アサヒグループホールディングス:GKE、Apigee、GCVE などを活用し、100 年企業のアーキテクチャーを着実にモダナイズ
Google Cloud Japan Team
「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」をミッションに、グローバルかつローカルな "グローカル" ビジネスを展開するアサヒグループホールディングス株式会社(以下、アサヒグループ)。そんな同社が今、全社を挙げて取り組んでいる業務システムのモダナイズに Google Cloud がどのように貢献できているのか?このプロジェクトを推進するアサヒグループジャパン株式会社 DX 統括部の清水博マネージャーに話を伺いました。
利用しているサービス:
BigQuery、Google Kubernetes Engine、Apigee API 管理、Google Cloud VMware Engine
利用しているソリューション:
Google Cloud との出会いで拓かれたモダナイズへの道筋
「2014 年に私が DX 統括部(当時はシステム統括部)に転籍してきた当初、アサヒグループには会社のミッションを遂行するための環境やツールが整備されておらず、通常業務に支障が出ているという状況でした。IT 部門はまさにコストセンター(業務にかかったコストだけが集計される部門)と化していて、日々、ツールのアップデートなどに追い立てられているような状態だったのです。」
と、清水氏は当時を振り返ります。しかし、グループとして業務システムをモダナイズ化する必要性は理解していたものの、すでに古いシステム上で長年回っているシステムを止めることはできず、開発リソースにも限りがあります。それからの数年間、清水氏はいかに従来の資産を延命しつつ、新たな環境に移行していくのかを考え続けることになりました。
「そうした中でも、我々がアサヒグループの DNA 的に理解していたのが、他社の真似をして SaaS を導入しただけでは勝てないということ。"勝てるアサヒ" になるためには、アサヒグループ固有の切り口で、アサヒグループにしかできないビジネスモデルを、いかに新しい、モダンな環境で作るかというチャレンジが必要でした。Google Cloud に出会ったのはそうした模索をしている中でのことです。」
その出会いの場となったのが、2017 年 6 月に行われた「Google Cloud Next '17 in Tokyo」。ここで BigQuery のパフォーマンスに惚れ込んだ清水氏は、BigQuery を自社分析基盤に導入することを決意します。
「膨大な量の実データを見たこともないようなスピードで処理しているデモを見て、こんなふうにデータを回せたらビジネスがもっと面白くなると確信しました。当時の我々の分析基盤には、アイデアを具体的にデータで表現するにあたってタイムラグが大きすぎるという課題があったのですが、これを BigQuery の導入で解決できると考えたのです。」
また、アサヒグループではこのタイミングでそれまで自社で運用し、トラブルの多さに悩まされていた自社データセンターを、GKE(Google Kubernetes Engine)に切り替えていく取り組みもスタートしています。
「私は一企業で担保できるインフラの可用性には限界があると思っています。そうした中、ゲーム業界や EC 業界など、秒単位のシステム停止が致命傷となる先進的な業界ではとっくにコンテナ技術を活用し始めているわけです。であれば、我々がそれを使わない手はありませんよね。かなり大きな挑戦ではありましたが、導入して約 3 年が経過した現在もインフラ レイヤーでの障害は 1 度も起きておらず、インフラ運用のトラブルがビジネスに与える影響を極小化できています。」
こうした成果からクラウド活用への手応えを感じ始めたアサヒグループは、この流れをさらに加速させるべく、2017 年後半から 2018 年にかけて Apigee も導入。これには大きく 2 つの狙いがあったと清水氏は言います。
「アサヒグループにはさまざまなシステムのハブとなる、データの連係を管理する仕組みがあるのですが、それが可用性におけるボトルネックになっている面もありました。これを疎結合という概念のもとに解決したいというのが第 1 の狙い。そしてもう 1 つが API を駆使したデータのやり取りでグループ企業や取引先を繋いでいくモダンなアーキテクチャの実現です。Apigee は、こうした従来の課題解決と将来に向けたビジョンの実現を両立できるプロダクトということで採用を決めました。」
旧システムを Google Cloud VMware Engine に一時的にマイグレーション
清水氏のリーダーシップの下、着実にモダナイズを進めているアサヒグループ。同社では 2027 年を一つの節目と捉え、そこに向けて段階的にレガシーなシステムを過去の延長線上ではないモダンなアーキテクチャに生まれ変わらせていくとしています。
そして、ここで大きな役割を果たしているのが、Google Cloud 上で VMware vSphere 環境を実現するソリューション、GCVE(Google Cloud VMware Engine)です。その導入にいたった背景について、清水氏は次のように説明します。
「ここまで、アサヒグループがいかにしてシステムをモダンなアーキテクチャに寄せていこうとしているのかというお話をさせていただきましたが、実際にそのための計画を立てていく中で、我々が保有している何百というシステムすべてを一度にモダナイズするのが非現実的だということがはっきりしてきました。古いシステムはそれぞれ OS やアプリケーションのバージョンが異なり、さらに長期間メンテナンスがされていないものも多く、一様なモダナイズができないのです。各事業会社にとって生命線となるようなシステムは利用者も多く、予算も付くのでモダナイズしやすいのですが、そうではない、利用者が少ないわりに廃止することはできないというシステムも多く、これらをどうやってモダナイズしていくのかを考えねばなりません。そもそも、そこにコストをかけてまでやる必要があるのかという疑問もありました。」
もしやるにしても圧倒的に時間が足りないと言う清水氏。
「しかし、だからといってシステムをそのままコンテナに移植するような拙速な移行だけはしたくありません。そこで、モダナイズの見通しが立っていないシステムのうち、仮想マシンが比較的新しく、長期に渡って稼働可能なものについて GCVE を一時的な移動先としてモダナイズまでの猶予を創出するという決断をしました。ここで重要なのは、これまでデータセンター内の VMware vSphere 環境でやっていたことを、何も変えずにクラウド上でも実現できることです。これこそが GCVE の大きなベネフィットであり、この戦略の根幹だと考えています。なお、GCVE では、Intel 製の CPU をはじめ、ハードウェアのスペックが高いことも魅力的でした。そのため、1 ノードごとの集約率も高まり、コストパフォーマンス高くワークロードを稼働させることができ、満足しています。」
この際、GCVE に移行しても猶予時間を稼げない特に古いシステムに関してはあえて、オンプレミスに残すという判断をしたこともポイントだと語る清水氏。「古く、予算も付かないようなシステムに最後通告を突きつける」ことで、組織的な危機感を煽る、それでもダメなら廃棄という判断をすることも必要だと言います。
なお、現在は実際に移行したらどういうことが起こるのかをシミュレーションしている段階とのこと。実際の切り替えは 2022 年 6 月から開始され、年度内には完了する予定で、利用者サイドからは移行されたことがわからないほど自然な移行になる見込みです。
「Google Cloud を活用した一連の取り組みによって、"勝てるアサヒ" に近付いた、いや、もうなっているのではないでしょうか。フレームワークはもうできていて、あとはそれを実践して証明していくだけ。勝ちのモデルはできていると自負しています。そしてこうした取り組みを通じ、多くの人材がアサヒグループに興味を持ってくれたことも、Google Cloud を採用したメリットの 1 つだと感じています。」
国内ビール産業の興隆期を支えた大阪麦酒会社(1889 年設立)の流れを受け継ぐ国内 100 年企業の 1 つ。酒類事業を中核に、三ツ矢、カルピス、ワンダといった主力 6 ブランドによる飲料事業、食品事業などをグローバルに展開する。従業員数は 29,850 名(連結、2020 年 12 月 31 日現在)。
インタビュイー
アサヒグループジャパン株式会社
DX 統括部 マネージャー 清水 博 氏
(Google Cloud パートナー)
(Google Cloud パートナー)
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