コンテンツに移動
Google Cloud

通信サービス プロバイダがデータ、自動化、AI を活用してビジネス価値を創出する 4 つの方法

2021年4月6日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

通信企業はまさにデータの宝庫であり、こうしたデータを活用すれば、新しいビジネス チャンスの創出や、カスタマー エクスペリエンスと効率性の向上が可能です。とはいえ、膨大な量のデータは実のところ大きな課題をはらんでいます。データの取り込み、処理、絞り込みといった課題に加え、データを意思決定に役立てるためには、効率的かつできる限り迅速に、多くの場合はリアルタイムに近いスピードでデータを活用できることが必要です。

Analysys Mason の新しい調査によれば、世界中の通信データ量は年平均成長率 20% で増加し続け、2025 年までには、ネットワーク データ トラフィックが 13 ゼタバイトにのぼると予想されています。業界の進化に対応するため、通信サービス プロバイダ(CSP)のデータ管理およびデータによる収益化も、以下のようにさらに効率化する必要があります。

  • 新しいユーザー エクスペリエンスと B2B2X 型サービスを提供して、新しい収益源を創出する(B2B2X の「X」とは、未開拓の業界の未知の顧客や企業)。

  • データ、自動化、人工知能(AI)、機械学習(ML)を活用した運用の変革を通じ、効率性改善、ネットワーク パフォーマンスの改善、組織全体の資本支出(CAPEX)と運用支出(OPEX)の削減を実現する

以下に、通信サービス プロバイダがデータ管理および分析に関して抱える 4 つの主な課題と、クラウド ソリューションによる対処方法をご紹介します。

1. ユーザー エクスペリエンスの見直しにより、通信サービス プロバイダはデータ分析のスピードをほぼリアルタイムに高める必要がある

お客様による操作やお客様とのやりとりに基づいて、適切な場所と的確なタイミングで、サービスを提案するプログラムや、キャンペーン中に見つけた傾向に基づいた提案を、大小のグループに合わせて動的に調整して提供し、収益を最大化するプログラムは、解約数を削減し、アップセルや抱き合わせ販売を増加します。ただし、実現するにはデータをシステム間で関連付けし、行動につながるインサイトをリアルタイムに近い早さで取得する必要があります。

また、リアルタイムに近い意思決定を実現するのであれば、それ以上に早い処理スピードが求められます。さらに、お客様が移動する前に位置情報に基づいた提案を提供する、取引中の不正行為を迅速に検出して損失を最小限に抑えるなどのユースケースには、低レイテンシが求められます。

クラウド ベンダーはどこも、リアルタイムに近いデータ処理に必要なスピードとスケールでストリーミング データを処理しますが、こうした要件は Google のビジネスの核であるため、Google では、低レイテンシでデータを大規模に処理するテクノロジーの開発に取り組んでまいりました。たとえば、Google Cloud の BigQuery は、ペタバイト規模のクエリを超高速で実行でき、ストリーミング取り込みが可能な、高いスケーラビリティを持つサーバーレス データ ウェアハウスです。また、BigQuery を支える Google のインフラストラクチャ テクノロジー(Dremel、Colossus、Jupiter、Borg)は、Google が抱えていたグローバル規模でのデータ スケーラビリティの課題に対処するために開発されたものです。さらに、Pub/Sub および Dataflow を基盤として構築された Google Cloud の総合的なストリーム分析ソリューションは、可変量データの取り込み、処理、分析をサポートし、リアルタイムに近いビジネス インサイトの取得を可能にします。

加えて、運営組織のデータセンター、クラウド全体、エッジなどを含め、ワークロードをユーザーの近くを選んで配置する Google Cloud Anthos を通信サービス プロバイダが使用することで、レイテンシが重要なユースケースにおいて必要なスピードを実現できます。

Analysys Mason の主席アナリストを務める Justin van der Lande 氏は、次のように述べています。「リアルタイムのユースケースでは、新しい動きを予測または示唆するストリーミング データの変化に応じて、実際に行動を起こすことが求められます。」また、そのためにはモデルの継続的な検証と最適化が求められますが、クラウドで TensorFlow のような ML ツールを使用することで、モデルの改善と劣化防止が可能です。クラウドベースのサービスの活用により、通信サービス プロバイダのデベロッパーは ML モデルを API や管理プラットフォーム上でビルド、デプロイ、トレーニングできるようになりました。そのため、ガバナンスを遵守し、適切な検証とテストを経た上でモデルを迅速にデプロイすることが可能になりました。また、ML に関する専門知識が十分ではないユーザーでも、Google Cloud AutoML を使用すれば、自社のビジネスニーズに合った高品質なモデルをトレーニングできます。

2. 通信サービス プロバイダの運用効率向上のために、複雑に細分化されたツールセットを合理化する必要がある

多くの通信サービス プロバイダでは、長年の間に、ソフトウェア ツール、プラットフォーム、データ管理および分析の統合が複雑に細分化しています。数年にわたる M&A 活動により、さまざまな部署や運営会社が各自異なるツールを使用した結果、ツールの調達やメンテナンスの複雑さが増しています。こうした複雑さは、機能に変更を加えたり、新しい機能を素早くリリースしたりする能力にも影響を及ぼします。

クラウド プロバイダを活用することで、通信サービス プロバイダは、豊富な機能を持ち、継続してアップデートされる高度なデータツールと分析ツールにアクセスできるようになります。たとえば、Google Cloud の場合、Looker を使用することで Google Cloud、Azure、AWS、オンプレミス データベース上の全データを接続、分析、可視化できるようになります。Looker は、ストリーミング アプリケーションにも最適です。さらに、ハイパースケール クラウド ベンダーと幅広い技術パートナーによるエコシステムの連携により、さまざまなユースケースと新たに発生する要件に対応しやすい標準化されたデータツールに切り替え可能です。

たとえば、Google Cloud と Amdocs のパートナーシップにより、通信サービス プロバイダはクラウド上でデータの統合、整理、管理を効果的に行い、コスト削減、カスタマー エクスペリエンスの改善、新たなビジネス チャンスの創出を実現できます。Amdocs の DataONE は、通信事業に特化し、TM Forum の標準に準拠した Amdocs Logical Data Model を使用して、データを抽出、変換、整理します。このソリューションは Google Cloud SQL 上で動作します。なお、Google Cloud SQL とは、管理の効率性を高め、運用データおよび分析データの利便性、可用性、可視性を改善するスケーラブルなフルマネージド リレーショナル データベース ソリューションのことを指します。また、Amdocs のデータ ソリューションを BigQuery と統合することで、組み込み ML 機能を利用できます。最後に、Amdocs Cloud Services では、通信サービス プロバイダによるデータの移行、管理、整理を支援するサービスを提供しています。このサービスを利用して、ビジネス価値の最大化に必要な戦略的インサイトを引き出すことが可能です。

Video Thumbnail

3. 通信サービス プロバイダがクラウドと自動化を活用することで、データ量の増加に伴うコストとオーバーヘッドの削減が可能

運用費用と資本コストの削減は、おそらく通信サービス プロバイダがクラウドベースのデータ インフラストラクチャを採用する最大の動機の一つです。Analysys Mason によれば、通信サービス プロバイダによる IT およびソフトウェアへの設備投資額は、2025 年までに 450 億ドルに迫る見込みです。また IT の運用コストは 900 億ドル以上になると予想されています。こうした費用は、企業による新しいデジタル サービスのサポートやデータ量の増加に伴い、今後も増えることが予想されます。クラウド サービスの場合、料金は使用した分のみで、サーバーを所有するための費用はかかりません。こうした料金設定により、インフラストラクチャ関連の資本コストを節約できると同時に、クラウド コンピューティングのスケール メリットがもたらす高い効率性を活用できます。また、すべてのメンテナンスとアップデートが月間の請求額に含まれるため、請求額も予測可能です。

加えて、通信サービス プロバイダは、インターネット トラフィックが混雑する時間帯や、スーパーボウルのような大勢の観客を動員するイベントにより、年間および日単位で大きな需要の波に遭遇します。インフラストラクチャをピーク時に合わせて構築するとリソースに無駄が生じ、資本収益率の低下を招きます。また、ユーザー需要が想定したサイクルを超えて変動する可能性があります。ビッグデータ クエリやアドホック分析およびレポートのような大規模なワークロードなども、必要な容量の見極めをさらに難しくします。クラウド コンピューティングでは、素早いスケールアップとスケールダウンが可能なだけでなく、自動スケーリングも利用できます。こうした機能はオンプレミス環境では実現が困難です。

4. 顧客のライフタイム バリューを高めるタイムリーな意思決定を実現するために、高品質かつ完全なデータが必要

最後に、通信サービス プロバイダが顧客との関わり方に関する理解を深め、顧客それぞれに合った優れたサービスを提供して全体的な顧客のライフタイム バリューを高めるためには、データと分析を活用する必要があります。このためには、適切な意思決定に必要な高品質のデータセット、迅速なデータ分析、データに従って行動する能力が必要です。たとえば、特に価値の高い顧客に関する高品質かつタイムリーなデータがない場合、解約しようとしている顧客に気づけないかもしれません。逆に、もともと解約の意図がない顧客に、割引を提供する可能性もあります。

Justin van der Lande 氏によれば、良いデータセットに求められる特長は、データの品質、ガバナンス、スピード、完全性、共有可能性の 5 つです(図 1 を参照)。言い換えれば、データの善し悪しは、膨大な数のバックエンド システム、フロントエンド システム、ネットワークから、いかに迅速にデータを取得、変換、読み込みできるか、いかに完全なデータを取得できるか、いかに多角的な分析結果を適切な意思決定者に簡単に共有できるか、さらにデータがどのように管理されているかに左右されるということです。信頼できるデータ品質とインサイトを実現するためには、データリネージ、データソース、個人情報データの分類、規制要件などを検討することが非常に大切です。データ量が増加するなか、データ品質、ガバナンス、完全性の実現は、さらに難しくなりつつあります。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/_main_CSP_challenges.max-600x600.jpg
通信サービス プロバイダがデータに関して直面する主要課題(出典: Analysys Mason)

企業は単一の運用データストアをクラウドに作成し、機械学習を活用した準備ツールを使用してデータ品質とデータの完全性を高めることができます。また、クラウド ベンダーが提供するエンタープライズ クラスのセキュリティ ツールで、アクセス権を管理し、自動的に適切なガバナンスを実施できます。クラウドでは、ビッグデータ分析用として、社内システムでは維持しづらいリアルタイムに近いエンドツーエンドのストリーミング パイプラインをサポートしています。加えて、通信サービス プロバイダは、Anthos を使用する BigQuery Omni などの Google Cloud のソリューションを活用して、デプロイ環境にかかわらず、整合性の高いデータ分析とインフラストラクチャ管理を実現できます。

通信業界には、システムが生成する膨大なデータを使用したデータ マイニングを行えるユニークなチャンスがあります。これを活用して、カスタマー エクスペリエンスや運用効率の改善、革新的な新製品の開発、迅速に新たな収益機会を生み出すユースケースの実現を目指すことが可能です。ただし、通信サービス プロバイダが柔軟性に欠けるオンプレミス インフラストラクチャに依存する限り、この貴重なリソースを活用できる可能性は低くなります。リアルタイムに近い意思決定の重要性が世界中で未だかつてないほど高まっているなか、クラウドにより増え続けるデータの処理と分析に必要なアジリティ、規模、柔軟性を活用することで、業界の進化に対応するだけでなく、競争力を維持することができます。

詳しくはAmdocs および Intelと共同提供する Analysys Mason のホワイトペーパーをダウンロードのうえご覧ください。

- Google Cloud 戦略的パートナーシップ担当責任者 Don Tirsell

-Google Cloud ネットワーク AI および通信事業者パートナーシップ担当ディレクター Vivek Gupta

投稿先