キャリアデザインセンター: データ分析とシステム運用を Google Cloud に移行し、コロナ禍に対応したオンライン就活イベントの開催に成功

Google Cloud Japan Team
株式会社キャリアデザインセンター(以下、CDC)は、「質の高い人材の流動化を通して、企業の活性化と日本経済の発展に寄与する」という企業ミッションに基づき、企業が望む採用と求職者が望む就職の相互実現に向けたビジネスを展開。特に学生向けサービスの「type就活」では、コロナ禍による就活状況の変化に対応すべく、データ分析基盤を Google Cloud に移行し、オンラインでの就活イベントを成功させています。このプロジェクトについて、CDC ならびに移行をサポートした株式会社システムサポート(以下、システムサポート)の担当者に話を伺いました。
利用しているサービス:
AlloyDB, Compute Engine, BigQuery, Looker
利用しているソリューション:
データベースのモダナイゼーション
コロナ禍で一変した就活状況に、オンラインイベントの実施で柔軟に対応
CDC は、ビジネスプロフェッショナルを目指す学生のためのキャリア研究サイトである type就活を運営。就職情報誌「type就活プレミアム・マガジン」、さらにはコンサルティング ファームや総合商社、金融、IT 業界などのリーディング カンパニーが集結する完全予約制の就活イベント「type就活フェア プレミアム・キャリア」などを通じ、人材を求める企業と就職先を探す学生に出会いの場を提供しています。取引企業にはナショナル クライアントが多く、文系のさまざまな職種だけでなく理系のエンジニア採用、女性の採用にも強みを持っているのが特長です。
現在の就活市場は、大卒の学生の応募者が全体で 45 万人程度いるといわれていますが、そのうち約 3 万人が type就活に登録しています。CDC 就活マーケット事業部 事業部長の森 雅基氏は、同社のサービスが根強い支持を集めてきた理由を次のように説明しています。


「type就活は毎年、学生の方から高く評価していただいてきました。また学生の質が高く、企業が普段リーチできない学生を採用できるということで企業からの引き合いも多く、毎年の売上の 7 割以上がリピート企業からになっています。確かに企業が求める学生のタイプと、学生が就職を希望する企業が異なっていることもあります。この橋渡しをするため、CDC では就活イベントで実際に取得したデータを活用し、各学生の個性や趣向、関心にマッチした企業情報の提供や、企業が求める人材像にあった学生を採用するための情報分析などを行っていました。」
しかし森氏によれば、このような状況はコロナ禍により一変しました。
「コロナ禍以前は、2,000 名規模の就活イベントを開催していましたが、2020 年 4 月に緊急事態宣言が発令されたことにより、対面形式の就活イベントが開催できなくなりました。就職活動では、知っている企業、有名な企業に学生の目が向きます。リアルな就活イベントであれば、知らない企業との出会いも生まれますが、オンラインではこうしたマッチングが困難でした。そこで、これまでの就活イベントで提供してきた価値を、オンラインで提供する取り組みが始まりました。」
とはいえ、どのように就活イベントをオンライン化するかは決まっていませんでした。森氏は、Google Cloud プレミア パートナーで、2016 年に CDC がクラウド型 RDB システムを構築したときからサポートを提供してきたシステムサポートとともに検討を開始。サービス内容やシステム構成、運用方法などを 1 か月弱の短期間で一気に見直し、ウェブ会議のクラウド サービスを利用する方針を決定します。システムサポート東京支社 BSG 事業部 事業部長の山本 真也氏は、こう振り返ります。
「当時はまだウェブ会議の事例やノウハウも少ないのも実情でした。最終的にウェブ会議サービスを使って、オンラインで企業の人事担当者がセッションに登場し、リアルタイムに情報を提供する仕組みを構築しましたが、これは CDC がパイオニアだと思います。CDC のメンバーとのシステム開発に関する打ち合わせも、ウェブ会議で行いました。」
一方、リアル就活イベントに参加を決めていた企業に対し、オンラインでの開催になったことを説明することも急務になりましたが、むしろ森氏は明るい希望を感じたと語ります。
「イベントの形態が大きく変わるので約 40 社に説明に行ったのですが、ほとんどの企業から『オンライン就活イベントでも参加する』と言ってもらえました。またオンライン就活イベントなら参加したいという新たな企業も登場し、トータルでは 40 社以上の企業が参加してくれることになりました。」
データ分析の充実のために BigQuery や Looker を活用した ADDPLAT の導入を決定
こうして CDC は 2020 年 5 月後半には、早くも最初のオンライン就活イベントを開催。コロナ禍への対応という、大きなハードルを乗り越えることに成功しました。また、就活イベントのオンライン化によりウェブの情報が徐々に蓄積されたことを受け、2020 年末より新たなデータ分析基盤の導入を検討し始めます。そこで採用されたのが、システムサポートのデータ分析基盤「ADDPLAT」でした。森氏は、BigQuery や Looker などの Google Cloud 製品を活用した ADDPLAT には、技術的な魅力も多かったと説明します。
「オンライン就活イベントの開催では、大量の情報を取り込んで活用することが必要です。ADDPLAT は BigQuery や Looker を利用できるので、イベント情報と type就活データを連携しながら、ターゲット層や学生に合わせた分析が高速にできます。以前は就活イベント後のレポートを表計算ソフトで作っていましたが、ADDPLAT ではデータの取り込みから BI ツールによる可視化までをワンストップで実現できるので、業務の効率化も期待できました。」
かつてデータ分析はサイトへの登録、リアルイベントへのエントリー、メールやバナーへの反応を測定する程度にとどまっていました。しかし ADDPLAT を採用したことで、オンライン就活イベントへの参加者情報や各セッションの視聴データ、Q&A、フィードバックなど、より多くの情報をリンクさせることが可能になり、次のイベントへの誘導はもちろん、企業と就活生のマッチングや就活エージェントのサポート品質の向上も図れるようになりました。
クラウド型 RDB を AlloyDB に移行してオンライン就活イベントのトラフィック急増に対応
その後、オンライン就活イベントは着実に浸透。リアル就活イベントの参加者は、多いときでも 2,000 人~3,000 人でしたが、オンライン化することにより参加者は 5,000 人を超えるレベルまで増加しました。


ただし大量のデータがウェブから収集されるため、クラウド型 RDB システムのインスタンスを増やしてもトラフィックの急増に対応できなくなり、システムが不安定になるという新たな課題が浮上。この問題を解決するために、CDC は 2023 年 5 月よりシステムサポートの協力を得ながら Alloy DB を導入し、約 1 年かけて基盤システム全体を Google Cloud に移行します。
山本氏は、基盤システム全体を Google Cloud へ移行した背景を、運用の観点から語っています。
「当初は、ここまで大量なトラフィックを想定していませんでした。そのため大規模なオンライン就活イベントを開催すると、サイトにつながりにくかったり、サイトが落ちたりするというトラブルが増えてきました。そこでクラウド型の RDB を、フルマネージドのデータベース サービスである AlloyDB に移行しつつ、クラウド環境全体を Google Cloud に移行し、Compute Engine のオートスケーラーを活用することを提案しました。ADDPLAT の導入とともに、これも非常に実り多い取り組みだったと感じています。」




Google Cloud を軸とし、AlloyDB と ADDPLAT を連携した新しいデータ分析基盤は、顕著な効果をもたらしました。
まず旧データ分析基盤との親和性も高い構成になっているため、システム移行はアプリケーションの大幅な改修なしに実施されています。次にサーバーとデータベースに関しては、オートスケール機能を採用することで、大規模なオンライン就活イベントが開催されたときの負荷にも対応できるようになり、運用の安定化やランニング コストの削減にもつながりました。これに並行してデータベースを AlloyDB に移行した結果、ADDPLAT が利用している BigQuery とも、従来以上にシームレスなデータ連携が可能になりました。山本氏は具体的な成果を挙げています。
「オンライン就活イベント参加者数は前年比 110% と増えていますが、サーバーの CPU 負荷は最大で旧データ分析基盤の 2 分の 1 の 25%、データベースの CPU 負荷は最大で旧データ分析基盤の 4 分の 1 の 15% にまで減少しています。AlloyDB のパフォーマンスを Query Insights で可視化した結果、すべてのクエリが移行前より高速になっており、最大 90% の時間短縮を実現したクエリもありました。」
森氏は、データ分析基盤を Google Cloud に移行したことで安心感が高まっただけでなく、データ分析の枠組み自体が広がりつつあると語ります。
「オンライン就活イベントでトラフィックが急増してもシステムが止まらなくなったのは、やはり大きいですね。イベント参加者からすれば当たり前のことでしょうが、運営側にとっては最も重要なポイントですし、Google Cloud にはシステムが止まらないという安心感があります。CDC では(データの抽出・変換・書き出しを行う)ETL ツールを使い、type就活以外のシステムからデータを取り込むことも考えています。今後は従来とは違う分野でのデータ活用も期待できます。」
Gemini の活用でさらなる運用の効率化と生産性の向上、サービスの充実を目指す
CDC ではすでに新機軸に取り組んでいます。これまで type就活では、担当者がエントリー状況などを見ながら手作業でメール配信を行っていたため、希望の就職先ではない分野のメールを配信してしまう、あるいは同じ文面のメールを一斉配信するといった課題もありました。そこで森氏が着目したのが Google の生成 AI テクノロジー、Gemini です。
「これまでのメール配信は、『読まれればラッキー、読まれなければ無駄』というような状況に近かったので、AI でしっかりデータを分析し、効率的に情報発信を行いたいと考えていました。そこで Gemini が登場したので使わない手はないと思いました。CDC では Gemini を活用しながら、データを使いやすく加工する仕組みの構築も検討しています。」
type就活に登録されている学生の情報や就活イベントのエントリー情報、エージェント部門が持っている各種データ、企業側の求人データなどを統合し、「この学生にはこの企業が合う」といった情報を活用すれば、より精度の高い学生と企業のマッチングが可能になります。またアンケート結果の集計や可視化、パーソナライズ メール配信の自動化なども進めていけば、運用業務のさらなる効率化や業務生産性の向上も期待できます。
コロナ禍への対応、オンライン就活イベントの順調な運営、そして Gemini の導入によるデータ分析の充実。CDC は Google Cloud を活用しながら、多くの成果を上げてきました。「お客様の『ひとつ上の採用』の成功に貢献する」というミッションを追求していくために、最後に森氏は今後のビジョンを語ってくれました。
「データ分析基盤を移行することができ、Gemini も導入しましたので、将来に向けては type就活の顧客体験の向上や価値創造のための機能追加も予定しています。Google Cloud のソリューションは可用性も拡張性も高く、生成 AI のような先進技術も利用できる。継続的にサポートを受けながら業務効率化を一層進め、学生にとっても企業にとっても理想的な就活を実現させていきたいと考えています。」


株式会社キャリアデザインセンター
1993 年の創業以来、「いい仕事・いい人生」という企業理念に基づき、キャリア志向の高いエンジニアや営業、女性を主軸にした事業を展開。キャリア転職の専門情報サイト「type」「女の転職type」などの運営、転職フェアの開催、人材紹介事業、新卒マーケット事業、就職活動を情報誌・イベント・情報サイト・人材紹介で支援する「type就活」サービス、IT 業界に特化した人材派遣サービス「type IT派遣」、ウェブマガジン「エンジニア type」「Woman type」「20's type」の企画、編集、運営などを通じて、「type」ブランドによるひとつ上のキャリア転職マーケットの確立を目指しています。
株式会社システムサポート
(Google Cloud パートナー)
「社会への貢献、顧客サービス向上、価値の共有」という企業理念に基づき、クラウドインテグレーション事業、システムインテグレーション事業、アウトソーシング事業、プロダクト事業を、東京、名古屋、大阪、金沢の事業所で展開。2020 年に Google Cloud Partner Advantage プログラムにおいてプレミア パートナー認定を取得。Google Cloud や Google Workspace の導入支援をはじめ、Google Cloud のサービスを活用し、データの取り込みから BI ツールによる可視化まで、データ分析をワンストップで実現する次世代データ分析基盤「ADDPLAT」を提供しています。
インタビュイー(左から)
・株式会社キャリアデザインセンター
就活マーケット事業部 事業部長 森 雅基 氏
・株式会社システムサポート
東京支社 BSG 事業部 事業部長 山本 真也 氏
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