The Prompt: ジェネレーティブ AI プラットフォームの 5 つの柱 + エグゼクティブが関心を寄せるジェネレーティブ AI と過去の破壊的技術の比較

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 10 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
このところ、ビジネス リーダーたちの間では、ジェネレーティブ AI が話題の中心となっています。急速に進化を続け、変革をもたらすこの分野の話題をフォローできるよう、「The Prompt」と題したシリーズを通じ、Google がお客様やパートナーと接するなかでの気づきや、Google の AI の最新動向を紹介していきます。今回は、Google Cloud の AI & ビジネス ソリューション担当グローバル VP の Philip Moyer が、ジェネレーティブ AI プラットフォーム機能の 5 つの柱について説明し、ビジネス リーダーたちがジェネレーティブ AI をこれまでにあった破壊的技術とどう比較しているかについて見ていきます。
先日開催されたGoogle Cloud主催の Executive Forum では、Google のエキサイティングな 2 つのジェネレーティブ AI プロダクトの一般提供について発表されました。1 つは、Generative AI Studio と Model Garden を利用した「Vertex AI でのジェネレーティブ AI のサポート」で、これはお客様による基盤モデルへのアクセス、カスタマイズ、デプロイ、管理を可能にするものです。もう 1 つは「Generative AI App Builder の Enterprise Search」で、これは組織がジェネレーティブ AI と社内データを組み合わせた検索エンジンや chatbot をすばやく簡単に構築できるようになるものです。Mayo Clinic、GA Telesis、PhotoRoom、Priceline などのお客様の活用事例も発表され、企業、行政機関、開発者がこの破壊的技術を使ってイノベーションを起こせるようにするという Google の取り組みにおいて重要な 1 日となりました。
今回の「The Prompt」では、2 つのポイントから Executive Forum の意味合いに注目したいと思います。1 つ目は、 本シリーズでは「なぜ組織にはモデルだけではなくプラットフォーム機能が必要なのか」について多くの議論を投げかけてきたのですが、このイベントでの Google Cloud の CEO、Thomas Kurian による基調講演において、効果的なプラットフォームに何が含まれるべきかの概要が見事に示された点です。2 つ目は、今回、参加された方に簡単なアンケートを実施したことでジェネレーティブ AI に対するエグゼクティブのアプローチを知ることができ、最新の調査結果を把握することができた点です。では、さっそく本題に入りましょう。
ジェネレーティブ AI 戦略を支えるプラットフォームの 5 つの柱
組織は、優れたコンテンツ作成、情報の統合と整理、ビジネス プロセスの自動化、魅力的な顧客体験の構築など、幅広いユースケースにジェネレーティブ AI を活用したいと考えています。これらのユースケースを実現するためには、リーダーが以下の 5 つの側面からプラットフォームの機能を検討する必要があります。
インフラストラクチャ: 基盤モデルがコンパクトになったことで、ノートパソコンなどの消費者向けハードウェア上でモデルを実行するといった新たな可能性が生まれています。しかし、非常に高度なモデルを大規模に実行する場合、最先端のインフラストラクチャに代わるものはありません。クラウド プロバイダの利用により、必要なときに必要な分だけリソースを投入できるようになり、マネージド サービスを活用することで、IT の管理ではなく構築に集中できるようになるなど、明らかな潜在的メリットがあります。それでも、組織の要件によっては、特定のクラウド サービスが他のクラウド サービスよりも適している場合があります。例えば、プロバイダは GPU や TPU などさまざまなインフラ機能を提供し、ワークロード、レイテンシー要件、予算に最適なオプションを選択できるようになっているでしょうか。単にコンピューティング パワーを提供するだけなのか、それとも組織の意思決定能力を高められるものなのか。
基盤モデル: これまでの記事で、組織がジェネレーティブ AI 戦略を強化するには基盤モデル以上のものが必要であることを強調しました。しかしそれでも、出発点となるのは依然として基盤モデルです。組織は、テキストやコードから、話し言葉、画像、さらに将来的には音声や音楽まで、さまざまなモデルとモダリティにアクセスする必要があります。一部の企業にとっては、独自の基盤モデルをゼロからトレーニングする価値があるかもしれません。しかし、費用やその複雑さに加え、払った労力に対してメリットが限られることを考えると、ほとんどの組織はクラウド プロバイダやオープンソース コミュニティが提供するオプションを活用するものと予想されます。
モデルのチューニングとアプリの構築: 基盤モデルへのアクセスは出発点にすぎず、組織が必要としているのは、ニーズに合わせてモデルをカスタマイズできて、簡単にアプリやデジタル エクスペリエンスに統合できる方法です。これらの要件を満たすには、さまざまなプラットフォーム機能が必要となります。たとえば、新しいデータに合わせてモデルを細かく微調整する必要のあるユースケースもあれば、モデルの重み付けを変更しない軽微なカスタマイズのみが必要なユースケースもあります。同様に、カスタマイズの形式によってはデータ サイエンスの専門知識が必要となりますが、多くの場合、組織は機械学習(ML)の細かい点よりも、開発者やスキルアップしたナレッジ ワーカー、ビジネス アナリストが、アプリを作成したり AI で強化したワークフローを作成したりできるようにすることに重点を置いています。
ユビキタスな AI 支援: 多くの組織は、カスタムアプリを自分たちで構築するだけでなく、すべてのビジネス ワークフローにおいて AI を活用して生産性を向上させることを望んでいます。これには Google Workspace のようなジェネレーティブ AI を組み込んだ生産性向上スイートが考えられますが、将来的に、企業は、Duet AI for Google Cloud が提供するように、自社のプラットフォーム全体でコンテキストを認識した AI コラボレーションを提供することで、組織全体にわたってこうした支援を期待するようなるはずです。
エコシステム: クラウド サービスは、組織が大規模なテクノロジー企業と共同でイノベーションを起こす優れた方法です。しかし、たとえそれが最大規模かつ最先端を行くクラウド プロバイダであったとしても、1 社だけでサービスを提供できるわけではありません。エコシステム パートナーは、クラウド プロバイダがサービスを具体化し、顧客により多くのオプション(追加のインフラストラクチャや基盤モデルの選択肢、コンサルティング サービス、オープンソース コミュニティやイノベーション コンソーシアムとのつながりなど)を提供するのに役立ちます。
これらの柱は、組織がベンダーやテクノロジーパートナーを評価し、今必要なリソースだけでなく将来必要となるオプションと柔軟性を確保できるようにするための助けとなります。それでは次に、最新のアンケート結果を見ていきましょう。
エグゼクティブを対象とした簡単なアンケートから得られた新たな洞察
Executive Forum の参加者に、これまでのアンケートにはなかったいくつかの質問をしました。そのメインとなったのは、他の重要なテクノロジーの進歩と比べた場合のジェネレーティブ AI の位置づけについての質問でした。当然ながら、多くの参加者が、ジェネレーティブ AI をモバイル デバイスやクラウド サービスなど、過去 20 年間に登場した最大級の破壊的技術を引き合いに出していました。目を見張ったのは、回答者の最大グループがさらに壮大な比較対象を選んだ点です。イベントに参加したリーダーの多くが、ジェネレーティブ AI の影響力をインターネットの影響力に匹敵すると回答しました。
ジェネレーティブ AI はここ数十年で最大の技術的進歩となる可能性があるとエグゼクティブが考えていることを裏付けるように、ほぼすべての回答者が、近いうちにあらゆる組織の成功に AI が不可欠になるという考えに同意を示しました。参加者たちは、今はこのテクノロジーによる革命の初期段階であると認識しており、ほとんどの組織が「ジェネレーティブ AI に対する取り組みのスタート地点にいる」と考えています。同時に、参加者たちは、このテクノロジー導入を加速する必要があるというプレッシャーを感じています。この移行に対してすでに「後れを取っている」と感じている回答者は過半数をわずかに上回っており、ジェネレーティブ AI テクノロジーの導入に「緊急性を感じていない」と回答したのは 25 人中わずか 1 人程度でした。科学的な調査ではありませんが、このような結果は、ジェネレーティブ AI が戦略上不可欠になりつつあることを明確に示しています。
急速に進化するこの状況を企業がどう乗り切ろうとしているのかを読み取れる結果として、回答者の 80% 以上が、AI には短期的投資と長期的投資の間のトレードオフが必要となるだろうと答えました。以前の調査と同じく、回答者の大多数は、AI 戦略の実行に必要なスキルが社内にある程度存在するものの、依然として重要な専門性が不足していると述べています。
今すぐ構築を始めましょう
本シリーズを開始して以来、ジェネレーティブ AI のさまざまな新しい基盤モデル、ツール、アプリが市場に投入され、この破壊的技術は、最先端の研究者向けの分野から、あらゆるレベルの専門知識とあらゆる種類のニーズに対応できるエンタープライズ向けサービスへと変容しました。今後も Google Cloud からジェネレーティブ AI の最新ニュースをお届けする予定です。それまでの間、Google の基盤モデルとプラットフォーム ツールを、パーソナライズされた便利で楽しいアプリやエクスペリエンスに変える方法に関する新しい動画をぜひご覧ください。



- Google Cloud、AI &ビジネス ソリューション担当グローバル VP Philip Moyer