顧客事例

Synspective Inc.:衛星データの活用基盤を Google Cloud で構築。宇宙規模で社会貢献を目指す先進的企業のソリューション実現を支援

Synspective

サスティナブル デベロップメントをミッションとする Synspective Inc.(以下、Synspective)では、いかに地球や人類が持続的に成長できるか、それに対しいかに衛星が貢献できるかを提案しています。衛星を開発し、打ち上げ、管理して、衛星のデータを活用する。そのためのプラットフォーム構築に、Google Cloud を採用。衛星事業にクラウドを採用した背景などについて、システム開発の責任者、および 4 名のエンジニアに話を伺いました。

利用している Google Cloud サービス:Google Kubernetes EngineDatastoreBigQueryCloud EndpointsPub/Subオペレーション(旧称 Stackdriver)Cloud Build

コンテナ化を想定し Kubernetes を効果的に活用できる Google Cloud を採用

2020 年 12 月、政府が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の成果を応用した Synspective の小型 SAR 衛星「StriX-α(ストリクス・アルファ)」が打ち上げられました。SAR 衛星は、マイクロ波を使って地表面を観測する衛星。光学衛星に搭載されたカメラでは撮影できない夜間や雲の下の地表も観測できるのが SAR 衛星の特長です。

「光学衛星は、すでに大手ディストリビュータなどが参入していますが、小型SAR 衛星は黎明期で、非常にポテンシャルの高い市場です」と話すのは、ソリューション開発部 ゼネラルマネージャーの今泉さんです。Synspective では、2023 年までに 6 基の衛星を打ち上げ、2020年代後半までにトータル 30 基を打ち上げる計画です。

また、衛星データを活用するためのソリューションも提供。2020 年 9 月には、ミリ単位で地盤の変動を把握できる Land Displacement Monitoring をリリースしています。
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「衛星の知識がなくても、地盤の変動情報を、ブラウザを使ってビジュアルに活用できます。ソリューションは、今後もどんどん増やしていく計画です。」(今泉さん)

ソリューション開発、および衛星を管理する地上システム開発のプラットフォームとして、Google Cloud が採用されています。採用理由を、地上システム開発部 ゼネラルマネージャーの鈴木さんは、「システム開発では、コンテナ化を想定していたので、Kubernetes をもっとも効果的に活用できる Google Cloud を採用しました。」と話します。

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「衛星データは、1 回の観測で数百メガから数ギガ程度になり、それを日々蓄積しなくてはなりません。将来的には、30 基の衛星からの膨大なデータを処理することが必要です。そのためスケーラビリティが非常に重要で、オンプレミスでは運用維持コストがかかり過ぎることも Google Cloud を採用した理由でした。」(鈴木さん)

テクノロジーを使って社会貢献できることが開発のモチベーション

Google Cloud の採用にあたり高いハードルだったのは、衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモセン法)の順守でした。Synspective が衛星リモセン法の調整を始めたのは 2018 年末ですが、当時の開発プラットフォームはオンプレミスが主流で、クラウドを使った事例がありませんでした。

「リモセン法の対象となる衛星データには機密情報も含まれます。リモセン法で規定された安全管理措置に相当するセキュリティ対策がなされていることを示す必要がありました。そこで Google Cloud が、いかに国際基準に基づいた強固なセキュリティで守られているかを約半年かけて説明することで、クラウドが利用できるように調整してきました。」(鈴木さん)

システム開発が始まったのは 2018 年 10 月より。まずは研究開発や設計を行い、2019 年 3 月より開発を開始。開発されたシステムは、Data as a Service(DaaS)をベースとした地上システムと、Solution as a Service(SaaS)、および Platform as a Service(PaaS)をベースとしたソリューションシステムで構成されています。

地上システムは、衛星の運用や衛星データを提供するためのシステムです。顧客から受けた観測オーダーを元に衛星の運用計画を立て、それを衛星に伝えます。衛星はその指示に従って観測を行い、データを地上に送信します。受け取ったデータに画像処理を行った画像ファイルをPaaS 内のデータレイクに蓄積していきます。蓄積されたデータは、ソリューション側の SaaS で抽出し、付加情報の解析をして、アプリケーションとして顧客に提供されます。

地上システムは、Google Kubernetes Engine (GKE) をベースに必要な機能をコンポーネント化し、必要最小限の範囲で細分化してマイクロサービス化しています。

地上システム開発部の畑さんは、「セキュリティの制限が厳しいインフラ構築でしたが、Google Cloud の設定は容易でした。たとえば、ファイアウォールをタグベースで柔軟に設定し、トライ&エラーを繰り返すことができました。コンテナ化もクラスタ設定も簡単で、ワーカーノードやマスターノードの切り替えも期待どおりでした」と話します。 

データベースには、Cloud Datastore を利用し、時系列データの解析が頻繁にあるものは、BigQuery を使っています。サービス間の通信は、同期処理は Cloud Endpoints でサービスアカウント認証による通信を行い、非同期の処理、時間のかかる処理は Pub/Sub でメッセージキューベースの通信を行っています。

一方、ソリューションシステムは、衛星データをダウンリンクして、データサイエンティストが作成した機械学習モデルを使って機械学習を実行し、データベースや地理情報システム(GIS)にパブリッシュして、フロント側のアプリケーションとして提供します。ソリューションシステムも、GKE をベースに構築されています。

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ソリューション開発部プラットフォームマネージャーの Maruf さんは、「2 ~ 4 時間かかるジョブや何万件のジョブの並列実行、テラバイト級のクラスタやノードのサイズ、コストなどもすべて GKE で管理できるので本当に便利です。機械学習の利用も簡単で、衛星からダウンリンクした画像データを高度に解析できます。」と話します。

トレンドカバーソリューションは、Kubernetes のジョブや Pub/Sub、Datastore などで構築。ログ管理は、オペレーション を使っています。CI/CD は、GitHub と Cloud Build で管理。GIS には、BigQuery GIS などの新しいサービスも利用しています。PaaS は、Ingress で内部システムに公開されています。

ソリューション開発部 プラットフォームエンジニアの吉海さんは、「急激なデータ量の増減にも、オートスケールは問題ないスピードです。Ingresもかなり便利でした。Google Cloud を使い、衛星データを活用したサービスを世界中の人に提供できること、社会貢献できることが開発のモチベーションです。本当に貴重な経験です。」と話します。

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今後の取り組みを鈴木さんは、次のように語ります。「これまでのシステム開発は、30 基の衛星を管理できる拡張性を見据えて、1 基の衛星を効率的に管理する最小限の機能で、素早く開発することを目指してきました。今後、衛星が増えるにつれ、地上システムを改善したり、データを顧客に迅速にデリバリしたりするためには、Google Cloud のマネージドサービスが不可欠であり、技術的なサポートに期待しています。」

今泉さんは、「今後は、衛星データの価値をいかに社会に啓蒙していくかが重要で、Google Cloud とのコラボレーションによる社会貢献にもトライしたいと思っています。」と話しています。


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(写真左より)

Synspective Inc.

・ソリューション開発部 プラットフォーム マネージャー Abdullah Al Maruf 氏

・地上システム開発部 ゼネラルマネージャー 鈴木 豊 氏

・ソリューション開発部 プラットフォームテックリード Khairul Ashraff Mohamad Fuad 氏

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(写真左より)

Synspective Inc.

・ソリューション開発部 ゼネラルマネージャー 今泉 友之 氏

・ソリューション開発部 プラットフォームエンジニア 吉海 将太 氏

・地上システム開発部 畑 宏和 氏

Synspective Inc.

衛星からの新たな情報によるイノベーションで持続可能な未来を作ることを目指し、2018 年に創業。衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を展開。内閣府「ImPACT」プログラムの成果を活用した独自の小型 SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星により、高頻度観測を可能にする衛星群を構築し、衛星から得られるデータの販売、および衛星データを利用した政府・企業向けのソリューションを提供。2020 年に第 1 世代の実証衛星1号機「StriX-α(ストリクス・アルファ)」の打上げに成功。その後、順調に運用を開始し、2021年2月8日に初画像の取得に成功しました。民間の小型SAR衛星(100kg級)の画像取得は日本初。2021 年には、実証衛星2号機「StriX-β(ストリクス・ベータ)」を打ち上げる計画。


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