AI の潮流に乗る方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 3 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ビジネス リーダーたちは、費用削減、顧客へのサービスの提供、何を構築するかの検討に対する新たな方法など、人工知能(AI)に大きな期待を寄せています。しかし、AI にどう対処するかを決めるのは難しい問題です。AI に乗り出す際は、費用、データの整合性、プロジェクトの期間に関する疑問に加え、計画や実行といった問題も発生します。難しいのも当然といえば当然です。
IT の導入や活用に携わる CIO(最高情報責任者)にとっては、これは重要な問題です。このブログ投稿では、一つの方法として、この難題を早期の自動化、学習と作業、システムビューという 3 つのエリアに分解して説明します。
良いニュースからお伝えしましょう。AI は遠い未来の希望で、まだ研究段階であり、業務では安全に使用できないと考えている読者の誤解を解いておきたいと思います。現実として、AI はそこかしこで活用されています。職場のほぼ全員が毎日 AI を利用しているともいえるでしょう。Google 検索、フォト、ドキュメントのオートコンプリート機能、Google Pixel のリアルタイム翻訳、ほかにも多数の場面で、人は AI と連携しています。また、多くの企業が AI を製品に利用しています。
IDC は、AI 関連のソフトウェア、ハードウェア、サービスの市場が 2023 年に 5,000 億ドルを突破すると予測しています
さらに、AI は 1 回限りの購入で終わるのではなく(それもアリですが)、さまざまな処理に応用できることが徐々に明らかになっています。最近の Alphabet の業績発表で、CEO の Sundar Pichai は、Google の短期的な戦略には「AI への投資が鍵」であるとして、さまざまな用途に向けてより迅速かつ簡単に AI をトレーニングし構築できる新たなテクノロジーについて言及しました。加えて、Google は AI を活用した「分析情報、新たなツール、自動化」を広告クライアントに提供しています。これについて特筆すべきは、ある分野での AI の開発が、その他、多数の分野の成長にもつながったという点です。
では、IT のリーダーは、どのようにして関係者にこうした成長過程を理解してもらうのでしょうか。これは、認識、学習、拡大という確立された段階を先導することによって実現できます。詳しく説明します。
認識: 早期の自動化
消費者向け AI は、音声認識、翻訳、文章を書くヒントといったコミュニケーション機能が特に優れています。これはビジネス向けの場合も同様で、最も効果の出ている職場における AI の初期インスタンスは、Contact Center AI(CCAI)で、顧客との基本的なコミュニケーションの管理、一般的な質問への自動返答、通話に人間のサポートが必要かどうかの優先付けなどに対応しています。CCAI は、ルーチン作業を自動化し、価値の高い想像力を要する活動を人間に任せるという、自動化がもともと得意としていたことを行っています。CCAI は、行政機関、小売業者、通信会社など、幅広いユースケースで活用されています。
CCAI などと同じく言語を重視したプロダクト、請求書や領収書などから情報を抽出する DocAI や、ビジネスの契約書から情報を抽出する AI には多数のメリットがあります。その一つは、正式な立ち上げが必要となる研究プロジェクトとは異なり、投資が比較的管理しやすいことです。また、見返りも明白です。特にコールセンターの場合、自動化でスタッフのストレスが緩和され、ロイヤルティが向上し、離職率の高い業界での離職が鈍化します。どちらの例も、良好な結果が証拠となって、より複雑な課題に取り組む前に賛同者を増やすことができます。
中でも最高のメリットはおそらく、基本的なビジネス向けの AI サービスに対する関心を生じさせることです。つまり、初期のメリットを認識し、次を期待するようになり、より深く学びたいと興味を持つようになるのです。
学習: 人的要素
既製の、「すぐに使用できる」AI プロダクトである自然言語処理(NLP)は、当然のことながらより高度なレベルでの使用が可能です。たとえば Twitter は、4,000 億の異なるイベントをリアルタイムで処理しており、スタッフは高度な NLP を使用してこの情報の山をクエリして質問に答え、カスタマー エクスペリエンスを向上させています。
Call Center AI と Twitter の 1 日に 4,000 億のイベントを処理する AI とでは明らかに大きな差がありますが、この差がどれほどの速さで縮まって来ているかはあまり認識されていません。ここ数年間で、どれほどのプロダクト、パートナー、トレーニング リソースが登場したかを考えてみてください。AI の意味(大規模なデータセット、優れたアルゴリズム、十分なコンピューティングなど)と AI の価値というものはどちらも新しいもので、その限りにおいては差が僅少なのも頷けます。
AI が次々とスプレッドシートや分析ツールのような標準的なエンタープライズ ツールに組み込まれるようになり、使いやすい AI は多くの人にとって手の届くスキルになってきています(高度なエリアはより複雑化しているため、「使いやすい」という前提はしばらく続くことになります)。
AI のスキルとして求められる要素は非常に新しいため、従来型の教育ではその需要に合致していません。つまり、標準外のスキル トレーニングと就労先での社内学習という豊富な機会を作り出す必要があるということです。AI スキルのトレーニングを提供する企業は、競争上の優位性を十分に勝ち取り、しっかりスタッフを留めることが可能です。
拡大: システムビューの構築
新しいテクノロジーを獲得し人気が高まれば、新たな活用法を探すか、異なるユースケース間のつながりを構築したくなるものです。ネットワーク化されたコンピューティングはその一つの例ですが、車が誕生して間もなくトラックや消防車が続いて誕生したことや、ワイヤレス電話のデータサービスがほどなくしてアプリ エコノミーに姿を変えたことを考えてみてください。役に立つものがあれば、さらに成長させようとするのが人というものです。
AI はどう成長するのでしょうか。同僚の Dominik Wee が最近、AI が間もなくサプライ チェーンを変え、プロダクトの設計を変え、サステナビリティを増進させていく、という記事を書いています。最も興味深いのは、元は分かれていた品質検証データを品質管理プロセスのシステム全体のビューと組み合わせた場合、製造業者はどのようにコストや労力を削減し、分析情報を獲得できるかを書いた部分です。
AI がそういった数多くのシステムビューを促進すると考える理由はいくつかあります。AI が上手く動けば、より多くの場所からのより頻繁なデータ収集が促進され、分析情報が生成される(そしてデータ収集のコストは下がっている)、というのが理由の一つです。また、AI は明らかになっていないパターンとインタラクションを見つけることが得意です。加えて、AI は予測やシナリオの計画に使用され、それが大規模なシステムの相互作用に対する理解を深めることにつながっています。
AI を利用し、人工衛星、センサー、ソーシャル メディアなどから世界を観る方法がいくつも生まれています。サプライ チェーンの危機から人権問題や調達の規制、パートナーシップの実態、オンラインや実社会におけるさまざまなメディアでの顧客との関係性まで、あらゆることに対して人々のインタラクションの意識が向上し、理解したいという欲求が高まっています。
偶然であれ計算尽くであれ、AI の時代とはウェブでのつながりが十分にあり、これまで以上に選択や行動が反響を呼びやすく、組織が自分たちのことをより正確に把握できる時代です。こうした意識は、競争力を持つツールであると同時に、より大きな責任を求めるものでもあります。それを正しく理解する組織は、顧客との関係性の強化や従業員の充足感の向上も可能かもしれません。
一夜にしてすべての場所で変化が起こるわけではないとはいえ、あらゆる企業で変革が起ころうとしています。AI が人や組織をサポートし、彼らを学習させ、彼らに育ててもらい、世界に対するより深い洞察を提供する、という AI の潮流は、たとえそれが簡単なレベルであっても、誰かが AI に触れるたびに確実なものになっています。
- Google Cloud、編集責任者 Quentin Hardy