4 社の企業がブロックチェーン ノード エンジンで Web3 イノベーションを推進している方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ブロックチェーン テクノロジーによって、世の中の情報を保管する方法や転送する方法が変わりつつあります。あらゆる規模の企業がブロックチェーン テクノロジーの可能性を探求し、スマート コントラクトの自動化、分散型アプリケーションの構築、オープンソースを利用したイノベーションの推進などを実現しようとしています。一方、多くの企業が共通の課題に直面しています。その課題とは、多くの Web3 ユースケースで前提条件となっている、独自のノードの運用および維持に関するものです。ノードのデプロイと管理は、多くのコストと時間のかかる複雑な作業になることがあります。
ブロックチェーン ノード エンジンは、ものごとを簡単にするために構築されています。ノードは Google Cloud にホストされているため、ハードウェア、帯域幅、ネットワーク接続、ノードの運用に関するメンテナンスの要件について心配する必要がなくなり、企業は中核となるビジネスに集中できるようになります。また最近、スナップショット ベースでノードをプロビジョニングする機能もリリースし、フルノードとアーカイブ ノードを 1 日かからずに同期できるようにしました。これは大きな進歩であり、デベロッパーはブロックチェーン インフラストラクチャを迅速にデプロイ、拡張できるようになります。
プレビュー版のリリース以降、従来型の企業と Web3 デジタル ネイティブ企業の両者が、ブロックチェーン ノード エンジンを使用して、ノードのホスティングに関するいくつかの課題を解決してきました。2023 年 6 月時点でブロックチェーン ノード エンジンは一般提供されており、多くの企業が抱える同様の課題を解決しています。
今回のブログでは、ブロックチェーン ノード エンジンを活用して運用上の課題を解決し、Web3 における構築、拡張を迅速に実現して、顧客やコミュニティのために尽力している企業 4 社の方とお会いしてお話を伺います。
アクセンチュア: クライアントが Web3 の次の段階に進めるようにサポート
2022 年、アクセンチュア イタリアは、アクセンチュア・グーグル・ビジネス・グループ(Accenture Google Business Group)を活用して、Web3 領域への移行をさらに進める同社のクライアント向けのソリューション候補として、ブロックチェーン ノード エンジンを検証しました。
まず同社は、Cloud Shell を使用してノードをインストールし、スマート コントラクトをデプロイしました。その後、トークン化とサプライ チェーン分野にソリューションを適用し、Web3 と各プロセスとの統合を促進しました。ブロックチェーン ノード エンジンによってノードの立ち上げと運用がわかりやすく簡単になったため、デプロイ関連の作業がシンプルになり、構成時の柔軟性が高まりました。以前は社内で IaaS サービスに関する作業や、ノードのインストールとメンテナンスが必要だったため、それと比較すると、ブロックチェーン ノード エンジンを利用することで構成とデプロイにかかる時間が 30% から 50% 削減されました。
Alberto Nunzio Bonadonna 氏(アクセンチュア クラウド ファースト - ソフトウェア エンジニアリング - イタリア、中央ヨーロッパ、ギリシャ担当マネージング ディレクター)は次のように述べています。「ブロックチェーン ノード エンジンなどの Google Cloud の Web3 プロダクトは、この種のサービスを扱う市場の中でリファレンス モデルとして急速に位置づけられるようになっています。ブロックチェーン ノード エンジンを、そのエコシステムですでに提供されている他のプロダクトと合わせて使用することで、Google Cloud が、Web2 から Web3 への移行において主導的な役割を果たすと確信しています。」
ENS Labs: NFT の長期的な可用性と妥当性を確保
非営利団体の ENS Labs は、Ethereum Name Service(ENS)のコアとなるソフトウェアの開発を担当しています。ENS Labs は、ENS Manager アプリの管理、オープンソース ライブラリやコア スマート コントラクトの開発と維持、および NFT Metadata Service のホストを行っています。NFT Metadata Service は、ENS 非代替性トークン(NFT)に関連付けられた一意のデータの管理およびアクセスを行うために設計されたサーバーです。
Metadata Service 内には、ENS の名前、説明、画像、所有権の詳細などの情報や、永続的なデータアクセスのための分散型ストレージ ソリューションで取得されたデータが含まれています。発行元のプラットフォームやサービスの状態にかかわらず、このメタデータの完全性を維持して NFT の長期的な可用性と妥当性を確保することが重要となります。つまり、ブロックチェーン ノード エンジンを技術スタックの主要な資産とみなす同社にとって、迅速かつ正確にクエリに対応することがきわめて重要になります。
ENS Labs のシニア ソフトウェア エンジニアの Muhammed Tanrikulu 氏は次のように説明します。「ブロックチェーン ノード エンジンのパフォーマンスは一貫してベンチマークを上回っています。高速で信頼性に優れたブロックチェーンを使用できることは、当社の Metadata Service で迅速にデータを取得し、システム全体の効率性とユーザー エクスペリエンスを改善するうえで必要不可欠です。ブロックチェーン ノード エンジンであれば、ネットワークのピーク時間帯には信頼性を優先するようにメタデータ サービスを設計できるため、中断のないシームレスなデータアクセスを実現できます。この機能は、当社のリクエスト - レスポンス モデルの完全性を維持するうえで必要不可欠であり、特にボリュームの大きなオペレーションやミッション クリティカルなオペレーションで重要となります。デベロッパーにとってこの信頼性は、アプリケーションを構築するプラットフォームの安定性につながり、最終的には、デベロッパーの生産性を高め、成果物の質を高めることになります。」
thirdweb: デベロッパーによる Web3 のイノベーションを容易にして加速させる
開発プラットフォームの thirdweb は、デベロッパーによる Web3 アプリの構築に役立つ API やサービスを提供しています。thirdweb ツールを使用すれば、ハードウェア、スケーラビリティ、セキュリティ、パフォーマンスについて心配する必要がなくなり、構築に集中できるようになります。そして、thirdweb のインフラストラクチャの中核には、ブロックチェーン ノード エンジンが組み込まれています。
「私たちは、ブロックチェーン ノード エンジンを使用してブロックチェーン アクセス ノードをデベロッパーに提供しています」と、thirdweb の共同創設者兼最高技術責任者の Jake Loo 氏は説明します。同社は、2022 年のリリース以来、ブロックチェーン ノード エンジンを検証してきました。専用のノードエンジンを 6 か月間活用した結果、以前のセットアップからコストが大幅に削減されました。
Loo 氏は次のように続けます。「ノードの運用に関連して行わなければならないことは多くありますが、ブロックチェーン ノード エンジンを利用すればその量が大幅に削減されます。インフラストラクチャ管理とセキュリティに関する重要な考慮事項はバックグラウンドで対応されるため、安心して新しいテクノロジーの構築に取り組めます。thirdweb を利用すればデベロッパーのワークフローが円滑になるため、デベロッパーはインフラストラクチャに関することに時間を取られることなく、Web3 アプリの構築に集中できるようになります。ブロックチェーン ノード エンジンであればノードの運用が簡単です。基盤の問題について頭を悩ませずに、ソフトウェア レイヤに集中できます。」
IEX Cloud: Web2 から Web3 への移行を促進
IEX Group, Inc. の全額出資子会社である IEX Cloud は、金融に関するデータやサービスを誰でも簡単に利用できるようにするためのプラットフォームです。同社は 2023 年にイベント処理機能をリリースし、その後に Ethereum コネクタをリリースしました。ただ、ユーザーがこれらのサービスを活用するためにはノードを用意する必要があります。テスト段階において、IEX Cloud はさまざまなノード プロバイダを試しましたが、スループットの信頼性が損なわれるというデータ品質に関する技術上の課題に悩まされていました(これは、「ノイジーネイバー」症候群として知られています)。同社は、信頼性の高いデータ、インフラストラクチャ、ネットワークを備えたリアルタイム イベント サービスを提供することを目標にしていたため、そのような不安定性は許容できませんでした。
そのようなときに、ブロックチェーン ノード エンジンがリリースされました。同社は Google Cloud 上で運用を行ってきたため、この新しいソリューションを採用することは自然な流れでした。専用ノードのプロビジョニングには、独自のインスタンスの立ち上げ、ソフトウェアのインストールやモニタリングと維持管理を伴いますが、ブロックチェーン ノード エンジンを使用することで、IEX Cloud チームのオーバーヘッドは大幅に削減されました。
IEX Cloud の責任者である Liz Grausam 氏は次のように述べています。「ブロックチェーン ノード エンジンを利用すれば、私たちの専門分野ではないブロックチェーン インフラストラクチャの構築に時間をかける必要がないため、専門とする機能の構築に集中できるようになります。」
Grausam 氏は次のように続けます。「トランザクションがオンチェーンになるにつれて、Web2 で行ってきた重要な金融サービスを、高い信頼性でリアルタイムに提供することが求められるようになっています。私たちのお客様は、世の中にまだない新しいアプリケーションを構築しています。ただ、データ インフラストラクチャが使えなければ、アプリケーション レイヤを構築することはできません。Google Cloud ネイティブのノードサービスがあれば安心です。これは、高品質で拡張性に優れたインフラストラクチャで Web2 から Web3 への移行を推進するための基盤となります。」
Google Cloud for Web3 を活用して、ブロックチェーン上での構築を次の段階に進めるための方法をご覧ください。Google はエンタープライズ グレードのパフォーマンス、リージョン単位の構成可能性、定額料金を実現しているため、お客様は最も重要なものの構築に集中できるようになります。
Cloud Web3 チームのメンバーである Leon Glover、Joseph Kottapurath、Ryan Kim、Monika Kumari、Ross Nicoll、Cat Ockman、Justin Pachter、Vamsi Pasupuleti、Nick Rogers、Kelley Scroggs、Ethan Wang の協力に感謝します。メンバーの尽力、献身のおかげで、ブロックチェーン ノード エンジンの一般提供を実現できました。