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顧客事例

自動車業界でクラウドがデジタル変革を推進

2019年11月27日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2019 年 11 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

テクノロジーによって現代の生活の大部分が改善されたことは否定できませんが、輸送とモビリティにはまだ改善の余地が多く残されています。たとえば、毎日の通勤だけを取ってみても、INRIX の調査によると、2015 年以降、世界中の多くの主要都市で交通に費やされた時間は倍以上になっています。

しかし、通勤などのエクスペリエンス向上に向けて、モビリティ セクターで最新のテクノロジーのメリットを十分に活用できると期待を寄せられている 5 つのメガトレンドがあります。自動運転、共有モビリティ、より深い顧客分析、デジタル マニュファクチャリング、コネクテッド カーです。これらは、自動車産業の仕組みを根本的に変える可能性があり、クラウド テクノロジーはこの流れの中で主要な役割を果たすでしょう。

各トレンドの取り組みに対して、Google がどのように支援しているかをご紹介します。

自動運転

テクノロジーと基本的なビジネスモデルの両方への影響を考えると、自動運転はモビリティにおける最も劇的な革命の一つと言えるでしょう。インフラストラクチャを構築し、自動運転ソリューションを企業が構築するためのツールを提供することにおいて、クラウドは大きな価値を提供できます。同時に、安全なドライバーになり得る人工知能(AI)システムの構築は、自動車産業全体で解決が求められる、最も要求の厳しい機械学習(ML)の問題の一つです。

自動運転モデルを検証するために、企業は路上と複雑なデジタル シミュレーションの両方で車をテストする必要があります。これらのシミュレーションには、膨大な計算処理と大量のデータが伴うことから、多くの場合、GPU と Cloud TPU(Tensor Processing Unit)の組み合わせが最適です。Google では AI ワークロード用に Cloud TPU をカスタム構築しました。この高速ネットワークは 1 つのポッドで 100 ペタフロップス以上のパフォーマンスを発揮し、実質的にオンデマンドのスーパーコンピュータを実現しています。そのため、ワークロードの種類を問わず、可能な限り効率的かつ安価に実行できる世界クラスの AI インフラストラクチャといえます。 

共有モビリティ

交通の改善に関する構想には、ほぼすべてにおいてライドシェアリング サービスの最適化が含まれます。Google Maps Platform は、さまざまな方法でライドシェアリング会社や配送会社によるドライバー ナビゲーションと車両の全体的な効率の改善を支援します。

ドライバー レベルで言えば、デベロッパーは Google マップを活用したターンバイターン方式のナビゲーション エクスペリエンスをアプリケーションに埋め込むことができます。こうすると、ドライバーが次の仕事への道順や情報の取得にアプリを切り替える必要がありません。企業側ではドライバーの運転経路に関するデータを取得できます。こうしたプログラムによる制御とドライバーの行動に関する分析情報を使用すると、ドライバーを適切に割り当てられるようになり、ドライバーの空き時間と顧客の待ち時間の短縮につながります。Google のライドシェアリング ソリューションの初期ユーザーからは、運転時間が 4% 短縮し、到着予定時刻の精度が最大 48% 向上したという報告を受けています。

顧客のより詳細な分析情報

自動車メーカーは特に象徴的な消費者向け製品をいくつか製造していますが、顧客の情報分析は困難を極めています。これは、顧客関連のデータが断片化されていることが多いためです。ディーラーとメーカーがそれぞれでデータを持っており、たいていは各自の接続されていないシステムに分散されています。

サイロ化されたデータは、特に自動車のインセンティブ費用関係で、多くの非効率性につながる場合があります。McKinsey によると、こうしたインセンティブは自動車会社の最大の費用でありながら、理解と管理が最も遅れている部分です。さらに、割引とキャッシュバックは、さまざまな金銭面でディーラーと相手先ブランド製品製造企業(OEM)に大きなばらつきと複雑さをもたらす要因になります。例として、顧客の金銭、ディーラーの金銭、リースの割引、全米葬儀ディレクター協会のメンバーへのボーナス、不動産業者のリベートが挙げられます。

この複雑さは小売価格に混乱を引き起こします。最近の調査では、Cox Automotive の金利とインセンティブの単位を、ディーラー サービス プロバイダのツールを使って金利、現金、インセンティブと比較したところ、最大 $6,750 もの価格変動があることがわかりました。不確実性は消費者が好まないことの一つです。J.D. Power が算出した 2018 年の米国販売満足度指数では、ディーラーを訪れたが車を購入しなかった顧客の 14% が、価格に関する率直な回答が得られなかったことを理由に挙げています。

Google Cloud を使用すると、OEM やディーラーが重要な費用を管理し、混乱を排除できるように、自動車のインセンティブ システムを最適化できます。BigQuery を使用すると、OEM、ディーラー、顧客の間の点をつなぐデータを取り込んで保存し、分析できます。このプロセスにより、インセンティブを正確に一貫して追跡できます。また、Google Cloud の高度な AI / ML ツールを使えば過去のキャッシュバック パターンを調査できるため、OEM やディーラーはキャッシュバックを効果的に適用しているかどうかを把握できます。さらに、自動トリガーを提供して、重複するインセンティブや競合するキャッシュバックなどの要因による過剰支出の可能性を指摘します。

これらをまとめると、Google Cloud API の導入により、ディーラーは「信頼できる唯一の情報源」としてディーラー管理システム(DMS)に接続し、記録システム全体のデータを得ることができます。最後に、Google Cloud には、こうしたインセンティブ最適化ソリューションの実装をサポートできる、自動車業界のシステム インテグレータやその他のコンサルティング パートナーを有するネットワークがあります。

デジタル マニュファクチャリング

ロボット工学、AI、その他のデジタル テクノロジーの向上にもかかわらず、自動車の製造現場は、数十年前のシステムとサイロ化されたデータに埋もれたままになっています。IDC によると、メーカーの 77% がデジタル変革を好機と見なし、最優先事項の一つに挙げています。また、McKinsey は、自動生産とデータ交換という新しい時代が幅広いユースケースの機会を広げ、費用の削減、収益の増加、新しい製造方法の支援につながると述べています。

ただし、多くの場合、自動車会社はオンプレミスで製造ワークロードを実行したいと考えています。これには、レイテンシ、一部の国のデータ所在地要件、データをローカルに保持して欲しいという顧客の希望など、いくつかの理由が考えられます。Google のマネージド クラウドネイティブ プラットフォームである Anthos は、こうした課題に対応しながら、お客様が自社システムをクラウドに置いているかのように開発、運用できるようにします。Anthos はソフトウェアのみのスタックとして、お客様が選択したハードウェア上で稼働します。さらに、Anthos ワークロードはいつでもシームレスに Google Cloud または他のクラウド ベンダーに移行できます。

お客様がクラウドや機械学習テクノロジーの導入により明らかな運用改善を感じているもう一つの分野が、品質検査です。Edge TPU により、メーカーは作業現場で検査を行うことができます。Edge TPU は、消費電力とフットプリントを大幅に削減してエッジでの実行向けに設計された Google の ASIC(特定用途向け集積回路)です。自動車業界以外では、LG CNS がすでに LCD パネル生産での不具合検出に Google の技術を使用しています。 

コネクテッド カー

今日の自動車は、膨大な量のデータを生成するスーパーコンピュータです。生成されたデータは、60~100 台ものセンサーからリアルタイムでキャプチャされます。残念ながら、このデータの多くは構造化されておらず、サイロ化されたシステムに保存され、ハッキングに対して脆弱な状態にあります。同時に、車両内の電子機器とソフトウェアは飛躍的に複雑さを増しています。2010 年から 2016 年の間に平均的な車両に必要なコードの行数は 15 倍に増加し、サプライヤーとプロセスの複雑さも急増しました。

Google は、自動車ソフトウェアをよりシンプルにし、車両で生成されるデータから企業が情報を分析するための支援をしたいと考えています。Google はすでに Android で大きな一歩を踏み出し、自動車 OEM の間で導入が急増しています。テレメトリーに対して Google が提供するクラウドを使った完全統合型アプローチでは、車両データを容易に抽出して分析できます。

組織間でデータが移動する際、信頼とセキュリティが最重要であることは言うまでもありません。そのため、Google のメソッドでは、OEM を含むすべての企業が各自のデータの完全な制御と所有権を保持します。また、Google 独自のチップを開発し、Google のデータセンターとお客様のデータとの整合性を確保しています。

交通とモビリティは複雑な分野であり、私たち一人ひとりがなんらかの形でそのデジタル変革に触れる可能性があります。Google のソリューションは、自動車企業が変革の道を進めるよう支援することを目指しており、革新的な方法でクラウド テクノロジーを使用して目標を達成していただきたいと考えています。 

- by Google Cloud 製造および輸送担当マネージング ディレクター、Dominik Wee

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