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顧客事例

radiko: BigQuery と Looker で DMP を刷新、大幅なコスト削減と業務効率化、850 万ユーザーのデータ活用を推進

2025年12月19日
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Google Cloud Japan Team

アプリやウェブでラジオやポッドキャストが聴ける音声配信サービス「radiko」では、ユーザー数が順調に伸びる一方で、 DMP(データ マネジメント プラットフォーム)の処理能力やコストに課題を抱えていました。その解決のために導入されたのが、Google Cloud の BigQuery と Looker です。株式会社radiko(以下、radiko) のデータ統括チームと、移行作業をサポートした DATUM STUDIO株式会社(以下、DATUM STUDIO)の担当者に、新時代のデータ活用について話を伺いました。

利用しているサービス:
BigQuery, Cloud Composer, Looker など

従来のシステムでは限界に達していた処理能力とランニング コスト

もともとラジオの難聴取エリアの解消のために始まった radiko は、今では場所・時間・デバイスにとらわれない自由な音声配信サービスとして多くのリスナーを獲得。約 850 万人の MAU(月間アクティブ ユーザー数)を誇る、一大プラットフォームへと成長しました。これを受けて、近年 radiko ではユーザーの性別、年齢などのセグメント情報や、聴取ログなどの膨大なデータを DMP で収集、分析、活用してきました。しかし 2020 年代に入り、従来の DMP での作業に支障が生じ始めました。当時の事情を、同社のデータ統括チームのリーダー、長谷川 史織 氏は次のように説明します。

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「それまで radiko の MAU は 700 万人 ほどだったんですが、コロナ禍の巣ごもり需要をきっかけに跳ね上がり、現在は 850 万人前後で推移しています。radiko ではユーザーごとに 1 分間に 1 回のログをとっているため、月間の総レコード数が 100 億にも上ります。私たちデータ統括チームでは、そのデータの収集から、分析、放送局や広告会社への送信まで、さまざまな作業に DMP を活用しています。しかし既存のサービスでは、容量的にも処理速度の面でも、負荷に耐えきれない状況になっていました。また、データ量の増加に応じて契約額も上がり、コスト的にも見合わなくなってしまったのです。」

2023 年、長谷川氏らは新たな DMP への移行を検討し始めます。その際に候補としてあがったのが Google Cloud の BigQuery でした。検証作業の際には、他社の製品、そして従来のシステムの継続も含め、3 つの選択肢を対象に詳細な比較を実施。BigQuery では、従来よりデータ処理の時間が大幅に短縮できることがわかりましたが、長谷川氏は他にも魅力があったと振り返ります。

「BigQuery を選んだ理由のひとつは、生成 AI や機械学習の活用を想定したとき、最も将来性が感じられたことです。もうひとつは、radiko のアプリ開発チームが、すでに Google Cloud を利用していたことです。私たちの部門でも BigQuery を導入すれば、社内でシームレスな連携ができるという期待が持てました。最後はやはりコスト パフォーマンスです。 BigQuery は従量課金制ですが、処理の仕方を工夫すれば、コストをかなり削減できることがわかりました。それらを総合的に考えると、やはり Google Cloud への移行がベストの選択肢でした。」(長谷川氏)

Google Cloud と BigQuery への移行を機に DMP 基盤を一新

検証から実際の移行まで、技術面をサポートしたのが、企業のデータ活用支援で定評のある DATUM STUDIO です。同社のデータエンジニア、信末 竜空 氏は、radiko のデータ統括チームに協力し、BigQuery を中心とした新しい基盤の構築を支援しました。

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「新たな基盤では、Cloud Storage をデータの受け渡し口、BigQuery をデータ ウェアハウスとしてデータの蓄積・集計を行い、その結果をダッシュボードや外部システム、連携企業へ出力しています。これらのデータフロー全体を制御するオーケストレーション ツールとしては、Cloud Composer を利用しています。Cloud Composer はマネージド サービスなので、内部の動作がわからないことがありましたが、Google Cloud のサポートから具体的な提案を受けられたおかげで、効率的で安定した基盤を作ることができました。Google Cloud のツールはエンジニアやデータ サイエンティストにとって扱いやすく、将来的に継続的な改善が期待できる点も魅力だと感じています。」

移行作業において、長谷川氏と信末氏が最初に注力したのが、コスト削減の実現です。検証の初期段階では、radiko が扱う全データ量のわずか 1% を処理するだけでも、1 日あたり数十万円規模のコストがかかるという試算結果が出ましたが、そこから地道な工夫を重ねることで、目標を達成していきます。

「BigQuery の場合、膨大なデータをすべて触ってしまうと非常にコストがかかってしまいます。ただしパーティション分割テーブルを活用したり、クラスタリング キーによるクエリ高速化とスキャン削減、必要なカラムのみをセレクトするといったテクニックを使えば、コストを最適化していくことができます。そうした工夫の余地があることも BigQuery の優れた面だと思います。」(信末氏)

実質的な移行作業は約 1 年間で完了し、2025 年 5 月には BigQuery を中心とした DMP 基盤が稼働し始めます。長谷川氏によれば、この新たなシステムは、データ処理費用を約 54% 削減することを可能にしました。

「運用コストだけでなく、放送局や広告会社へデータを送る作業時間も格段に減りました。以前はデータ処理から転送完了まで 6〜7 時間かかっていたのが、BigQuery の導入後は 1〜2 時間で済むようになりました。それまで 1 日かけてやっていた作業が午前中で終わり、空いた時間で新しい仕事にチャレンジできるようになったという面でも、導入したかいがあったと感じています。」(長谷川氏)

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Looker によって迅速にフレッシュな情報を提供し、新たなデータ活用も開始

radiko ではリスナーの性別や年代、興味関心など、約 300 項目ものセグメント情報を放送局や広告会社に提供していますが、そのデータの “鮮度” も、BigQuery の採用によって大幅に向上したといいます。

「以前も性別や年代などの基本情報は毎日更新していましたが、処理能力の問題で、それ以外の深い情報の更新は 1 週間に 1 回程度が限界だったんです。しかし今では、基本情報は 30 分に 1 回更新していますし、他のデータもかなり高い頻度で更新できるようになりました。放送局さんからも、『早くデータが届くようになったので活用しやすい』というお言葉をいただいています。」(長谷川氏)

radiko では、より高度なデータ分析と可視化を実現すべく、2025 年 10 月から、BI(ビジネス インテリジェンス)ツールの Looker も活用されています。

「これまでは社内や取引先から『こんなデータがほしい』とリクエストされるたびに、データ統括チームのメンバーがクエリを書いて、データを抽出していました。Looker を使うことでクエリを書く手間が省けたうえに、その指標がどの参照元から引き出したもので、どういう意味を持つかも明確になりました。作業者によって解釈がぶれることもなくなり、生データと抽出したデータの間に一貫性が保てるようになったのです。」(長谷川氏)

さらにデータ統括チームでは社内用と放送局用に、それぞれ必要な情報を可視化したダッシュボードを構築し、運用を開始しました。

「放送局さん向けには、以前より『radiko viewer』というダッシュボードを提供して、番組制作や編成、広告営業にご利用いただいていました。なかには『もう少し詳しく分析したい』というご要望をいただく放送局もあり、そうした局向けに Looker で深掘りできるダッシュボードを個別に提供しています。」(長谷川氏)

さまざまな開発業務のサポートを経て、広告効果の分析などにも携わるようになった信末氏は、今後のデータ活用に強い意欲を見せていました。

「DMP のパフォーマンスが改善されたことで、今まで使い切れていなかったデータも活用できるようになりました。業界全体としてデータドリブンな意思決定を進めていくなかで、radiko さんは中核となれる存在だと思います。個人的にも radiko さんと一緒に、その促進に取り組んでいきたいと考えています。」(信末氏)

最後に、長谷川氏はデータの活用が切り拓く、ラジオと radiko の新たな未来について希望を語ってくれました。

「誰もがデータは貴重な資産であると認識していながら、これまではなかなか活用しきれなかったという現実がありました。しかし今は、BigQuery と Looker を駆使した新しいデータ活用のイメージがいろいろと湧いてきています。ユーザーが楽しい音声コンテンツと出会える場を提供するためにも、もっとデータの活用の幅を広げていきたいと考えています。」(長谷川氏)


 

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株式会社radiko
2010 年設立。スマートフォンやパソコンを使って、時間と場所を選ばずラジオやポッドキャストを聴くことができるサービス「radiko(ラジコ)」を運営する。ラジオの難聴取エリアの解消、リスナーの拡大、若年層への普及のためにスタートし、「タイムフリー」や「エリアフリー」「タイムフリー30」など機能を拡充。今では民放ラジオ全 99 局と、NHK(ラジオ第1・FM)が加盟するメディア プラットフォームとなっている。月間アクティブ ユーザー数は約 850 万人(2025 年 11 月時点)。

DATUM STUDIO株式会社
(Google Cloud パートナー)
2014 年設立。ビジネスにおけるデータ活用と生成 AI 活用に精通した、経験豊富なデータ エンジニア・データ サイエンティストが多数在籍するスペシャリスト集団。データ活用に関するコンサルティング、戦略立案から、分析基盤の構築・運用、データ分析、マーケティング活動までを包括的に支援する。特にデータ マイニング領域において豊富な経験・技術力を有し、データにあわせた独自のアルゴリズム構築、カスタマイズに定評がある。

インタビュイー (右から)
・株式会社radiko データ統括チーム チームリーダー 長谷川 史織 氏
・DATUM STUDIO株式会社 データエンジニアリング本部 信末 竜空 氏


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