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通信

生成 AI でコンタクト センターを変革

2024年3月11日
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Google Cloud Japan Team

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※この投稿は米国時間 2024 年 2 月 28 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

Google Cloud は、ほぼ 10 年にわたってコンタクト センターに AI イノベーションをもたらしてきました。Contact Center AI(CCAI) ソリューションは、通信業界を先頭に、金融サービス、自動車、小売、医療など、ほぼすべての業界に導入されています。この間に、何千万件もの通話のふるい分けが、コンタクト センター エージェントの負担を軽減し、コールセンターの生産性向上と顧客のネット プロモーター スコア(NPS)の改善に効果をもたらすようになりました。

通信業界は CCAI ソリューションの対象となる数多くの業界の一つにすぎませんでしたが、業界全体の NPS が比較的低く、顧客体験を向上させたいという要望が強かったことから、すぐにソリューションの導入が加速しました。現在 Google Cloud は通信業界に幅広く携わっており、事前構築の分類、トピック モデル、仮想エージェント、人間のエージェントの支援、デプロイを高速化するコンポーネントやインテグレーションなど、通信業界固有の機能の開発も手掛けています。プロダクト エンジニアリング(業界のユースケースに合わせた独自の機能を開発)、カスタマー エンジニアリング(関連するパイロットや概念実証(PoC)を提供)、プロフェッショナル サービス、パートナー エコシステムなど、Google Cloud には組織全体で蓄積してきた専門知識があり、その知識を活かして通信業界を支援する体制が整っています。

具体的には、Google Cloud のパートナーは支援のないカスタマーケアに Google Cloud の CCAI テクノロジーを採用し、コールセンター エージェントの時間が取られる一連のよくある問題点に対応しています。最近まで、請求書の説明、支払い計画、トラブルシューティング、修理などのトピックには、カスタマー サポート用 chatbot を利用して決定的なデシジョン ツリーと確率的な自然言語処理(NLP)で対応していました。

最近では、Google Cloud はコンタクト センターで AI を活用してきた経験と知識を総動員して、技術的な意思決定と方法論を拡張し、既存のお客様と新規のお客様のどちらにも CCAI のプロダクトと方法論への生成 AI のインテグレーションを開始しました。その主な理由は次の 5 つです。

  1. 生成 AI により、購入決定からアクティベーション、顧客の維持に至るまで、通信業界内外の顧客の購入プロセスに幅広く対応できます。
  2. 生成 AI により、価値実現までの時間が最小化され、お客様は大幅に少ない投資で高レベルのパフォーマンスを達成できます。つまり、カスタムモデルの削減と、非構造化データソースとのより深いインテグレーションが可能になります。
  3. 生成 AI により、開発プロセスを改善して、インタラクティブ音声レスポンス(IVR)とスクリプト化された chatbot の世界から、インテリジェントなステアリングと支援的な仮想エージェントの世界へと移行できます。
  4. 生成 AI により、通信事業者はエージェントの「負担軽減」からエージェントの「生産性向上」へと方向転換でき、習熟までの時間を短縮してエージェントのパフォーマンスを向上させる支援機能が得られます。
  5. 生成 AI はパーソナライズされた、プロアクティブで予測的な顧客エンゲージメントの実現を支援します。

では、これがどのようにして実現されるかを詳しく見ていきましょう。

顧客の購入プロセスへの対応

会話型 AI を活用したソリューションでは、販売や顧客の離脱(つまり「顧客の維持」)に関連するクエリなど、AI を利用してはいけないユースケースがいくつかありました。お客様(およびテクノロジー プロバイダ)は通常、顧客の意図や感情の機微を理解してエージェントが共感することは、あまりにも複雑で断定的には解決できないと認識しており、収益の数字に大きく影響するユースケースに対して自動化ソリューションを構築することには保守的でした。要するに、仮想エージェントは、人間の感情を理解して反応するには「人間らしさ」が足りていませんでした。

大規模言語モデル(LLM)は、感情を含む意図を明示的にも暗黙的にも理解する「スーパーパワー」を備えており、(特に思考の連鎖により)創発的推論能力が立証されています。実際、診断ケアに関する Google Cloud の独自の調査では、LLM に共感力があることが明らかになっています。

このような LLM 機能を組み込むことで、会話型生成エージェントが顧客に応対できる領域が広がりました。そのため、比較ショッピングからアクティベーション支援、低リスクの維持、クロスセル / アップセルまで、ユーザー行動すべてに AI を利用できるようになります。これにより、CCAI のバリュー ドライバは「運用効率」から「収益実現」へと本質的に転換されます。

構造化データおよび非構造化データとのインテグレーションを強化

複雑なデータソース(構造化データおよび非構造化データ)とのインテグレーションは、LLM の応答性と精度の向上に加えて、ハルシネーションの低減の鍵となります。ここで注目すべき 2 つの手法が、検索拡張生成(RAG)と「推論と行動」(ReAct)プロンプトです。

  • RAG はデータを効果的に取得し、LLM プロンプトを拡張して、LLM が最初にトレーニングされたときにはなかったデータにアクセスできるようにします。ただし、モデルは変更されず、顧客のプライバシーとセキュリティが確実に維持されます。
  • ReAct プロンプトは、LLM に実行すべきことを推論、または(言葉により)思考させる手法です。「Thought(思考)」、「Action(行動)」、「Observation(観察)」アプローチは、特にその推論に関連する可能性のある追加情報を取得した場合に、LLM がタスク固有の行動を通じて推論するためのフレームワークとなります。

Vertex AI Search の内部では、生成エージェントは RAG やその他の手法を活用してウェブサイト、ドキュメント、メディア、画像、イントラネット、LLM にわたるナレッジベースをインデックス化し、顧客のクエリと意図を理解するとともに、会話形式でバックデータを表示します。これらのエージェントは、本質的に情報提供を目的として設計されたものです。顧客に即時のサポートを提供すると同時に、コンタクト センターのエージェントやウェブサイトからファネルの上層部のボリュームを大量に取り除きます。

生成 AI を使用して、ドキュメントやウェブサイト内のデータに対する顧客や内部使用のクエリに回答できますが、最新のマルチモーダル モデルを使用すれば、パワフルで使いやすいセルフサービス型のユースケースを作成することもできます。たとえば、顧客が問題のある請求書の写真を撮って添付ファイルとして送信すると、生成 AI はその重要な要素(請求日、請求項目など)を理解して、顧客(または顧客をサポートしている人間のエージェント)に状況に応じたヘルプを即座に提供できます。たとえば、顧客がブロードバンド ルーターの問題を診断しようとしているとします。画像とメディアのインデックスを作成して同様の問題を画像検索できるようにすると、顧客はルーターの写真を送信するだけで済み、顧客の負担が軽減されます。

マルチモーダルな生成 AI の世界では、顧客は何が問題なのかを理解する必要はありません。実世界で見たものを共有すれば、生成 AI が CSP のエンタープライズ データに基づいて何が問題なのかを解明してくれます。これにより、カスタマー サポートだけにとどまらず、ネットワークのトラブルシューティング、現場業務、マーケティングとセールス、分析にまで AI の用途を拡大できます。

chatbot から支援する仮想エージェントへ

Google Cloud の仮想エージェント開発プラットフォームには生成機能が直接組み込まれています。そのため、請求書の支払いなどのユースケースでは高度に制御されたトランザクション対話をサポートできると同時に、CSP のビジネスに関する幅広い多様な質問にも対応でき、考えられる通話の理由を 1 つずつすべて定義する必要はなくなります。生成 AI はこれに最適なテクノロジーであり、複雑な対話を定義する代わりに、指示またはハンドブックを利用して必要な手順を自然言語で提供できます。人間のエージェントにランブックに従うように指示するのと同じように、生成 AI にハンドブックに従うように指示するだけです。これにより、費用がかかりすぎたり設計が複雑すぎたりしていたユースケースを、数行の自然言語の指示で実装できるようになります。

これらのアプローチを使用すると、情報を提供するもの、トランザクションを行うもの、目標を追求するものなど、あらゆるタイプの仮想エージェントで、生成フローとスクリプト化された会話パスを自由に組み合わせて対応できます。

エージェントの負担軽減からエージェントの生産性向上へ

エージェントの負担軽減はコールセンターの効率化を実現する重要な要素であることに変わりはありませんが、エージェントの生産性向上についてはさらに大きな機会があります。生成手法はエージェントの生産性向上に大いに役立ち、すぐに価値をもたらして価値創出までの時間を最短化する要約や生成ナレッジ アシストなどのソリューションにより、平均処理時間、通話の後処理、習得時間などの指標が改善されます。生成 AI はこれらのプロダクトの基盤であり、文字起こしから要約を作成し、ナレッジベースからエージェントが推奨する応答を引き出します。

コンタクト センターは非常に細分化されており、通話は小規模なスペシャリスト チームのキューに入ります。企業はこれらのスペシャリストのトレーニングと育成に多額の資金を投資しています。生成テクノロジーは、既存のスペシャリストを活用すると同時に、その専門知識をより幅広いユーザーが利用できるようにすることで、さらなる専門性の必要性を軽減します。コンタクト センター全体の運用効率を向上させるには、それぞれのエージェントまたは通話に対してだけでなく、コールセンター組織全体に対して、推奨される応答を生成してプロアクティブなリアルタイムのガイダンスを提供することが不可欠です。つまり、専門性を軽減し、エージェントの細分化を減らし、ジェネラリストを増やし、それらのジェネラリストがリアルタイムですぐに問題を解決する方法に関する情報を増やす必要があります。また、これにより、トレーニングへの先行投資が削減され、エージェントの離職率が高い場合に埋没費用が生じるリスクも軽減されます。

エージェントの生産性向上ツールに話を戻すと、モデルのチューニング、プロンプトのチューニング、特定のコンタクト センター シナリオでのデータの前処理と後処理、たとえば、(要約またはトピックの特定のための標準の基盤モデルではなく)通話の音声文字変換と要約、または通話の音声文字変換のトピック モデリングに焦点を当てた場合、業界をリードする精度、整合性、コンプライアンスを実現できることが確認されています。

また、このような文字起こし、要約、生産性向上ツールは、エージェント育成の領域の特定と、通話中および通話後のエージェントのコーチングの両方に使用でき、全体的な品質向上に役立ちます。

パーソナライズされたプロアクティブで予測的なカスタマー エクスペリエンス

Google Cloud はこれらを統合し、プロダクト イノベーションを利用して、顧客とのやり取りに対応するためのよりパーソナライズされたエクスペリエンスを構築することに取り組んでおり、AI を利用してエンゲージメントにさらなる先見性と予測をもたらしています。カスタマー ケアをより効率的でユーザーに関連性の高いものにするために役立つ多数のリアルタイムおよび過去のシグナルがあり、これらのシグナルはすべて LLM のコンテキストとして吸収できます。保証分野でもセールス分野でも、顧客がデジタル タッチポイントとやり取りし、アプリケーションが生成 AI を使用して顧客のプロファイルに基づいてより適切な推奨内容を提供する世界を想像してみてください。人間のエージェントが顧客に対応しているときには、支援する仮想エージェントが顧客管理(CRM)システムやカスタマー エクスペリエンス管理(CEM)システムから顧客情報をプロアクティブに取得し、ユーザーのクエリをリアルタイムで予測して、サポート ドキュメントやウェブサイトから得た、顧客の状況への対処方法についての推奨内容を即座に順序良く提供することができます。こうして人間のエージェントと仮想エージェントが協力することで、よりパーソナライズされたエクスペリエンスを提供できます。顧客は各自の特定のニーズに基づいた対応が受けられるため、満足度とロイヤルティの向上につながります。

MWC Barcelona 2024 では、CCAI プラットフォーム、Agent Assist、Insights、Vertex AI Conversation の最新のプロダクト イノベーションと生成 AI でこれらすべてを実現する方法を示すデモを実施する予定です。デモツアーのご予約については、Google Cloud の専任担当者までお問い合わせください。今年バルセロナでお会いできるのを楽しみにしています。

Google Cloud が CSP と連携して通信事業者の AI 対応を推進している方法について詳しくは、こちらをクリックしてください。

-会話型生成 AI エンジニアリング担当マネージング ディレクター Kevin Shatzkamer

-会話型生成 AI エンジニアリング担当シニア マネージャー Pak Ming Wan

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