを特定し、軌道に乗せ、投資を回収することが可能になります。
分析情報を共有し、この記事に協力してくれた Sheri Cunningham 氏と Lilly McNealus 氏に深く感謝します。
- Google Cloud、Cloud FinOps 担当責任者 Eric Lam
- Google Cloud、ディレクター兼デジタル変革担当責任者 Daniel Pettibone