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サプライチェーンとロジスティクス

もう「ノーマル」はない?データと AI を活用したサプライ チェーンの構築で備えは万全

2022年6月10日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 6 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

この 2 年間の激変やイノベーションを経て、私たちが向かっているのがニューノーマルな時代ではなく、もはやノーマルが存在しない時代だとしたらどうでしょう?

Google Cloud のサプライ チェーン兼物流担当マネージング ディレクター Hans Thalbauer は、最近の Supply Chain & Logistics Spotlight で「サプライ チェーンのプロフェッショナルは日々解決しなければならない非常に大きな課題をいくつも抱えている」と指摘しました。こうした課題の例として、Thalbauer はパンデミックによる変化、消費者需要、労働力不足、気候危機、地政学的不安定、エネルギー不足などを取り上げています。

Thielbauer は次のように投げかけます。「重要なのは、これが単に短期的な問題ではなく、長期的でシステム的な問題だと Google が考えていることです。そこには大きな疑問点があります。世界の貿易はどう変わっていくのでしょうか?本当に何か新しいものに変わっているのでしょうか?世界の貿易はこれまでどおりに機能するのでしょうか?」

まさに今、ホワイトハウスの専門家でさえ同じ疑問を抱いています。Supply Chain & Logistics Spotlight と日を同じくして、大統領経済諮問委員会の年次報告書が発表されましたが、そこでは一つの章すべてがサプライ チェーンに割かれていました。その章では、かつて曖昧かつ観念的で目に見えなかったサプライ チェーンが「食卓の会話に登場した」と記述されています。それには十分な理由があります。「アウトソーシングやオフショアリング、レジリエンスへの不十分な投資のせいで、多くのサプライ チェーンは複雑で脆弱になっている」と、経済学者たちは説明します。また、ロジスティクスの未来懸念しているのは同委員会だけではありません。

グローバル化かローカル化か、自動化が進むか仲介業者が排除されるか、アジャイルになるか脆弱になるかなど、ロジスティクスの未来がどのような結果になるにしても、最も可能性が高いのは、テクノロジーへの依存が高まるということです。特に、あらゆる混乱や中断に対処できるデータへの依存が進む可能性があります。

The Home Depot、Paack、Seara Foods などのこの分野のリーダーは、エンドツーエンドでのデータ接続、情報へのアクセスと共有のためのプラットフォームの機能、問題が発生したとき、あるいは発生する前に問題を軽減する予測分析の重要性など、いくつかの主要分野で機会を見い出しています。

「可視性、柔軟性、革新性を生み出すことが必要です。企業は往々にして、自社の注文、予測、在庫にばかり目を向け、それ以外の部分を目に入れようとしません。私たちは、公的情報、交通、天候、気候、金融リスクなどを取り込み、それを企業データと結び付ける必要があります。コミュニティ データを活用して、全階層のビジネス パートナーとのコラボレーションを実現する必要があるのです」と Thalbauer は話します。

エンドツーエンドのデータ

企業はこれまで、工場から倉庫、店舗、そして今では玄関先まで、それぞれの間に存在するすべてのポイントの可視化を模索してきました。データ量が増え、それに伴って機能も増加し、すべてのポイントを見通す難しさも、必要性も増しています。それが今の状況を複雑にしているのです。これは人間では管理できない規模なので、データだけでなく、分析や AI の重要性が一層高まっています。

The Home Depot は、このような相互依存性の増大、特に競合しつつも補完関係にある顧客層へのサービスの提供に、いち早く対応してきました。

パンデミックでは、思いがけない機会も到来しました。住宅価格の高騰、可処分所得の増加、DIY 愛好家による(自宅待機中の)自宅での作業などが相まって、木材、小屋を改装したオフィス、ガレージドアまで、あらゆるものが売れ続けました。商品棚を空にしてしまうと、顧客の怒りを買うことになります。

The Home Depot の IT サプライ チェーン担当バイス プレジデント Chris Smith 氏は、この状況下で、同社が相手にしていたのは住宅所有者や大家だけではなく、請負業者や大規模デベロッパーもますます重要な存在になっていた、と説明します。いずれもが、異なる商品を、異なる規模かつ異なる方法で買い付けたいと要求し、この要求はパンデミックの間、拡大する一方でした。

グローバル化かローカル化か、自動化が進むか仲介業者が排除されるか、アジャイルになるか脆弱になるかなど、ロジスティクスの未来がどのような結果になるにしても、最も可能性が高いのは、テクノロジーへの依存が高まるということです

「当社には、まさにオムニチャネル アルゴリズムと呼んでいるものがあります」と話すのは The Home Depot の IT サプライ チェーン担当バイス プレジデント、Chris Smith 氏です。「このアルゴリズムは、お客様の好みを、当社が把握する生産能力、品揃え、在庫の可用性と結び付けます。それらすべてをまとめ、どうすればお客様の期待に応え、サプライ チェーンを最も効率的に活用できるのかを考えます。そうすることで、どこから処理するのか、どこに在庫があるのか、お客様との約束を守りつつ、当社にとって最も経済的な方法でそれを行うにはどうすれば良いかがわかります」。

Paack は、英国、スペイン、フランス、ポルトガル、イタリアでラスト ワンマイルの配達サービスを提供するスタートアップ企業で、同様にフルフィルメントの既存の枠を超えようとしています。同社はドライバー、お客様、センサー、天候などの豊富なデータを組み合わせ、確実な配達を実現することに重点を置いています。これまでのところ、特別なスケジュール管理ツールを使用して顧客が荷物を確実に受け取れるようにすることで、その成功率は 98% に近づいています。

Paack は、Google Maps Platform のラスト ワンマイル フリート ソリューションを使用して、ドライバーと顧客をリアルタイムで管理しています。

Paack チーフ プロダクト兼テクノロジー オフィサーの Olivier Colinet 氏は次のように話します。「ドライバーのルートと計画されたルートのどちらがより効果的か、地元にもっと良いルートがあったらドライバーは経路を変えることができるか、お客様から在宅状況を通知してもらえるかなど、収集できる情報の精度が高く、すべての人にとって優れたエクスペリエンスを構築することが可能になりました。当社では新米ドライバーにも生産性の高いドライバーになってもらいたいと考えていますが、情報の精度という最初のステップがこれを可能にしてくれます」。

プラットフォームの力

Paack の成功は、顧客と従業員のための優れたプラットフォームを構築すること、Google マップのような既存のプラットフォームを利用して自社のプラットフォームを強化することの素晴らしさを示しています。

地球の反対側では、世界最大の食肉供給会社が、自分たちのプラットフォームを提供することで何千人もの牧場主や農家を支援しようとしています。Seara はブラジルを拠点とする豚肉、鶏肉、卵のサプライヤーで、世界に事業を展開する JBS コングロマリット傘下にあります。同社は 2021 年 7 月、SuperAgroTech プラットフォームを立ち上げました。

このプログラムは何年も前から開発されていたものの、世界の食糧供給にこれ以上ないほど重要なタイミングでリリースされることとなりました。このとき食品業界は、すでにパンデミックによる供給不足と操業停止に対処中でしたが、そこにウクライナでの戦争の影響までもが及んでいる状況でした。

Seara のイノベーション兼戦略担当ディレクター Thiago Acconcia 氏は次のように説明します。「全般的に、サプライ チェーン全体が影響を受け、事業は新しい労働条件に適応しなければなりませんでした。農場や現場でも状況は同じでした。このデジタル オンライン プラットフォームの構築は、農場に自律性を与えます。データ入力とデジタル通信の手段を提供することで世話役としての役割を果たすのです」。つまり、農家と Seara との間に、これまでにはないつながりが生まれたのです。

この技術は、リリース時点で 9,000 以上の農場に導入されました。さまざまな IoT センサー、モニタリング デバイス、農家、オペレーター、Seara によるデータ入力を通じて、チームは多くの結果を追跡しています。これには収穫量、家畜の健康、利益、さらには消費者にとってますます重要な要素となってきている環境や社会的影響などが含まれます。

最終的な目標は、農場のデジタル管理の割合を 100% にすることです。

「現在では、どこでも、どんな生産者でも数秒で有効化できます」と Acconcia 氏は言います。SuperAgroTech を使用することで、プラットフォームは「国の最南端にあっても中心部にあっても構いません。生産者との関係を強化し、また、これまでにないレベルで各生産者に合わせた対応を実現します」。

このようなプラットフォームでは、これまで提供されることのなかったレベルの可視性と接続性を利用できるようになり、データを収集、分析して、分析情報をプラットフォーム上で再び実行に移すという好循環が生み出されます。予測不可能な世界では、このような統合が不可欠になりつつあります。

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積み上げられたコンテナ

予測分析

統合されたデータと堅牢なプラットフォームによって企業のデジタル戦略が進化する現在、絶好の機会の一つとなるのが予測分析とその周辺です。

未来を見通すというのは(少なくとも今のところは)SF の世界だけの話ですが、AI、クラウド、さらには量子コンピューティングによって、トレンドの解明、接続の確立、機会と損失の両方の予測を行うための堅牢な方法が提供されつつあります。

The Home Depot は、消費者データと AI を使用してデジタルストアを迅速に適応させ、エクスペリエンスを改善するとともに、サプライ チェーンの問題を円滑化する方法を検討してきました。同社の Chris Smith 氏は、たとえば、在庫のない家電や工具を提示すると、すぐに他の場所や販売商品を提示してくれるといった便利な代替手段を挙げています。

「機械学習をさまざまな方法で適用することで、サプライ チェーンにおける在庫の移動のサポートや、お客様をサポートするための生産能力の把握など、より良い、迅速な意思決定を行うことができます。自動化に関しては、配送センターから予測システムや補充システム全体で、今後も最適な判断を下すために最適化、自動化できるところはないか、引き続き探していきます」と Smith 氏。

Paack の場合、予測は交通量や嵐、さらにはリピーターがいるかどうかの可能性という形で、自ずと明らかになるでしょう。

Seara の場合は、データと分析の役割は、ビジネスだけでなく、世界の持続そのものに不可欠です。気候、サプライ チェーン、世界的な紛争、移民などの問題が食糧供給を制約し続けるなか、問題を予測することが作物を救えるかどうかの分かれ道となる可能性があります。

Acconcia 氏は次のように話します。「私たちは、リアルタイムの問題を通知するだけでなく、近い将来と遠い将来に何が起こるかを予測することも目的として、AI ツールによる高度な分析の作成を開始しました。私たちは世界中の食糧を扱います。SuperAgroTech は、世界に食糧を供給し、これらの最大の課題を克服する役割を担っているのです」。


- 業界編集者 Matt A.V. Chaban
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