Mrs. T’s Pierogies: Google Cloud での SAP の活用により予測と DR の能力を改善
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 29 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ピエロギは、究極の「安心感のある味」と言えるかもしれません。しかし米国の冷凍ピエロギのトップメーカーである Mrs. T’s Pierogies では、すでに持っていたオンプレミスの SAP ECC から S/4HANA に移行する必要があるとわかり、ほんの少しの安心感を得るために動き始めました。
1952 年創立の Mrs. T’s Pierogies は、現在年間 6 億 5,000 万個のピエロギを生産しています。それだけの数のピエロギを動かすためには強力な ERP システムが必要で、さらにそれを動かすために、同じくらい強力な IT インフラが必要となります。SAP の ERP ソリューションを SAP/4HANA へ移行する必要が生じたことで、これは SAP システムを Google Cloud へ移行し、リアルタイム分析機能の獲得によって売上予測の迅速化、より効果的な販売プロモーションの策定、より緻密な販売計画の策定を図るチャンスであると、同社は考えました。
ニーズからチャンスへ
Mrs. T’s では長年にわたり、自社のオンプレミス サーバーで SAP ECC ソリューションを安定的に運用していました。しかし SAP が製品の終了を決定した後、Mrs. T's はさまざまな課題に直面していることに気づきました。たとえば以下のようなものです。
オンプレミスの古い OS からクラウドベースの Linux 環境への SAP ECC 6.0 システムの移行
SAP DB2 データベースから HANA へのデータの移動
ECC から SAP S/4HANA への移行
同社の請求書や倉庫間の移動、転送指示はほぼすべて電子データ交換(EDI)プロトコルを使用して行われていたため、これだけの複雑な移行作業を、非常に短いダウンタイムまたはダウンタイムなしで行う必要がありました。ほんの数時間 EDI トランザクションが失われただけでも、無視できない額の収益が危うくなります。また、さらに厄介な問題もありました。Mrs. T's の顧客の中には 5 日以上経過した請求書を受け付けないところがあるため、問題を起こせる余地はほとんどありませんでした。今回の移行作業の統括担当として同社が選んだのは、Google Cloud の長年のパートナーである Rackspace Technology でした。
Mrs. T's の古いハードウェアで S/4HANA を運用するという選択肢もありましたが、特定のデータ分析において、Google Cloud への移行が同社のビジネスのメイン業務を改善する機会であると判断しました。これまで、販売計画や販売予測には、非常に時間のかかる手作業でのプロセスが伴っていました。しかし Google Cloud の処理速度、可用性、スケーラビリティにより、Mrs. T’s は S/4HANA の組み込み型分析機能を活かすことが可能になりました。さらに Google Cloud への移行により、Google Cloud がネイティブで持つ SAP データの統合機能を活かし、BigQuery や Google Cloud AI Building Blocks といった Google ツールを活用することも可能になります。
Google Cloud への移行は Mrs. T’s にとって、障害復旧プロセスをアップデートする良い機会となりました。以前まで同社はテープにバックアップを行っていました。そのため、SAP システムがダウンすると、IT 担当部署のメンバーが最新のテープ バックアップをコールドサイトまで 1 時間かけて車で運び、障害復旧担当のパートナーが SAP のバックアップ テープをロードしてシステムを起動し、ネットワーク接続をそのサイトに切り替えて、あとは復旧がうまくいくように祈っていました。これではダウンタイムがきわめて長くなるだけでなく、復旧するデータも定期的にテープ バックアップしたものに限られていました。
「すべてが正しく動いていました」
Google Cloud への移行を決めた Mrs. T's は、Rackspace Technology と協力してシステムを実装しました。最初のフェーズでは、SAP の本番環境をオンプレミス インフラストラクチャから Google Cloud に移動し、データベースを HANA にアップデートすることに集中しました。この作業には 3 か月以上かかりました。切り替え作業は週末に行われたため、ユーザーが切り替えに気付くこともありませんでした。「月曜に出勤したら、すべてが正しく動いていました」と、情報システムおよび技術担当ディレクターの Timothy Coyle 氏は述べています。その次の 4 か月にわたるフェーズでは、EEC から S/4 への移行を行いました。
Google Cloud への移行は、すぐに効果をもたらしました。バッチ トランザクションの処理速度が 2 倍になり、エンドユーザーによる画面上のトランザクションが瞬時に行われるようになりました。またアップグレードを行ったことで、財務担当チームが初めて組み込み型分析機能とモニタリング機能を利用できるようになりました。すべてのデータがクラウド化されたことで、障害復旧を動的かつほぼ即時に行うことができ、最悪の場合でもダウンタイムをわずか 5~10 分に抑えることが可能になりました。
Rackspace の Google パートナー デベロップメント マネージャーである Chuck Britton 氏は、次のように述べています。「Mrs. T’s は、ビジネスに悪影響を及ぼすことなく SAP 環境を Google Cloud へ移行できる、経験豊かで有能なパートナーを必要としていました。この移行が Mrs. T’s のデジタル トランスフォーメーションの取り組みにおける重要な構想の一つであることを、当社は理解していました。また、Google Cloud での SAP を実行することにより、同社が SAP データに求めていた高速でフレキシブルな分析機能が実現できることも認識していました。」
概念の段階から本番環境まで、Mrs. T’s は古いオンプレミス インフラストラクチャから Google Cloud 上の最新 SAP S/4HANA ソリューションに移行しました。その期間はわずか 7 か月、ダウンタイムは最小限に抑えられ、業務の混乱もまったくありませんでした。移行が完了した現在、Mrs. T’s ではフレキシブルかつ非常にスケーラブルな環境で、ビジネスの促進に役立つ SAP アプリケーションやデータを動かしています。Coyle 氏は次のように述べています。「IT に対する当社の戦略的な意図は、処理をより簡略化し、人々の生産性を上げ、インフラの安全性を高めることです。その戦略的な思想に、このプロジェクトは最適なのです。」
Google Cloud による SAP のエクスペリエンスの変化の様子と、Rackspace の SAP 顧客向け Google Cloud ソリューションに関する詳細はこちらをご参照ください。
-Google Cloud SAP 担当マネージング ディレクター Snehanshu Shah