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顧客事例

生成 AI と「熱と誠」の精神で進化を加速 ~Google Cloud で実現する荏原製作所の DX 最前線~

2024年11月26日
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Google Cloud Japan Team

編集者注: Google Cloud を利用する企業のリーダーの皆様にお話を伺い、想いを語っていただく Google Cloud Leader’s Story。連載 19 回目となる本記事では、ポンプ、冷凍機、コンプレッサ・タービン、ごみ焼却施設、半導体製造装置など、社会・産業・くらしを支える製品・サービスを提供する 株式会社荏原製作所 にお話を伺いました。

利用しているサービス:Cloud Run, Firestore, Gemini API, Document AI, BigQuery, など

荏原製作所は 1912 年の創業以来、「熱と誠」の精神を原動力に、ポンプ、冷凍機、コンプレッサ・タービン、ごみ焼却施設、半導体製造装置など、社会・産業・くらしを支える製品・サービスを提供し続けるグローバル企業です。そんな荏原製作所が今、DX 推進の新たな一手として注力しているのが、生成 AI の活用です。今回、データストラテジーチームのデータエンジニアリンググループに所属するグループリーダー田中紀子氏と岡村森氏に、Google Cloud を活用した生成 AI プラットフォーム構築の舞台裏と、今後の展望についてお話を伺いました。

※荏原製作所の創業者である畠山一清が創業期より唱えていた言葉であり、創業の精神。
https://www.ebara.co.jp/corporate/information/founding-spirit.html

荏原製作所とデータストラテジーチーム:熱と誠、そして革新の風

荏原製作所は、建築・産業、エネルギー、インフラ、環境、精密・電子という 5 つの事業セグメントを柱に、多角的な事業展開を行っています。各事業領域でトップシェアを誇る製品を多数保有し、例えば、建築・産業セグメントにおける標準ポンプや冷凍機、エネルギー分野のエキスパンダやコンプレッサ、精密電子分野の CMP 装置やドライ真空ポンプなどは、世界中で高い評価を得ています。

しかし、同社は現状に甘んじることなく、常に新しい挑戦を続けています。人口減少や環境問題といった社会課題を背景に、水素ビジネスや半導体製造技術の革新など、未来を見据えた取り組みを積極的に推進しています。

このような変革を推進する原動力のひとつが、データストラテジーチームです。CIO 直下で活動するこのチームは、「攻めの DX 」を担う精鋭部隊として、データエンジニアリング、データサイエンス、製造 DX など、多様な専門性を持つメンバーで構成されています。ほぼ全員が中途採用で、異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まり、新しい価値の創造に挑戦しています。

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田中氏は、25 年間金融機関で IT・デジタル・新規事業に携わってきた経験を持ち、デジタル技術・データを活用し新しい価値を作るという組織ミッション、「熱と誠」の企業カルチャー、社会インフラを支える荏原製作所の製造業としての事業に魅力を感じて入社。入社後わずか 2 ヶ月で、社内における生成 AI プロジェクトを自ら立ち上げました。岡村氏は、前職で IoT 向けデータ基盤の構築や機械学習モデルの組み込みを担当。自社工場を持ち、グローバルで存在感を示し、社会インフラに関わる事業を展開する荏原製作所に魅力を感じて入社しました。

荏原製作所が目指すのは、生成 AI を活用した蓄積された技術・あらゆるナレッジの活用最大化、顧客起点の価値創造です。生成 AI により認知的負荷の低減、作業の省略化を実現し、国内外を問わず、社員一人ひとりの力を最大限に引き出すことで、新たな価値創出を目指しています。

Google Cloud で実現した 全社展開生成 AI プラットフォーム

荏原製作所では、Google Cloud を基盤とした生成 AI プラットフォームを構築し、全社員に向けて展開しています。昨年から ChatGPT のようなチャット型アプリケーションが注目を集める中、社内情報を入力・検索できるセキュアな環境が必須であり、ユーザーフレンドリーな『EBARA AI Chat』(生成 AI プラットフォーム)を構築しました。

このプロジェクトの驚くべき点は、スピード感、全社一丸での推進体制、仕組み化です。今年 1 月には全カンパニーを巻き込み、60を超えるユースケースから複数部門での PoC を並行して実施、一事業部での導入から全社導入、既存の全社 QA チャットボットの移行を進めました。また、データソース毎にアクセス制御可能な仕組みを構築し、申請のフロー化、外国語での問い合わせにその言語で回答できる機能も導入しました。ステアリングコミッティーで各事業部の取組を共有し全社一丸で推進を加速させました。

わずか 1 年足らずでこれらを実現できた背景には、機動力のあるアジャイルな内製開発体制、課題・ニーズに対して新しい技術を取り入れ解決していこうという開発チームをはじめとする全社員の挑戦への意欲がありました。田中氏は、次のように語ります。

「内製開発チームでは、朝会や共有チャットで常に最新の技術情報を共有し、機動的に開発に取り入れています。また、荏原製作所は大学発のベンチャーで、既存ビジネスの業務基盤を持つ製造業でありながらも、新しい技術領域に挑戦していく風土があります。生成AIは、世の中を変える技術として社員の関心も高い領域であったので、安全にビジネス活用できる環境をいち早く構築し、社員一丸となって各事業領域の課題解決・価値創造にチャレンジしてもらう共通の仕組みを全社に提供したいと思い推進してきました。「熱と誠」という創業の精神、技術で熱く世界を支えるということを、この新しい技術を一層積極的に活用しながら実現していきたいと考えています。」

今回の生成AIプラットフォームは、Google Cloud の Cloud Run、Firestore といったサーバレスなプロダクトと、生成 AI の Gemini をフル活用して開発されています。

生成 AI プラットフォームとしてなぜ Google Cloud を選んだのか、岡村氏は次のように理由を語ります。

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「Google Cloud を選定した理由は、社内に Google Workspace を利用するカルチャーが根付いていたことが大きかったです。社内業務フローの中で、GWS製品が活用されているシーンは多く、GWS 上で管理しているデータあるいはアプリケーションをパブリッククラウドへできるだけスムーズに連携できることは重要な観点でした。

また、サーバーレスコンピューティング系のサービスとその周辺エコシステムの充実も大きな決め手となりました。限られた開発体制の中で、マネージドサービスを活用することで、運用コストを抑えながら、スピード感を持った開発を実現できたと考えています。」

未来への展望~生成 AI で切り拓く、荏原製作所の新たな地平~

荏原製作所は、創業以来、社会課題の解決に貢献することを使命としてきました。現在も、環境問題に配慮した水素ビジネス、開発途上国への水供給、需要が高まる半導体の性能向上への貢献など、新たな取り組みを積極的に展開しています。長期ビジョン「E-Vision 2030」と中期経営計画「E-Plan 2025」に沿って、社会課題解決に向けた取り組みを強化し、世界の生活・産業に貢献していきます。

田中氏は、「製造業の新領域を世界に先駆け切り開きたい」という熱い思いを語ります。岡村氏は、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる環境づくりと、グローバルへの貢献を将来のビジョンとして掲げています。

Google Cloud のテクノロジーと「熱と誠」の精神を融合させることで、荏原製作所は 100 年企業の DX をさらに加速させ、未来への展望を切り拓いていくでしょう。

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株式会社荏原製作所
1912 年に日本初のポンプメーカとして創業。その後、時代ごとに生まれた社会課題や環境問題を解決するため、強みである回転技術を軸に水、空気、環境、デジタルテクノロジ―の分野で広く社会へ貢献しています。

インタビュイー
株式会社荏原製作所
データストラテジーチーム
田中紀子氏
岡村森氏

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