TELUS: エッジ コンピューティングと 5G で労働者の安全を確保
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 6 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 2021 年 2 月、Google Cloud と TELUS は、通信技術、ヘルスケア、農業、スマートホームなどの主要業界内のデジタル トランスフォーメーションを支援するデータ分析、機械学習、市場参入戦略にわたる新しいサービスとソリューションの導入を推進する 10 か年の戦略的提携を発表しました。TELUS は 2021 年 12 月までに、Google Cloud の AI ソリューションと機械学習ソリューション、ならびに Telco Edge Anthos を活用し、職場の安全性を高め、製造施設における死亡事故を解消するユースケースを想定した試験運用を完了しました。このユースケースでは、マルチアクセス エッジ コンピューティング(MEC)を活用し、トラフィックの処理と管理を一元管理型のクラウドから TELUS の 5G ネットワークのエッジに移すことで、顧客のより近くでアプリケーションをデプロイし、コンテンツを処理することが可能となり、パフォーマンス、セキュリティ、カスタマイズの向上など複数の利点が得られます。本日は、TELUS のテクノロジー戦略およびアーキテクチャ部門の責任者である Samer Geissah 氏を招き、このテクノロジーを使用して、労働者の福祉をはじめ有意義な変革を推進するという約束をどのように果たしているかについてお話を伺います。
新しいテクノロジー用語が登場するたびに、私は「これはどんな問題を解決するのか」、「誰のために本当に役立つのか」と考えます。その理由は、TELUS が、医療の近代化、食糧供給の持続性確保、環境フットプリントの低減、困っているカナダ国民を結びつけるなど、有意義な変革を推進するための社会的目的に沿って行動する手段としてイノベーションを捉えているためです。マルチアクセス エッジ コンピューティング(MEC)は、まさにこれを実現するための機会をもたらす用語です。そのため、TELUS では、クラウド機能を活用し、ネットワークのエッジ コンピューティング能力を最大限に生かし、受賞歴のある高速 5G 接続を利用して、業界で最も複雑な課題の解決を支援したいと考えています。
これによって大きなチャンスがもたらされる理由は、各業界の企業が、中核となるコンピューティング タスクを管理するために、依然としてメンテナンスの手間がかかるオンプレミス システムに依存しているためです。しかしながら、TELUS の 5G ネットワークのエッジで提供されるクラウド機能によって、これらの企業に新たな展開が訪れます。たとえば、現在施設で IoT 対応機器を利用している製造業者は、AI を活用した高度な外観検査を 5G 対応デバイスから直接実施することで、ローカルでの処理能力も余分な現場スペースも必要なく、新たな業務プロセスを実現できます。実際、この事例から TELUS の新しいユースケースが生まれました。つまり、TELUS の Connected Worker Safety ソリューションをさまざまな業種で利用して、安全性の向上、負傷事故の防止、人命救助に役立てられるようになり、熟練労働者とデジタル テクノロジーの完璧な組み合わせによっていかにより安全な世界を実現できるかを証明しています。
エッジにおけるインテリジェントな意思決定の実現
農場、製造施設、病院、工場など、労働者は安全衛生が最優先される環境で働けるべきです。では雇用主は、遠隔地、現場、オフィスの従業員の安全衛生を常に確保するにはどうすればよいでしょうか。TELUS は、Google Cloud の AI / ML 機能と、ワークロードを提供するプラットフォームとしての Anthos を自社のネットワークのインフラストラクチャと組み合わせることで、その答えを見いだしました。
TELUS は、Google Cloud とともに、MEC と 5G の利点を併せ持つソリューションを活用して、オンプレミスの動画分析カメラで製造施設を精査し、大型機械を操作するための安全要件の遵守状況を確認するための作業員保全アプリケーションをエドモントン データセンターで開発しています。TELUS が使用した CCTV(閉回路テレビ)カメラは、作業員の接近を検知して衝突を回避する RTLS(リアルタイム位置情報サービス)ソリューションよりも費用対効果が高く、導入も簡単です。これは、職場の安全性を着実に向上させるための前向きで事前対策的な取り組みです。たとえば、作業員の手がドリルに近づいた場合、動画解析カメラにより作業員の手が安全地帯エリアから離れたことが検出されるまで、そのドリルプレスはいずれの表面にも穴を開けることはありません。
安全策がない状態で重機を操作する場合、数ミリ秒の差が運命を左右することもあります。そこで TELUS は、Accenture と協力して、このソリューションの所定のアクションを即時に実行できるよう、TELUS マルチエッジ アクセス コンピューティング上で動作する Anthos ベアメタル Google Cloud 環境上にアプリケーションをホストしました。
TELUS のモデルのすべての条件はプログラム可能であるため、このソリューションは、工場以外のさまざまな実用シナリオでも大規模に再現できます。分析結果に対する行動もプログラム可能です。つまり、企業はこのテクノロジーを使用し、作業員の状態を確認して、作業員の教育、支援、保護のための最適な行動を決定できるのです。これらはすべて一括表示エコシステムを通じて行われるため、さまざまなビジネスニーズに合わせてこのソリューションを簡単にカスタマイズできます。
一方、TELUS の既存グローバル ネットワークを活用し、エッジでデータ処理と演算サイクルを実行することで、リアルタイム演算のために中央拠点にデータを転送する必要がなくなります。つまり、レイテンシを最小限に抑え、費用を削減しながら、このソリューションをパートナーに提供できるのです。
Anthos で瞬時のコミュニケーションを実現
高速化の重要性を適切に捉えるため、まばたきの平均時間が約 300 ミリ秒であることを考えてみましょう。安全性の観点から、これよりはるかに高速な予防的処理が必要です。このユースケースでは、エッジ上で動作する TELUS の機械学習モデルが、まばたきにかかる時間の 10 分の 1 の時間でデータを処理しています。このレイテンシをさらに短縮して、さらに安全なシステムの構築を目指します。
TELUS は、既存の企業向けインフラストラクチャを活用するために、カナダ中のお客様向けにベアメタル版 Anthos クラスタをデプロイし、パートナーにより近いところで TELUS ソリューションを実行できるようにして、最終的にはレイテンシを 1 ミリ秒まで短縮することを計画しています。
その時点で、ほぼリアルタイムのフィードバックが必要な新しいユースケースに対応できるようになり、エラーは一切許容されません。この例として、遠隔手術、自律走行車の隊列走行、その他多くのセルラー V2X ソリューションが挙げられます。これらのソリューションでは、プラットフォーム運営事業者が遠隔地にあるリモート エッジフリートを管理するために高速通信が必要となります。
労働者をより確実に保護しながら新たな収益源を確保する
エッジ コンピューティングと 5G は以前から存在しますが、今回のようなユースケースによって、これらのモデルが提供する驚くべき変化のスピードと大きな可能性が実証され始めたばかりであると考えています。TELUS が次に行うことは、従業員保安ソリューションを開発し、これを市場展開することで、エッジにおける新しい 5G ソリューションのアーリー アドプターとなり、ビジネス パートナーおよび業界のパートナーの職場の安全性を向上させることです。
Google Cloud と力を合わせ、タイミングが人命に影響を与え、人命を救うことができる状況でレイテンシを短縮できるのは大きなメリットです。労働者の安全は、私たちが共に取り組む一連の業界の課題の始まりに過ぎないと確信しています。
- TELUS、テクノロジー戦略およびアーキテクチャ担当責任者 Samer Geissah 氏