顧客事例

ソースネクスト株式会社:GCP の高精度音声認識・翻訳技術が支える 手のひらサイズの翻訳機

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「世界一エキサイティングな企業になる」というビジョンに基づき、製品を通じて喜びと感動を世界中の人々に広げることを目指すソースネクスト株式会社(以下、ソースネクスト)。2019 年 12 月に累計出荷台数が 60 万台を突破した、ボタンを押しながら話しかけるだけで通訳がいるかのように対話ができる AI 翻訳機「POCKETALKⓇ(ポケトーク)」(以下、ポケトーク)の開発について、ソースネクスト株式会社 執行役員 技術戦略室 シニア製品設計スペシャリスト 川竹 一 氏に話を伺いました。

利用している Google Cloud Platform サービス:Cloud Speech-to-TextCloud Text-to-SpeechCloud Translation API


音声認識や翻訳エンジンは GCP を採用、自社では UI 開発に注力し短期間での商品化を実現

「ソースネクストは、海外のソフトウェアをローカライズして、国内で販売するビジネスからスタートした会社です。海外でのビジネスに英語が必須でしたが、言語の壁は高く、その壁がなくなれば、より一層ビジネスがやりやすくなると感じていました。言語の壁をなくす方法は 2 つ。1 つは人が言語を学習すること、もう 1 つは機械翻訳を利用することです。そこで 我々は翻訳機を作ろうということになりました。2001 年ごろのことです」と話すのは、執行役員 技術戦略室 シニア製品設計スペシャリストの川竹一さんです。

しかし当時のネットワーク環境は、ブロードバンドがスタートしたばかりの状況で、翻訳ソフトや音声認識技術もPCでしか利用できませんでした。リアルなコミュニケーションの場で利用できる翻訳機の本格開発は、その後のスマートフォンの登場と高速ネットワーク環境の進化を待つことになります。

2017 年 10 月、グローバルで第 4 世代移動通信システム(4G)が利用できるようにり、ディープ ラーニングの実用化により、音声認識や翻訳の精度も向上してきた背景の後押しも受け、初代ポケトークが誕生します。初代のポケトークは非常に評判がよく、初回生産台数分は予約開始から約 11 日で完売。すぐに再販を決めますが、その間にも数多くのフィードバックが寄せられました。これらの要望に対応するため、開発から製造までを自社で行うことに切り替え、 2018 年 9 月、2 代目となるポケトーク W を誕生させます。開発のコンセプトは、「母国語の違う初対面の話者同士が簡単にコミュニケーションできるツール」です。

このポケトーク W の開発プラットフォームとして、Google Cloud Platform(GCP)の機械学習による発話からテキストへの変換サービスである Cloud Speech-to-Text、および高速かつリアルタイムの翻訳サービスである Cloud Translation API が採用されています。

Cloud Speech-to-Text が採用された理由は、120 の言語と方言を高い精度で認識できること。一方、Cloud Translation API が採用されたのは、100 以上の言語の翻訳を高い精度で実現できることが理由でした。川竹さんは、「加えて、GCP を使い慣れていたこと、必要なドキュメントがそろっていたことなども採用した理由の 1 つでした」と話しています。

まず重視したのが、ポケトークの持ち主はもちろん、初めて使う相手にも分かりやすい簡単な操作性を実現することです。

「IT リテラシーがあまり高くない利用者でも、箱から出してすぐに使えることを目指しました」(川竹さん)。ポケトーク W にはグローバル通信機能が内蔵され、別途 SIM を購入することなく、世界中のどこでも利用できるような工夫もされています。利用者は 50 代~ 70 代がボリューム ゾーンで、海外旅行で利用されるケースが多くなっています。また、インバウンドの増加を受け、日本国内でのさまざまな店舗における外国人旅行者への対応や、企業内の外国人労働者とのコミュニケーションなどにも利用が拡大しているといいます。

「ポケトークの翻訳のしくみそのものはとてもシンプルですが、初めて出会った人同士がストレスなく会話できるスピードや、翻訳ボタンのみで直感的に使えるインタフェースなど、クリアしなければならない条件がありました。特に、音声認識や翻訳エンジンを一から開発すると、膨大な時間と工数が必要です。GCP を利用することで、音声認識や翻訳は GCP に任せ、スピードやインタフェースなど、実用面の工夫に時間と工数を集中することができました。」(川竹さん)

累計出荷台数はすでに 60 万台を超え、個人のみならず、企業での利用も増えつつあります。「同様の翻訳機は他社からも提供されていますが、ポケトークの強みは、音声認識の精度が高いことです」と話す川竹さん。本体にノイズ キャンセラーを搭載することで、周囲の雑音に影響されることのないコミュニケーションを実現しています。今後は、国内だけでなく、海外の販路も拡大していく予定。2019 年中には、世界 20 か国以上に展開する計画です。

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1 か月間で 101 の国と地域で利用されている ー 専用グローバル SIM 利用実績(日本からの利用を除く)を元にソースネクスト社による集計(2018年8月)

高精度の音声認識と翻訳、広がる利用シーン

ポケトーク W の開発では、2017 年末より音声認識や翻訳エンジンの実験を開始し、2018 年初めより翻訳機のプロトタイプの作成を開始。Android デバイスでテストを繰り返し、約 9 か月という短期間で開発しています。川竹さんは、「GCP による開発は、非常に楽でした。開発に携わったエンジニアが GCP を使い慣れていたこともありますが、すごいスピードでサンプルプログラムを作ってくれました」と話します。

ポケトーク W の開発に GCP を採用した最大の理由は、音声認識や翻訳の精度でしたが、高速なレスポンスも採用理由でした。また、言語のカバレッジも広く、少ないコストで試すことができることもメリットの 1 つでした。プロトタイプ終了後に、いくつかの音声認識や翻訳エンジンを比較検討した結果、GCP の採用を決めています。川竹さんは、「特に音声認識に関しては、GCP はバツグンに高い評価でした」と話しています。

システムの基本構成は、音声認識、翻訳、音声合成の 3 ステップ。ポケトークで認識した音声を Cloud Speech-to-Text により音声認識処理をしてテキスト化し、このテキストを Cloud Translation API で、あらかじめ設定された言語に翻訳、Cloud Text-to-Speechにより、言語ごとの音声に変換してポケトークに返す仕組みです。複数社のエンジンをミックスして利用しており、言語対や利用状況により最適なエンジンに切り替えることで、幅広い地域や言語で高い精度を確保しています。 

音声を認識し、翻訳して、音声合成をするのは、リレーのような仕組みです。そのため、トップランナーでもある音声認識が、音声を正しく認識できないと、その後の翻訳の精度も低下してしまいます。川竹さんは、「GCP は、音声認識の精度が非常に高いので、結果として高い翻訳精度を実現できました。常に 1 番いいテクノロジーを使うのが、システム開発におけるポリシーです」と話します。

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ポケトークは、すでに交通機関や宿泊施設、小売店、飲食店、工場、自治体、教育機関など、さまざまな業種に利用の場を拡大しつつあります。川竹さんは、「ある EC サイトのユーザーレビューでは、“ポケトークに命を救われました”という書き込みもありました。友人が日本で転んでけがをしたときに、病院でポケトークを使うことで適切な処置をしてもらうことができたということでした」と話します。

「正直、命にかかわることもある医療機関では使われないだろうと思っていたのですが、お医者さんは、日本語が話せない患者さんの来院時、何に困っているのかが分からず苦労しているということでした。生活のあらゆるシーンで、ポケトークが役立つ場面が増えていると感じています。」(川竹さん)

今後の取り組みを川竹さんは、「ユーザーのフィードバックに基づいた改善をさらに進めていきたいと思っています。その一環として、レスポンスの向上を目的に、サービス全体を GCP に移行することも検討しています。今後もポケトークのようなヒット商品を生み出すべく、IoT デバイスの開発に注力していきます。そのためのサポートを、Google Cloud には期待しています」と話しています。


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執行役員 技術戦略室 シニア製品設計スペシャリスト 川竹 一 氏

ソースネクスト株式会社

1996 年 8 月、ソフトウェアの企画・開発・販売を事業として設立。その後、スマホアプリに事業を拡大し、さらに現在は、ポケトークをはじめとする IoT デバイスの企画・開発・販売を推進。コンシューマ向け製品を中心に、数百種類のアイテムを、家電量販店、自社EC サイト、携帯キャリアの 3 つの販路により展開。登録数約 1,700 万人のユーザーデータを活用した顧客サービスの向上にも取り組んでいます。


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