ML を使用して、ZSL と Network Rail が英国の鉄道近くの生物多様性をモニタリングし、改善するのを支援
Anthony Dancer
Monitoring & Technology Lead, Conservation & Policy, ZSL
Omer Mahmood
Executive Sponsor, ZSL Partnership, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Network Rail は最近、国際的な動物保護慈善団体である ZSL(ロンドン動物学会)に、英国の鉄道網全体で沿線の生物多様性をモニタリングするための最先端の方法の開発を委託しました。長年にわたるパートナーシップに基づいて、Google は ZSL がデータと ML パイプラインを構築して、試験調査中にグレーター ロンドン エリアで収集されたデータを分析するのを支援しました。
英国の生物多様性
英国では、生物多様性は社会の健全性において重要な役割を果たしています。これは、現在大多数の人々が住んでいる都市環境に特に当てはまります。たとえば、ロンドン市民は 14,000 種を超える動植物と都市を共有しており、こうした動植物は都市住居者にさまざまな恩恵をもたらしています。汚染を軽減し、気候変動による熱波への適応を助けてくれるだけでなく、ストレスの軽減やメンタルヘルスの改善、身体活動の機会の提供、さらには花粉媒介者による食料の提供まで、その恩恵は多岐にわたります。
しかし、英国の野生生物は前例のないペースで減少しています。英国は産業革命以来、都市部の広がりと農業によって生物多様性のほぼ半分を失いました。同国の生物多様性の割合は世界で下位 10% にランクされ、G7 諸国の中では最悪となっています。この減少は現在も続いており、2019 UK State of Nature 報告書により、1970 年代に科学的なモニタリングが始まって以来、種の平均存在量がさらに 13% 減少していることがわかっています。
鉄道が役立つ仕組み
英国の広大な鉄道網は、より環境に優しい移動方法を提供するだけでなく、英国の野生生物の保護において重要な役割を果たす可能性があります。
鉄道網にはしばしば、路肩や未使用の線路、その他の線路沿いの土地など、広大な緑地が含まれます。その結果、鉄道は生物多様性に複数の重要な影響を与える可能性があります。都市部や集約農業地帯における野生生物の避難所として機能することもあれば、分断された生息地をつなげ、種が回廊地帯を介して移動できるようにすることもあります。さらには線路が生息地を分断して、種の分散を妨げる障壁となることもあります。
英国では、鉄道用地を維持して乗客と貨物顧客に安全で信頼できるサービスを提供し、沿線に生息する豊富な野生生物の支援とのバランスをとることが Network Rail の仕事です。同社はまた、国内最大級の公共の土地所有者の一つであり、20,000 km の鉄道ルート全体で約 52,000 ヘクタールの総敷地を所有しています。これらの土地は英国の主要な陸上生息地の全種類を横断しており、そこには希少で保護されている貴重な種が豊富に生息しています。注意深くモニタリングして管理することで、鉄道網は野生動物を保護して回復させ、自然と人の利益になる可能性があります。
Network Rail が実現を目指すこと
Network Rail は、2020 年生物多様性行動計画を通じて、沿線の生物多様性を改善するための野心的なビジョンに取り組んでいます。これには、2024 年までに生物多様性のノーネットロス(No net loss)を達成すること、2040 年までに生物多様性のネットゲイン(Net gain)を達成すること、野生動物回廊地帯としての土地の価値と接続性を最大化することなどが含まれています。
これらの取り組みに向けた進捗状況のモニタリングに役立てるために、Network Rail は野生生物のモニタリングで豊富な経験を持つ ZSL の支援を求めました。この予備研究の目的は、ネットワーク化されたスタンドアロン カメラや革新的な音響センサーなど、野生動物や人為的活動をモニタリングするためのさまざまなリモート自動化技術を試すことと、生物多様性に関する使命に向けた Network Rail の進捗状況を追跡するために提案された方法の実行可能性を評価することでした。
Vertex AI と Looker Studio を使用し、種を特定して Network Rail の土地にマッピング
ZSL は 35,000 本のデータファイルをキャプチャしました。2022 年に、ロンドン南部の Network Rail の土地に設置された 33 台の音響モニターでキャプチャされた 3,000 時間分の音声です。ZSL チームは Google Cloud と協力することで、このデータを使用して「沿線の生息地」を特定できました。
最初のデータ分析は鳥とコウモリの種を対象としました。これには、BirdNet、BatDetect、CityNet という 3 つの異なる事前トレーニング済み ML モデルを活用して、それぞれ鳥、コウモリ、人為的音を検出しました。
これらのモデルを組み合わせて使用することで、種のタイプを特定し、発生状況を地理的位置にマッピングできました。
データセット内の音声ファイルごとに、以下の質問に答える必要がありました。
コウモリや鳥の鳴き声が含まれているか?
予測される種は何か?
信頼レベルはどのくらいか?
分析を高速化し、これらの質問に対する答えを見つけるために、チームは事前トレーニング済みモデルを Vertex AI と組み合わせて活用しました。Vertex AI のマネージド ノートブック環境により、データ サイエンティストは、基盤となるインフラストラクチャについて心配することなく、ML パイプラインのプロトタイプを迅速に作成してテストできます。
最初のステップは、ZSL が Cloud Storage FUSE(File System in User Space)を使用して収集したデータをマウントすることでした。これにより、チームはノートブック内から音声データファイルにアクセスできるようになりました。次にチームは、事前トレーニング済みモデルを使用してデータから予測を取得するためのステップをノートブックに作成し、結果を生成して、さらに分析するために Cloud Storage にプッシュバックしました。
Network Rail のすべての音声録音に対して各モデルの予測を実行した後、データを BigQuery でさらに変換し、地理的位置ごとの各種の頻度やその他の傾向を計算しました。このプロセスでは、各モデルから予測を取得し、それらを組み合わせて種ごとに単一の予測も作成しました。次に予測を頻度数に変換しました。これは特定の場所での各種の相対存在量の計算に使用されます。
BigQuery の最終変換済みデータを Looker Studio で可視化し、各種を示す生物多様性を量ごとに地図上にマッピングしました。また、ユーザーは、その種のユニークな目撃情報として分類する時間帯を指定することもできます。
次のステップ
ZSL は、安全で迅速な遠隔モニタリングを可能にする技術に焦点を当て、このプロジェクト中に開発された手法とツールを使用して、Network Rail が沿線の生物多様性に及ぼす影響をモニタリング、理解、改善するのを支援する予定です。これらの革新的な技術を沿線の生物多様性のモニタリングに応用することは、非常に緊急性の高い分野です。
この研究では、環境の健全性の評価に使用される指標種も明らかになりました。たとえば、鳥類に関する最近の研究では、都市部の環境の質の高さを示す上位 3 種として、ズグロムシクイ、クロウタドリ、シジュウカラが特定されました。これは、ベリー、果物、木の実の成長を支える豊富な無脊椎動物とつながった生息地の存在が必要なためです。これら 3 種はすべて、バーンズ、トゥイッケナム、ルイシャムの音響データセットで検出され、生物多様性の重要なベンチマークを提供しました。
この研究は、音響センサーが英国の保全懸念種を調査するための効果的な方法であることを示唆しています。これらの調査で収集されたデータは、保全の優先地域の特定や、保全措置の有効性のモニタリングに使用できます。
今年、これらの調査を新しい場所で、より多くの種(無脊椎動物や小型哺乳類など)を対象に開始します。また、沿線の生息地が英国の生物多様性に及ぼす違いの評価を開始し、Network Rail の保全と生息地管理をどのように改善できるかについて検討します。同時に新しいリモート モニタリング ツールとデータ パイプラインの開発とテストを行い、今後数年間で鉄道網全体に大規模なモニタリングを実装します。
この投稿への貢献者である Michelle Liu、Lydia Katsis 氏、Neil Rutherfoord に感謝します。
- ZSL、環境保護およびポリシー担当モニタリングおよびテクノロジー リード Anthony Dancer 氏
- Google Cloud、ZSL パートナシップ エグゼクティブ スポンサー Omer Mahmood