Gen App Builder の Enterprise Search で検索エクスペリエンスを改善
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
お客様との会話において、ジェネレーティブ AI のユースケースとして特に強い関心が見られるのが「ジェレネーティブ検索」です。企業のリーダーは、従来のエンタープライズ検索には限界があると認識しています。検索語句からパターン マッチングに基づいてリンクのリストが生成されますが、より関連性の高い回答を見つけ出すには手作業での入念な調査が必要です。リーダーは、ジェネレーティブ AI には、より効果的かつ徹底的にデータを活用するチャンスがあると捉えています。たとえば、会話型アプリに自社のデータを取り込めば、複雑な質問に回答する、多数の情報源を合成して精度の高い要約を生成する、ユーザーが求める情報を迅速に提供するといったことが可能になります。
Generative AI App Builder(Gen App Builder)の Enterprise Search を使用すれば、カスタムの chatbot やセマンティック検索アプリケーションをわずか数分で作成できます。最小限のコーディングだけで始めることができ、さらにエンタープライズ グレードの管理とセキュリティが組み込まれています。お客様は、パワフルな Google の検索テクノロジーとジェネレーティブ AI 基盤モデルを社内データと組み合わせることで、エンタープライズ アプリケーションや消費者向けのウェブサイトで関連性の高い、パーソナライズされた検索エクスペリエンスを提供できます。
これまで、ジェネレーティブ AI と検索テクノロジーを組み合わせたアプローチのほとんどは、企業向けとして規模と信頼性の面で十分とは言えませんでした。たとえば、長いドキュメントをいくつかのチャンクに分割し、各セグメントを AI アシスタントに入力して検索を構築する方法は一般にスケーラブルではなく、複数の情報源を参照して効率良く分析情報を提供できません。同様に、多くのソリューションは処理できるデータの種類が限られており、エラーが発生しやすく、データ漏洩の危険性もあります。オーダーメイドのセルフサービス アプローチも通常はそれほど簡単ではなく、本番環境グレードのソリューションでは多くの場合、エンベディング データと基盤モデルの統合やユースケース データの大規模なテストといった複雑な作業が必要になります。組織がこうした取り組みを行ったとしても、結果として得られるソリューションは機能の完全性や信頼性に欠ける傾向があり、高品質な結果を得るには多大な時間とリソースが必要になります。
このような課題から、組織がジェネレーティブ検索を効果的に実装するには、一般的に優れた基盤モデルにアクセスできるだけでは不十分であることがわかります。組織には、特定のデータだけを対象としてモデル出力を作成する機能も必要になるでしょう。これは出力の関連性を高め、間違いや「幻覚」が含まれる可能性を下げるためです。また、一般に自社データ、そのアクセス方法、使用方法を保護する安全対策も必要になります。さらに、データ サイエンスや ML の専門知識がなくても機能を簡単に使用できるように、プロセスが最初から高パフォーマンスかつスケーラブルである必要もあります。
それでは、お客様が Gen App Builder の Enterprise Search によって、どのようにこうした規模と信頼性の課題を回避し、ジェネレーティブ検索の活用をすぐに開始できるかを見ていきましょう。
ジェネレーティブ AI とエンタープライズ データが交わる場所
開発者は Gen App Builder の Enterprise Search を使用して、精度と関連性のために特定のデータソースを対象とする出力の生成、画像などのマルチモーダル データの処理、回答の要約の生成方法の制御が可能な検索エンジンを作成できます。マルチターンの会話がサポートされるため、ユーザーは出力をよく読んでからフォローアップの質問をすることができます。お客様は自社のデータを管理下に置くことができ、医療機関の場合は HIPAA 遵守もサポートされます。これらはすべてフルマネージド サービスとして利用できるため、開発者はクラウドの複雑さに悩まされることなく構築に集中できます。
Gen App Builder のすぐに使用できる機能により、データのチャンク化、エンベディングの生成、インデックスの管理といった作業が不要になります。開発者は、ML の経験がなくても、複雑さを感じずにシンプルなインターフェースを使用して、ほとんどまたはまったくコーディングせずにほんの数分でアプリを構築できます。大量のドキュメントを取り込める機能と、非構造化データと構造化データの両方のサポートを利用して、Gen App Builder でアプリを構築することで、お客様は長年の悩みであった組織全体から関連性の高い情報を見つけ出すという課題を解決し、これまで何時間もかかっていたタスクをアプリによるクイック検索や会話型探索に変えることができます。
これらの機能を支えているのは、Google の基盤モデルと、次のようなさまざまな Google 検索テクノロジーです。
セマンティック検索。自然言語処理と ML の手法を使用して、ユーザーのクエリ入力からコンテンツと意図の関係を推測することで、従来のキーワード ベースの検索手法よりも関連性の高い結果を提供します。
ユーザーが情報を検索する方法に関する Google の知識。
関連性の把握に関する Google の専門知識。検索結果の表示順序を決定する際に、コンテンツの人気度やユーザーごとのコンテンツのパーソナライズなどの要素を考慮します。
より高度なユースケースとして、Gen App Builder を Vertex AI と簡単に統合して、基盤モデルを詳細に調整し、柔軟な入出力形式で検索を行うことができます。
Google の他の AI プロダクトと同様に、Gen App Builder は Google の AI に関する原則に沿って評価されており、これを反映してプロダクトにはバイアス、有害なコンテンツ、有益でない出力に対する多くの安全保護対策が施されています。Gen App Builder の Enterprise Search は、数分で構築されるプロトタイプであっても、多くのカスタム コンポーネントを含むアプリであっても、業界や専門知識のレベルを問わず、あらゆるお客様に堅牢でユーザー フレンドリーな一連のツールを提供します。
Enterprise Search を活用したイノベーションの事例
Google の Trusted Tester プログラムを通じて Gen App Builder の Enterprise Search にアクセスできるようになってから、すでに多くのお客様がこのプロダクトを新しいユースケースに活用しています。
Priceline は、従業員向けの社内検索エンジンや顧客の旅行計画を支援する新しい chatbot など、さまざまなプロジェクトに Gen App Builder と Vertex AI を活用しています。Priceline の chatbot は、パソコンとモバイルの両方に対応する予定で、顧客が常時稼働のパーソナライズされたエクスペリエンスを通じて適切な情報をより迅速に見つけられるように支援します。たとえば、「マンハッタンのミッドタウンで、セントラル パークまで徒歩圏内のいい 4 つ星ホテルは?」や「ホテルの予約をもう 1 泊延長できる?」といった言外の意味を含む質問にも回答してくれます。
「Priceline は、斬新なジェネレーティブ AI から当社のお客様と当社のビジネスにとっての持続的な価値を生み出せるように方向性を定めています。これは単に最新テクノロジーを取り入れるだけのことではなく、実質的にイノベーションの目標を適切な課題や機会に定めることにもなります」と、Priceline の最高技術責任者、Marty Brodbeck 氏は語ります。「Google Cloud を AI イノベーションのパートナーとして、パーソナライズされた計画や旅行のインスピレーションからカスタマー サービスに至るまで、当社は最速で最もシームレスな、情報豊富な予約エクスペリエンスをお客様に提供するという取り組みをいっそう強化しています。」
Vodafone は、ドキュメントを迅速かつ安全にクエリし、特定の商業利用規約を検索して理解できるようにするツールの構築に、Gen App Builder の Enterprise Search と基盤モデルを試験的に使っています。Vodafone Voice and Roaming Services は、世界中の通信事業者と 10,000 を超える契約を結んでおり、その契約書のフォーマットは、PDF、画像、複雑な表などさまざまです。このようなドキュメントの保管場所を探すのは、多くの場合、従業員にとって時間のかかるプロセスです。
「当社は 210 か国で 700 以上の通信事業者が提携するローミング対応エリアに 5G などの新しいサービスを日々導入し、それを管理することで、Vodafone と当社パートナーのビジネス ユーザー、観光客、モノのインターネット デバイスのすべてが国外でも接続を維持できるようにしています。当社は、Gen App Builder の Enterprise Search を使用して、契約書を安全かつ迅速に検索するインテリジェントなアシスタントを構築しています」と、Vodafone Voice and Roaming Services の CEO、Sherif Bakir 氏は語ります。「ジェネレーティブ AI を使用して、従来なら時間のかかっていたプロセスを加速し、生産性と運用効率を向上させています。」
B2B 関係向けの顧客モニタリングとインテリジェンスのソリューションを作成するソフトウェア スタートアップである Trender.ai は、Gen App Builder を使用してソーシャル メディア、一般公開ソース、CRM データからの情報を合成し、ユーザーが見込み客や顧客とより生産的で個人的な関係を築くことができるプロダクトを構築しています。
Trender.ai の共同創業者、Betsy Bilhorn 氏は次のように語ります。「Gen App Builder の Enterprise Search を使用することで、以前のロードマップでは 12~18 か月かかると予想していた作業を 1 か月で終えることができました。個人のソーシャル データやウェブデータなどの公開されたデータからモデルを構築してトレーニングし、『この人にとって最も重要なことは何か』や『この見込み客から反応を得るには、いつ、どのように接触すればいいか』といった質問ができるようになるには、最低でも 12 か月かかると予測していました。昨年の時点で、このようなビジョンを達成するのは、当社のような小規模なスタートアップにとってはかなり大胆な試みだと思っていましたが、これを 1 か月足らずで達成できました。」
ソリューションの検索はやめて分析情報の活用を始めましょう
Google は、お客様が Gen App Builder の Enterprise Search を使用して優れた方法でデータを活用し、新しい分析情報を入手し、有用でパーソナルかつ効率的なエクスペリエンスを構築されることを期待しています。
お客様にこのような目標を達成していただけるように、本日より、許可リストに登録されている(つまり、アクセスが承認されている)お客様向けに、Gen App Builder の Enterprise Search の一般提供を開始いたします。アクセス方法と料金の詳細については、Google Cloud セールス チームにお問い合わせください。また、Gen App Builder の Enterprise Search 内に 2 つの新機能、フォローアップ質問への回答をサポートするマルチターン検索と、意味的に関連するコンテンツを見つけるためのおすすめコンテンツが追加されました。これらは現在プレビュー版でご利用いただけます。プレビュー版には、Google Cloud の Trusted Tester プログラム経由でアクセスできます。Gen App Builder の Enterprise Search について詳細を確認し、登録してアクセスするには、こちらのウェブページをご覧ください。
Enterprise Search のジェネレーティブ AI 機能は、Contact Center AI や Document AI などの既存のソリューションにも導入していきます。一例として、今月から Document AI ウェアハウスでジェネレーティブ AI を使用した検索をプレビューできるようになりました。ジェネレーティブ AI の最新情報を入手するには、The Prompt や、Google Cloud による変革の経営者向けジェネレーティブ AI 入門もぜひご覧ください。