株式会社Flatt の導入事例: 東大発ベンチャーが Google Cloud Platform を選んだ理由は、高性能、ハイコストパフォーマンス、そして何より “楽しい” こと
Google Cloud Japan Team
皆さんは「ライブコマース」という言葉をご存じでしょうか? あらかじめ用意されたテキストや写真、動画などではなく、ライブ映像で商品の魅力を伝え、買う側もそれに対してリアルタイムに質問やコメントを送ることができる、これまでになかった新しいインターネット通販のかたちです。今回は、これをいち早く国内市場に導入した新サービス「PinQul」を運営する株式会社Flatt の井手さんにお話をお伺いしました。
■ 株式会社Flatt
代表取締役 井手 康貴氏
■ 利用している Google Cloud Platform サービス
Google App Engine、Google Compute Engine、Google Cloud Storage、BigQueryなど
■株式会社Flatt
ライブ配信を用いて、インフルエンサーの考案した商品を販売していく「ライブコマース」プラットフォームの開発・運営を行う、2017 年 5 月 23 日に設立されたばかりのスタートアップ。現役東大生が代表取締役を務めるほか、社員のほとんどが現役学生ということでも話題に。現在の従業員数は 9 名。
「ライブコマース」という新分野への挑戦
株式会社Flatt(フラット)は、昨今勃興しつつある「ライブコマース」と呼ばれる領域に、独自のアイデアで切り込む、今春に設立されたばかりの新興企業。現役の東大生を中心とした、いわゆる「学生スタートアップ」で、最年長の社員ですら 24 歳という極めて若い会社です。そんな若者たちが目を付けた「ライブコマース」とは一体どういうものなのでしょうか? 同社 CEO の井手 康貴さんに聞いてみました。「これまでの EC サイトはテキストと写真をベースにしていましたが、近年は EC に限らず、SNS など、あらゆる分野で体験がリッチになっていますよね。写真の次に動画が出てきて、今はライブ(生中継)といった具合です。ライブコマースとは文字通り、EC とライブを組み合わせたもので、近年、中国を中心に大きな盛り上がりを見せています。私は、中国に遊びに行ったときに現地の友人に教えてもらったのですが、ネット通販とリアル店舗の良いところ取りのような体験ができ、とても面白いと感じました。」(井手さん)
そこで井手さんは、日本市場にライブコマースを持ち込むべく今年 5 月に Flatt を設立。今年 10 月には、スマートフォン向けアプリ「PinQul(ピンクル)」を正式リリースします。もちろん、これは、中国で人気のサービスをそのまま日本に持ち込んだような単純なものではありません。
「PinQul 最大の特長は、ライブを行っているのが、SNS などで人気のインフルエンサーであること、そして売るモノを自分たちで直接作っていること。例えば、インフルエンサーの考えたオリジナルの服を、僕らが工場に依頼して製造・販売するということをやっています。そういう意味では D to C(Direct to Consumer)と言えるかもしれませんね。そのほか、インフルエンサーの個人的な所有物をフリーマーケット的に販売したり、既存の商品も取り扱ったりしているのですが、PinQul を象徴しているのはオリジナルプロダクトの製造・販売だと思っています。」(井手さん)
ここで注目してほしいのが、ライブを盛り上げる「インフルエンサー」という存在。かつてはインフルエンサーといえば、テレビで活躍している芸能人や、雑誌モデルのことを示していましたが、PinQul では、SNS 時代に登場してきた「マイクロインフルエンサー」を主役に抜擢。「フォロワー数こそ、数千から数万人という規模なのですが、その中では数百万人にフォローされているようなテレビタレントに負けないほど強く支持されているのが彼らの特長なんです。」と井手さんは語ります。
国内インフルエンサーの傾向から、現在はアパレル業界を中心に事業を展開しているという PinQul ですが、その本質はあくまで「プラットフォーム」。アパレルメーカーとしての成長ではなく、業界に囚われない、ライブコマースの “場” としての存在感を高めていきたいと考えているそうです。実際、すでに、料理の得意なカリスマ主婦的なインフルエンサーも登場しているのだとか。
現在のユーザー数は正式オープン後、2 か月弱で 6000 アカウント程。参加しているインフルエンサーはおよそ 40 名とのこと。「規模的にはスモール B to C というレベルなのですが、高校生のインフルエンサーが手作りした 3000 円のアクセサリー 30 個が 1 分 30 秒で完売してしまうなど、ファンの熱意、勢いのようなものはひしひしと感じています。売れるアイテムの傾向のようなものはだんだんつかめてきたので、今後はこれを拡大していきたいですね」(井手さん)。Web サービス最先端の地である中国で人気の「ライブコマース」が、日本でも定着していくか、今後の展開にも注目です。
これから創るのであれば Google Cloud Platform(GCP) が最も最適な選択肢
そんな PinQul のサービス開発は、2017 年 5 月の Flatt 設立後、約 1 か月の構想期間を経て、6 月頃からスタート。開始時点から 3 名のエンジニアが携わっていましたが、そのうち 2 名(井手さん含む)は現役の学生ということで、井手さん曰く、「実質的には 1 人 + 0.5 人 × 2、みたいな感じでした(笑)。」とのこと。「当初から分かってはいたのですが、ライブ配信プラットフォーム作りのハードルは高かったですね。動画を大量のユーザーが再生する事によって発生する膨大なトラフィックをどう捌くか、大量に押される「いいね」をどうリアルタイムに処理していくかには、とても悩まされました。それに、僕らは原則的に皆、学生。本分の方をおろそかにするわけにはいきません。ですので、Google App Engine(GAE)にはとても助けられましたね。フルマネージドで使えますし、オートスケールもものすごく速いので、インフラ周りは全て Google に委ねて、僕らは開発に専念。β 版まで約 2 か月でこぎ着けることができました。インフラコストが当初想定していた金額の 3 分の 1 で済んでいる点も助かっています。」(井手さん)
ちなみに井手さんと Google の出会いは、Flatt 設立前にインターンとして勤務していたとある急成長スタートアップ。「当時、学生起業家の間では、無料枠を大きく設定していた大手クラウドプラットフォームが人気だったのですが、僕はその会社での経験から、Google の先進性を評価しました。個人的な肌感覚では、2015 年末ごろからどんどん良くなっていき、特に最近はこれ以外ないというくらいの雰囲気になってきています。世界的な人気サービスが GCP を使っているというのがその証拠。PinQul では、GAE 以外にも、BigQuery や Firebase なども使っており、もう手放せません。そして、何より使っていて楽しいのが気に入っています。ここに来て、日本語ドキュメントも充実してきましたしね。」(井手さん)
その上で、今後は GAE で構築したシステムを、段階的に Google Kubernetes Engine(GKE) に移行していくことを検討しているという井手さん。現在はまだ、GAE で問題なく動作しているものの、将来的にこまかなチューニングなどをしていかねば立ちゆかなくなる規模になっていくことを考え、マイクロサービス化などを考えているとのことです。
「ただ、現在はそれよりも機械学習を駆使した、ユーザー嗜好の分析の方に注力しています。ライブサービスはその性質上、検索との相性がとても悪いため、ユーザーの好みそうな番組をこちらから提示してあげる必要があるのです。そのため、例えば Instagram のアカウントでログインしていただき、その利用状況を学習・解析することで、その人が好みそうな番組を表示するといった仕組みの開発を進めています。機械学習は、僕ら若い世代の得意とする新しい分野。こうした先進技術を活用していくことで、PinQul をより良いサービスへと進化させていきたいと考えています。」(井手さん)
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