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リテール

旅が変わる、顧客体験が変わる: AI が導く次世代パーソナライズの最前線

2025年11月21日
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Lacey Duncan

Global Content Lead, Travel & Hospitality, Google Cloud

Cindy Falschlehner

Director, Incubating Industries, Google Cloud Consulting

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旅行・ホスピタリティ業界は今、AI の普及と変化する消費者・従業員のニーズや期待によって、前例のない変革期を迎えています。移動が中心となるこの業界では、かつてないスピードで物事が進んでいます。

このような状況下で時代に追いつこうとするリーダーたちにとって、今注目すべき旅行業界の4つのトレンドを紹介します。

1. 旅行者は、ユーザー属性と行動の両面で変化

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)収束後の旅行ブームが落ち着く中、旅行を牽引する世代は X 世代やベビーブーマーから、デジタル ネイティブである Z 世代やミレニアルズへと移行しつつあります。スマートフォンや検索、ソーシャル メディアに慣れ親しんで育った消費者は、買い物や旅行の行動において、それ以前の世代とは大きく異なる傾向を示します。

彼らは「自分が理解されること」「充実したセルフサービス」「途切れのないシームレスな体験」を当然のこととして求めます。また、写真や動画で旅のインスピレーションを得た瞬間から、ホテルをチェックアウトしたり、クルーズ船を降りたり、帰りの飛行機に乗る瞬間まで、一貫してパーソナライズされ、文脈を理解したやりとりやセルフサービスの選択肢を期待しています。これは単なる好みの問題ではありません。実に 71% の消費者が、企業には“サイトを自分で操作する”のではなく、“自分に合わせたパーソナライズされた対応”をしてほしいと期待しているのです

この変化により、旅行ブランドは、多くの人に当てはまるアプローチから、以前のやりとりを記憶し、直販や第三者チャネルの垣根を越え、ホテル、クルーズ、航空、レンタカーなど、1 回の旅行に複数の要素が含まれることを認識する、文脈に合ったスムーズな体験へと移行することが求められています。個々のユーザーに焦点を当てることは、収益に明確な影響を与えます。実際、76% の消費者が、パーソナライズされたエクスペリエンスが見つからないと不満を感じると答えています。

個々の文脈を理解するには、構造化データと非構造化データをリアルタイムで組み合わせて活用することが必要です。たとえば、旅行予約の入力として動画を取り込んだり、自然言語での検索クエリに対応したり、旅行者がどのチャネルを使っても一貫した応答を返したりすることなどです。ロイヤリティは信頼によって生まれ、信頼はプロセスをシンプルにし、あらゆるチャネルで一貫した対応を行うブランドによって築かれます。

Google Cloud の旅行および宿泊業界のお客様は、すでに AI を活用して、ユニークでパーソナライズされた体験の提供に成功しています。

2. 従業員の姿も、世代構成と行動の両面で変化している

2025 年末までに、米国の労働者の約 3 分の 2 がデジタル ネイティブになると推定されています。旅行者と同じように、彼らは主に Gmailスプレッドシートドキュメントなどのクラウドベースの仕事と生産性向上ツールを使用して育ってきた世代です。

このテクノロジーは進化を続けており、従業員が最も重要な業務に集中できるようにしています。たとえば、空港やホテルなどの複雑な環境の管理者は、リアルタイムの勤務スケジュール最適化を活用できます。コンタクト センターのエージェントは、AI アシスタンスを利用して、顧客対応に注力できます。そして航空機整備士は、AI による作業支援と検証機能を活用できます。

この変化により、従業員は適切なツールをあらゆるデバイスで、いつでも、どこでも利用できるようになり、より安全かつ効果的に業務を遂行し、優れたサービスを提供できるようになりました。

Gemini EnterpriseGoogle Workspace などの Google ツールは、従業員の働き方を再構築し、コラボレーション、生産性の向上、従業員の成果の促進のための新しい方法を提供します。

  • AirAsia は、共有ツールとして Gemini Enterprise を導入し、即戦力の AI を誰もが使える環境を整えています。チームは、自分たちの役割に特有の業務に合わせて必要なエージェントを構築でき、単調な作業から戦略的な価値創出へとシフトしています。

  • AirAsia  はまた、BigQuery と Vertex AI を活用して運用効率を向上させ、複雑な課題に対するデータ処理を加速し、ビジネスのアジリティと収益の成長を促進しています。

  • Virgin Voyages は Google Cloud と提携し、Gemini Enterprise 上で 50 を超える AI エージェントを導入しています。その中には、共同開発の第1弾となる特化型 AI エージェント「Email Ellie」も含まれており、コンテンツ制作のスピードを 40% 向上させ、同社の 7 月の過去最高売上に貢献しました。

3. Google は、旅の発見が始まり、意思決定が行われる場所

調査によると、旅行者が旅全体の 61% の時間を、インスピレーションを得たり、検索や計画を立てたりすることに費やしており、実際に旅行予約などの従来の旅行エコシステムに入る前に多くの時間を使っていることがわかっています。これはオンライン コンテンツの影響を大きく受けています。なぜならソーシャル メディアは旅行や観光の計画を立てるための主要なチャネルであり、多くの消費者が  YouTube(41%)、Facebook(38%)、Instagram(37%)といったプラットフォームを、旅のインスピレーションを得るための第一の情報源として挙げています。」

現代の旅行者の旅は、もはや「行き先」から始まるのではなく、「問い」から始まります。旅は、インスピレーションを得た最初の瞬間に始まり、旅行者は会話のような自然な言葉を使用し、アイデアを見つけ、形づくっていきます。Google で日々行われている旅行関連の検索のうち、15% 以上はこれまでに一度も検索されたことがない新しい内容です。旅行者は、旅を発見するために、他のどのチャネルよりも Google 検索を利用しています。この初期の探索が行われる動的で個人的な空間において、予約が行われるずっと前に意思決定がされます

旅行ブランドにとって重要なのは、この「発見の段階」で、ユーザーの関心に沿った情報を提供することです。顧客が関心を持った瞬間に出会うことです。テキスト、音声、動画、写真からのリアルタイムのシグナルを活用することで、企業はコンバージョン率や収益性、関連商品の購入率、そして最終的な顧客満足度を高めるような有意義なコンテンツを提供できます。旅行者が最初にアイデアを思いつく瞬間から、ブランドがそれに応えるまでのこの全体のエコシステムは、Google のツール群によって支えられています。検索、マップ、YouTube、フォト、フライトなどの消費者向けプロダクトに加え、Gemini アプリや Gemini Enterprise、Vertex AIBigQueryGoogle 広告プラットフォームなどの、すべてをつなぐ企業向けプラットフォームが、その原動力となっています。

  • ヒルトンは、AI を活用した検索や YouTube など、Google のサービス全体でジレニアル世代の旅行者とつながる取り組みを行っている大手ブランドの一つです。
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4. AI がチャネル間の境界を曖昧にしている

旅行者が旅行ブランドとどのように、どこで関わるかは、これまで以上に複雑になっています。旅行の意思決定に至るまでの道のりは、もはや直線ではなく、さまざまな接点が複雑に絡み合う動的なネットワークになっています。

現代の旅行者は、途切れのないマルチチャネル体験を期待しており、デバイスやプラットフォームの間を自在に行き来します。たとえば、旅のきっかけはテレビで見た YouTube 動画から始まり、スマートフォンでフライト検索へと移り、Google Gemini でホテルのおすすめをチェックするといった流れです。ブランドのウェブサイトやオンライン旅行代理店でプランを閲覧する、アプリやメッセージでフライトを変更する、Google 検索からカスタマー サービスを見つけて直接連絡するなど、あらゆる行動において柔軟性が求められます。

こうしたチャネル間の相互連携は、旅行ブランドにとって非常に大きなチャンスです。Google 検索と YouTube キャンペーンを併用することで、他のすべてのメディアを組み合わせた場合よりも広告費用対効果が 21% 向上することが示されています。かつては単一のチャネルの領域だったものが、今では旅行者がいる場所に合わせて広がるようになっています。つまり、リアルタイムで、かつ質問の文脈に即して対応できなければ、的外れな複数の回答を返してしまうリスクがあるということです。

旅行者が十分な情報をもとに意思決定できるようにし、一貫した対応を取ることは、ロイヤルティを高めるうえでますます重要になっています。ここで最も価値のあるツールとなるのが Google AI です。たとえば Google 検索の新機能 AI Overview では、ユーザーが複雑なトピックをすばやく理解できるようになっており、潜在顧客の 60% が、意思決定プロセスがより迅速かつ簡単になったと回答しています。こうしたチャネルの境界を曖昧にしているのが Google の Gemini モデル です。Gemini は、Google の知識ベースおよび人間の多様なコミュニケーション手段(自然言語、音声、テキスト、写真、動画)にネイティブに統合された唯一の AI 基盤モデルです。

この変化を受け入れることの緊急性は明らかです。 2027 年までに、業界リーダーの約 87% が、AI アシスタントを顧客体験全体に統合すると見込んでいます。この変化を積極的に取り入れた企業は、スムーズで手間のない体験を提供し、競争優位を築くことができます。そのためには、構造化データと非構造化データの両方をネイティブに扱える BigQuery のようなデータ プラットフォームと、大規模かつリアルタイムの意思決定を可能にする Vertex AI のような強力な AI プラットフォームが必要です。

  • BrushBuck Wildlife Tours は、Gemini in Google スプレッドシートを使用してデータを分析し、動物の目撃パターンを特定しています。これにより、ガイドは野生動物ツアーのカスタマー エクスペリエンスを向上させることができます。この AI 搭載ツールは、過去のデータを分析して、年間を通じた動物の出現傾向を明らかにします。得られたインサイトを活用することで、ガイドは「どこへ行くべきか」をより正確に判断でき、結果としてツアーの質が向上しています。
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  • Google の AI を活用したフライト検索ツール である Flight Deals の特長は、Google の高度な AI がユーザーの検索意図を深く理解し、それに合った目的地を見つけ出す点にあります。さらに、リアルタイムの Google フライトのデータを利用して、数百もの航空会社や予約サイトから関連性の高い最新のオプションをすばやく表示し、Google の各プロダクトを横断的に統合した、強力でシームレスな検索体験を実現しています。

ここまで見てきたトレンドは、旅行・宿泊業界は今、大きな転換点にあるという根本的な事実を示しています。旅行ブランドは、断片化されたシステムやサイロ化されたデータから脱却し、リアルタイムで文脈を理解し、個々に合わせた体験をゲストや従業員に提供していく必要があります。

準備が整ったら、旅行・ホスピタリティ業界向けにカスタマイズされたものを含む、101 以上の生成 AI のユースケースと技術的な設計図をご覧ください。これらのリソースは、今すぐに実現できる可能性を示すとともに、革新的なアイデアを現実に変えるための指針となります。

※この投稿は米国時間 2025 年 10 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

-Lacey Duncan、Google Cloud、旅行および宿泊業界担当グローバル コンテンツ リード
-Cindy Falschlehner、Google Cloud コンサルティング、インキュベーティング業界担当ディレクター

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