アウトドア用品最大手のデジタル小売業者 Backcountry：クラウド移行の次の課題、生成 AI 導入への準備を進める

※この投稿は米国時間 2024 年 5 月 31日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

インターネットは世界中の人々を結び付けて、コミュニティ構築に一役買ってきました。それ以外にもインターネットは様々な可能性への扉を開いてきました。冒険家たちが辺境の地へ足を踏み入れられるように、その土地の情報を提供することもそのうちの 1 つです

1996 年、スキージャンプの元オリンピック選手とその幼なじみだった起業家が手を組み、Backcountry が誕生しました。彼らは、ゲレンデ外でのスキーや登山といった冒険への情熱を分かち合い、アウトドア愛好家がより簡単に人里離れた辺鄙な場所へもアクセスできるように取り組みました。スタート時は、ユタ州パークシティにあるガレージで雪崩ビーコンを販売するだけのスモールビジネスだったものが、BackcountryStore.com となった今では、そこで販売される商品だけでなく、スピリットや情熱で人々を魅了する世界的なアウトドア小売業者へと成長しました。

現在の Backcountry のビジョンは明確です。それは「最高のアウトドア用品を、最高の方法で提供すること」です。ウェブのパイオニアとして、テクノロジーは常に当社の優位性の中核を担ってきました。私たちのお客様が、最新のスキー、アイゼン、テント、寝袋、ブーツ、ロープ、自転車をはじめとする、冒険を実現するための当社の数十万点もの商品から自らに合った商品を買い求めるのと同様に、私は最高技術責任者として、当社の使命を果たすための最新のテクノロジーを常に探し求めています。

しかし、巨大な岩壁を征服するための最適なルート選択に迷う登山家のように、当社のエンジニアは一般のインフラストラクチャ製品の枠に縛られてしまい、次世代の優れたデジタル商品開発に時間やエネルギーを割くことができなくなっていました。サーバーのラッキングやスタッキング、セキュリティ管理、テクノロジーの絶え間ないアップグレードなどに忙殺され、エンジニアは自分たちの得意なことに集中することが困難な状態だったのです。

エンジニアの仕事をサポートする適切なツールを提供するためには、自社の設備を見直す必要がありました。ちょうど、過去 2 年間使用してきたバックエンド システムを全面的に見直す時期だったのです。

取り組んだのは、新しいシステムの導入でした。これによって、開発時間を短縮でき、最適なタイミングで最適な割引を提供したり、必要なギアを確実に見つけるサポートを可能にし、サービスの向上を実現できるようになったのです。また、安定したサイトを維持管理することで売上を伸ばすこともできました。

クラウドで最高のパフォーマンスを実現

以前は、新しいサーバーの設定が必要になった場合は、古いサーバーのマウントを解除し、新しいサーバーを調達してラッキングとスタッキングを行う必要がありました。この作業は時間と手間がかかるものでした。作業も非効率なもので、数週間もの時間がかかることもあり、多くのリソースを使う必要がありました。Google Cloud を使用することで、数秒で環境を立ち上げることができ、需要の波に合わせて拡張できるようになりました。これは、年間を通じて大きな売上が発生する小売業者にとって特に重要なことです。クラウドによって当社のサイトの信頼性、スケーラビリティ、セキュリティが大幅に改善され、多くの問題が解決しました。この背後には、多くのことを自動処理してくれる Google Cloud の存在があります。

現在、当社のすべてのデータは、ML が組み込まれたフルマネージドのクラウド データ ウェアハウスである BigQuery に保管されており、分析は、セルフサービスの統合ビジネス インテリジェンス プラットフォームである Looker で実行されています。これらのソリューションが一体となって当社のビジネスの頭脳となり、新たなインサイトの発見や組織全体の重要な意思決定に役立っています。

2023 年、Backcountry は、完全に Google Cloud 上で稼働する初めてのホリデー シーズンを迎えました。当社の CEO は、30 年以上にわたる小売業の経験の中で最もスムーズなホリデー シーズンだったと報告しています。

AI でさらなる飛躍を目指す

クラウドへの移行で躍進した Backcountry は、2024 年と 2025 年に向けて、クラウドネイティブ機能を拡張することを見据えた強固なロードマップを構築しました。

新しい検索ツールを導入したほか、新しい生産情報管理システムの開発も進めており、中核となる e コマース業務のリプラットフォームにも取り組む予定です。新しいインフラストラクチャとクラウドベースのツールを、在庫や価格の管理、バーチャル試着、商品コンテンツの拡充など、ビジネスのあらゆる側面に適用していきます。また、BigQuery と Looker の強固なデータ基盤のおかげで、当社のビジネスに最適な AI ユースケースを選べるようにもなりました。

当社は近い将来、多くのプロセスに AI を導入することを計画しており、このテクノロジーが小売業界の状況を根本的に変えると確信しています。

エンジニアはすでに、コードやテストケースに AI を使用して、日々の業務を簡素化しています。新しい商品情報管理システムは、Google Cloud の生成 AI 機能を使用して商品コンテンツを充実させ、説明文やレイアウトなどを最適化し、最高のエンゲージメントを実現しています。e コマース プラットフォームが進化することで、カスタマー エクスペリエンスをさらに向上させる AI 主導のソリューションが可能になります。

AI の取り組みに着手したばかりの組織に私がアドバイスをするなら、AI を熟知したパートナーと組み、その後、自社のビジネスニーズに応じたツール強化に取り組むことをおすすめします。当社は、Google Cloud の支援を受けることで、最先端のテクノロジー、実践的なサポートチーム、連続したイノベーションの文化を活用できるようになりました。

信頼できるパートナーと組むことで困難を伴う登山を成功させることができます。私たちは未来の大きな動きに備えて、Google Cloud と信頼できる協力関係を築いています。

-Backcountry、最高技術責任者 Igor Cherny 氏