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顧客事例

auコマース&ライフ:eコマースサイトで利用するデータ分析基盤をマルチクラウドで実現

2022年8月18日
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Google Cloud Japan Team

KDDIグループにおいて、顧客のライフデザインを支えるサービスの一貫として小売事業を展開するauコマース&ライフ株式会社(以下、auコマース&ライフ)。総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」を運営する同社では、その事業展開を支える新しいデータ分析基盤を BigQuery を利用して構築しました。この新データ分析基盤の開発に携わるお 2 人に話を伺いました。

利用しているサービス:
BigQueryWorkflowsCloud FunctionsCloud RunCloud Scheduler など

利用しているソリューション:
スマート アナリティクス

マルチクラウド構成で、既存のデータ資産を活かしながら拡張性の高い分析基盤を構築

auコマース&ライフが運営する au PAY マーケットは、グルメや日用品、ファッション、家電や家具などの "モノ" から、レストラン、ビューティー、宿泊などの "コト" まで、多くの分野の店舗が集合するオンライン ショッピング サイトです。auコマース&ライフでは、データドリブンなアプローチによって、この au PAY マーケットにおける顧客体験の向上や売上の向上に挑戦しています。

今回、新しいデータ分析基盤の開発が必要になった経緯について、DX本部 データソリューション部 データエンジニアリンググループのグループリーダー 亀田氏は次のように説明します。

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「弊社はもともと 2 つのKDDI グループ会社が合併して今の体制になった経緯があり、データ分析のための基盤もそれぞれの会社から引き継いだものを使っていました。しかし、データが複数の場所に分散された状態のままでは利便性が悪く、管理するコストも増大するという問題が生じます。これを解消するために統合されたデータ分析基盤を作る、というのが今回のプロジェクトの目的です。」

新データ分析基盤の中心となるデータ ウェアハウスには BigQuery を採用しました。その理由を亀田氏は次のように話します。

「採用にあたってもっとも大きかった要素は、データ保存に対するコスト パフォーマンスが高いという点です。また、アナリストの方々にとってデータベースの管理にかかる手間が少ないことや、複雑なクエリの処理速度が速いというのも大きなポイントでした。データ分析基盤にとって一番大切なことはお客さまの使い勝手だと考えています。いくらデータを整備したところで活用してもらえなければ意味がありません。その点 BigQuery については、ドキュメントが豊富で使い勝手が良いということで社内のユーザーからの評価が高く、それも採用の後押しになりました。」

auコマース&ライフのデータ分析基盤では、モール事業をはじめとするさまざまな事業からデータを集め、それを統合して分析用のデータを整理します。各事業のシステム インフラとしては 他社クラウド サービスも広く利用されていることから、データの収集にはそれら従来のシステムとの連携を考慮する必要がありました。そこで新データ分析基盤では、各事業からデータを収集するデータレイク層については従来システムと親和性の高いクラウド サービスで構築し、分析用に加工したデータをデータ ウェアハウスとなる BigQuery に取り込むというマルチクラウド構成を採用しました。

マルチクラウド構成にしたことで、各事業用のシステムからはシームレスにデータを収集しつつ、データの分析や活用を行う部分については BigQuery やその他の Google Cloud のプロダクトを活用して柔軟に機能拡張できるようになったとのことです。

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新データ分析基盤をベースに開発したデータロード機能で大幅なコスト削減に成功

auコマース&ライフではプロジェクトの第一段階として、データ分析基盤全体のうちのデータレイク層と、そこから BigQuery にデータを取り込むデータ ウェアハウス層、そしてそれをベースとした販促オートメーション機能およびデータロード機能をリリースしました。

「販促オートメーション機能とは、商品ページを訪れた上で商品購入には至らなかった初めてご利用いただくお客さまや、初めてお買い物していただいたお客さまをセグメントし、以降にご来訪がない且つご購入からお時間が経過しているお客さまを対象に、商品の割引クーポンを自動配信する機能です。au PAY マーケットに出店している店舗さまから提供される割引のバジェットについて、そのバジェットの対象となるお客さまを自動で選択して販促を実施することが可能なため、ご出店店舗さまにとっては、購入につながる可能性の高いお客さまに対する機会ロスを手間をかけずに防ぐことができるというメリットがあります。それに加えて au PAY マーケットをご利用のお客さまに対して、購入を検討中の商品がお得に購入できるようになった際に通知するという機能も備えています。」(亀田氏)

この機能のバックグラウンドでデータロード機能を使用しており、大きな成果を上げていると亀田氏は語ります。

「販促オートメーション機能で特に大きな効果として実感しているのは新規データの取り込みに関する部分になります。従来はデータの取り込みが発生する度にベンダーさまに依頼して実施してもらう必要があったので、コストがかかるのと、スピード感が上がらないという問題を抱えていました。今回これを内製化できたことで、新規のデータ取り込みにかかるコストは約 10 分の 1 ほどに削減でき、対応スピードも大幅に向上しました。」

次の展開は Google Cloud の各プロダクトを活用した自動マート作成機能の開発

最も基礎となる部分はできたものの、新データ分析基盤はまだ完成形ではなく、開発プロジェクトは現在も続いています。まずは基盤となる仕組みを構築した上で、データの分析や、分析したデータを活用していく部分については、順次拡張していくという方針を取っているからです。

プロジェクトの次の段階は、日々の分析に使用するデータを格納するマート層の拡張です。分析の元になる全てのデータを格納するのがデータ ウェアハウス層なのに対して、実際にデータ分析を行うサービスやアプリケーションが活用するためのデータを切り出してデータマートとして格納しておくのがマート層になります。

現在はこのマート層において、自動でマートを作成する機能の開発に着手しているそうです。この機能について、亀田氏は次のように説明します。

「自動マート作成機能は、SQL を読み込んで自動的に依存関係を確認し、BigQuery 上にマートを作成するというものになります。マートの作成に関しては、個々のマート間で大きな違いが出るのは前段の依存関係と SQL くらいなのですが、構成が入り組んでくると複雑になりやすい部分でもあります。これをシンプルにするにはどうすればいいかということと、変更を容易にするのはどうすればいいかということを追求し、できる限りご利用いただくお客さまを意識したつくりになるように努めています。」

この自動マート作成機能の開発にかかる期間は 2 か月程度を見込んでいるそうです。短期間で新機能の開発が可能になったのは、新データ分析基盤の導入による効果だと亀田氏は言います。

「今回、新しいデータ分析基盤を導入した効果として一番大きいのは、運用や機能追加のコストが下がって手軽に行えるようになったことです。従来であればひとつひとつが新規の開発という形になっていたのですが、汎用化された基盤ができたことで、少しの変更であれば設定ファイルやテーブル定義を変更するだけで対応できるようになり、拡張性が大幅に向上しました。」(亀田氏)

自動マート作成機能では、BigQuery だけではなく、Workflows や Cloud Functions、Cloud Run、Cloud Scheduler などといったプロダクトも使用しています。Google Cloud のプロダクトの活用について、その魅力を亀田氏は次のように語りました。

「Google Cloud には、システム間の連携がとりやすい点や、サーバーレスでシンプルにデプロイできる点などには特に大きな魅力を感じています。また、今回はスプレッドシートでデータの連携状況を社員に見せたいと考えているのですが、Google Cloud であれば簡単に Google スプレッドシートと連携できるので、それも嬉しい点です。」

新データ分析基盤を中心にしてデータ活用の幅を広げていきたい

将来的な展望としては、今回構築した新データ分析基盤を活用できる幅をもっと広げていき、お客さまが KDDI のサービスを利用する際の体験の向上につなげていきたいと、DX本部 データソリューション部の部長 松崎氏は語っています。

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「お客さまにとっては、au PAY マーケットは数ある KDDI のサービス群のひとつです。理想的には、関連する会社やサービスの間で正しい情報を提供し合って、お客さまにとってストレスなく利用して頂けるようにならなければいけません。現在でも一部のデータは KDDI 内で相互共有していますが、この連携の範囲をもっと広げていけたらと思っています。今回開発したデータ分析基盤は、分析というアクションと、その結果を施策に落とし込むというアクションが、同じスキルセットで実施しやすい環境になっているので、これを利用すればもっと幅広いデータ活用ができるようになるはずです。」

新データ分析基盤の活用の幅を広げる上で、Google Cloud の新機能も積極的に取り入れていきたいと亀田氏は言います。

「Google Cloud には新しい機能が次々と追加されるので、良いものは積極的に取り込んでアップデートし、実際に分析する人たちにとって分析しやすい環境を提供していきたいです。たとえば AI サービスなどはもっと活用していきたいという想いもあり、Vertex AIVision AI などには注目しています。また、価値のあるデータを適切に管理するために Data Catalog などにも期待しています。Google Cloud チームからも有益なアップデート情報を提供していただいているので、次に使用するプロダクトを選定する上では非常に助かっています。」

その一方で、お客さまにとって安心して利用できるサービスであり続けるために、品質の向上にも努めていくと松崎氏は締めくくりました。

「KDDI はお客さまに対して安心を提供できるということを非常に大切にする企業なので、我々開発者としてもその点は強く意識しています。将来的には Google Cloud を含め新しいプロダクトや機能を積極的に試すことができるトライアル環境を用意し、我々のサービスのどの領域に適用できるのかを慎重に見極めながら、最終的な品質を高めていきたいと考えています。」


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auコマース&ライフ株式会社
auコマース&ライフ株式会社は、KDDIグループの中のライフデザインを支えるサービスを提供する企業としてKDDIグループの 2 社が合併し、2019 年 4 月に新たに設立。総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」の企画・運営などを行うほか、​​au PAY マーケット内の直営店「au PAY マーケット ダイレクトストア」の運営なども手掛けています。

インタビュイー(写真右から)
・DX本部 データソリューション部 部長
 兼 データソリューション部ビジネスアナリシスグループ グループリーダー
 松崎 照輝 氏
・DX本部 データソリューション部
 データエンジニアリンググループ グループリーダー
 亀田 量英 氏


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