横浜銀行:次世代マーケティング プラットフォームを Google Cloud のテクノロジーをフル活用して構築、パーソナライズされた顧客体験を提供
Google Cloud Japan Team
神奈川県を地盤とし、2020 年 12 月に創立 100 周年を迎えた株式会社横浜銀行(以下、横浜銀行)では、これからの 100 年に向けて新しい金融企業への変革を推進しています。その中で、デジタル時代の One to One マーケティングの実現を目的として、Google Cloud を核としたマーケティング プラットフォームを構築しました。この構築プロジェクトに携わったメンバーの皆さんに話を伺いました。
利用しているサービス:
BigQuery、Cloud Composer、Cloud Interconnect、Cloud Storage
利用しているソリューション:
アド テクノロジーとしての Google 、クラウド テクノロジーとしての Google Cloud 、 One Google の価値と効率を評価
地域に根ざす地方銀行では、従来より物理的な支店は顧客との重要な接点でした。しかし近年では、生活者行動のデジタルシフトや COVID-19 による生活様式の変化によって、銀行営業やマーケティングに今までにない急速な変化が求められています。顧客の顔が見えにくいデジタルの世界では、データドリブンに顧客を理解し、パーソナライズされた体験を提供することが必要となります。そこで横浜銀行では、自行の持つファーストパーティ データ(銀行が直接得たデータ)の拡充・統合・分析をし、より精緻に顧客ニーズを理解して迅速にマーケティング施策に反映できる、次世代のマーケティング プラットフォームの構築に挑戦しました。
横浜銀行 執行役員 デジタル戦略部長の田坂氏は次のように語ります。
「 お客様の基本的な属性データや取引データはどこの企業でも保有していると思いますが、例えばお客様の属性データ・取引データに加え、行動データを統合・分析し、顧客理解の高度化や迅速なマーケティング施策への反映といったアクションに繋げるまでのデータ活用ができている例は少ないと考えています。デジタルの世界では、お客様の触れる情報も多種多様で、時にはノイジーでもあります。このような中でも、お客様のニーズ・関心に合わせて最適なご提案をしていくことで、他行に対する差別化ができると考えています。日々変わりゆくデジタル世界の中でもお客様との意味のある繋がりを構築・維持していくために、次世代マーケティング プラットフォームの構築に挑戦しました。」
次世代マーケティング プラットフォームの構築にあたり、横浜銀行ではさまざまなツールの比較検討を実施しました。その結果、オンラインでのデータ収集・施策活用に強みを持つ統合型ソリューションの Google マーケティング プラットフォーム(以下、GMP)と、GMP からデータ連携が容易で、高速かつコスト パフォーマンスが高いデータ分析基盤である BigQuery を採用しました。データ収集から加工、分析、そしてアクションに反映するまでの一連のパイプラインには Google のプロダクトをフル活用しています。この選定理由について、横浜銀行 デジタル戦略部の安部氏は次のように説明します。
「マーケティング ソリューションには、ユーザーのオンライン行動を把握して、顧客体験の改善が期待できる GMP を選びました。分析基盤に関しては、GMP とのデータ連携の容易性もさることながら、速度が段違いに速く、コストメリットがあることから、BigQuery 一択だと感じました。」
本プラットフォームを採用した施策の効果に関して、横浜銀行 デジタル戦略部 関口氏は次のように補足します。
「このプラットフォーム上の分析では、行動データと属性データ・取引データを用いてお客様のニーズを定量的に推定し、それに基づいた施策を実施しています。仮説検証と改善を繰り返し、現在では想定通りの効果を発揮することができています。このプラットフォームを用いた個人ローンの営業アプローチ施策は従来より成約率が高く、契約 CPA(Cost Per Acquisition)も約半分になりました。このプラットフォームのスキームに載せる金融商品やサービスの幅を広げていくことで、より高い投資対効果が期待できると考えています。」
専門領域に強みを持つパートナーと共に、継続的な改善を実現
次世代マーケティング プラットフォームの構築プロジェクトでは、Google Cloud のフルマネージド サービスを活用することで、要件定義や仕様の策定から実装までを約 9 か月で行いました。本プロジェクトには、金融業務と金融システムに高い専門性を有し、金融機関のデジタル変革に強みを持つ株式会社エヌ・ティ・ティ・データのグループの一員である エヌ・ティ・ティ・データ・フォース株式会社(以下、NTTデータフォース) と、GMP と Google Cloud を組み合わせて企業のマーケティング データの一元管理・活用を得意とする株式会社電通デジタル(以下、電通デジタル) が支援しました。
今回の次世代マーケティング プラットフォームは、オンプレミスとクラウドをまたぐシステム横断的な基盤であり、プロジェクトの成功には既存システム群と Google Cloud との接続が必要でした。この部分の構成について、NTTデータフォース ソリューション開発本部 伊集院氏は、「さまざまなネットワーク要件を考慮した上で、Cloud Interconnect を利用してオンプレミス環境と Google Cloud をプライベート回線で接続することによってセキュアな専用線接続を実現しています」と説明します。
加えて、横浜銀行 デジタル戦略部 井上氏はこう続けます。
「セキュアで安全なプラットフォーム実現のために、今回のマーケティング プラットフォームでは、後ほどお話する NTTデータさんの A-gate®(※)(以下、A-gate) を採用しています。A-gate を利用することで、厳しいセキュリティ要件もクリアすることができました。」
また、次世代マーケティング プラットフォームでは、データに基づいて意思決定を行い、その結果に基づきマーケティング施策を実現できるデータ パイプラインの構築が肝となります。データ パイプラインはデータの収集、処理、蓄積、利活用を担う部分で構成され、それらを Google Cloud のマネージド サービスを利用して構築しています。
横浜銀行の関口氏は次のように説明します。
「マネージド サービスを利用することで、短期間でデータ パイプラインを構築することができました。データの収集部分については、Cloud Storage をオンプレミスからのデータ受け渡し場所として利用することで、さまざまな形式やサイズのデータの受け取りを可能としました。また、顧客の Web 上での行動データを収集するために、Google アナリティクスおよび Firebase から BigQuery にデータを連携しています。Google アナリティクス と BigQuery は相性がよく、簡単にデータを連携することができました。処理、蓄積部分では、Cloud Composer を利用して必要なデータ処理を施し、その結果を BigQuery へ蓄積する構成としています。顧客のニーズをリアルタイムに近い形で捉えるマーケティング施策の実現には、複雑なデータ処理および分析が必要ですが、BigQuery の提供する分析力に加え、Cloud Composer を利用することで複雑なデータ処理を行うジョブ管理を簡易化でき、それが開発期間の短縮に繋がりました。」
また、さらなるデータ利活用の高度化について、横浜銀行 井上氏は次のように語ります。
「BigQuery での分析データに基づいて顧客のニーズの推定を行います。推定したニーズに沿ったマーケティング施策を実現するため、Cloud Composer を利用してマーケティング施策実施を担う外部ツールへ分析結果を連携しています。Google Cloud のマネージド サービスを利用することで、データの収集、処理、蓄積、分析にとどまらず、分析結果をアクションまで繋げるデータ パイプラインを短期間で構築できました。今後は、まだ顕在化していないニーズの推定に向けて、Google Cloud の機械学習サービスを利用したマーケティング施策の高度化にもチャレンジしたいと考えています。」
電通デジタル CRM ソリューション事業部 佐藤氏は、今回の次世代マーケティング プラットフォームについて、「構築して終わりではなく、継続的に利活用して PDCA をまわしていくことが成功の鍵になります」と語り、パートナーとして継続的に支援していく意志を示しています。
また、電通デジタル アカウントマネジメント部 滝口氏は、成果をあげるための重要なポイントとして、「プロジェクトに関わる全員が、自社の工数削減や業務効率よりも、"お客様のニーズに寄り添った体験を提供するためにはどのような仕組みを構築すれば良いのか? "という点を最優先に考えています。お客様の相談相手になるという目的を共通認識として持っているからこそ、成果につながっていると感じています」と語っています。
金融機関におけるデジタル テクノロジーの活用
金融機関がパブリック クラウドの活用を推進していくには、金融機関特有のセキュリティ要件を満たしていく必要があります。横浜銀行では、この要件を満たすために株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTTデータ)のソリューションである A-gate を活用しています。
金融機関におけるパブリック クラウドの活用における A-gate の優位性について、NTTデータフォース ソリューション開発本部 吉田氏 は次のように話します。「A-gate では、パブリック クラウドを安心・安全に活用していくための要素が整備されています。A-gate を利用することにより、スピーディなパブリック クラウドの導入が可能となります。」
横浜銀行では外部企業と協力し、適材適所に外部サービスやリソースを活用して新しい顧客体験の提供を推進するとともに、自行組織内におけるデジタル人材の育成や採用に対しても積極的に取り組んでいます。
横浜銀行の安部氏は、「今回のプロジェクトを通じて、デジタルマーケティングチームのデジタルスキルや広告運用スキルの醸成もできました」と手応えを語ります。
さらに「当行は、時勢の見極め、必要なスキルや知識の獲得・内製化に努め、多種多様な人材が働ける職場を目指しています。今回もベンダーに任せっきりにするのではなく、さまざまな課題に対して当行自身でも積極的に取り組み、二人三脚で進めることに注力しました。NTTデータフォースさんや電通デジタルさんのサポートはもちろんのこと、当行向けに勉強会やトレーニングを開催してくれるなど、Google の広告事業やクラウド事業の担当エンジニアの方にも積極的に支援していただきました」と話します。
地域とともに、地域金融機関とともに
横浜銀行 田坂氏は、「驚異的なスピードで進むデジタル化をはじめ、社会構造が大きく変化している現在は、地域金融機関のあり方や経営・営業手法のあり方が問われていると考えています。当行が持っているような課題感は、他の地域金融機関でも同じように感じているはずです。当行自身が挑戦を続けていくとともに、そこでの経験を他行様へも展開し、"地銀共助" も念頭に入れて取り組んでいきたいです」と話します。
また横浜銀行 安部氏は、データ プラットフォームの将来について次のように話しています。
「今後は、データを増やしていくとともに、機械学習などの技術を活用してデータ分析の次元や適用ユースケースを次のステップに進め、さらなる顧客体験の革新を推進して参ります。Google、Google Cloud には、当行自身のデジタル人材育成や地域経済発展に向けたスキーム構築などといった幅広い面での支援も期待しています。」
※「A-gate」は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データの登録商標です。
2020 年 12 月に設立 100 周年を迎えた横浜銀行では、"人生 100 年時代" を生きる幅広い世代のお客さまと真摯に向き合い、その想い、願いを感じ取りながら最適な金融サービスを提供しています。
インタビュイー
・執行役員 デジタル戦略部長 田坂 勇介 氏
・デジタル戦略部 マーケティング戦略室 安部 宏樹 氏
・デジタル戦略部 マーケティング戦略室 関口 国男 氏
・デジタル戦略部 マーケティング戦略室 井上 拓哉 氏
金融機関の変革パートナーとして、銀行業務ノウハウを活かし、アプリケーションソフトの開発、ネットワークを含む基盤構築やシステムの運用まで、プロジェクトマネジメント力を発揮して確かな技術で高品質なサービスを提供しています。
インタビュイー
・ソリューション開発本部 伊集院 由和 氏
・ソリューション開発本部 吉田 赳 氏
(Google Cloud パートナー)
インタビュイー
・アカウントマネジメント部 滝口 絵美 氏
・CRM ソリューション事業部 佐藤 晃 氏
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