Google Cloud で保険請求処理を変革するためのリファレンス アーキテクチャ
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 1 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
保険請求処理のカスタマー エクスペリエンスを変革することは、保険請求プロセス自体の変革を推進する重要な原動力となります。これには、請求処理ワークフローのさまざまな側面に対応し、請求処理が大きく依存するデータをモダナイズする総合的なアプローチが必要です。請求処理を変革することで、プロセスから手作業を減らし、処理時間と費用を削減できるため、請求関連の支払いが減少するとともに、保険契約者の満足度が向上します。
Verisk と Coalition Against Insurance Fraud の調査によると、自動車保険会社はクレーム リーケージを原因として年間保険料の 14%(約 290 億ドル)を失っています。保険金詐欺による年間損失は 600 億ドルにものぼり、損害保険会社の損失の約 10% が詐欺によるものです。PwC による別の調査では、41% の顧客が、デジタル機能の不足を理由に保険会社を切り替える可能性が高い、またはとても高いことがわかっています。請求処理の非効率性は、ビジネスとカスタマー エクスペリエンスに直接的な影響を及ぼします。
この記事では、定義されたリファレンス アーキテクチャの実装により連携して機能する Google Cloud テクノロジーを利用することで、組織がいかに保険請求処理を変革し、測定可能なビジネス上のメリットを享受し、保険契約者のエクスペリエンスを向上させられるかについて説明します。
Google Cloud の保険請求リファレンス アーキテクチャのご紹介
保険請求処理を変革するための Google Cloud のリファレンス アーキテクチャは、Google Cloud Architecture Diagramming Tool から入手できます([Reference Architectures] -> [Financial Services] -> [Insurance Claims] にあります)。
リファレンス アーキテクチャでは、Google Cloud の AI およびデータ分析プラットフォームを他の Google Cloud テクノロジーとともに使用し、次のユースケースに対応しています。
請求の提出 / FNOL: オンラインを通じて数分以内に請求を報告し、FNOL を受信する保険会社のアプリケーションに保険契約者が請求書類を大規模にアップロードできるようにします。
請求の割り当てと分析: 提出された書類の分類、画像の分析、請求の区分を行います。
請求の決定、修理分析: セルフサービスの損害評価、リアルタイムの請求ステータス、自動化された決済または迅速な決済を利用できます。
クレーム リーケージの分析: 請求データを分析および報告し、潜在的なクレーム リーケージと実際のクレーム リーケージを評価および特定します。
レポートと分析情報: 詐欺のモニタリングを行い、請求ワークフローに関するリアルタイム分析情報を取得し、請求の分析情報をマーケティングと販売の用途に使用します。
リファレンス アーキテクチャの使用方法
リファレンス アーキテクチャは、Google Cloud を利用して保険請求プロセスを総体的に変革するためのフレームワークを提供します。アーキテクチャ全体をそのまま実装することも、一度に 1 つずつ機能を実装することもできます。
保険請求の変革過程においてどの段階にあるかは保険会社ごとに異なり、リスクの許容度とそれぞれの予算ニーズも保険会社によって差があります。そのため、リファレンス アーキテクチャについては、戦術的(優先順位の高い機能から小さく始める)、戦略的(複数の機能上の問題を特定し、測定可能な影響を得るためにまとめて対処する)、変革的(大胆に取り組む)というモードのいずれかを採用できます。リファレンス アーキテクチャで実現できること
Google Cloud の保険請求リファレンス アーキテクチャは、次の機能を提供します。
請求の提出
フォーム、紙の PDF、スキャンした画像など、あらゆるチャネルを通じて FNOL 提出書類を受け取ります。
提出された請求データの形式に関係なく、書類を大規模に取り込みます。
インライン データ変換を実行して、短期および長期にわたりデータを保存します。
請求の分析
請求処理をインテリジェントに加速するための高度な分析を行います。
取り込まれた書類のフォーム フィールドとテーブルを解析します。
PDF や画像からテキストを抽出します。
AI を使用して請求書類を分類し、請求を区分し、詐欺行為検出モデルを実行します。
不動産または車両の損害の評価が必要な請求シナリオについて損害をリアルタイムで評価します。
請求の決定
請求に関する意思決定を自動的に、または現在よりも大幅に速く行います。
請求を検証し、逆選択モデリング シナリオを実行します。
損害評価シナリオで修理費用を見積もります。
支払いを予測し、STP(ストレート スルー プロセッシング)の場合は請求を自動的に決済します。
STP 以外の場合は、アソシエイトが迅速な意思決定を行えるよう、必要な情報をすべて提供します。
クレーム リーケージの分析
請求データを分析および報告し、潜在的なクレーム リーケージと実際のクレーム リーケージを評価および特定します。
モデルとビジュアリゼーションを作成すれば、平均的な和解費用の傾向、請求ごとの準備金の変更数、請求者の最初の連絡の平均時間、代位弁済の回収の傾向などの分析をはじめ、いくつかのパラメータについて分析情報を得ることができます。
レポートとデータの活用
コンテンツを大規模に保存して統合し、必要なときに必要な場所で必要な人が利用できるようにします。
法規制を遵守するために、主要ストレージに比べほんのわずかな費用で、コンテンツをアーカイブします。
特定の請求に関する分析情報を統合し、API を介してマーケティングや販売などの社内チームと共有して、よりパーソナライズされたサービスを提供します。
請求処理ワークフローを変革することで、次のような複数のメリットが得られます。
迅速なマルチチャネル請求提出プロセスと応答性により、顧客満足度が大幅に向上します。
データ分析と AI 機能が効率を生み出し、費用の削減と請求の調整速度の上昇を実現します。
効果的な請求の検証と管理の検証により、請求関連の支払いの精度向上を実現します。
リアルタイムの分析情報は、保険契約者のニーズに基づいた保険商品のクロスセルおよびアップセルに役立ちます。
Google Cloud で保険を変革する理由
上で触れたリファレンス アーキテクチャ以外にも、Google Cloud は保険ビジネスの総体的な変革において他社と一線を画す立場にあります。このような総体的な変革を支援し、実現できる Google Cloud のテクノロジーをいくつかご紹介します。
Google BigLake を使用すると、請求、引受、その他の保険機能のデータを大規模に統合できるため、マーケティングやコンタクト センターを含むすべての事業部門でデータを利用できます。
分析のための BigQuery、データメッシュを構築するための Dataplex、高度な AI および MLOps のための Vertex AI を使用して、請求、引受、マーケティングなどのさまざまな事業部門全体でデータを活用できるように、データメッシュを構築する総合的なデータ エコシステムを利用できます。
Google Earth Engine は地理空間処理サービスであり、不動産のリスク エクスポージャーの評価とポートフォリオ管理のために BigQuery を利用して地理空間処理を大規模に実行できます。保険のアジャスターおよびアンダーライターには、地理空間主導の分析のためのインタラクティブなプラットフォームが提供されます。
公開データセットは、このデータセットを使用した動的な保険料設定モデルを含むいくつかのシナリオで、請求アナリストとアクチュアリーをサポートします。
- Google Cloud、金融サービス担当プリンシパル アーキテクト Kishore Gopalan
- Google Cloud、プリンシパル アーキテクト責任者兼上級エンジニア Anshu Kak