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リテール

Levi's(リーバイス) のシームレスなデータ戦略: テーラーメイドの AI でどう壁を破るか

2025年4月18日
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Matt A.V. Chaban

Senior Editor, Transform

Levi's(リーバイス) の細部へのこだわりは、世紀をまたいでよく知られています。そして今、データと AI で同ブランドのオムニチャネルな将来を形 成するうえでも、そのこだわりに変わりはありません。

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※この投稿は米国時間 2025 年 3 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

「Levi’s(リーバイス)は 創業から 172 年続く老舗企業であり、501 シリーズも 152 年前から続いている商品です。それに伴うデータは膨大なものです。」アイコニックなジーンズ メーカーである同社で、データ分析および AI のグローバル責任者を務める Louis DiCesari 氏は最近のインタビューで次のように語りました。

Levi’s の 501 はストレートなカットとクラシカルなインディゴ ウォッシュが特長のシンプルな商品に見えるかもしれません。しかし、数億、ともすれば数十億のユーザーに聞いてみたなら、彼ら、彼女らの多くが 501 に存在する微細な違いについて一家言を持っているでしょう。1955 年モデルの 501 XX の横糸の話題から、カート コバーンがニルヴァーナのどの動画で Levi’s を穿いていたか(かなり多数にのぼります)の話題に至るまで、話のネタには事欠きません。

さて、IT 部門に同様に質問し回答を求めるとしたら、どうなるでしょう。どの顧客がどのフィットを好んでいるのか、新しい市場はどこで成長しているのか、最近の異常気象がサプライチェーンにどのような問題をもたらしているのか、といったことに彼らは回答できるでしょうか。5 年前なら、このような問いに答えるのは非常に難しく時間のかかる仕事でした。しかしそれは今では、DiCesari 氏とそのチームにとって、データ処理における日常業務に過ぎません。

Levi’s のデザイナーが東京、ニューヨーク、ロンドン、サンフランシスコなどの街角を巡り、未来のスタイルへのヒントを得るのと同じように、DiCesari 氏のチームは今シーズンの売り上げ動向や同社商品の消費者(同社では「ファン」と呼びます)にパーソナライズされた、有意義なエクスペリエンスをどのように作り出すかについて、データを精査するための機械学習ツールを構築しています。

「デニムを圧倒的な柱としたブランドが、他の多くのカテゴリー商品を扱うように成長するなかで、こうしたデータは当社のファン一人ひとりのクローゼットにおける当社シェアを拡大するために不可欠になります」と DiCesari 氏は語ります。

Levi’s が 2020 年に Google Cloud と提携を始めて以来、組織全体のデータ戦略をどのように調整し、AI によるメッセージを活用して既存のファンの期待に応え、新たなファンを獲得してきたか、そして AI デザインに関する初期の実験について、DiCesari 氏 にうかがいました。

Levi’s が Google Cloud と提携を始められたのは約 5 年前でした。当時はパンデミックのピークで、人びとはほぼ自宅にとどまり、ファッション業界の将来は不透明でした。Levi’s がクラウドで構築しようとしていたのは何でしょうか。

Louis DiCesari 氏: 当社が求めていたのは、まさに不透明感を解消する明確さです。全体の目標として、消費者の皆様を中心に据えたデータドリブンな分析情報を企業にもたらし、より良いビジネス上の意思決定を可能にすることを目指していました。われわれが行うすべての根幹がそこにあります。

私たちが取り組むべきことの鍵となる構成要素が 4 つあります。第一に、会社に分析情報をもたらすこと。Levi’s は 172 年続く企業であり、501 ジーンズも 152 年前から続いている商品で、それに伴うデータは膨大なものですが、依然として直感に頼った意思決定がしばしばありました。データを整理して分析情報を取得し、意思決定の当事者に対して折々に必要となる情報を提供する必要がありました。

第二のやりたいこととして、これは Google Cloud を大いに頼りにしている部分なのですが、適切なアクセス制御のもと、データをサービスとして組織のあらゆるメンバーに提供することです。われわれがボトルネックとなったり、データ分析を独占したりするのは望ましくありません。社内すべての人がより良い意思決定をできるよう、掘り下げと分析の対象となるデータを適時に提供したいのです。

第三の構成要素は最初の 2 つを支えるものです。Google Cloud のプラットフォームにデータを移行するにあたっては、そうしたデータが明確に定義され、標準化されていなければなりません。グローバルな大企業では、地域や部門によって同じ単語がまったく異なった意味を持ったり、算出方法が異なったりすることは珍しくありません。当社ではあらゆるものを定義付け、標準化するための投資を行っています。

第四の構成要素は当社で利用している分析レポートの削減と合理化に関係しています。従来は一元化されたプラットフォームがなかったため、多くのデータがさまざまなツールに分散していました。データを Google Cloud に移行し、定義付けと標準化を進めるにつれて、そうしたツールやレポートを廃止し、企業にとって信頼できる単一の情報源を確保する必要があります。

4 年間で取り組むにはかなり大きな作業量のように思います。どこから着手し、作業間の優先順位はどのように付けたのでしょうか。

いくつかのデータドメインを起点として、こうした作業をすべて同時並行で進めています。非常に大きなチャレンジではありますが、Levi’s 社内の全データを先に完璧な状態にすることに集中してしまっていたら、何も成果を創出できなかったでしょう。われわれはまず価格設定と値引きのデータに集中し、次に消費者データに注目しました。

ドメインごとに 10 点満点のうち 7 点または 8 点まで達成できたら、次のドメインに着手します。同時に、先に着手したドメインの改善も継続して行います。

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最高水準のオムニチャネル小売企業への方向転換に伴い、当社は小売企業にふさわしい形へとビジネスを再構築し、消費者の皆様をすべての中心に据えました。

この 2 点から着手したのはなぜでしょうか。

データにおいて最も重要なのは、それをいかに活用するかです。私たちは、短期間で効果を得られ、かつ導入のハードルが高すぎない領域を探りました。そして、それぞれの領域について、まず一部のデータから着手し、徐々に対象となるデータを増やしていきました。

価格分析のバージョン 0 は単なる価格弾力性データでした。従来は自社で整理されたデータがなく、サードパーティ提供の静的なスナップショットを使用していましたので、それでも大きな進歩でした。そこから徐々にデータを増やし、自社構築するデータ プロダクトを充実させていった結果、今では継続的に改善が進んでいます。

「バージョン 0」の立ち上げに伴って、貴社ではどのようにその活用を始めたのでしょうか。

歴史的に Levi’s は大手の卸売・小売店やデパートで売られる、メンズ向けのジーンズを柱とした企業として知られてきました。最高水準のオムニチャネル小売企業への方向転換に伴い、当社は小売企業にふさわしい形へとビジネスを再構築し、消費者の皆様をすべての中心に据えました。

私とチームの仕事で大きな割合を占めてきたのが、データと分析を重点としてこの変革をサポートすることです。したがって、販売データと消費者データの統合は、最重要課題の一つです。「501 の売り上げはこうで、511 の売り上げはこうだ」というレベルにとどまらず、501 や 511 をどのようなお客様がお求めになっていて、その傾向はどう変化しているか。それぞれのお客様がどのようなルートでお買い上げになっているか。シングル チャネルとオムニチャネルの割合はどうか。お客様がお買い上げの商品はいくつのカテゴリにわたっているのか。こうしたことを見ることができるのです。

デニムを圧倒的な柱としたブランドが多くのジャンルを扱うよう成長するのに伴い、こうしたデータは当社のファン一人ひとりのクローゼット内の当社シェアを拡大するにあたって大変重要です。

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他にもデータが「クローゼット内の当社シェア」の増加につながっている点はありますか。

デザイン面で興味深い傾向が見て取れます。当社のデザイン サイクルは約 18 か月で、担当部門では現在 2026 年末に向けてラフデザインを進めています。デザインそのものにも時間がかかりますし、生産、マーケティングを経て最終的に商品を店頭に並べなくてはなりません。ですからデザイナーはアイデアを求めて東京やロンドン、ニューヨークの街角に出かけています。

データを見ることによって、ヒットすると想定したものが 1 年半後に本当にヒットしたか、数字で裏付けることができます。デザインに直接影響するわけではありませんが、現在大きなトレンドとなっているバギーまたはルーズなジーンズの例を見てみましょう。2020 年、パンデミックの直後にデニムのフィット感がスキニーからややルーズなものへ変化していることに気づきました。そしてこの傾向はますます加速していきました。

このマクロな傾向を知ったうえで、このバギーまたはルーズなフィットが支持されているのは主にファンの皆様の間でなのか、新しいお客様はどうか、どういったお客様がお買い求めになっているのか。データを用いることでこれらを明らかにすることができます。そしてこの傾向が年齢や性別を問わず、すべてのお客様の間で見られるようになった時点で、デザイン部門やビジネス上の意思決定を担当する者へフィードバックすることができます。

マーケティングについてはどうでしょうか。データや AI がそこで役に立つという話をよく聞きますが。

最新のキャンペーン、特にヨーロッパで大いに役立ちました。われわれが「Live Loose」と呼んでいるものです。このデータは卸売企業の皆様とより知的なコミュニケーションを可能にし、トレンドに関して自社チャネルで良い反応が得られているものはどれか、バギーなスタイルのトレンドでのさらなる展開について当社ができる支援は何かをお伝えすることを可能にしています。

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データにおいて一番重要なのは、それをいかに活用するかです。効果を短期間で得られ、かつハードルが高すぎない領域を探りました。

今、多くの企業が貴社と同じようにデータを AI の基盤とすべく取り組んでいます。Levi’s では現状どの段階まで進んでいるのでしょうか。

ML についていえば、現時点ではかなり成熟した機能を実現できています。価格最適化、サイズ最適化、お客様へのレコメンデーションなど、お話ししたソリューションの多くはすべて ML によって最適化を行っています。使用するモデルは自社で構築したものもあれば、Google Cloud で用意されたものもあり、さらに両者を組み合わせて使用する場合もあります。

ここまでは伝統的な ML レベルのものですが、生成 AI についても利用し始めてしばらく経ちます。当初はオープンなモデルを、その後は Google の PaLM 2 を使用しています。最近の爆発的な普及以前から、当社ではコンテンツや翻訳の初稿を生成するのに生成 AI を利用してきました。すべてに人間が参加する仕組みを維持しており、 全自動化は採用していませんが、大きな時間の節約になっています。生成 AI によって商品説明や翻訳されたコンテンツがウェブサイトに掲載されるまでの時間が短縮されました。また、ブランドに合わせてモデルがトレーニングされているため、コンテンツにあるべきブランドのトーンを維持するのに役立っています。

AI がデザインやクリエイティビティの面でより幅広い影響を持つようになるとお考えですか。

デザインに関しては常に「サイエンス」よりも「アート」に重きが置かれます。当社のデザイナーは次の大きなトレンドを見通し、テザインするという仕事において最高の能力を持っています。ですので、当社にとっては AI がデザインに影響を持つよりも、テクノロジーを活用してデザイナーの仕事やビジネス全体を効率化するかが重要になります。

すべての優れた小売企業やブランドと同じように、当社でも AI のような新しいテクノロジーを試行、テストして、それらが真の意味での効果をもたらし、かつ拡大展開が可能かを見ています。デザインにおける AI の応用については、まだ検討のごく初期段階にあります。これまでに得られた知見としては、ドレープのしかた、ダメージ加工やウォッシュ加工における小さな違いなど、デニムのような生地が持つ微妙なニュアンスをテクノロジーが捉えるまでには至っていません。

AI がどのようにデザインに役立つかは時とともに明らかになるでしょうが、現時点では、当社のデザイナーとパートナーのすべての仕事をより容易にすることに焦点を置いています。 ®

-Transform 上級編集者 Matt A.V. Chaban

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