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顧客事例

dida が数学と ML で販売プロセスを自動化した方法

2024年7月5日
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Dr. Lorenz Richter

CTO & Managing director, dida

David Berscheid

Project Lead, dida

Gemini 1.5 モデル をお試しください。

Vertex AI からアクセスできる、Google のもっとも先進的なマルチモーダル モデルです。

試す

※この投稿は米国時間 2024 年 6 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

複雑な自動化に対する企業の需要が高まるにつれ、組織が ML ソリューションに求めるものと、既製のブラックボックス ソリューションで提供できるものとのギャップも拡大しています。dida は、中規模から大規模の企業向けのカスタム AI ソリューションの開発を専門とする会社です。数学と物理学における学術的バックグラウンドを持ち高度な専門知識を備えた当社のチームは、複雑な問題に対して抽象的なアプローチを取り、お客様向けに洗練された、現実に即した AI ソリューションを構築することを得意としています。当社のソリューションはモジュール型の設計であるため、企業がプロセスの各ステップで何が起こっているかを明確に把握できる、説明可能な仕様となっています。

未来のエネルギーと過去のボトルネック

当社は、Google Cloud を利用して Enpal の太陽光パネル販売プロセスの一部を自動化するカスタム AI ソリューションを構築するにあたって、数学と ML のスキルを独自に組み合わせることで大きな成果を生み出しました。ドイツで環境のサステナビリティ ソリューションに対する需要が高まるなか、Enpal はドイツ初のグリーンテック ユニコーンへと急速な成長を遂げていました。この成長を維持するために、Enpal は太陽光パネルの見込み顧客に対して、より効率的に見積もりを生成する手段を必要としていました。このプロセスには、営業担当者が顧客の屋根の衛星画像をデスクトップ アプリケーションに入力し、屋根の角度を推定し、屋根瓦の数を手作業で数えてサイズを判断するという作業が含まれていました。営業担当者は、この推定サイズを使用してその顧客に必要な太陽光パネルの数を計算してから、屋根の上の太陽光パネルを示すモックアップを作成します。

このプロセスをすべて完了するのに営業担当者 1 人あたり 120 分かかっており、ビジネスの成長に合わせて規模を拡大するのは困難な状況でした。また、屋根瓦の数を手作業で数えることや屋根の角度の推定が不正確なことで、ミスも発生しやすく、費用やエネルギー生産の予測が不正確になっていました。Enpal は、プロセスを自動化して非効率的な作業の削減と精度の向上を図る、カスタム AI ソリューションの開発を求めていました。AI の専門知識と数学的な問題解決能力を組み合わせる必要性を認識した Enpal が選んだのが当社でした。

堅牢な ML モデルを効率的にトレーニング

dida では、プラットフォームに依存せずに個々のお客様のご希望に対応していますが、プラットフォームを選択する機会があるときは Google Cloud でソリューションを構築しています。AI デベロッパー向けのツールセットを幅広く取り揃えた包括的なプラットフォームである Google Cloud は、使いやすいうえに、使用した分だけの料金を支払うため、費用効率も優れています。Enpal のソリューションの開発においては、プロセスを一連のより小さなステップに分割して、モジュール型の説明可能なソリューションを構築できるようにしました。プロセスのほぼすべてのステップで Google Cloud ソリューションを利用しました。

最初のステップは、堅牢な ML モデルを構築するために、十分なデータ、つまり屋根の画像を収集することでした。Google Maps Platform API を使用して、あらゆる形状やサイズの屋根の画像を収集し、モデルをトレーニングしました。収集した画像はすべて Cloud Storage に保存しましたが、自動的にストレージ クラスが移行されるため費用を管理できました。

これらの画像を使用して、コンセプトが機能することを証明するための最初のベースライン モデルを構築しました。これには、屋根とその他の特徴の区別や、煙突や天窓などの障害物があって太陽光パネルを配置できない場所の把握をモデルに教えることも含まれていました。モデルの開発にあたり、Cloud Build CI / CD パイプラインを使用してテストを実施し、パラメータを調整して機能的なワークモデルを構築しました。Cloud Build を使用することで、継続的な開発サイクルを維持してプロセス効率を高めることができ、わずか 4 週間でベースライン モデルを構築できました。

実世界の問題に対して抽象的なアプローチを取る

次に、屋根の南面の角度を正確に計算するための適切な公式を見つけるのに時間を割く必要がありました。このために、当社のチームは数学的な問題解決スキルを発揮して、射影幾何学を応用し、見込み顧客から提供された屋根の写真に基づいて正しい角度を計算できるモデルを構築しました。この数学的手法と ML モデルを組み合わせて、屋根の面積を計算するプロセスを自動化しました。さらに、2 つのステップ、つまり、必要な太陽光パネルの数を計算するステップと、屋根への配置を可視化するステップを追加しました。

ML モデルのトレーニング プロセス全体を通して Compute Engine を使用し、仮想マシンに GPU を追加してワークロードを高速化し、高可用性を実現しました。Compute Engine を使用することで、必要に応じて使用量のスケールアップとスケールダウンを柔軟にすばやく行えるため、必要なコンピューティング能力に対してのみ料金を支払うだけで済みました。モデルをファインチューニングする際には、TensorBoard を使用して個々のトレーニング プロセスをモニタリングし、モデルのパフォーマンスの評価に役立てました。

より速く、より正確な販売プロセスを自動化により実現

開発プロセスは全体で 6 か月かかり、最終的に Enpal は屋根のサイズと必要なパネル数をすばやく簡単に評価するカスタムの自動化ソリューションを手に入れました。このソリューションはモジュール化されているため、Enpal は動作状況を明確に把握して、屋根の正確な寸法などの詳細を手動で調整しながら、可能な限り正確な結果を得ることができます。屋根の検出精度の測定には、IoUIntersection over Union)と呼ばれるパフォーマンス指標を使用しました。モデルのトレーニング、最適化、後処理の後、93% IoU を達成しました。

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当社のソリューションと、これを構築した Google Cloud の効率性のおかげで、かつては Enpal の営業担当者が 120 分かけて手作業で行っていたプロセスが、今ではわずか 15 分の自動プロセスで完了できるようになりました。つまり、87.5% の短縮です。このソフトウェアを開発した当初、Enpal でこれを使用していたのは 13 人でした。4 年経った今、これを使用する Enpal の従業員は 150 人に増え、それぞれが時間を 87.5% 節約して、その時間を他のより専門的な業務に充てられるようになりました。さらに、モデルの精度が向上したことで、顧客が受け取る見積もりの誤りが減り、販売プロセスが迅速化され、カスタマー エクスペリエンスが向上しました。

未来に向けてビジネスを変革するパートナーシップ

当社にカスタム AI ソリューションを依頼する企業が増えるにつれ、MLOps の実行に Vertex AI を使用することが多くなってきました。これを使用すれば、モデルの維持、最適化、トレーニングをすべて 1 か所で行えます。また、Google Cloud の公式パートナーとして最新の AI テクノロジーを利用できる立場にある当社は、大規模言語モデル(LLM)を使用してソリューションに生成 AI を組み込むことにますます重点を置くようになりました。こうしたものをすべて含む、Google Cloud の包括的なデベロッパー エクスペリエンスを活用して、当社は今後もさらに多くの組織が適切な AI ソリューションを構築して効率を高め、ビジネスを変革できるよう支援し続けることができます。

-didaCTO 兼マネージング ディレクター、Lorenz Richter 博士
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dida、プロジェクト リード、David Berscheid
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