より簡単、迅速かつ低費用での 3D 画像制作を Google Cloud で実現した Arvato Systems の事例

※この投稿は米国時間 2024 年 2 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

e コマースとデジタル ビジネスモデルの台頭に伴い、写真のようにリアルで高品質な 3D 画像を作成するニーズが高まり続けています。昨今は、ブランドが製品をどのように写真撮影し、どのように見せているかによって、購入の意思決定が大きく左右されます。消費者の 87% はオンラインで購入を決定する際は製品の写真がとても重要であると答え、67% は購入の決定時に製品画像の質がとても重要であると答えています。最近の調査によると、製品固有の情報（63%）や長い説明（54%）よりも、製品画像の質を重視する消費者が増えています。

リビングルーム用の新しいカウチをリアルな 3D の視点で、お好みの質感、照明、アクセサリなど豊富な情報とともに見られることを想像してみてください。このような 3D アセットは画像制作に使えるだけでなく、拡張現実（AR）やバーチャル リアリティ（VR）のユースケースやシナリオにも使用できる可能性があります。

Google Cloud プレミア パートナーの Arvato Systems は、3D 画像制作を提供する imagejet を開発しました。この新しい革新的なクラウドベースのソリューションは、NVIDIA L4 Tensor Core GPU を搭載した G2 VM を活用して、初めてでも簡単にスタジオで撮影した写真のようにリアルで高画質な画像を量産できるようにしています。

現状を打破し、従来の限界を超える

ポストコロナ時代のオンライン ショッピング ブームにより、スタジオ品質の画像を使用した一流の製品プレゼンテーションへの需要がかつてないほど高まっています。こうした状況に対応するため、小売業者、日用品関連企業、メーカー、その他の中小企業は現在、市場開拓戦略をオンライン チャネルへと拡大しており、よりプロらしく製品を見せる方法を必要としています。

従来の製品写真は多額の費用がかかり柔軟性が低いうえ、動的さやスケーラビリティに欠けており、急速に限界に達しつつあります。製品の高解像度な画像を撮影する場合、わずか数シーンを撮るために、高価な機材と照明を備えたスタジオのセットアップが必要になります。Google には、幅広い製品の質感、色、素材をキャプチャするためのオプションがいくつか用意されています。とはいえ、この方法では製品バリエーションの増加や、製品の迅速な適応を必要とする市場やトレンドのダイナミクスに対応できません。

一方、強力な 3D レンダリング プラットフォームをゼロから構築するには、NVIDIA の高度な画像処理装置（GPU）や 3D レンダリング ソフトウェア向けの高価なサードパーティ ソフトウェア ライセンスの取得など、開発作業とインフラストラクチャに多大な投資を行う必要があります。

画像制作のパイプライン構築には膨大な労力がかかります。これは多くの組織にとって手に負えない作業で、費用の高さや技術的な複雑さを考慮すればなおさらです。さらに、社内での構築や、従来の製品写真ベースのアプローチによる画像制作には長い時間がかかり、市場投入までの時間が延びるうえ、市場の変化に合わせてチームが迅速に対応することも非常に困難になります。

imagejet で Google Cloud 上の 3D 画像制作プロセスを改善する方法

Arvato Systems は、3D 画像制作プロセスを大幅に加速する imagejet を開発しました。目標は、費用と複雑さを軽減しながら、お客様が 3D 制作パイプラインを利用しやすくすることでした。

Imagejet の主な機能は次のとおりです。

• 既存の写真ワークフローを変更する必要のない、3D アセットに基づいた合理的な写真制作
• チーム（お客様、3D 代理店）をつなぐコラボレーション プラットフォーム
• 統合された承認とワークフロー管理
• Pixar の Universal Scene Description（USD）や業界標準の商品情報管理データ（PIM）などの主要標準を活用した、スケーラビリティに優れた制作と高スループットの画像生成（Google Cloud 上）
• 複数の配信チャネル（AR / VR アプリケーションなど）で単一の発信元（1 つのアセットタイプ）から公開

たとえば、製品カタログ用に 400 万枚の画像を必要とするお客様がいるとします。Google Cloud NVIDIA L4 GPU の動的なワークロード分散とともに、最適化されたスポット インスタンスで imagejet を使用すると、リクエストされたアセットをわずか 2 週間で提供できます。同じリクエストを社内やオンプレミスの 3D 制作パイプラインで完了するには、2 年近くかかります。

Google Cloud と連携してさらなるイノベーションを実現

Arvato Systems が imagejet の構築に着手した当時、チームは幅広い最先端のテクノロジーだけでなく、主な市場プレーヤーとの強力なテクノロジー パートナーシップを提供できるクラウド パートナーが必要であると認識していました。Google Cloud と NVIDIA の戦略的パートナーシップにより、Google Cloud のお客様は最新の GPU と安定した容量を利用することができます。また、Google Cloud には、Google Kubernetes Engine、Pub/Sub、Cloud Storage、Cloud Memorystore for Redis、BigQuery など、パフォーマンスを高めるための主要サービスも用意されていました。

Arvato Systems は Google Cloud のカスタマー エンジニアリング チームとの強力なコラボレーションを通じて、負荷の高い 32 ビット（浮動小数点）演算を必要とする 3D レンダリング ワークロードに対し、NVIDIA の L4 Tensor Core GPU が最高のパフォーマンスを発揮することを確認できました。最新の NVIDIA L4 GPU を使用することで、imagejet の 3D レンダリング パフォーマンスが 160% 向上し、レンダリング費用を 75% も削減できました。これは、以前にテストした NVIDIA A100 Tensor Core GPU に比べて大幅な改善と言えます。

「Google は Arvato Systems との連携により、テクノロジーの限界を超えただけでなく、エネルギーの消費も大幅に削減しました。Google Cloud で NVIDIA L4 GPU を使用することで、3D レンダリング プロセスのエネルギー効率が大幅に向上しました」と、Google Cloud のメディアおよびエンターテイメント担当カスタマー エンジニアリング責任者の Anna-Maria Martini は述べています。「これは、先進テクノロジーがいかにパフォーマンスを高めるかだけでなく、デジタル環境においてますます重要性を増しているエコロジカル フットプリントの削減という面でもどれだけ重要な役割を果たせるかを示しています。」

Arvato Systems は、優れた費用対効果と、EU 地域で要件となる容量の一貫した可用性に加え、Google Cloud のプロダクトとサービスの広範なエコシステムも利用できます。imagejet は、基盤となる Google Cloud インフラストラクチャの高いスケーラビリティを活用して、複数の 3D 量産ジョブに対応し、技術的な複雑さを軽減するだけでなく、使用量に基づく柔軟な価格設定アプローチをお客様に提供して人件費を削減しています。

高品質の 3D 画像制作をより簡単かつ迅速に実現

imagejet の開発は、現代企業のビジネスモデルの根幹となっている製品プレゼンテーションを、どのように変革し、強化できるかを示す重要なマイルストーンです。クラウド テクノロジーが継続的に進歩し、よりインタラクティブで没入感のあるショッピング エクスペリエンスに対する需要が増加するなか、imagejet は高品質な 3D 画像制作のスピード、革新性、費用効率を高める新しい作業方法を提供しています。

Arvato Systems のクラウドおよびビジネス変革担当バイス プレジデントの Christian Scholz 氏は、次のように語っています。「Google Cloud のおかげで、当社ソリューションの imagejet は、アーティスト、代理店、マーケティング部門、ゲーマー、開発者などの働き方に革命をもたらすことができるでしょう。お客様が力を合わせて仮想世界を構築できるようにするための魅力的なツールを当社は提供しているのです。」

詳細については、以下のリソースを確認することをおすすめします。

• NVIDIA L4 GPU 搭載の G2 VM のご紹介
• Universal Scene Description（OpenUSD）

^{この投稿に分析情報を提供してくれた Anna-Maria Martini と Christian Scholz 氏に感謝します。}

ー Arvato Systems imagejet プロダクト オーナー Götz Moritz Bongartz 氏

ー Google Cloud プリンシパル アーキテクト Benjamin Storz