富士通:Google Cloud の活用で IT 企業から DX 企業への "変革" を後押し
Google Cloud Japan Team
富士通グループの社内 IT 部門であるデジタルシステムプラットフォーム本部(DSPU)は、同グループのパーパス(目的、存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」の実現に向け、社内 DX の推進による自己変革に取り組む部門です。これまでも富士通の DX に向けた重要なプログラムである「OneFujitsuプログラム」のもと、アプリケーション、インフラ面を中心に全社横断で活動してきました。今回紹介する『クラウド熱血プロジェクト』は、そんな DSPU の新たな挑戦のひとつ。その背景と目的、成果について担当者の皆さんに話を伺いました。
※富士通の DX 推進を担う社内 IT 部門であるデジタルシステムプラットフォーム本部(DSPU)についてはコーポレート サイトをご覧ください。
利用しているサービス:
App Engine、データストア、Cloud Storage、Vision AI、Speech-to-Text、Text-to-Speech、Natural language AI、Recommendations AI、Firestore など
『クラウド熱血プロジェクト』を通じて組織に新風を吹き込む
グローバルで約 12 万人以上の社員を擁し、世界有数の総合 ICT 企業として知られる富士通グループは、近年特にソフトウェア サービスに注力しており、かつての富士通=通信機、計算機というイメージから大きく生まれ変わろうとしています。そうした中、カルチャー、企業風土のアップデートが大きな課題となっており、富士通自身を改革するという全社 DX プロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」を 2020 年 10 月より本格始動させました。その取り組みの一環として始まったのが、『クラウド熱血プロジェクト』です。このプロジェクトが企画された背景について、DSPU で DX リーダーを務め、本プロジェクトで中心的な役割を担った小島 未侑氏は次のように語ります。
「『クラウド熱血プロジェクト』を立ち上げたのは、フジトラの目指す社内 DX 推進やカルチャー変革に関して、Google Cloud の持つ要素を高く評価していたからです。実はこの取り組みに先んじて、昨年から『MAX 20% ルール』という、業務時間の最大 20% を通常業務とは別のことに充ててイノベーションを起こしていこうというアイデアを実践に移しているのですが、これは Google の有名な『20% ルール』を富士通流にアレンジしたもの。元々は社内有志で始めたことだったのですが、その成果が認められ、現在では社内 DX に向けた正式な取り組みとして採用されています。『クラウド熱血プロジェクト』ではこの成功をさらに先に進め、イノベーティブな面で多くの実績を持つ Google Cloud のテクノロジーやカルチャーを取り入れることによって組織に新しい風を吹き込みたいと考えました。」
そうした思いのもと『クラウド熱血プロジェクト』では、DSPU 内で有志を募り、 Google Cloud を用いて、Civil Tech 的な観点で身近な問題を解決するようなアプリを作りあげるというトライアルを約 3 か月かけて実施。新人からベテランまで約 50 名が名乗りをあげ、4 つの開発チームに分かれて、それぞれが考える社会課題の解決を目指しました。ちなみに DSPU ではこれまで Google Cloud を使った開発を行ったことはほとんどなかったそうです。
「富士通の社内 IT は長年、自前主義を貫いてきました。これはもちろん、そのための技術力を備えていたからなのですが、反面、案件個々の要望に細かく応えすぎてしまうという副作用もあり、結果として運用コスト増に繫がったり、開発者以外は手を出せない複雑なシステムになってしまい連携などが阻害される問題が生まれています。富士通の開発をよりシンプルに、スピーディに、イノーベーティブに変えていくためには、Google Cloud のような、すでに存在する素晴らしい技術を取り込み、組み合わせていくことが必要です。そうすることで、開発に多様な視点が持ち込まれ、新たな価値を生み出していけると考えました。」(小島氏)
「『クラウド熱血プロジェクト』には大きく 2 つの目的があります。ひとつは Google Cloud の持つ新しい技術を駆使してアイデアを具現化していく中で、DSPU 内にイノベーションを生み出す土壌を作りたいということ。もうひとつがメンバーそれぞれの『やりたい』というモチベーションをベースにスキルアップを促すことです。」
そう語るのは、小島氏の上司であり、DSPU の DX 推進責任者(DX Officer)を担う、小久保 義之氏。小久保氏はこの取り組みを通じて「これまで大きなプロジェクトで一部分の担当しかしてこなかったメンバーたちに、ゼロからアプリをかたちにするところまでのプロセスを経験させたいという気持ちもあった」と言います。
App Engine などを駆使することで未経験の若手でも短期間でアプリ開発が可能に
約 50 人の、年齢も経験も異なるメンバーで構成された 4 つの開発チームでスタートした『クラウド熱血プロジェクト』。小島氏がまずこだわったのはそのチーム分けでした。
「まず、開発未経験でもやる気のあるメンバーを『熱血チーム』、すでに一定以上の開発経験、リード経験を持つメンバーを『兄貴姉御チーム』と、年齢に関係なく分類しました。そして、ひとつの開発チーム内で、経験豊富な兄貴姉御メンバーが、実際に手を動かす熱血メンバーをリードするように各自の強みや志向性を反映することで、取り組みの相乗効果を高めています。また、全体を取りまとめ、兄貴姉御でも困るような問題をサポートする、小久保らが所属する『親分チーム』という枠も設けています。」(小島氏)
なお、Google Cloud のメンバーも参加したプロジェクトのキックオフでは App Engine など各プロダクトの機能的説明だけでなく、企業としてのありようや、プロジェクトを通して実現する社会がどのようなものになるべきかといった考え方の部分もインプット。アイデアをかたちにしていくためのデザイン思考についても全体の認識を統一した上で開発を進めることを重視したそうです。
その後、約 3 か月の開発期間を経て、4 つのチームがそれぞれユニークなアプリを開発。Google Cloud プロダクトを駆使することで、短期間で具現化できたと言います。
App Engine などをはじめとする Google Cloud ならではの高度なプロダクトの充実もスピード感をもって優れたアプリ機能を実現できる一助になったと小島氏は言います。
「プロジェクト実施後のアンケートでは参加したメンバーの多くから、たくさんの学びがあった、今後のスキル目標ができたといった回答をもらっています。なにより、皆、ほとんど触れたことがない領域でも 3 か月でかたちにできたことに大きな自信を持ったようです。新しい技術を学べたことに対する前向きな感想が多く、やはり富士通には技術に興味を持つ人間が集まっているのだなと再確認できました。」(小島氏)
「『クラウド熱血プロジェクト』の取り組みを通じ、社員がやりたいことにチャレンジして成長できる環境を提供できるようになったこと、また、階層組織を越えたネットワークが作られて、組織としての生産性や問題解決力が高まり風通しが良くなったことを実感しています。そして、この成果を踏まえ、現在は『クラウド熱血プロジェクト』の第 2 シーズンを検討中です。第 1 シーズンは育成的な側面が強かったのですが、次はビジネス部門と連携しサービス化することを目標に、突き抜けたアイデアをかたちにしていくようなものをやれないか検討しているところです。Google Cloud にはそこに向けて、今後もさらに我々に刺激を与えてくれるようなプロダクトや情報をご提供いただきたいですね。期待しています。」(小久保氏)
1923 年に創業した富士電機製造株式会社を前身に、およそ 100 年の歴史を誇る国内老舗メーカーのひとつ。法人向けテクノロジー・サービスから、コンピューターや通信機器など電機製品まで幅広く事業を展開する。従業員数は全世界 124,200 名(2022 年 3 月末現在)。
インタビュイー
デジタルシステムプラットフォーム本部
・DX 推進責任者 小久保 義之 氏
・DX リーダー 小島 未侑 氏
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