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顧客事例

アルファス: 事業の根幹を担うデータベースを Spanner に移行してコストとパフォーマンスを改善、さらなる展開も視野に

2024年7月1日
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Google Cloud Japan Team

さまざまな分野でマルチクラウドの運用が普及するなか、クラウドの運用コストを管理していくことは、多くの企業にとって重要な課題となっています。アルファス株式会社(以下、アルファス)は、運用コストの可視化・最適化から、請求書のスムーズな発行作業まで、クラウド財務業務の合理化と効率化を通じて、事業の成長を支援するソリューションを幅広く提供してきました。同社は 2023 年 10 月から、サービスを根幹で支えるデータベースを Spanner に移行。その理由と成果、今後の可能性について CTO とシニアエンジニアに伺いました。

利用しているサービス:
Google Kubernetes Engine, BigQuery, Spanner など

利用しているソリューション:
データベースのモダナイゼーション

Spanner は分散型と非分散型データベースの良いところ取り

「Cloud simplified.(クラウドを、もっとシンプルに)」というミッションのもと、アルファスは 2015 年の創業以来、クラウド リセール事業者向けの SaaS プラットフォーム『Ripple』を提供。2024 年には、一般企業向けのマルチクラウド対応 FinOps ソリューション『Octo』をローンチするなど、パブリック クラウドの費用管理を最適化するソリューションを提供してきました。現在、同社は東京、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどに複数の拠点を設けてサービスを展開しています。CTO を務めるチュー・エスメロ(Chew Esmero)氏は「日本では私たちがこの分野のパイオニアであり、リーダー的存在になってきました」と胸を張ります。

同社の特徴は、主要パブリック クラウドをサービス構築に取り入れながら、各プラットフォームに関する深い知見をサービス品質向上に反映してきた点にあります。特に Google Cloud に関しては、データレイクに BigQuery、データ処理に Google Kubernetes Engine(GKE)を主に用いるなど、プライマリー クラウドとして積極的に採用してきました。さらに 2023 年には、他社プラットフォームを用いていたデータベースも、Google Cloud 独自の分散型データベースである Spanner に移行。エスメロ氏は決断の理由を、次のように説明します。

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「サービスを構築する際、私たちがまず重視するのはランニング コスト、次がパフォーマンスです。以前に使っていた他社プラットフォームのデータベース サービスは、パフォーマンスこそ十分だったものの、毎月のコストの予測が難しいという問題がありました。私たちの会社が競争を勝ち抜いて生き残っていくためには、サービスを可能な限り低コストで提供していく必要があるため、これをいかにクリアするかは大きな課題になっていました。」

エスメロ氏によれば、コストの振れ幅は月単位で平均約 34%、多いときには 200% 以上になることもありました。そこで選ばれたのが Spanner でした。さまざまな選択肢を詳細に比較する過程では、コストとともに極めて重要な要素となる、パフォーマンスも評価されています。

「私たちはランニング コストの安定化や抑制と同時に、データの整合性をしっかり確保することを目指していました。データの整合性は、非分散型データベースを選べば解決できます。しかしサービスを充実させていくために、分散型データベースのスケーラビリティとパフォーマンスも必要としていたのです。その点、Spanner は SQL のサポート、ACID 特性、トランザクション、テーブル結合といった非分散型データベースの機能を持ちながら、NoSQL や Key-Value ストアなど分散型の優れたパフォーマンスやスケーラビリティも備えています。これらの要件を両立できるデータベース サービスは決して多くありません。Spanner は数少ない例外の 1 つですし、スタッフが慣れ親しんだ SQL をそのまま使えることもメリットとなっていました。」

Google Cloud のサポートで根幹のデータベースを予定通り移行

既存データベース サービスから Spanner へのマイグレーションは、 2023 年 6 月から 10 月までの間、合計 4 か月かけて実施。エスメロ氏を含む 4 人のエンジニアによって、通常業務の空き時間に行われています。チームメンバーとして移行プロジェクトに携わったシニアエンジニアの野口 雅史氏は、一連の作業をこう振り返ります。

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「通常業務に遅延を発生させるわけにはいきませんので、私たちにはマイグレーション作業との両立が求められていました。それが可能になったのは、Google Cloud そのものが開発しやすいからに他なりません。また、Google Cloud から適切なサポートをいただいたことは本当に助かりました。エンジニアの方からは、Spanner のパフォーマンスを引き出すための構成やチューニングについて、かなり踏み込んだアドバイスもあり、予定されたスケジュール通りに移行を完了することができました。」

現在、同社ではクラウドのコストや使用状況をはじめとする課金データを、BigQuery などで集計し、GKE を軸に処理。Spanner に格納したうえで API 連携させ、わかりやすい UI で可視化・表示する方法を採っています。

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この方式は、大きな効果をもたらしました。まず課題となっていたクラウドのコストはメインのデータベースを Spanner へ移行したことで平準化に成功。振れ幅は平均約 4%、最大でも 10% を超えない程度にまで抑えられるようになりました。各種クラウド プラットフォームをまたいだデータのやりとりが必要なくなったため、データ転送コストに至っては約 99% も削減されています。一方、Spanner は BigQuery から直接クエリを実行できるため、他社のデータベース サービスから BigQuery へデータを受け渡す際に必要だった ETL 処理のいくつかを簡略化でき、分析パイプラインの高速化も実現しました。さらに野口氏によれば、Spanner への移行には別のアドバンテージもありました。

「これまで使っていた他社のデータベース サービスでは、データの外部整合性も大きな課題でした。この点についても、Spanner の TrueTime 機能を使うことによって、難なく解決できています。」

Google Cloud と生成 AI の積極活用でさらなる業務展開を

Spanner へのマイグレーション成功を受け、アルファスでは他社サービスを利用しているメッセージングについても、Google Cloud が提供する Pub/Sub に切り換えていくことなどを検討し始めています。エスメロ氏は Google Cloud の技術開発力を、改めて高く評価していました。

「私たちは、サービスを総合的に向上させるという観点からもマルチクラウド戦略を推進しています。この方針は変わりませんが、Google Cloud はさまざまなクラウドの中でも、まさに私たちが価値を生み出すために必用な製品やサービスを生み出してくれる、優れたテクノロジー プロバイダーになってきました。大規模な分散システムを開発・運用してきた技術とノウハウは、社会の課題を解決する、あるいはビジネスの在り方を変えるような可能性を秘めています。今後もアルファスでは、Google Cloud をプライマリー クラウドとして活用し続けていく予定です。」

エスメロ氏は Gemini や Vertex AI に代表される Google の AI テクノロジーにも注目。現在のサービスを拡充させていくことに加え、新たなサポートの提供も視野に入れていると締めくくりました。

「将来的には、サービスのインサイトやレポート作成を生成 AI で自動化する、さらには生成 AI で顧客の運用システムを分析し、ランニング コスト抑制に向けた改善案を提示するといった業務にも挑戦していきたいと考えています。確かに顧客のシステムを分析して提案を行うような作業は、私たち本来の業務内容とは異なっています。また従来のやり方では、リソースや時間もかなりかかってしまうでしょう。しかし Google の 生成 AI を活用すれば、負荷を抑えながら一歩踏み込んだ分析や提案ができるようになるはずです。Google Cloud の製品はサービスの差別化を図り、顧客を獲得する鍵となってきました。今後もその可能性を模索していきたいと考えています。」


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アルファス株式会社
「Cloud simplified.(クラウドを、もっとシンプルに)」をミッションとして、Google Cloud など各種パブリック クラウドの費用を管理する「クラウドフィナンシャルマネジメント(CFM)」ソリューションを提供。現在は 28 名(2024 年 4 月時点)のスタッフが東京、マレーシア、ベトナム、フィリピンなど複数拠点に分散し事業を展開している。

インタビュイー(写真右から)
・CTO チュー・エスメロ 氏
・シニアエンジニア 野口 雅史 氏


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