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顧客事例

中外製薬: AI などを活用し、創薬プロセス加速に向けた機械学習やデータ分析、アプリ開発のためにクラウド化へ移行

2023年8月23日
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Google Cloud Japan Team

経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX 銘柄」に 3 年連続で選定され、DX 銘柄 2023 において「DX プラチナ企業 2023-2025」に選定されるなど、製薬業界における DX のリーディング カンパニーとしても知られる中外製薬株式会社(以下、中外製薬)。同社が今、全力を挙げて取り組んでいるのが創薬など、R&D 領域のデジタル化です。そこに Google Cloud がどのように活用されているか、同社デジタル・IT 部門を統括する志済 聡子上席執行役員と、現場の皆様にお話を伺いました。

利用しているサービス:
Vertex AI PipelinesBigQuery , Cloud Run など

利用しているソリューション:
Application Modernization

現場のプロフェッショナルたちに選ばれた Google Cloud

かつて、新薬を生み出すには、研究員の手による膨大なトライ アンド エラーを経ていました。しかし、このやり方では 1 つの薬を生み出すのに 10~15 年もの期間を費やし、その時間と膨大なコストが製薬会社にとって大きなリスクとなっていました。そうしたなか、急激に加速しているのが AI による創薬プロセスの革新です。

「中外製薬だけでなく、今や多くの製薬会社が抗体医薬品を人工的に作り出すために機械学習の技術を活用しています。抗体はアミノ酸の配列によって設計されるのですが、無数にある組み合わせのなかから、最も効果的なものを見つけ出すような処理は機械学習との相性がとても良いんです。」

そう説明してくれたのは、上席執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長としてデジタルトランスフォーメーションユニット(DXU)を率いる志済 聡子氏。志済氏は全社的なデジタル化を強力に推進し(DX 銘柄選出もそうした成果の 1 つ)、R&D 基盤についても大きく手を入れていきました。

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「AI などを活用した研究開発のスピードアップと速度向上には、パワフルなソリューションが必要です。そこで 2019 年、私たちは創薬などの R&D 領域をデジタル化していく流れのなかで、インフラストラクチャとしての IT 基盤をクラウドへ移行しました。それまでのオンプレミスを中心としたやり方では何かを始めるまでに数か月という時間と、数千万円という膨大なコストがかかってしまい、スピーディーな立ち上げができません。ですから、これは必然と言えるでしょう。その後、デジタル化、クラウド化を進めていくなかで獲得してきたデータ サイエンティストを含む専門性の高いプロフェッショナルたちから、さらなる革新を促していくために Google Cloud を使いたいと提言され、2022 年から次世代マルチクラウド型 全社共通クラウド基盤 CCI(Chugai Cloud Infrastructure)の一部に Google Cloud を追加する試みをスタートしています。」(志済氏)

なお CCI とは、中外製薬のクラウド移行のなかで個別最適で作られてきたさまざまなインフラ基盤を標準化しようというもの。同社が 2020 年に掲げた「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」の中核を担う極めて重要な存在となります。

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「CCI は段階的に構築を進めており、2023 年 4 月にはフェーズ 1 としてメインとなるクラウド プラットフォームの統合基盤をサービスインしました。現在はフェーズ 2 として Google Cloud を含めたマルチクラウド化をはじめとする機能や運用効率向上など、インフラ基盤としての強化に取り組んでいるところです。Google Cloud には他のクラウド プラットフォームと比べて機械学習や AI 分野のサービス、分析基盤領域についてアドバンテージがあると考えており、これらの機能を CCI のサービスとして利用者にタイムリーに提供していけることを目指しています。」(DXU デジタル戦略推進部 アジャイル開発推進グループ 南部 藤太朗氏)

そうした Google Cloud の強みこそが、今、中外製薬の創薬現場で活躍するプロフェッショナルたちが求めているものなのだと、同社データ サイエンティストとして、機械学習を使用した推論システムの開発を担当する DXU デジタル戦略推進部 データサイエンスグループ 徳山 健斗氏は、その期待を語ります。

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「現在はまだ本番導入には至っていないのですが、将来的には 創薬に用いる AI を開発・運用するうえで Google Cloud を活用していきたいと考えています。まずは Google のグループ企業である DeepMind Technologies が提供しているタンパク質立体構造予測ソフトウェア AlphaFold2 を自社で使えるようにしていく予定です。AlphaFold2 は、Google Cloud が公式に環境を提供しているため、スムーズに導入できるのが助かります。ただ、AlphaFold2 は極めて高精度にタンパク質構造を配列情報から推定できるものの CPU・GPU 共に計算量が大きく、計算リソースの調達や実装面で課題があります。そこで我々は、Vertex AI Pipelines を活用したスケーラブルな AlphaFold2 によるタンパク質構造推定システムの開発を進めています。まだ開発途中ではありますが、社内の誰もがアクセスでき、1 日で 1,000 個ぐらいは平気で推論できるようなシステム化を目指しています。」(徳山氏)

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<システム構成図>

「なお、現在は標準的な機械学習の運用がなく、プロジェクトごとに個別に対応する形となっているのですが、今後は標準的な ML Ops を整備し、データやモデル管理の効率化や、システム組み込みの高速化を図っていく予定です。継続的にモデルを改善していくことでユーザーに提供していく価値を高めていきたいですね。」(DXU デジタル戦略推進部 アジャイル開発推進グループ シニアマネージャー 川畑 亮介氏)

機械学習のほか、データ分析やアプリ開発に BigQuery の活用を

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もちろん、Google Cloud を創薬領域だけではなく、AI プラットフォームの構築と並行してデータ分析やアプリケーション開発にも活用する体制作りを始めているとのこと。

「データ分析の領域では、BigQuery の活用を検討中です。とりあえずデータを入れておけば分析できるのが BigQuery の良いところです。AI を活用した創薬のほかにも、Web のアクセス解析やアプリケーション開発など、幅広く展開していけるのではないかと期待しています。」(川畑氏)

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「当社には、クラウド環境でアプリケーション開発を内製化する tech工房という組織があるのですが、そこでも Google Cloud の本格的な活用を見据えて、学習や技術検証を進めています。その際、スキル チャレンジ プログラムや、より実践的な TAP(Tech Acceleration Program)などによって、ベーシックなスキルを机上と実践の両面で習得することができました。今後、データ サイエンティストが Google Cloud で実装した機械学習モデルを API 化し、より多くのユーザーが自由に使えるようにしたり、システム間連携の処理を Cloud Run や Cloud Functions で実装する機会がありそうです。また、tech工房ではモバイルアプリ開発も行うので、mBaaS(mobile Backend as a Service)のデファクト スタンダードの 1 つである Firebase の活用にも興味があります。」(DXU デジタル戦略推進部 アジャイル開発推進グループ 小山 健一氏)

2023 年 10 月を目標にフェーズ 2 の一部機能の早期提供を行い、Google Cloud の本格活用を始めるという中外製薬。まだ本格稼働前ということもあり「満足度についてはこれからわかってくること」と前置きしつつ、志済氏は Google Cloud への期待を次のように語ります。

「中外製薬は、Google Cloud を単なるインフラ提供事業者だとは思っていません。今後も環境の提供だけにとどまらず、世界の市場で培った知見やノウハウをどんどん吸収させていきたいと思っています。Google Cloud を使うことで我々のチームメンバーがさらにステップアップし、そんな人材を育成する場としても期待しています。」


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中外製薬株式会社
1925 年に創業し、まもなく 100 周年を迎える製薬企業。現在は「医療用医薬品」に特化しており、がん領域の医薬品および抗体医薬品で国内シェア No.1(※)を誇る。2002 年にスイスの大手製薬企業ロシュ社と戦略的アライアンスを開始、ロシュ・グループの一員として革新性の高い新薬の研究開発に取り組んでいる。従業員数は 7,771 名(連結、2022 年 12 月 31 日現在)。

※中外製薬株式会社ホームページより https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/overview/whatkind/index.html

インタビュイー(写真右から)
・デジタルトランスフォーメーションユニット デジタル戦略推進部
 アジャイル開発推進グループ 南部 藤太朗 氏
・デジタルトランスフォーメーションユニット デジタル戦略推進部
 アジャイル開発推進グループ シニアマネージャー 川畑 亮介 氏
・上席執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長
 志済 聡子 氏
・デジタルトランスフォーメーションユニット デジタル戦略推進部
 アジャイル開発推進グループ 小山 健一 氏
・デジタルトランスフォーメーションユニット デジタル戦略推進部
 データサイエンスグループ 徳山 健斗 氏


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