顧客事例

株式会社TSIホールディングス:デジタル マーケティングを機械学習でブーストし、顧客体験の再構築に成功

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『ナノ・ユニバース』『ナチュラルビューティーベーシック』『マーガレット・ハウエル』といった人気ファッション ブランドを展開する株式会社TSIホールディングスは、近年、「ユニファイド コマース戦略」を旗印に、デジタル テクノロジーを活用した顧客体験の再構築を推進中。その一環として、AI や ML を用いたデジタル マーケティング機能の強化に Google Cloud を活用しています。同社の最新の成果と目標について、グループのデジタル戦略全般を担う株式会社TSI デジタルビジネスDiv の担当者様と、その取り組みをサポートする D.Table株式会社の皆様にお話をお伺いしました。

(利用している Google Cloud ソリューション)

スマート アナリティクス

(利用している Google Cloud サービス)

BigQuery MLBigQuery など

BigQuery ML で機械学習の内製化に挑戦

「TSI グループは、幅広い層にリーチする 50 を越えるブランドを持つことが強みで、それぞれの個性を活かして、ブランド主導のマーケティングを行ってきました。しかしその実、デジタル化は若干遅れていて、ほとんどのブランドがアドネットワークへの出稿すらしていないという状況でした。」と、以前の状況を苦笑いしながらふり返るのは、株式会社TSI でグループ全体のデジタルプラットフォーム戦略を統括する岸 武洋さん。岸さんらは、約 5 年前から本格的にデジタル マーケティングの改善に着手し、同社が「ユニファイド コマース戦略」と銘打つ、EC と店舗の両軸で顧客体験の向上と、それに伴う売上の拡大に取り組んでいます。

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「それぞれのブランドで異なるツールを使っていて、データも分散してしまっていたことも、ユニファイド コマース戦略の障壁となっていました。データを取り扱うプラットフォームを統一し、データを一元管理する必要がありました。」(岸さん)

そこで、まずは各ブランドで Google のアカウントを取るところから始めたと言う岸さん。その後、Google マーケティング プラットフォームでの来店コンバージョンの計測など、さまざまな手法でデジタル マーケティングを強化していきました。そして、その中でも特に大きな一手となったのが BigQuery の導入だったと言います。

「昨今の新規顧客の獲得が難しい情勢の中で売上を高めていくためには、さらに顧客理解を深め、広告などのアウトプットに活かしていくことが必要です。そう考えた時、それまで積み上げてきた Google マーケティング プラットフォームでの取り組みを活かしてデータを管理・活用できる BigQuery 導入は必然でした。」(岸さん)

同社で広告配信ロジックの構築と運用を担当する竹山さんは、その効果について次のように語ってくださいました。

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「2018 年 10 月から BigQuery を使ってデータを統合し始め、翌 2019 年度には特定の 3  ブランドを対象に広告配信を最適化することに挑戦しています。具体的にはロイヤルユーザーの近似に対してアプローチするなどといった手法を実施。結果、広告経由の売上が前期比 242% アップという成果を実現することができました。」(竹山さん)

そして 2020 年、こうした取り組みをさらに次のステージへと押し上げ、データ分析や広告に活用するターゲット抽出作業の属人化を防ぎ、標準的にターゲティングに活用するために機械学習の導入を決意。社内に不足していた AI の知見を補うため、Google Cloud からの推薦を受け、当時まだ発足したばかりの D.Table株式会社とタッグを組むことになりました。

「この際、ゴールに設定したのが、最終的には AI 活用を内製化できるようにすること。TSI グループが持つ幅広いブランドのお客さまに対し、適切にアプローチしていくためには、いわゆる “代理店に丸投げ” ではダメ。ある程度の知見と技術は社内で持っておかないと、正しい施策を迅速に打つことができず、今後の時代に置いていかれるという危機感がずっとありました。そんな中、D.Table さんに内製化を前提とした提案をいただき、お力を貸していただくことになりました。」(岸さん)

ここで D.Table が提案したのが同社の基幹サービスである『Cloud & Marketing  Booster』シリーズのうち、機械学習活用に特化した『ML Booster』。同社の経験豊富なエンジニア、スペシャリストが Google Cloud を用いたデータの基盤の構築から Google マーケティング プラットフォームでのマーケティング活用までを一気通貫でコンサルティング、トレーニングしてくれるというものです。

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「サービス全体のステップを細かく説明すると、まずキックオフから始まり、ML 勉強会、現状の把握を経て、実際にモデル構築を行うハンズオン、それを元にした広告配信、サイト出し分けなどのアクション、そして効果検証、振り返りという流れになります。今回の TSI グループの取り組みでは、広告配信で利用する Google Cloud の ML サービスに BigQuery ML を採用。Google にはほかにも多くの ML サービスがあり、それ以外にも Python を使ってやるという選択肢もありましたが、モデル構築の流れを肌感覚で掴んでいただくには、すでに活用している BigQuery のテーブルデータを使って、標準 SQL クエリで機械学習モデルを作成、実行できる BigQuery ML が最も敷居が低いと考えました。」(服部さん)

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「実際の機械学習モデル構築にあたっては、どういう指標を使って、どういうモデルで、どういう変数を含めて作っていくかを TSIホールディングスの皆さまとディスカッションし、初回は LTV(Life Time Value = 顧客生涯価値)を目的変数とすることにしました。この際、D.Table からは SQL のサンプルの提供であったり、より機械学習モデルの精度を向上させるために、どういったアプローチで取り組んでいくべきかのアドバイスなども行っています。」(小林さん)

「それまでも BigQuery ML は利用していたのですが、独学では機械学習の詳細を理解することが難しく、良いモデルがなかなか作れずにいました。今回の取り組みでは、EC の購買データやサイトの行動データといった説明変数を増減させていくにあたり見るべき部分など、検索してもなかなか出てこない機械学習の勘所を丁寧にフォローしてくださったのが本当にありがたかったですね。SQL に関しても、どう書けば効率的なのかなど、着実に理解しながら学ぶことができました。」(竹山さん)

最初のモデル構築にかかった時間は、完成後の精査も含めておよそ 1 か月強。COVID-19 禍で対面でのやり取りが難しい中、Google Meet などのコラボレーション ツールを使うことで、フルリモートでのプロジェクトでしたが、極めてスムーズに開発することができたそうです。

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ユニファイド コマース戦略には Google Cloud のプロダクトが欠かせない

なお、今回の取り組みでは、作成した機械学習モデルの効果を検証するため、LTV が高いユーザーと低いユーザーのセグメントを作って、広告配信の効果を比較・測定しています。

「我々が機械学習でやりたかったのは、累積売上が高くなりそうなお客さまを抽出して、そこに効果的な広告を配信していくこと。2021 年 1 月に約 2 週間ほど広告配信を行ったのですが、売上目標比 119%、広告の費用対効果を示す ROAS(Return On Advertising Spend)目標比 120% という結果がでました。短期間のテストなので、今後も観測が必要だと思いますが、良い結果が得られたのではないかと考えています。今回は LTV を目的変数として実施したのですが、次は目的変数を例えば購入回数に変えてみたり、違うブランドでやってみたり、D.Table さんとのハンズオンで学んだことを元にいろいろ試していくつもりです。」(竹山さん)

さらにその先は広告以外の部分でも機械学習を活用していきたいと語る竹山さん。

「店舗と EC、CRM の購買データ、アプリのデータ、オウンドメディアからのデータなどをどんどん活用してお客さまとのタッチポイントを増やしていく必要があると思っています。これらのデータをしっかり管理し、適切なアウトプットをしてお客さまの体験価値向上に繋げていきたいです。」(竹山さん)

もちろん『ML Booster』における学びも、今回の成果を受けてさらにステップアップしていくそうです。

「今回の取り組みでは BigQuery ML を利用しましたが、今後は、Cloud Auto ML を使うことも考えていきたいですね。精度の高いモデルを自動的に作ってくれる Cloud Auto ML なら、より簡単により高精度なモデルを作れるのではないかという期待があります。」(小林さん)

「さらにその先では、Recommendations AI なども使って、EC サイトに訪れるお客さまがもっと買いたくなるとか、買って満足するような環境を作っていきたいなと考えています。やりたいこと、やれることはたくさんあるので、TSI の皆さんとディスカッションしながら今後も続けていければと思っています。」(服部さん)

「私たちが掲げているユニファイド コマース戦略とはわかりやすく言えば、お客さまとのタッチポイントをデジタル化していこうというもの。それらのデータを BigQuery に格納して、しっかり使えるような形にすることで、店舗での購買体験の質が上がっていきます。Google Cloud には、お客さまをそうしたジャーニーに引き込み、そこで良質な体験をしていただくためのベース、エンジンになってもらえることを期待しています。機械学習以外にも、アウトプットに使えるものは何でも取り入れていきたいと考えているので、これからもベストなものをどんどんご提供・ご提案いただきたいですね。」(岸さん)


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株式会社TSIホールディングス

2011 年、老舗アパレル企業の株式会社サンエー・インターナショナルと、株式会社東京スタイルが経営統合する形で設立。国内外に 50 を超える幅広いブランド ポートフォリオを誇る。現在は大規模なグループ再編を実施中で、2021 年 3 月 1 日に関連会社 14 社を統合して事業持株会社「株式会社TSI」を発足。

インタビュイー

株式会社TSI

・デジタルビジネス Div 

 ユニファイドプラットフォーム Dept 長 岸 武洋 氏

・デジタルビジネス Div 

 デジタルマーケティング Dept デジタルAD Section 長 竹山 健司 氏


D.Table株式会社

(Google Cloud パートナー)

インタビュイー

・コンサルタント 服部 和磨 氏

・コンサルタント 小林 昂平 氏


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