Google Cloud で実行される SAP ワークロードのシステム中心のモニタリングとオブザーバビリティ
Brad Nixon
Product Manager
Miguel Exposito
Technical Solutions Consultant, SAP
※この投稿は米国時間 2025 年 8 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
複雑な SAP 環境の管理は、迷路を歩くようなものです。ユーザーは、パフォーマンス、データベースの健全性、インフラストラクチャの安定性などをすべて両立させながら、シームレスなビジネス アプリケーションの実現に努めています。このたび Google は、Workload Manager に新しいオブザーバビリティ機能とモニタリング機能を追加しました。これにより SAP のお客様に、データギャップを埋めクラウド環境の全レイヤにわたる SAP 環境の全体像を確認できる、専用ツールをご利用いただけます。
Workload Manager は、既存の SAP モニタリング ツールを置き換えるのではなく、補完するものです。SAP システムのより広範なビューにより、アプリケーション レベルの分析情報を、インフラストラクチャのパフォーマンスやイベントと相互に関連付けることができます。
複雑な SAP 環境の可視性の拡大
従来の SAP モニタリングは、アプリケーション レベルとデータベース レベルで詳細な情報を得るうえで優れており、トランザクションのパフォーマンス、ユーザー アクティビティ、アプリケーション ログに関する指標をすぐに利用できます。しかし、アプリケーション データと基盤となるインフラストラクチャの関係を理解するには、これだけでは不十分です。たとえば、トランザクション処理の速度が低下しているとしましょう。データベースの問題、ネットワークのボトルネック、基盤となる仮想マシンの問題など、さまざまな原因が考えられます。既存のツールは貴重な情報源ですが、アプリケーションのパフォーマンスとインフラストラクチャの健全性を関連付けるには十分でなく、時間がかかりすぎたり、さまざまなモニタリング プラットフォームの切り替えや手動のステップが必要になったりする場合があります。
Workload Manager でシステム中心の統合ビューを作成
Google Cloud の SAP 用エージェントで該当の機能を有効にすると、メインのオブザーバビリティ ダッシュボードで、SAP システムの概要と、各システムおよびサブレイヤの総合的な健全性を確認できるようになります。健全性のステータスは、SAP Netweaver インスタンス、SAP HANA データベース、Pacemaker クラスタから得られるさまざまな指標と、それらをホストする基盤インフラストラクチャの可用性をもとに計算されます。


システムをクリックすると概要ページに移動します。ここでは、システムのコンポーネントを可視化し、含まれている各インスタンスの現在の健全性を確認できます。[Health Insights] テーブルには現在検出されている健全性の問題がまとめられ、[Maintenance Events] テーブルにはサポート対象のマシンタイプの今後のメンテナンス予定が表示されます。


[Applications] タブと [Databases] タブも同様に機能し、SAP アプリケーションの主要なパフォーマンス指標と、VM、ストレージ、ネットワーク、その他の Google Cloud サービスの指標を関連付けるのに役立ちます。たとえば、以下のようなものです。
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可用性: GCE インスタンスの可用性、SAP NetWeaver および SAP HANA インスタンスのステータス、SAP NetWeaver および SAP HANA プロセスのステータス、Pacemaker クラスタのノードとリソースのステータス。
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パフォーマンス: GCE インスタンスの CPU とメモリの使用率、CPU とメモリ別のオペレーティング システム プロセス、オペレーティング システムでのスワップ I/O オペレーションに関する情報。
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ストレージ: SAP 関連のファイル システムの使用状況、ディスク容量の使用率と使用状況、ディスク スループット、ディスク IOPS。
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ネットワーキング: ネットワーク トラフィックとネットワーク パッケージに関する情報。
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Netweaver: SAP NetWeaver プロセスによる CPU とメモリの使用率、SAP NetWeaver インスタンス内のプロセスのレスポンス時間、タイプ別の SAP NetWeaver セッションと RFC 接続、ワークプロセス タイプごとの SAP NetWeaver プロセスの使用率、システム内の各キューの SAP NetWeaver プロセスタイプごとの情報。
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HANA: SAP HANA システム レプリケーションのステータス、SAP HANA システム レプリケーションのレイテンシ、タイプ別の SAP HANA データベースのメモリ使用量、SAP HANA データベースのアイドル状態の接続と実行中の接続に関する情報、SAP HANA データベースのレコード数上位のスキーマ。
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バックアップ: バックアップ/復元の成功率、すべてのオペレーションのバックアップ/復元の平均 MBps、バックアップ/復元のステータスとスループットに関する履歴データなど、Backint バックアップに関連する情報。
SAP 向けに特別に設計された新しいイベント アノテーションを使用すると、システム イベントをモニタリング ダッシュボードに直接表示できるため、根本原因を迅速に特定したり、イベントがシステムのパフォーマンスと健全性に与える影響を確認したりできます。これらのイベントは、Workload Manager の外部でも、Cloud Monitoring ダッシュボードで利用できるようになりました。
SAP の可用性
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Pacemaker クラスタ
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Pacemaker クラスタノードのステータス
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Pacemaker クラスタ リソースのステータス
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SAP HANA データベース
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SAP HANA インスタンスのステータス
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SAP HANA サービスのステータス
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SAP NetWeaver
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SAP NetWeaver インスタンスのステータス
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SAP NetWeaver サービスのステータス
SAP オペレーション
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SAP HANA システム レプリケーションのステータス
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SAP HANA バックアップのステータス
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SAP HANA のデータのバックアップ
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SAP HANA のログのバックアップ
たとえば、次のスクリーンショットでは、SAP HANA データベースのフェイルオーバーがデータベースの可用性にどのように影響したかを確認できます。また、Pacemaker クラスタがデータベース オペレーションをセカンダリ ノードに移動した際のイベントも確認できます。


その他の主な機能と利点
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包括的な指標: このソリューションは、SAP アプリケーションと Google Cloud インフラストラクチャから幅広い指標を収集しますが、さらに多くの指標が必要な場合は、カスタムクエリを作成して Workload Manager Observability 内のカスタム ダッシュボードに指標を追加できます。
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カスタマイズ可能なダッシュボード: ダッシュボードに手を加えて別のビューを作成し、ビジネスにとって特に重要な要素を可視化することによって、重大な問題をすばやく特定できます。
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アラートと通知: ダッシュボードは、Cloud Monitoring とアラートにネイティブに統合されています。特定の指標のアラートを設定し、しきい値を超えたときに通知を受け取ることができます。
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自動システム検出: SAP 用エージェントを有効にすると、SAP インスタンスとリソースが自動的に識別および調整されるため、手動でのタグ付けやラベル付けが不要になり貴重な時間を節約できます。
ご利用の開始
Google Cloud 上の SAP のオブザーバビリティを一か所で実現するメリットを体験してみませんか?利用開始方法やサポート対象アーキテクチャに関する詳細なドキュメントと手順については、こちらをご覧ください。Workload Manager のオブザーバビリティ サービスは追加料金なしで利用できますが、基盤となる指標とログには、Cloud Monitoring と Cloud Logging に関連する費用がかかります。有効にする必要がある必須機能の推定費用は、こちらでご確認いただけます。
オンボーディングのサポート、デモ、詳細情報をご希望の場合は、アカウント担当者または Google Cloud サポートまでお問い合わせください。
今後の展望
Google は、Google Cloud 上の SAP のオブザーバビリティの継続的な改善に尽力しており、新機能や、さらに充実した関連付け機能、情報の豊富な可視化機能を追加していく予定です。
-プロダクト マネージャー Brad Nixon
-SAP テクニカル ソリューション コンサルタント Miguel Exposito