ワンクリック小売: Marxent が Google Cloud でセルフサービスの 3D ショッピング アプリを運用している方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の渦中で家庭向け商品の e コマース人気が爆発的に増大している中で、家具や DIY の小売業者はオンライン販売の規模を店舗と同レベルまで拡大するため、新しい方法を模索しています。家具やリフォームのためのショッピングをオンラインで行うことは、従来から課題となっていました。家具、キッチンキャビネット、備品、家電機器はすでに日常生活の一部で、返却は難しく、購入頻度も低いものです。買い物客は、一度購入した商品を何年間も使い続けます。商品は見た目と触り心地が重要となり、購入決定には測定、スタイルの選択、予算、購入可能なプロダクトについての理解、複雑な検討プロセスが必要となります。このパンデミックの時期において、小売業者はバーチャルなショッピング体験を拡充するため、3D を使用するようになりました。
イメージ化と可視化により信頼を育てる
3D ルームコマース企業である Marxent は、小売業者が複雑で構成可能なプロダクトをオンラインで、お客様向けの 3D のデザインおよび可視化アプリで販売するための、3D の可視化と構成のソリューションを提供しています。Marxent 3D Room Planner は HD レンダリングを搭載しており、家具やキッチンキャビネットの構成が自宅のフロアプランでどのように見えるかを、買い物客が視覚的に確認するため役立ちます。Marxent は 2011 年に設立され、ダイニング テーブルの購入やキッチン全体の改装を、オンライン中古車販売業者の Carvana から車を購入したり、フード デリバリー サイトの Bite Squad で夕食を注文したりするのと同じくらい簡単に行えるようにすることを構想しています。当社の 3D アプリは買い物客の信頼を獲得する、インスピレーションからトランザクション、そしてアドボカシー活動までの合理化されたモデルを作り上げ、小売業者が個別の商品だけでなく部屋全体を販売できるようにします。
当社は Google Cloud を基盤として使用し、世界有数の小売業者や家庭向け商品業者の数社を顧客として、非常に優れたカスタマー ジャーニーを実現しています。Google Cloud のおかげで、当社は、買い物客がセミカスタムで構成可能なプロジェクトを迅速かつ簡単に購入できるという信頼を、当社のお客様から得ています。
3D の威力を活用して e コマースを飛躍的に発展
e コマースが成長しつつあることは、議論の余地がありません。家具、キッチンキャビネット、敷板、その他大型で構成可能なプロダクトをオンラインで購入する人は従来よりも多くなっています。
小売業者と一緒にデザインを行うお客様は、一般にその小売業者から購入します。買い物客が店舗やショールームを訪問するときは、ソファ、椅子、ラグ、スタンド・ランプなどのプロダクトを組み合わせて、インテリアの例を提案するモデルルームを見てインスピレーションを得ます。高いスキルを持つ販売員は、これらの家具をどのように組み合わせるべきかについて提案やアドバイスを行います。さらに、フロアプランをその場で作成し、さまざまなアイテムをどのように部屋に配置するかを示すこともできます。店舗では、このようなイメージを作り上げるフェーズが、買い物客の検討、そして購入の促進と密接に結び付いています。
これに対して、オンラインの買い物客がホーム プロジェクトを開始するときは、一般に Pinterest、Instagram、その他ブランド化されていないオンライン画像検索からイメージやアイデアを探します。好みのスタイルができあがると、買い物客はさらに検索を行って複数の小売業者のプロダクトを比較し、プロジェクトを計画し、最終的な予算を検討します。
小売業者がプロジェクトの販売をすべて獲得するには、インスピレーションを得て、購入を行い、アドボカシー活動を行うまでのすべての過程を保有する必要があります。オンラインと店舗内のどちらのアプリケーションでも、小売業者は Marxent の 3D Room Planner アプリを使用して買い物客の信頼を構築し、部屋全体の販売機会を獲得し、顧客を勝ち取ることができます。
プリレンダリングされたミッドポリの 3D シーン
ポストレンダリングされたミッドポリの 3D シーン - これは同じ部屋を少しだけ異なる角度から「Raw Render」にレンダリングしたものです(レンダリングは 2 分以内で完了します)。
Marxent の 3D Room Commerce ソリューションを使用することで、ユーザーはインスピレーションから購入へ、さらにアドボカシー活動への過程を繰り返し行うことができます。この過程は、買い物客がイメージをつかめるような画像やメディアをオンラインで視聴することから始まります。Marxent のアプリケーションにより、買い物客はイメージ画像から、カスタムの構成済みの空間を、商品カタログの知識なしに作り出すことができます。買い物客は、商品のページを調べ、それらの商品が組み合わせてうまく機能するかを想像する代わりに、好きなプロダクトを組み合わせ、実際のフロアプランの中で可視化できます。
その後で買い物客は、部屋全体をクリック 1 つでショッピング カートに入れることができます。この仮想体験は購入に結びつくだけでなく、作成した空間を保存し、共同の編集や共有を行うことも可能です。買い物客は、自分のプロジェクトをソーシャル メディアで共有することにより、新たな提案者となり、コンテンツからイメージを広げるサイクルが繰り返されることになります。
手動の運用の終了
大規模なレンダリングを実現するため、Marxent は自社のクラウド レンダリング ソリューションをアップデートする必要がありました。最初は、当社の 3D アートチームは手動のオンプレミスのレンダリング フリートを運用していました。しかし、これには手動の設定、構成、運用に多くの時間が必要でした。また当社は、ベアメタル、CPU、GPU、RAM、HDD などを含む高価なグラフィックス サーバーを管理する必要がありました。これらの問題を解決するには、3D レンダリング処理を自動化し、エンドユーザーが自分の 3D の部屋を迅速にレンダリングできるようにすることが唯一の方法でした。
当社は新しいソリューションの評価中に、ビジネスを安全かつセキュアにスケールし、同時にエンド カスタマーとのパートナーシップを強化できるという Google Cloud Platform の明確な優位点を見出しました。たとえば、Google Cloud への移行によって、物理サーバーのフリートを管理する必要なしに、レンダリング処理を自動化し、スケールできるようになりました。また当社は、Google の安全性を重視した設計のインフラストラクチャ、アジリティ、データ分析能力、そしてマーケットプレイスを結合できる可能性から、プラットフォームをアセットとみなすようになりました。
購入を促すような魅力的なカスタマー エクスペリエンスの作成
お客様や買い物客に対して、コンテキストに応じたエクスペリエンスを提供するため、Marxent のアプリケーションは速度とリアリズムをバランスさせたミッドポリの 3D モデルを使用します。これらのモデルにより、レイテンシがないリアルタイムのデザイン エクスペリエンスとして、ソーシャル メディアでは写真とみなされるような、十分に現実的なシーンをレンダリングできます。
これらの画像をレンダリングする複雑な処理では、Google Cloud で提供されるような効率性、速度、分析、一貫したパフォーマンスが要求されます。強力で高速なゲーミング GPU を使用した構成により、Marxent はお客様や買い物客の要求を満たす、高速なレンダリングを実現できます。当社の HD Renders アプリケーションの実例を示します。
ユーザーは、HD レンダリングをリクエストする前に、Marxent 3D Room Planner で部屋を作成する必要があります。リクエストを受けると、Marxent は保存済みのプロジェクトをデータベースから取り出し、Cloud Pub/Sub で処理を開始します。プロジェクトは、ユーザーがアプリケーションで最初に部屋を作成するとき実行されるのと同じプラットフォーム コードを使用して、ゲーミング GPU に読み込まれます。これにより、クラウドでアプリが起動され、部屋が読み込まれます。
次にコードは空間を走査しレンダリングの準備を行い、テクスチャの形式を調整し、ライティングを追加します。レンダリング エンジンを通過したプロジェクトは、自動的に Cloud Storage にアップロードされます。最後に、ユーザーは最終的なプロダクトへのリンクを受け取ります。処理の全体を通して、Cloud Pub/Sub がメッセージを処理することで、レンダリングの成功や失敗など、適切なイベント処理が行われていることが保証されます。
この処理を使用することで、単一のシーンから数十もの画像を作成でき、コンテンツのジオメトリとカバー、生地、仕上げの完全なカタログを活用して、フロアプランにプロダクトを出し入れすることができます。
購入までの過程の全体を通じて Google Cloud を活用する
現在では、Marxent のアプリケーションは世界的規模の小売業者によって、AR、VR、3D コマースのエクスペリエンスに使用されています。当社は最先端のグラフィックス ハードウェアを使用して、スクリーンショットごとに 2 分以内、多くの場合はさらに短い時間でレンダリングを作成しています。また、高価なサーバーの管理や、高価なハードウェアの事前購入が必要でなくなったことで、大幅に費用を削減できました。当社は、削減した経費をお客様に還元しており、また要求に応じて無制限のスケーリング能力を得られるようになったため、お客様の満足度も上がりました。
Marxent は Google Cloud とのパートナーシップにより、コンプライアンスとデータの機密性保持をサポートする高度なセキュリティ ツールを備えたインフラストラクチャ上にビルドされたセキュアなアプリケーションを、自信を持ってお客様に提供できるようになりました。グローバルな整合性を保つプラットフォームを基盤としているため、ピーク販売期間にダウンタイムが発生する心配もなく、ブランドがお客様とのすべてのタッチポイントで信頼性の高い購入エクスペリエンスを実現するためにも役立ちます。この戦略的パートナーシップにより、当社はお客様が要求する、この種のものとして最高の、お客様第一のエクスペリエンスを実現すると同時に、パートナーが期待する信頼性も確保できました。
Marxent の 3D テクノロジーは、お客様が求めるシームレスなショッピング エクスペリエンスに対応した、新しい簡単で、利便性が高く、より満足のいくショッピング エクスペリエンスへの道を開き、お客様は最初から正しいプロダクトを購入できるようになります。
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-Marxent CEO 兼共同創設者 Beck Besecker