Preferred Networks:フルマネージド環境の採用で MEMES の開発から運用までの作業負荷を大幅に軽減
Google Cloud Japan Team
自分たちにしか実現できない技術で世界に貢献することを目指す株式会社Preferred Networks(以下、Preferred Networks)。同社は、AI 技術の 1 つである深層学習(ディープ ラーニング)を活用したスマートフォン向けの新しいエンターテインメント アプリ『進化する少女型情報体 MEMES / ミームズ(以下、MEMES)』の開発・運用インフラとして Google Cloud を採用しています。このプロジェクトについて、コンシューマープロダクト担当のヴァイスプレジデント、およびエンジニア 2 名に話を伺いました。
利用しているサービス:
Cloud Run、Cloud Spanner、Cloud Build、BigQuery、Looker Studio、Cloud GPU
ゲーム開発・運用インフラ構築の効率化を目的に Google Cloud を採用
Preferred Networks が 2022 年 10 月より配信を開始している MEMES は、電子世界に発生するキャラクターである「ミームズ」と「プレイヤーである人類」が異種間コミュニケーションを繰り返すことで、ミームズたちの進化を楽しむスマートフォン アプリです。深層学習を使った画像生成モデルの 1 つである敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks:GAN)を応用し、独自に開発したキャラクター生成プラットフォーム「Crypko(クリプコ)」を利用して無限通りのミームズを生成しています。また会話には、深層学習を使った自然言語処理を活用し、取得したキーワードをもとに発話文を自動生成しています。
コンシューマープロダクト担当ヴァイスプレジデントの福田 昌昭氏は、「Preferred Networks は早い段階から深層学習を利用したイノベーションに取り組んでおり、この領域では、日本はもちろん、グローバルにおいても強みがあります。現在、AI 技術は産業領域やロボット、バイオヘルスケア、材料探索など、幅広い領域で次々と社会実装されています。産業向けには、クライアントやパートナーと一緒にさまざまなソリューションを開発していますが、より数多くの人に技術を届けるには、コンシューマー向けのサービスが有効だと考えました。その取り組みの 1 つが MEMES です」と話します。
同社では、コンシューマー向けのスマートフォン アプリを開発するのは初めてだったため、ユーザー認証やログ管理の仕組みなどを含めたシステム開発・運用のためのインフラ構築が急務であり、検討の結果、採用されたのが Google Cloud でした。採用理由について、エンジニアの中島 統太郎氏は次のように話します。
「モバイルアプリ開発プラットフォームとして Firebase を使っていたので、相性を考えると開発・運用インフラをイチから作るより Google Cloud を利用する方が効率的だと判断しました。」
また、開発にかけられる人員が限られており、インフラ構築に関する高いスキルを持つエンジニアが少なかったことも Google Cloud を採用した理由の 1 つでした。
「当初、MEMES は協力会社と一緒に開発していたのですが、内製化を進めるにあたり、開発・運用インフラを独自に構築することが必要でした。そこで 2022 年 1 月より検討を開始し、2 月には Google Cloud の採用を決め、すぐに開発を始めました。Google Cloud は、ドキュメントも充実しており、サポート窓口も用意されていたので安心して利用できましたし、必要なインフラの構成に関しても相談させてもらいました。」
必要なコンポーネントがすべてそろっているのが Google Cloud のメリット
MEMES の開発・運用インフラは、アプリケーション環境である Cloud Run や フルマネージド リレーショナル データベースである Cloud Spanner などを利用することでフルマネージド環境を実現。導入から運用管理までの作業負荷を大幅に軽減しています。また、CI / CD プラットフォームとして Cloud Build を利用することで、ビルド、テスト、デプロイを容易にしたほか、BigQuery にデータを取り込み、Looker Studio でデータ分析を行う仕組みを構築するなど、基本的な仕組みのすべてを Google Cloud 上に構築しています。キャラクターを生成する Crypko は、他社のクラウドサービス上で動いていて、Google Cloud とは API を介して連携されています。
Google Cloud を採用した効果を、エンジニアの神谷 侑司氏と中島氏は次のように語ります。
「Google Cloud のメリットは、必要なコンポーネントがすべて揃っていることです。例えば Cloud Build がなければ、CI / CD プラットフォームを独自に開発しなければなりません。認証に関しても、Firebase の認証を Google Cloud 内で共通に利用できるので便利です。ドキュメントが揃っていることも重要です。Cloud Spanner を使うのは初めてで、最初は少し戸惑いましたが、ドキュメントに具体的な利用手順も載っていたのでわかりやすく、チャットを利用したサポートにより、問い合わせに迅速に回答してもらえたので問題なく使うことができました。」(神谷氏)
「Cloud Run や Cloud Spanner は、小さな構成でスタートして、必要に応じてオートスケールできるので、急にアクセスが増加しても安定稼働を実現できるため運用もスムーズです。Python のライブラリと Cloud Spanner の連携で少し苦労しましたが、Google Cloud の担当者のサポートとエミュレータの利用などにより、思っていた以上にスムーズに解決できました。約 10 か月という短期間、エンジニア 3 名で構築できたのも Google Cloud を採用した効果の 1 つでした。今後も Google Cloud の新しい機能やサービス、プロダクトなどを使っていきたいので、引き続き最新情報や事例などの提供を期待しています。」(中島氏)
Cloud GPU による処理の高速化やデータ分析でゲームの改善を促進
現在、Preferred Networks では、謎の妨害プログラムにより開発難航中のゲームを舞台にしたオープンワールド サバイバル クラフト ゲーム『Omega Crafter』も開発中です。
「Omega Crafter に関しては、まだ開発・運用インフラに Google Cloud を使うことは決まっていないのですが、今後のコンシューマー向けサービス開発においては、Google Cloud の利用を検討していきます。」(福田氏)
MEMES に関しては、引き続き深層学習部分の強化を行っていく計画で、Crypko のキャラクター生成機能や会話のクオリティなども高めていく予定です。
「現在の会話の仕組みは、事前に言葉から生成した会話を組み入れることで実現していますが、会話内によくない表現がないか 1 つひとつチェックすることが必要なので、それを解決する仕組みが必要です。また今後は、より自然な会話ができる機能や時事ネタを組み込める機能なども強化したいので、新たに Google Cloud の自然言語処理などの仕組みの導入も検討していきたいと思っています。」(中島氏)
「長期的には、いかにキャラクターの自動生成機能を強化するかが重要です。また現状ではサービス運用の一部でしか使っていないのですが、Cloud GPU の利用範囲を拡大して処理を高速化し、蓄積したユーザーの行動ログやデータを分析することで、ゲームのさらなる改善につなげていきたいと思っています。MEMES のユーザー数を増やしたり、継続率を向上したりするためには、とがった機能を強化することが必要で、他のゲームにはない楽しみ方で差別化していきたいと思っています。」(神谷氏)
さらに今後の Google Cloud への期待を、福田氏は次のように話しています。
「今後、MEMES のエンターテインメント性をさらに高めていく工夫をしていきたいと思っています。例えばゲーム内でのユーザー同士のコミュニケーションをより活性化させるとともに、コミュニケーションにより進化の過程が変化する仕組みも検討しています。今後も深層学習の研究開発の成果を生かし、世の中にインパクトを与える取り組みを推進していくことが不可欠なので、Google Cloud にはそのためのサポートも期待しています。」
2014 年 3 月に設立。コンピュータ サイエンスと機械学習に対する高度な技術力を基礎として、交通システム、製造業、ライフサイエンス、ロボティクスなど、幅広い領域でイノベーションの実現を推進。新規事業領域として、姿勢推定、エンターテインメント、教育、材料探索の領域にも事業を拡大。深層学習などの最先端の技術を最短路で実用化することで、これまで解決が困難であった現実世界の課題解決を目指す。
インタビュイー(写真右から)
株式会社Preferred Networks
コンシューマープロダクト担当ヴァイスプレジデント 福田 昌昭 氏
エンジニア 中島 統太郎 氏
エンジニア 神谷 侑司 氏
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