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製造業におけるデータ サイエンス: ​​誰もがデータ サイエンティストに

2023年5月2日
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Google Cloud Japan Team

製造業者が抱える大量のデータを価値に変えるサポートをするクラウド

※この投稿は米国時間 2023 年 4 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

パンデミックによる経済の変動、サプライ チェーンの不足、経済的および政治的な不確実性、気候変動は、製造業の仕事について数十年にわたって行われてきた議論をさらに深めることになりました。それはどんな仕事なのか。誰がそれをやるべきか。やりたい人はいるのか。なぜ十分な人材を確保できないのか。人材は戻ってくるのか、などの議論です。

欧州委員会によると、製造業界では 2013 年から 2019 年の間に欧州連合全体で約 75 万人の雇用が失われました。2021 年、Deloitte のチームは、米国もまた不安定な状況にあると指摘しました。前年には、製造業においてほぼ同数の求人が未充足にもかかわらず、工場から 50 万人以上の雇用が失われました。連邦準備制度理事会のセントルイス支部の調査によると、2021 年末には 90 万件もの製造業の求人が未充足なままであり、工場の管理者にとって事態はますます深刻になっています。求人件数は現在もその水準で推移しています。

特に問題なのが、製造作業が非常に高度になるにつれて、自動化が進んだデータドリブンな機械を操作するために必要なスキルも進化し、従来型の多くの労働者は専門性がそれに追いついていないことです。

Google Cloud の製造および輸送産業担当ディレクターである Simon Floyd は、最近のインタビューで「こうした工場は、たとえ設立が古かったとしても、祖父や父の世代の工場とは違います。製造業における最も難しい課題に対応可能な膨大な量のデータがあります」と述べています。

AI、高度な分析、機械の最適化、または予測メンテナンス。これらはどれも、基盤となる堅実なデータ運用がなくては実現できないものです。そして、そのデータに基づいて構築できる労働者も必要です。

Google Cloud の製造 / 自動車 / エネルギー担当グローバル テクニカル ディレクターである Charlie Sheridan は、次のように述べています。「データは製造業のあらゆる業務の中心です。優れたデータ基盤がなければ、AI ベースの最適化など、付加価値のあるユースケースを構築するのに苦労するでしょう。今起こっていることは、各企業が産業用データクラウドの全体的なコンセプトに注目し始めていることだと思います。」

そのような視点を持つと、データを最大限に活用できる労働力の存在が不可欠であることが見えてきます。つまり、必要なスキルを考えたとき、製造エンジニアにはデータ サイエンティストに近いスキルが求められるようになっているのです。。データ スキル プラットフォームの QuantHub は、2020 年に、北米だけでも業界全体で 25 万人のデータ サイエンティストが不足していると推定しました。製造業者は必ずしもテクノロジー企業が集中する地域に立地していないので、この課題はさらに深刻です。
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「多くの製造業者はデータ サイエンスに挑戦する上で 2 つの壁に直面しています」と Floyd は言います。「製造業者のデータ プラットフォームは、何世代にもわたるレガシー システムで構成され、共通のデータ活用方法がないこと、そして、それらを組織全体の多くの部門で、データ サイエンスを誰もが活用できるようにする最新のツールが必要であることです。」

幸いなことに、クラウド機能は進化しており、単にデータを収集するだけでなく、データ サイエンスの専門知識がなくても高度な作業を実行できるよう、データの整理と分析を優れた方法で行えるようになっています。


製造業におけるデータ サイエンスの役割

製造業におけるデータ サイエンスは、ビジネス インテリジェンスと工場運営という 2 つの大きなカテゴリに分類できます。

ビジネス インテリジェンスの側面では、データ サイエンティストは、需要予測、在庫管理、価格の最適化、予測分析など、他の多くの業界と同様なことを行います。データ サイエンスにより、各企業は、自社のビジネスの現状を把握し、次に何が起こるかを予測して、情報に基づく、より適切な意思決定を行うことができます。

製造業に特有なところでは、データ サイエンスは業務上のプロセスの改善に役立ちます。工場のロボットやその他の機械にはすべてセンサーが搭載されており、これまで以上に大量のデータがエンジニアに届きます。この情報を最適化し、活用することは、製造業者がビジネスを変革できる絶好の機会になります。

「こうした機械から収集できるデータの量は膨大です。何百万、何十億ものデータポイントを活用することが可能なのです」と Sheridan は言います。

工場における業務改善にデータサイエンスを活用できる領域は数多くあります。

  • モニタリング: 機械異常の前触れを察知し、ダウンタイムと廃棄を減らします。

  • 最適化: 工程上、スループットと品質を向上させるのに最適なポイントを特定します。

  • 分析: 障害の根本原因を特定し、機械の改善の迅速化に役立ちます。

  • サプライ チェーン管理: 不足や遅延なく、必要なすべての原材料を工場の現場に確保します。

  • 自動化と AI: データ サイエンスが基盤となり、品質保証のための Visual Inspection AI の有効化や、機械性能の最適化や測定など、自動化を進める上での基盤となります。

  • 予測メンテナンス: 機械がいつ、どのように故障するかを予測するだけでなく、ラインの品質と信頼性を向上させます。

  • シミュレーション: デジタルツインを使用した可視化や、潜在的な意思決定の影響に関するデータを取得するためのシナリオ作りが可能です。

Sheridan は、「データを可視化し、機械レベルの機能と運用の観点から工場のパフォーマンスを実際に理解することが重要です。現場の技術者からさまざまな職種のオペレーターまで、博士号ななくても、誰でもデータ サイエンティストになれるようにしたいと私たちは考えています。」と話します。

エンジニアがデータ サイエンスを運用できるようにする

FS Fehrer Automotive は、車両の座席および内装部品の世界的な主要メーカーの一つであり、1 日あたり最大 1 万個のフォーム部品を生産できるラインを備えています。また、1 つの部品につきが最大 2,000 のデータポイントが生成されており、数年前に、自社で日々膨大な量のデータが生成されていることに気付きました。

Fehrer の中央運用サービス担当ディレクターである Tobias Riedel 氏は、「生成できるデータ量が多すぎて、適切に保存することができませんでした。非常に大量のさまざまな情報が生産ラインから得られますが、データの専門知識がなく、プロセス エンジニアの経験しかなかったため、私たちはこれを実際に分析することはできませんでした。」と話します。

ここ数年、同社は運用の自動化に投資して、生産指標を改善し、品質を最適化してきました。Fehrer が 2010 年頃にデータの整理、運用を始めたときは、ドイツで近隣の大学の応用科学部と連携しながらスプレッドシートで機械のデータを保存するといったことから取り組む、ゼロからのスタートでした。

AI を使用する目的は、データを活用することでプロセスをより堅牢にするために、機器のすべての機能を分散し、1 人の人間に依存しないことです。

FS Fehrer Automotive, ディレクター Tobias Riedel 氏

同社は、データの需要と可能性を満たせるよう成長するには、こうした時代遅れのシステムから脱却する必要があることをわかっていました。

Fehrer は、Google Cloud の Manufacturing Data Engine とビジネス インテリジェンス プラットフォームである Looker を使用して、生産工程全体のデータ ストリームを収集して理解するための措置を講じました。同社は現在、生産ラインの一つを対象とした試験運用プロジェクトを実行しており、今後数年で完全なグローバル オペレーションにまで拡大することを目指しています。

「より幅広い範囲のオペレーター」

目標は、経験豊富なプロセス技術者に生産データの観察、理解、分析を自在にできるようになってもらい、仕事をより簡単かつ効率的にすることです。基本的には、Manufacturing Data Engine の試験運用により、同社のエンジニアはデータ サイエンティストのように作業できるようになります。

「私たちは、より幅広い範囲のオペレーターが製造プロセスにアクセスできるようにするためのソリューションを探していました。さらに、機械のデータが効率に直接与える影響を把握できるソリューションを見つけたいとも考えています」と Riedel 氏は言います。

要するに、この試験運用は、作業者が実際の作業を行いながら、ソフトウェアが提供する情報とガイダンスに基づいて、リアルタイムの運用上の意思決定と長期的な戦略的意思決定の両方を改善できるようにすることを目指しています。

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Riedel 氏は次のようにも話します。「当社では予測品質と呼んでいますが、それを実装する方法を見つけたいと考えています。関連するセンサー値が一定の異常な領域にドリフトしている時期を特定し、不良品製造される前にオペレーターに警告できるようにしたいと考えています。そしておそらく、今後数年内に、特定のセンサー値が変化すると、機械が自動的に設定を変更する機能を開発できるでしょう。」

データ運用を成熟させた Fehrer の次のステップは、より多くの分析、自動化、AI を活用して自社のプロセスを改善することです。同社は、光学検査をより効率化するために、Google Cloud の Visual Inspection AI を使用した試験運用プロジェクトに着手しました。これにより、AI と運用の改善がデータ収集の改善につながり、自動化と AI が強化されるなどの好循環を生み出すことができます。

「Visual Inspection AI を使用する目的は、経験だけでなくデータを活用し、プロセスをより堅牢にするために、機器に関する技術的なノウハウを広げ、1 人の人間に依存しないことです」と Riedel 氏は述べています。

高度な AI の統合

Fehrer のような企業は、数年前に比べて、より簡単に AI を工場内に拡張できるようになるでしょう。最近のデータベース管理、AI、ML の進歩により、データ サイエンティストとエンジニア、いずれも楽になりました。たとえば、エンジニアは必ずしもゼロから AI / ML アルゴリズムを構築する必要はありません。AutoML を使用すると、ML の専門知識が限られている開発者でも、高品質のモデルをトレーニングできます。データモデルがドリフトし始めると、ML オペレーション(MLOps)は継続的なモニタリングと最適化を提供し、デプロイ中のモデルを調整できます。

従来型のシステムには動的機能が欠けていることが多く、異常検出をバッチジョブに依存しているため、機器が示す問題の兆候への対応が遅くなりがちでした。Google Cloud の TimeSeries Insights API は、大量のストリーミング データに対してレイテンシの低い検出を提供するように設計された最先端の異常検出ソリューションです。Manufacturing Data Engine の一部である TimeSeries Insights API を使用すれば、製造業者は機器設備の規模に関係なく、リアルタイムのモニタリングと異常検出に移行できます。

工場における AI の可能性は、業界全体で模索され始めたばかりです。強固なデータ基盤により、製造業者は AI を使用した取り組みからより多くのことを引き出すことができます。

「データは、機械の状態予測や在庫の予測など、AI ベースの機能に資する形で整理できます。AI や、ML による高度な分析を応用できる実用的なアプリケーションはたくさんあります」と、Floyd は述べています。

製造業者がクラウド テクノロジーを活用してデータから価値を生み出す方法の詳細については、Google Cloud の電子書籍「データと AI: クラウドはどのように製造業者の大規模改革をサポートしているか」をご覧ください。

- Google Cloud、上級編集者 Matt Chaban

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