クラウド費用の最適化に向けて: Google FinOps リソースガイド
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 29 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
クラウドはメリットと可能性にあふれていると、以前から Google は主張し続けてきました。
しかし、753 人のビジネス リーダーを対象とした調査によると、80% を超える回答者がクラウド支出の管理が組織の最大の課題であると指摘し、その同じ回答者が、クラウド支出のほぼ 1/3 が非効率あるいは無駄であると推定しています(Flexera、2023)。多くの組織にとって、クラウド費用の最適化やリソースの効率的な使用といった課題は初めて向き合うものです。
また、デジタル トランスフォーメーションを進めるにつれて多くの組織が気づき、実感しているのが、「ビジネス価値に関して言えば、単にクラウドに移行するだけでは十分ではない」という点です。クラウドのメリットを最大限に活用するには、財務管理の慣行に関する考え方と行動の両方を根本的に変える必要があります。そしてそれには、幅広いチーム間の連携のあり方を変える必要があります。
Cloud FinOps の構成要素について


Cloud FinOps とは、財務に関する意識向上とアカウンタビリティの促進を目的とした、人材、プロセス、テクノロジーを組み合わせたフレームワークであり、規律であり、文化的変化です。FinOps の実践により、クラウドのビジネス価値を最大化するという主な目的のもとで、エンジニアリング、財務、テクノロジー、ビジネスといった各部門のリーダーとチームの足並みが揃います。Cloud FinOps の実践においては、すべてのビジネス関係者が支出と費用に対して責任を負うだけでなく、それらを最適化することも求められます。こうした実践により、企業は消費を管理し、データに基づいてクラウド支出を適切に決定できるようになります。Cloud FinOps には、次の 5 つの構成要素があります。
アカウンタビリティと環境作り
ガバナンスとポリシーを確立することで、クラウド支出を管理し、ビジネス価値を実現します。測定と実現
定義された一連の KPI と成功指標を使用して、財務上のアカウンタビリティと価値の実現を推進します。費用の最適化
IT リソースの使用状況に伴う費用を可視化して推奨事項を提供することで、クラウド支出を最適化します。計画と予測
予算編成、予測、チャージバックの方法をモダナイズし、革新的かつ費用対効果の高い開発手法を繰り返し実践します。ツールとアクセラレータ
一連のクラウド費用ツールを導入、統合して、クラウド支出を効果的に管理、追跡します。詳しくはこちらをご覧ください。
Cloud FinOps フレームワークの概要と 5 つの構成要素の詳細については、次のリソースをご覧ください。
動画 | What is FinOps and 3 reasons why you should care about it(FinOps とは何か、そして FinOps に関心を持つべき 3 つの理由)
この 5 分間の動画では、FinOps の概要、5 つの構成要素、組織にもたらされるメリットを説明します。ポッドキャスト | FinOps with Joe Daly(Joe Daly 氏による FinOps の紹介)
このポッドキャストでは、FinOps Foundation の Joe Daly 氏が、FinOps(番組中ではファイナンシャル DevOps と呼ばれる)の主要原則を紹介し、企業がクラウドを活用しながら財務上の意思決定をより適切かつ効率的に行う際に、このフレームワークがどのように役立っているかを説明します。ブログ投稿 | Decoding Cloud FinOps to accelerate digital transformation(デジタル トランスフォーメーションを加速する Cloud FinOps を読み解く)
このブログ投稿では、デジタル トランスフォーメーションの成功において FinOps が果たす重要な役割について説明します。また、ビジネス価値の測定と追跡を支援し、デジタル トランスフォーメーションが営業収益に与える影響の可視性を高めるための主要な指標について概要を示します。記事 | Cloud FinOps: The secret to unlocking the economic potential of public cloud(Cloud FinOps: パブリック クラウドの経済的可能性を引き出す秘訣)
この Forbes の記事では、大手広告エクスチェンジ プラットフォームで初めてクラウドへの完全移行を果たした OpenX について紹介し、OpenX がデジタル トランスフォーメーション戦略で活用した Cloud FinOps フレームワークの 5 つの主要な柱について詳しく説明します。同社はわずか 9 か月で、ユニットあたりの費用を 60% 以上削減しました。
重要なのは、Cloud FinOps は費用節約のためのものではなく、収益を上げるためのものであり、費用を意識する文化、財務のアカウンタビリティ、クラウドにおけるビジネスのアジリティを促進するためのものであるということです。クラウドへの移行のどの段階にあっても、Cloud FinOps の実践は、Google Cloud から最大限の価値を引き出すのに役立ちます。このフレームワークを活用することで、障害を取り除き、FinOps の構成要素を実装し、チームがより適切なビジネス上の意思決定を行えるようになります。
Cloud FinOps ジャーニー
Cloud FinOps は、最終目的でもなく、チェックリストに完了マークをつけたら終わるものでもありません。むしろ、Cloud FinOps は継続的な取り組みであり、規律です。その性質上、繰り返し行うことになります。したがって、あらゆるプロセス、機能、領域で成長と成熟を促すには、行動、繰り返し、継続的な学習が必要です。
Google は 5 つの FinOps 構成要素のすべてについて、組織の FinOps の熟練度、能力、実践領域、盲点をよく理解できる 50 のサブプロセスをリストアップしました。それらを 1 から 5 までのスケールで評価し、3 つの成熟段階(Crawl: ハイハイ、Walk: 歩く、Run: 走る)のいずれかに分類します。「Crawl」段階にある組織は、技術的な問題解決とクラウド費用の可視化に重点を置く傾向があります。「Walk」段階にある組織は、より優れたビジネス価値を実現するために、費用可視化ダッシュボードの採用などの戦略的改善を重視します。そして、「Run」段階にある組織は、プロセスとクラウド アーキテクチャの両方で費用を考慮しつつ、主に革新的な変化と戦略的イノベーションに焦点を当てています。
この「Crawl-Walk-Run」成熟度モデルを通じて、Google は習熟度を評価し、ベンチマークを確立し、FinOps 導入のための目標を絞った行動計画を推奨できます。また組織は、改善を促進するだけでなく、結果を評価して洞察を得るために、成熟度に関係なく迅速かつ拡張性のある行動を起こすことができます。
ここで重要なのは、組織の Cloud FinOps 成熟度レベルに関係なく、継続的な改善に向けて今すぐ小さな一歩を踏み出すことができるということです。以下では、いくつかの共通の重点領域と、その他のリソースを成熟度レベル別に紹介します。
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/2_Cloud_FinOps_Building_Blocks.max-1100x1100.png
「Crawl」段階
クラウド費用の可視性を高めます。
ホワイトペーパー | Drive Cloud FinOps at scale with Google Cloud Tagging(Google Cloud のタグ付けを使用して Cloud FinOps を大規模に推進)
タグとラベルは、組織がクラウド支出をセグメント化し、費用を割り当てるのに役立つ便利で柔軟なツールです。このホワイトペーパーでは、Google Cloud のタグとその実装に関するベスト プラクティスを紹介します。タグ(信頼性の高いレポート機能とガバナンス機能を提供する)とラベル(データのラベル付けにおいて、漏れがある、整合性がないなどの問題が発生しやすい)の違いを説明します。ホワイトペーパー | Unlocking the value of Cloud FinOps with a new operating model(新しい運用モデルが引き出す Cloud FinOps の価値)
このホワイトペーパーでは、役割、組織の連携、文化変革の推進など、FinOps 運用モデルを詳しく説明します。さらに、強固な財務ガバナンスを実現し費用を重視する文化を確立する方法について詳しく説明します。ホワイトペーパー | Cloud FinOps: Shared services cost allocation(Cloud FinOps: 共有サービスの費用配分)
このホワイトペーパーでは、費用配分の要素と、共有サービスの費用配分に関連する複雑さと課題について説明します。これらの概念とモデルの一部はレガシー環境とクラウド環境の両方に共通するものですが、このホワイトペーパーは主にクラウド コンピューティングと関連サービスに焦点を当てています。
「Walk」段階
ビジネス価値の実現を推進します。
ブログ投稿 | 2022 年以降に Cloud FinOps の影響を測定するための 5 つの主な指標
ビジネスの成長と収益向上を促進するには、ビジネス リーダーはクラウドへの投資をビジネスの成果に結びつけることができなければなりません。そのため、従来の IT 指標と KPI は継続的に進化する必要があります。このブログ投稿では、Cloud FinOps の 5 つの構成要素に対応する 5 つの主要なビジネス価値指標を考察します。ホワイトペーパー | Maximize business value with Cloud FinOps(Cloud FinOps でビジネスの価値を最大化)
クラウドの導入により、IT 財務管理は複雑になり、新たな課題が生まれます。そのため、組織全体で戦略的な財務ガバナンス、プロセス、パートナーシップを確立することが必要です。このホワイトペーパーでは、クラウドに投資した企業が Cloud FinOps によってどのように財務アカウンタビリティを果たし、ビジネス価値を促進できるかを説明しています。
「Run」段階
戦略的なクラウド イノベーションの質を向上させます。
ホワイトペーパー | Unit costing: The next frontier in cloud(単位ベースの費用: クラウドにおける次なるフロンティア)
このホワイトペーパーでは、FinOps の実務者が自社のクラウド費用がビジネスに与える影響を理解するための基準となる、単位ベースのクラウド費用の性質とその必要性について、FinOps 実践の先駆者であるクラウド ファーストの組織の例を交えて説明します。さらに、クラウドにおけるさまざまな予測方法および予算編成方法を、ゆるやかなものから厳密なものまで検証します。ブログ投稿 | 支払ったぶんだけ得る: チャージバック プロセスの設計原則
Cloud FinOps の重要な機能であるチャージバックは、クラウドの使用量を組織内のユーザーにマッピングするプロセスです。これにより、透明性とアカウンタビリティが向上し、クラウド費用を回収しやすくなり、財務の責任を持つ文化が育まれます。このブログ投稿では、Google Cloud で効果的なチャージバック プロセスを設計する際のベスト プラクティスを紹介します。
Cloud FinOps による成功
世界市場が困難に直面し続けている今こそ、クラウド投資の収益性を高めるべき時です。FinOps の実践を採り入れ、実装することがその一助となります。さまざまな FinOps 成熟度の組織が、クラウド全体の支出をトータルで数百万ドル削減した実例を以下でご覧ください。
動画 | Next 2022: Top 10 ways to lower your costs on Google Cloud with General Mills(Next 2022: General Mills による Google Cloud の費用削減方法トップ 10)
この動画では、クラウド費用の最適化に関する主要な 10 の方法を紹介しています。クラウド利用の 60% 拡大に向けて動いている General Mills が費用削減に取り組み、クラウド利用の無駄を省くために Cloud FinOps を急速に導入した方法をご覧ください。動画 | How Nuro optimized their costs on Google Cloud(Nuro はどのようにして Google Cloud で費用を最適化したか)
この動画では、Google Cloud FinOps フレームワークの概要と費用最適化のベスト プラクティスの詳細を説明し、スタートアップの Nuro AI がどのように独自の費用削減方法と Cloud FinOps の実践を採用したかを紹介します。動画 | How OpenX reduce per unit costs by 60%(OpenX はどのようにして単位あたりの費用を 60% 削減したか)
この動画では、クラウド活用における費用問題に取り組む専門チームを確立する方法を学び、費用最適化に関する推奨事項を確認します。また、Google Cloud でどのように費用を削減したかについて OpenX から話を聞きます。事例紹介 | How Sky saved millions with Google Cloud(Sky は Google Cloud でどのように費用を削減したのか)
この導入事例では、メディアおよびエンターテイメント企業である Sky Group がクラウド導入の取り組みから数年で、BigQuery、Compute Engine、Cloud Storage を使って 150 万ドル超の費用を削減し、費用を最適化した方法を紹介しています。事例紹介 | Etsy: Doing more with less cost and infrastructure(Etsy: 費用とインフラストラクチャを削減しながら効率化)
この導入事例では、Etsy がデータセンターと e コマース プラットフォームをクラウドに移行した後、コンピューティング エネルギーを 50% 超節約し、確約利用割引(CUD)を活用してコンピューティング費用を 42% 削減した方法を紹介しています。
何をもって FinOps の成功とするかは組織によって異なります。それは一度限りの修正でも、一本道で到達できる目的地でもありません。しかし、あらゆる組織にとって成功に必要なのは、小さな行動、精緻化、継続的な改善です。Google Cloud FinOps のリソースとツールを活用すると、組織は次のことが可能になります。
財務のアカウンタビリティと可視性の向上
クラウドの使用量と費用対効果の最適化
組織をまたいだ信頼関係と協力関係の実現
無秩序なクラウド支出の防止
部門間のサイロの解消
イノベーションの加速
Cloud FinOps を導入する
Google は、FinOps 実践をリードするエキスパート チームを擁しており、クラウド支出の最適化とコスト効率向上のための実行可能な計画を作成できるよう、お客様を支援しています。また、FinOps の取り組みをあらゆる段階から始めるのに役立つ多数のリソースを作成しています。
ホワイトペーパー | Maximize business value with Cloud FinOps(Cloud FinOps でビジネスの価値を最大化)
このホワイトペーパーでは、組織が FinOps を導入する際に役立つ手順について概説し、Google Cloud への投資を最大限に活用するために必要なチームとプロセスに加えて、最適な行動、アプローチ、結果について詳しく説明します。
Google Cloud FinOps の活用はクラウドにおけるビジネス価値の促進にもつながります。詳細については、月に 2 回、Google Cloud Twitter チャンネルで開催される Twitter スペースのオープンなディスカッションにご参加ください。または、個別のご説明をご希望の場合は Google Cloud 営業担当者にご連絡ください。
- Cloud Billing エクスペリエンス担当プロダクト リーダー Sarah McMullin