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クラウド ファースト

Cloud FinOps のデコーディングでデジタル変革を加速する

2021年11月10日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 10 月 28 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

デジタル変革を加速する

デジタル変革はビジネスと業界の推進要因となります。スタートアップ企業からグローバル企業まであらゆる規模の組織が、規模に応じた改善を行うためだけでなく、大きな変化を促進し、デジタル時代に完全に対応するためにデジタル変革に注力しています。このパンデミックをきっかけに、多くの企業がビジネスモデルのデジタル化、ビジネスのアジリティ、復元性、速度の向上による変革を実行すると同時に、顧客に新たなイノベーションとビジネス価値を提供するために本格的な取り組みを開始しました。

しかしながら、ボストン コンサルティング グループによると、デジタル変革を成功に導く企業はたったの 30% にすぎません1。多くの大規模なデジタル変革が失敗したのは、明確なビジネス上の優先順位がなかったこと、エグゼクティブによるトップダウンの支持がなかったこと、または変革をやり遂げるための専用のリソースとコミットメントがなかったことが原因です。

デジタル変革を成功させるための基盤づくり

デジタル変革により、組織の運用方法の根本的な変化の促進、内部リソースの最適化、顧客への価値の提供が可能になりますが、これは一夜にして実現できることではありません。組織全体で変革を成功させるために、デジタル変革は、段階的でありながらアジャイルで、優れた費用対効果、価値重視、サステナブルな戦略によるプログラマティックなアプローチが必要です。

成功の基盤となる重要な要素の一つが、Cloud FinOps(Cloud 財務運用)です。Cloud FinOps は、クラウド変革により技術、財務、ビジネスを一体化する運用フレームワークおよび文化の変革であり、財務の説明責任を推進し、ビジネス価値の実現を促進します。デジタル変革では、部門間のコラボレーション、アカウンタビリティの推進、費用の透明性の提供、責任を追及しない文化のために行動や文化の変化を促進する、新しい作業モデルと運用モデルが必要です。

最も重要なことは、Cloud FinOps がデジタル変革のプログラムを成功に導き、テクノロジー チーム、財務チーム、ビジネスチームの間の境界を取り払うことで、ビジネスのアジリティを実現する機能としての役割を果たすことです。この複数の職能にまたがるチーム コラボレーションにより、テクノロジーのリーダーは財務担当やビジネス担当のリーダーと協力してテクノロジーへの投資の理解を深め、サステナブルなビジネス成果を生み出します。そうすることで、ビジネス上の優先順位がより明確になり、焦点を価値創出、顧客中心主義、イノベーションに移すことができます。

それにより、企業はビジネスモデルを再構築してバリュー ストリームに投資し、クラウド テクノロジーへの投資を戦略的なビジネスの成果に結び付けています。また、クラウドの費用の可視化が向上することで、財務担当チームは予算に対するクラウドの支出をより正確に把握できるようになります。組織はテクノロジー サービスの TCO をメリット指標に合わせることで、十分な情報に基づいた将来の投資の意思決定と需要の予測ができます。

ビジネス価値の実現を促進する Cloud FinOps

Cloud FinOps の構成要素を適切にデプロイし実装することで、組織は費用の節約だけでなく、次のようなデジタル変革の加速が可能になります。

  • ビジネス価値の実現とイノベーションの促進

  • 財務の説明責任と可視性の向上

  • クラウドの使用量と費用対効果の最適化

  • 組織をまたいだ信頼関係と協力関係の実現

  • 無秩序なクラウド支出の防止

  • 部門間のサイロの解消

多くの場合、デジタル変革に成功している組織はビジネス価値を測定、追跡するプロセスを確立しています。Cloud FinOps の重要な構成要素の一つは「測定と実現」です。ビジネス目標に向けたビジネス価値指標の追跡とモニタリングを行う、強固な価値測定アプローチを確立することで、Cloud FinOps の規範を通じてテクノロジー、財務、ビジネスの各リーダーをまとめます。そしてデジタル変革によって組織が新しい革新的な機能を生み出し、収益を向上させる方法を示します。

ビジネスのメリット指標は、費用対効果、復元性、ベロシティ、イノベーション、サステナビリティという複数の要因に分かれます。Google は以下の指標カテゴリに KPI を割り当てることをおすすめします。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/Cloud_FinOps_business_value.max-900x900.jpg
  • 費用対効果: インフラストラクチャの節約、移行、サポート費用による費用対効果を測定します。顧客は一般的に、日、週、月ごとのコンピューティングやストレージの費用などの指標から始め、サービスを提供した顧客あたりの費用やトランザクションあたりの費用などの単位の指標に発展させます。ここで、アプリケーション スタックの費用は顧客の要因に合わせることができます。

  • 復元性: サービス品質の向上とセキュリティ リスクの継続的な状況把握により、業務の復元力を高めます。システム サービスレベルや、深刻なダウンタイム イベントの頻度と期間などの従来の指標は、IT の耐久性を測る効果的な測定基準です。また、顧客はダウンタイム イベントの 1 分あたりの費用を関連付けることでこれらの指標を増強でき、そうしたイベントの直接的な影響だけでなく、逃した収益も反映できます。

  • ベロシティ: プロダクトやサービス提供の流動性を加速することで製品化までの時間を短縮します。クラウドベースのマイクロサービス アーキテクチャに移行することで、顧客は通常、ソフトウェアのリリース頻度を上げるだけでなく、リリース前に多くのテストシナリオを実行できるというメリットが得られるため、コードの品質向上につながります。たとえば、Google による最新の State of DevOps Report 2021 によれば、優れた成果を上げた企業はその他の企業に比べて、973 倍の頻度でコードのデプロイとリリースを行っています。

  • イノベーション: 迅速なテストを行う文化を実現することで、イノベーションとクラウド変革を推進します。クラウド テクノロジーを使用することで、企業は固定費投資や長期間の調達リードタイムといった財務上の制約を回避できます。その結果、テストの限界費用や、プロダクトのコンセプト考案からテストまでの時間が大幅に削減される一方で、単位時間あたりのテスト回数が飛躍的に増加します。

  • サステナビリティ: 循環型経済戦略を採用し、炭素排出量ゼロでのアプリケーションの実行から、生産性の向上やサービスのコラボレーションによる炭素排出量の削減にいたるまで、あらゆる活動にサステナビリティを組み込むことで、環境と社会における真のサステナビリティ指標を組織全体に浸透させます。Accenture によると、オンプレミスからクラウドへの移行を行う企業は、平均で 65% のエネルギー削減と 84% の炭素排出量削減を実現できます1

開始方法

Cloud FinOps を開始するための最初のプロセスは、指標の定義またはアップデートです。ビジネス目標や戦略の要件は時間の経過とともに変化する可能性が高いため、目標が変わるたびに Cloud FinOps の指標を見直すことが重要です。チーム内部の優先順位に変化があった場合は、指標の見直しにビジネス目標の変更も含める必要があります。エグゼクティブは、意思決定における指標の影響を改善し、進化するビジネス機能とテクノロジー機能に適切な優先順位を付けて投資するために、テクノロジーとビジネス間の成果の依存関係を特定する必要があります。優れた指標を定義するのは、単にビジネス目標に照準を絞って価値を示すためだけではありません。戦略的なイニシアチブに優先順位を付け、効果的なリソース配分を導き、組織全体の認知度を向上させ、クラウドでの新しい運用方法に対する考え方の転換を促すという重要な目的もあります。

パンデミックの影響で、企業がデジタル機能をモダナイズする必要性は高まりました。テクノロジーによる創造的破壊があらゆる業界に及んでいる今、サステナブルなビジネス成果を達成するために自らを変革し、アジャイルな考え方を取り入れ、クラウドのテクノロジーや機能に大胆な投資を行うことが、組織にとってかつてないほど重要になっています。

では、現在のお客様のクラウドの FinOps への取り組みはどのような状況にあるでしょうか。またどのようにして今後の課題を克服していくべきでしょうか。Google は、それについてお客様が考え、クラウドによるビジネス価値の最大化を進めるお手伝いができます。

クラウド変革への道のりのどの時点でも、Google とのインタラクティブなセッションにより、組織の経営幹部が一堂に会し、クラウドにおけるビジネス価値を加速、実現するための共通のビジョンとプランの確立に取り組むことができます。詳細にご興味がありましたら、Google までお問い合わせください。


この重要な Cloud FinOps のトピックに対してそれぞれの分野の専門知識を提供し、協力してくれた Pathik SharmaBruce WarnerJon NaseathNihar Jhawar に感謝します。

- Cloud FinOps 担当責任者、サービス提供リーダー Eric Lam

- ディレクター兼デジタル変革担当責任者 Daniel Pettibone

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