U-NEXT:最新の CDN を使用して数百万人の利用者に動画をストリーミング
Google Cloud Japan Team
250 万人以上の会員を抱える動画配信サービス「U-NEXT」を運営している株式会社U-NEXT(以下、U-NEXT)。2007 年のサービス開始以来、「誰もが使いやすいサービスを開発し、幅広いコンテンツを用意することですべての会員のニーズに応える」という使命に基づいて事業を展開してきた同社は、新しいコンテンツ配信ネットワーク(CDN)として Google Cloud の Media CDN を採用し、配信基盤のさらなる強化を実現しました。
利用しているサービス:
Media CDN、Cloud Logging、Cloud Monitoring、BigQuery
利用しているソリューション:
メディアとエンターテイメント業界のための Google Cloud
メンテナンスが容易で少人数体制で運用できるモダンな CDN を必要としていた
動画ストリーミング事業では、シームレスな視聴体験がきわめて重要になります。長い読み込み時間や再生時の問題の発生は、ユーザーのプラットフォーム離れを招きかねないからです。日本では高速なインターネット通信が普及していますが、それにも関わらず U-NEXT の一部のユーザーは、最後の 1 バイトを受信するまでの時間(TTLB)が長いなどの問題に遭遇していました。これに対して同社のテクノロジー チームは、複数のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を稼働させることが、冗長化を実現し、すべてのユーザーの TTLB 時間を短縮することができる最善のソリューションだと判断しました。
CDN では、多数のサーバーを地理的に分散させて配置した上で、ユーザーから物理的に近い場所からコンテンツを配信することによって高速化を実現します。U-NEXT ではすでに CDN ベンダーを複数利用していましたが、それに加えて高いキャッシュ ヒット率と 短い TTLB を実現できる別の CDN を必要としていました。キャッシュ ヒット率が高くなれば、ほとんどのデータ読み込みが CDN とクライアント間で完結するため、配信元サーバーと CDN 間の通信が発生しない分だけ TTLB の短縮が期待できるからです。そこで採用したのが Google Cloud の Media CDN です。
U-NEXT ではチームの各メンバーが広い範囲で配信サービスの開発に関わることで、合理的な CDN 配信システムの設計や実装が行える運用体制を取っています。特定のメンバーが CDN 配信を専任する体制ではないため、採用する CDN プロダクトはメンテナンスが容易であることに加え、モニタリングやアラートの機能を備え、管理ツールを社内で構築せずに済むものである必要がありました。U-NEXT の CTO Rutong Li 氏は次のように語ります。
「私たちには、専任のエンジニアが毎週技術レポートを確認しなくても済む、モダンな CDN が必要でした。CDN の運用を維持するために煩雑な操作が求められるようでは、使いものになりません。」
U-NEXT が Media CDN に注目した最初のきっかけは、同社のストリーミング サービスで再生の問題が発生しているときでも YouTube のストリーミングは正常だった、という何件かの報告をユーザーから受け取ったことです。オンライン動画プラットフォームである YouTube と同じ Google Cloud インフラ ストラクチャを共有しているのが Media CDN です。Media CDN はスタンドアロン ソリューションとして、世界中のユーザーへの配信を実現しています。特に、コンテンツを最適なロケーションに保存する「エッジ キャッシュ」をほぼすべての主要なエンドユーザー向けのインターネット サービス プロバイダに直接接続することで、配信元サーバーの負荷を軽減するという特徴があります。
98.3% のキャッシュ ヒット率を達成し、配信元サーバーの過負荷によって生じる悪影響を回避
U-NEXT のチームでは、Google Cloud に Media CDN の詳細について問い合わせた結果、すぐに概念実証(PoC)に進む決断を下すことができたと Rutong Li 氏 は語ります。
「私たちは Media CDN の採用を即決しました。なぜなら、これがエンジニアのために、エンジニアによって構築されたサービスだと実感したからです。」
U-NEXT のチームは、実際のトラフィックを使用した最初の PoC をわずか 14 日足らずで実施しました。Media CDN は高いオフロード率を達成するために大がかりな調整を行う必要がないという強みがあります。この強みが、14 日足らずという極めて迅速な PoC の実現に繋がりました。実際、U-NEXT チームは、Media CDN のコマンドライン ツールを使用してほんの数時間で動作構成をセットアップすることができました。
「ルートやポリシーが異なる場合には異なる配信元サーバーを使用するという Media CDN の明確なドメイン設計によって、システムの迅速な改修がとても簡単に実施できました」と、Rutong Li 氏は語ります。
60 時間後、この PoC は、プラットフォームのトラフィックのピーク時においても配信元サーバーのトラフィックを 10 GB/秒未満に抑え、 97% のキャッシュ ヒット率を達成しました。その後も数日間の詳細な測定を行った結果、U-NEXT は、Media CDN を利用すれば登録会員にきわめて高速でシームレスな動画視聴体験を提供できるという確証を得ました。
PoC の成功後、U-NEXT では本番環境に Media CDN を投入し、98.3% のキャッシュ ヒット率を達成しました。これによって U-NEXT のインフラ ストラクチャでは、配信元サーバーがユーザー トラフィックで過負荷になることを防ぎ、動画ストリーミングに生じる悪影響を着実に回避しています。「Media CDN のキャッシュは非常に効率的で、配信元サーバーに大きな影響を与えることはないとわかっていたため、気持ちよく CDN を切り替えることができました」と、Rutong Li 氏は述べています。
最新の CDN で運用にかかる作業時間を大幅に削減
運用に必要な作業時間を最小限に抑えられるということは、U-NEXT が CDN を選択する上で特に重要視した要件です。中でも U-NEXT にとって最も時間を節約できる機能としては、自動ロギングと自動モニタリングが挙げられます。Media CDN は Cloud Logging と Cloud Monitoring を備え、これらに動的フィルタリングを設定できます。この機能を利用すれば、担当チームは大量のシステム アラートに惑わされることなく、関連する通知と指標を適切に表示して確認できるようになります。U-NEXT の場合、エンジニアはほぼリアルタイム(1 分以内)で提供されるログを確認し、すばやく構成を更新して、ユーザーに影響が出ないように対処することが可能です。U-NEXT での運用について Rutong Li 氏は次のように説明します。
「エラーログのフィルタリングがとても簡単で、運用コストを安く抑えることができます。フィルタリングしたら、ログ用の小さなルーチンをバックエンドに作成して、エラーに対応します。」
Rutong Li 氏によると、自動モニタリングのおかげでエンジニアの作業時間を従来の 3 分の 1 に圧縮できたといいます。
「Media CDN は、Infrastructure as Code(IaC)を利用した高速な構成が可能であり、インテリジェントな意思決定を通じてチームの負担を軽減できる最先端の CDN であると考えています」と述べています。
さらに U-NEXT では、Media CDN のログをすべて取得するために BigQuery へのパイプラインを設定しました。「構成でボタンをクリックするだけで、ログが BigQuery に高速配信されます」と Rutong Li 氏は説明します。BigQuery には U-NEXT のデータマートも保管され、同社の顧客分析の強化に役立っています。
U-NEXT は Google Cloud とのパートナーシップを拡大する予定で、同社のチームは Media CDN を自社インフラ ストラクチャのさらに多くの部分で活用したいと考えています。
日本における動画配信サービスの先駆けとして、 2007 年よりストリーミング プラットフォーム「U-NEXT」を運営している。サービス開始当初から、作品の多様性、視聴の快適性、技術の先進性への徹底したこだわりを貫き、ユーザーに価値のある体験を届けることを目指して市場シェアと取り扱い作品数を拡大させている。
インタビュイー
CTO Rutong Li 氏
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