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顧客事例

Looker 事例: 適切な量のデータで発見を促進する Moderna

2021年4月15日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は Looker のウェブサイトに掲載された、モデルナ社 (Moderna, Inc.) のケーススタディです。

マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とする Moderna は、メッセン ジャー RNA(mRNA)が「生命のソフトウェア」であると確信しています。 2010 年の創立以来、同社は mRNA に関する広範な研究に基づいて、 新種の医薬品の開発に取り組んできました。  

規制の厳しい業界において、Moderna は、ワクチンや治療薬の製造、承認、配布といった主要なプロセスの中でデータが極めて重要な役割を果たしていることを理解しています。2020 年に COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックが出現すると、効果的で安全なワクチンを迅速に発見することが世界的な優先事項になりました。  

正確で監査可能な、行動につながるインサイトの必要性が高まるにつれ、Moderna は最新のマルチクラウド データスタックを活用して、目前のジョブに優先順位を付けてきました。  

ジョブに最適なソリューションを見つける  

研究主導型の組織である Moderna は、戦略の立案において当初からデータを重要視していました。同社のデータドリブン戦略の中心を担うのが、ジョブに最適なツールを見つけて使用し、それらのツールを統合して最適なソリューションを社内に導入する取り組みです。  

「Moderna のデジタル方針は、最も優れた統合可能なソフトウェアを最適に組み合わせて利用することです。問題をうまく解決できるものがあればそれを利用し、なければ自社で開発します。Moderna はジョブに最適なツールを見つけ、それを統合して、全体として利用できるようにすることを信念としています。インフラストラクチャについて言えば、何か使えるもの があれば、それを統合して使用します」と、Moderna の情報学、データ  サイエンス、AI 担当バイス プレジデントである Dave Johnson 氏は説明しています。  

何年もの間、Moderna は Amazon Redshift にデータを一元化し、他のツールでそのデータを使用できるようにしてきました。これはコストと互換性の要件を満たしていたものの、Moderna の各チームでは、行動につながるインサイトにより簡単かつ迅速にアクセスできる方法を必要としてい ました。以前は、従業員の大多数は主に Excel でデータ分析を行っており、 一部の研究者のみデスクトップ版 Spotfire を利用していました。  

重要なポイント 

  • マルチクラウド データ戦略活用して、目前のジョブに最適なツールを使用し、統合する

  • 内外のデータセットを統合して、 臨床試験のデータ全体を確認できるようにする 

  • 臨床試験の多様性を高めて表現を改善する 

  • サイエンティストが手動によるデータ操作に費やす時間を削減して、研究やコラボレーションにかける時間を増やす

  • 出荷を最適化してコストを 削減し、予算目標を達成する  

これらのツールによって、データにある程度アクセスできるようになったものの、手動による作業が必要なものがまだ大量にあり、それが障壁となっていました。このような手動プロセスにより、組織全体でデータサイロが発生し、データをさらに探索する機会が限定され、また、同じレポー トに内容が異なったり競合したりするバージョンが複数存在することで 一貫性の問題が発生していました。  

従業員が組織全体にわたってデータにアクセスして検証できるようにするために、Moderna はジョブに最適なツールを探し始めました。最も重要な条件は、セルフサービスと探索を改善すること、データの品質と一貫性を維持すること、新しいツールの費用対効果が高く、Moderna ですでに導入済みのツールと統合可能なものであることでした。2016 年、 Moderna は Looker のデータ アプリケーション プラットフォームを採用 し、組織全体で信頼できる安全な指標にアクセスできるように強化しました。  

Moderna は、Looker のプロフェッショナル サービスによる戦略的ガイダンスを受けて、2 人構成の小さなチームを編成し、セルフサービス分析の基盤の構築に取り掛かりました。そしてスケーラブルで柔軟なデプロ イメントのベストプラクティスに従って、実装からわずか数週間で  Looker から信頼できるインサイトにアクセスできるようになりました。  

現在、Moderna は Amazon Redshift へのリアルタイム ETL に Etleap  を使用し、 モデルの構築、オンザフライでの変換、データ探索、セルフ サービスに Looker を採用しています。また、Google の感情分析プロセ スを使用して、チケット管理システムである ServiceNow からインサイトを引き出しています。  

「Looker は当社のマルチクラウド方針との適合性が高く、優先データ ベースを選択し、統合を活用することで、データにアクセスして行動につなげられるようになりました。全体として、Google はマルチクラウドで 大きな進歩を遂げています。そのため、ベンダーについてあれこれ考えなくても、ジョブを適切に行うために必要なものを採用するだけで済みます」と、Johnson 氏は述べています。  

Moderna の最新のマルチクラウド データ戦略により、同社は組織全体で信頼できるデータを一元化し、これにアクセスしてアクションを実行できるようになりました。  

Moderna のデジタル方針は、最も優れた統合可能なソフトウェアを最適に組み合わせて利用することです。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

臨床試験における多様性を高めて有効性を上げる  

臨床試験を実施する場合、データを収集してさまざまな臨床プロセスを管理するためには多数のシステムが関与します。また、パンデミックの拡大を追跡するための疫学データから、リスクのある集団を確認するための国勢調査や人口統計のデータまで、さまざまな外部情報が存在します。  

従来、このような情報は複数の異なるソースにサイロ化されたままになっており、臨床医は手動でデータを Excel にまとめようとしていました。このプロセスには時間がかかるうえに人為的ミスが発生する可能性もあり、さらに調査の運用に影響を及ぼす可能性のあるすべての要因を示す、最新の全体ビューを作成するのは不可能でした。Johnson 氏は次のように述べています。「すべてを 1 つにまとめて、各要因が相互にどのように関連し、 影響を及ぼし合っているかを確認するのはほぼ不可能です。」  

このようにさまざまな要因を完全に把握できなければ、臨床試験の管理者は、登録や試験の実施について十分な情報に基づいて決定を下すことはできません。  

同氏は次のように説明しています。「Looker でこれらの異種のデータソースをすべて 1 つの場所にまとめることで、説得力のあるレポートを作成して可視化できるようになり、臨床運用チームが試験についてリアルタイムで決定を下し、最高品質のデータを確保できるようになりました。」  

Moderna は、Looker を使用することで、以前よりも臨床試験の全体像を把握してアクションを実行できるようになりました。現在、同社は内部データセット(臨床業務、人種、性別、年齢、リスクグループなど)と外部データ セット(疫学、国勢調査など)について、データセット内の分析もデータセット間にまたがる分析も行うことができます。この可視性により、調査の全体像をより完全に確認できると同時に、潜在的な傾向や外れ値も特定しやすくなります。このため、Moderna は、これまで不可能だった方法で臨床試験の多様性を追跡し、高められるようになりました。  

Looker は当社のマルチ クラウド方針との適合性が高く、優先データベースを選択し、統合を活用することで、データにアクセスして行動につなげられるようになりました。 全体として、Google はマルチクラウドで大きな進歩を遂げています。そのため、ベンダーについてあれこれ考えなくても、 ジョブを適切に行うために必要なものを採用するだけで済みます。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

「社内のデータ サイエンス チームは、人種の多様性に関するカスタム指標を作成し、各地域との相対的な位置を把握するためのパフォーマンス指標を作成しました。さらに、ダッシュボードを作成して地域をまたいで調べ、サイトごとに絞り込んで、同業他社と比較したパフォーマンスの現状と、どうあるべきかを確認できるようにしています。今では独自のデータに加えてより多くの外部データソースを取り込めるようになり、臨床試験の多様性を高めてより正確な表現を追求するために、意識的な決断を行っています。Moderna のチームは、Looker の臨床試験の登録データを 1 日に何度も使用し、現在の状況とどうあるべきかをダッシュボードで常に確認して います。それを社内で共有し、リーダーシップを発揮し、採用活動を行い、 多様性を確実に生み出せるようにしています。これにより、当社の働き方が 劇的に変わりました」と、Johnson 氏は述べています。  

Moderna は、母集団とサンプルデータを分析して、COVID-19 ワクチンの検索など、すべての臨床試験にわたって情報に基づいて決定を下せるようにしています。Moderna は、Looker を使用して臨床試験内の多様な表現を追跡、改善し、公に共有することができます。同氏は次のように説明しています。「COVID-19 はマイノリティに大きな打撃を与えています。当社の目標は、当社の臨床試験が母集団を正しく表すことです。」  

調査の全体像を確認して原因分析とコラボレーションを強化  

科学的プロセスには仮説の定式化とテストが不可欠です。これを行うには、サイエンティストは信頼できるデータにアクセスする必要があります。 通常、サイエンティストは複数のソースからデータを引き出し、それを調査 して新しい問題を特定し、新しいデータを収集して追加するというプロセスを繰り返す必要があります。これには手作業が多く含まれますが、重要なプロセスです。  

「以前は、当社のサイエンティストは Excel で独自のミニデータ ウェアハウスを構築してからグラフを作成する必要がありました。技術的なスキルがある一部のサイエンティストは、Spotfire を使用して追加の分析を行っていました。Spotfire は使い方を知っているサイエンティストにとっては強力なツールです。そして、それを共有する段階で、コピー、一貫性、許可に関する問題が発生していました」と、Johnson 氏は述べています。  

今では独自のデータに加えてより多くの外部データソースを取り込めるようになり、臨床試験の多様性を高めてより正確な表現を追求するために、意識的な決断を行っています。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

Looker を実装して以来、このプロセスは大幅に合理化され、サイエンティストはこれまで手動でのレポート作成に費やしていた時間を研究や発見に充てることができるようになりました。この新しいプロセスにより、 手動でレポート作成や抽出を行うことでエラーが発生する可能性がなくなると同時に、調査データの共有、テスト、サポートがより簡単になります。  

同氏は次のように説明しています。「今では調査データはデータ ウェアハウスにあるので、サイエンティストは簡単にレポートを作成できるように なりました。データはすべて安全に保護、統合されています。Looker のおかげでサイエンティストはデータを探し回る必要がなくなり、同時にコラボレーションが改善され、迅速な意思決定が可能になりました。 データのソースが問題視されないため(コピーミスや変更がないか、どのバージョンかなど)、品質も向上しています。」  

調査データへのアクセスを Looker で一元化することにより、Moderna は、可視性と探索を改善しながら、セキュリティと正確性を確保することができました。  

出荷と物流を合理化してコストを削減  

調査プロセスでは、Moderna の現場や外部パートナー間で材料を迅速 かつ安全に出荷できることが非常に重要になります。このような要件により、すべての出荷リクエストを処理する Moderna の物流チームは常に大きな需要を抱えています。以前は、大量のリクエストを処理する必要があり、予算を大幅に上回っていました。費用の削減が必要なことはわかっていましたが、コストを削減する機会を特定するために必要な経費の可視化ができていませんでした。これに対応するため、出荷を追跡、管理するための内部ツールが構築されたものの、取引の全体像の把握や、支出と予算のリアルタイムでの比較はできませんでした。  

Johnson 氏は次のように述べています。「コスト削減を特定するには、 最初にすべての出荷を確認して、どの部門とリクエストのタイプが最もコストがかかっているかを掘り下げる必要がありました。今では、これらす べてのデータが Looker にあるため、チームは出荷を組み合わせたり、 必要に応じて出荷タイプを変更したりする機会を見つけることができます。」  

Looker のおかげでサイエンティストはデータを探し回る必要がなくなり、同時にコラボレーションが改善され、迅速な意思決定が可能になりました。データのソースが問題視されないため(コピーミスや変更がないか、どのバージョンかなど)、品質も向上しています。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

年間 60,000 件以上の出荷を管理する物流チームにとって、出荷ダッシュボードにリアルタイムでアクセスできることで、プロセスが大幅に改善されると同時に、予算目標を正確に追跡して達成することができます。  

感情分析を利用したユーザー  エクスペリエンスの向上  

ユーザーのフィードバックは、貴重なインサイトとなる可能性があります。 ただし、これは多くの場合構造化されておらず、さまざまなアプリケーションにサイロ化されているため、包括的なビューで分析、開発するのは困難 です。  

以前、Moderna は、社内の IT サポート チケット管理システムである  ServiceNow、および通信に使用されるその他のアプリケーションから得 られたユーザー調査の分析情報を活用したいと考えていました。同氏は 次のように述べています。「人々が満足しているかどうかといった基本的 な質問に回答し、経時的な感情の変化を把握して機会を特定できるようにしたかったのですが、それは実現不可能でした。」  

現在、チームは Google の自然言語処理(NLP)API を使用して、さまざまなソースからの非構造化サポート チケットデータを分析し、経時的な感情 変化を分析しています。また、Moderna チームは、エンティティ認識を使用してより詳細な調査を行い、デバイスタイプを特定し、内部のユーザー  エクスペリエンスの向上に役立つ傾向を見つけることもできます。たとえば、特定のソフトウェア アプリケーションやハードウェアに影響を与える 問題がある場合には、それらを迅速に特定して措置を講じることが可能です。  

現在では、新しいチケットが届くと、IT サポートチームは主要なコンポー ネント(たとえば、適切に同期されていないデバイスタイプなど)で検索することで、時間の経過に伴う問題間の相関関係を見つけ出します。この可視性により、サポートチームは問題をより正確にトラブルシューティング し、ユーザー エクスペリエンスに影響を与える可能性のある要因に積極的に対処できます。同時に、ユーザー エクスペリエンスを継続的に改善していることを追跡し、確認することも可能です。  

今では、これらすべてのデータが Looker にあるため、チームは出荷を組み合わせたり、必要に応じて出荷タイプを変更したりする機会を見つけることができます。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

Looker は奥が深く、単なる可視化機能だけにとどまりません。学べば学ぶほど深みが増します。

Moderna 情報学、データ サイエンス、 AI 担当バイス プレジデント Dave Johnson 氏

「今では経時的な感情の変化を把握できるようになり、経営陣は私たちが正しい方向に向かっているかどうかを確認できるようになりました。この情報はヘルプデスク チームに戻され、チケットの処理速度や処理量に関する社内目標を設定できるようにしています。また、技術者から得られた傾向を調査し、技術者と協力してガイダンスを提供して、サービスを改善することもできるようになりました」と、Johnson 氏は述べています。  

データをさらに探索して発見を増やす  

Moderna が医学研究において発見を推進し続けるなか、mRNA を利用して人々を助ける方法を発見するというチームの第一目標の達成に向けて、最適なテクノロジーを活用、統合する新しい方法を模索し続けています。  

同氏は次のように締めくくります。「データが追加されると、チームは Looker に高い関心を抱くようになります。その後、データ コンシューマになるための基本的なトレーニングを実施しますが、そこからまた新たな疑問を抱くようになります。そしてデータをさらに探索、構築できるようトレーニングを重ねています。Looker は奥が深く、単なる可視化機能だけにとどまりません。学べば学ぶほど深みが増します。」  

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