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クラウド ファースト

2022 年以降に向けてクラウド FinOps の影響を測定するための 5 つの主な指標

2021年12月17日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 12 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

指標のベースラインを確立することによるメリット

組織がクラウドへの投資を進めてビジネスの成長と収益向上を推進するなか、ビジネスで高い成果を上げる取り組みに注力することがビジネス、財務、テクノロジーを担当する経営幹部たちに求められるようになってきています。  ビジネス機能とテクノロジー機能への投資がもたらす価値を数値化することが、これまで以上に経営幹部には求められているのです。  こうした現状を受け、ビジネスと IT のリーダーたちは、業務と戦略の成果だけでなく、リスクと機会に関する一連の価値指標を必要としています。  しかし多くの場合、IT 運用に関する指標とビジネスの成果は連動していません。つまり、経営幹部はテクノロジーとビジネスの成果を結び付けて、IT リーダーとビジネス リーダーが有意義な会話を交わせるよう取り持つ必要があります。

多くの IT 関連業務同様、一般的に指標と KPI の測定は長期にわたる取り組みとなります。  組織では通常、クラウドコストに重点を置いた単位指標からこの取り組みに着手し、明確に定義されたビジネス価値指標へと発展させていきます。

Google Cloud では、クラウド FinOps を構成する 5 つの主な構成要素に関して指標を定義しています。これには、アカウンタビリティとイネーブルメント、測定と実現、コスト最適化、計画と予測、ツールとアクセラレータが含まれます。これらの指標を容易に測定し、デジタル トランスフォーメーション ジャーニーを実施している組織で誰もが指標を取得できるよう Google Cloud では取り組んでいます。

アカウンタビリティとイネーブルメントに関する指標

アカウンタビリティとイネーブルメントは、コストと価値を意識する文化を形成するうえで欠かせない要素であり、クラウド FinOps でプロセスと文化に変革を起こす取り組みにおいて指針となるものです。  この指標の主な目標は、IT の財務プロセスを合理化し、スムーズなクラウド ガバナンスを実現することで、財務アカウンタビリティを向上させ、ビジネス価値の実現を推進することです。  イネーブルメントでは、クラウドのリソースと戦略を効率的にデプロイ、管理できるよう、理解度を高めるトレーニングを IT、財務、ビジネスの各チームに提供します。  アカウンタビリティとイネーブルメントを向上させるには、ビジョン、そして柱となるガバナンス ポリシーを策定したうえで、財務、IT ビジネスの各オーナーを巻き込んでプロセスの変革を進めます。

アカウンタビリティとイネーブルメントの標準的な指標として、クラウド イネーブルメント率を導入することをおすすめします。この指標は、組織内のビジネスリーダーの合計人数のうち、トレーニングと認定を受けたビジネス リーダーの割合で表されます。

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理解度とトレーニングが不足していることが原因で、多くの組織がクラウド FinOps の導入に失敗しているため、これは見逃すことのできない指標です。クラウドの価値、そして持続可能なビジネス成果の推進においてクラウドが果たす役割をビジネス リーダーが深く理解するうえでこのクラウド イネーブルメント指標が役立ちます。

組織内で特定したビジネス リーダーの人数に基づく一連の目標を通じて、クラウド イネーブルメント指標を簡単に導入できます。この場合、上位 20% が全体の 80% を左右するというパレートの法則を利用し、クラウドのサービスを多用している主なビジネス リーダーを特定することが重要になります。Google Cloud では先日、ビジネス リーダーと経営幹部を対象とした、新たな Cloud Digital Leader 認定資格を発表しました。Cloud Digital Leader 認定資格を取得することで、クラウドの基本的なコンセプトについて精通していることを証明できるだけでなく、さまざまな場面でクラウド コンピューティングの知識を幅広く応用し、Google Cloud のサービスがビジネス目標の達成において果たす役割を説明できるようになります。また、FinOps Foundation では、クラウド、財務、テクノロジーの各部門の担当者が FinOps の知識を確認し、プロとしての信頼を高められるトレーニングと認定プログラムを提供しています。

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Cloud Digital Leader 認定資格をビジネス リーダーの 70% 以上が獲得することで、組織全体でクラウド FinOps の連携と導入が大幅に推進され、クラウド テクノロジーを活用して持続可能なビジネス成果を策定できるようになります。

測定と実現に関する指標

優れたプロセスに欠かせないのが正確なデータと効果的な指標です。まず、クラウドコストを把握、追跡する必要があります。それを支えるのが適切なリソース階層とプロジェクト構造の標準です。また、組織におけるクラウド リソースの使用状況を明らかにする、ラベル付けおよびタグ付けデータ アーキテクチャも威力を発揮します。  アプリケーションや環境、プロジェクトなど、IT を中心とした指定子がタグとして使用されることが多いものの、コストセンターか勘定科目表をタグとして含めることで、損益をラベル付けおよびタグ付けアーキテクチャと直接連動させることが重要です。  また、タグ付けを自動化することで、一貫性と精度が高いラベルですべてのタグ付け可能リソースをデプロイし、FinOps 指標に信頼性の高いデータを反映できるようになります。

関連する事業部門と損益ごとに、特定のプロダクトやプロジェクトだけでなく、詳細なコストセンターにクラウド リソースを割り当てることが、一貫性のあるきめ細かいタグ付けを実現するうえで非常に重要です。  典型的なクラウド サービスの全額チャージバックを受けるためには、3 つのタイプのクラウド リソースにコストを割り当てる必要があります。  1 つ目にして最もシンプルなのが、あるアプリケーションを利用した事業部門が 1 つだけの場合などに、特定の損益に連動させる形でタグ付け可能リソース(コンピューティング インスタンス、データベース、ストレージ バケット)を割り当てることです。  

2 つ目が、複数の事業部門で同じタグ付け可能リソースを使用する場合です。  関連する事業部門の収益または従業員数を使用してコストを割り当てるといった、従来型の損益割り当てモデルに落ち着くお客様も多く出てくるでしょう。  共有アプリケーションのコストをより正確に割り当てるために、他社の一歩先を行くお客様は API 呼び出しなどの要素をクラウド マイクロサービス アーキテクチャで使用することで、共有アプリケーションの相対的な使用状況を厳密に測定しています。  

3 つ目は、タグ付けできないクラウド リソースです。  一般的には、サポートやネットワーキングに関連するコスト、サードパーティ マーケットプレイスのコストなどがこれに含まれます。  このクラウド リソースの場合、さきほど紹介した(従業員数か収益を使用する)従来型の損益割り当てモデルがよく使用されます。  タグ付け可能リソース割り当ての相対的な配分を使用して対応するタグ付け不可コストを事業部門に割り当てながら、ネットワーキングなど、一部のタイプのコストを API 呼び出しに基づいて割り当てるお客様も出てくるでしょう。

これら 3 つのタイプのクラウド リソースでクラウド FinOps の測定と実現の有効性を測定するには、クラウド割り当て率をメインの指標として採用することをおすすめします。  担当ビジネス オーナーに割り当てられた総クラウドコスト(各事業部門が利用したタグ付け可能リソース、複数の事業部門で共有されたタグ付け可能リソース、タグ付け不可リソース)の割合としてこの指標を測定します。

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この指標はショーバック モデル(クラウドコストは中央の IT 損益に計上されるが、報告は事業部門に行われる)とチャージバック モデル(クラウドコスト全額が事業部門の損益に計上される)に対応できます。また、リソースのタグ付けの基本的な効果と精度、事業部門へのコスト配分が反映されます。  クラウド割り当て率は次の 2 つの方法で導入できます。  なんらかの損益指標(使用量、または収益か従業員数を基準にした従来型の損益割り当て)によって分配されたコストを定性化するシンプルな方法。  タグ付けか API 呼び出しを使用して使用量を測定し、関連コストを事業部門に割り当てるリソース(専用リソースと共有リソースの両方)だけを定性化するより高度な方法。

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導入において初歩から中級レベルへと進んだお客様は、総クラウドコストの 70% 以上を割り当てを目指します。一方で、上級レベルにまで達したお客様は使用量を直接測定することで、コストの 90% 以上の割り当てを実現します。

コストの最適化に関する指標

クラウドコストを最適化するには、コストを削減するだけでなく、ビジネス価値を最大化するにはどこに投資すればよいかを把握する必要があります。これは、一貫性のある方法を用いて、最も費用対効果が高い方法でクラウド使用量を可視化、管理する反復的かつ継続的なプロセスです。  コストの最適化に成功すれば、クラウドコストを大幅に削減できるだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスが向上することで、処理できるトラフィック(1 秒あたりのユーザー リクエスト、または処理するトランザクション件数)の量を同じ予算範囲内で増やすことができる場合さえあります。

組織では、請求と使用量やコストに関するデータを取り込むことで生成されるレポートと、最適化のために生成される推奨事項を自動化する必要があります。こうした最適化により、節約できる費用(実現されていないコスト削減)が明らかになり、チームは導入に注力することでコスト削減を実現できます。

通常は以下を行うことでコストを削減できます。

  • 確約利用割引(リソースベースと支出ベース)や BigQuery の予約などの価格の最適化。

  • ビジネス価値を一切もたらさない、無駄の多いリソース(古くなったスナップショット、アイドル状態のインスタンス、大きすぎるデータベースなど)の最適化。

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この指標を取得することで、組織では内部の非効率な部分について状況を常に把握できます。また、経営陣はコスト削減の実現に注力することで、クラウドでワークロードを実行することでもたらされる真のメリットを実感できます。

おすすめハブを FinOps ワークフローに統合することで、コスト最適化指標を導入できます。おすすめハブは、Active Assist に含まれています。Active Assist には、最小限の労力でワークロードを最適化できる、インテリジェントなツールと機能が豊富に用意されています。複数のプロジェクトにおよぶすべての推奨事項だけでなく、節約できるコスト(ドル単位)の概要が表示されるため、コスト最適化の取り組みに優先順位を付けて進めることができます。アイドル状態の VM Recommender、確約利用割引 Recommender、VM マシンタイプ Recommender など、さまざまな Recommender から生成された推奨事項を実行に移すことでコスト削減を実現したお客様もいらっしゃいます。

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最終的には、最適化対象のすべてのクラウド サービスで 90% を超えるコスト削減が可能であると見込んでいます。削減されたコストを他社にはないプロダクトやサービスの開発に再投資し、カスタマー エクスペリエンスを向上させることで、クラウドがもたらすビジネス価値の実現を推進したお客様をこれまで目の当たりにしてきました。

計画と予測に関する指標

企業におけるクラウド コンピューティングの予測精度に直接影響するため、財務計画は財務組織に欠かせない能力です。企業の財務目標の指針となる、年単位で設定される財務指標の正確な予測に財務計画では力を入れます。年間計画は四半期ごとに評価され、年間を通じて、パフォーマンスに応じて調整されます。ビジネスの成果を高めるために、予測の精度は月単位でモニタリングされます。

通常は、クラウド運用を担当しているチームがクラウド コンピューティング コストの計画と予測も行います。業務予測計画は利用ワークロード計画、過去の傾向、季節性と主要な指標に基づいて策定されます。変革プロジェクトは予測精度に重大なリスクももたらします。

クラウド支出を財務的な観点から正確に予測するには、資産の減価償却期間に対する従来のアプローチ、およびメンテナンスとライセンスのコストに対するトレンドベースの予測を見直す必要があります。安定状態のワークロードに対するトレンドベースのモデル、アプリケーションのスケーリングに対するドライバベースのモデル、月ごとのバリアンス分析を組み合わせた、ワークロード専用予測モデルを使用することで、変動が激しいクラウドのニーズを極めて高い精度で予測できるようになります。

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予測精度を把握、測定することで、企業は計画を実行に移した場合の結果を明らかにできます。予測精度のバリアンスに関する測定、話し合いを行い、クラウド支出の割り当てをきめ細かく管理することで、企業は予測どおりの結果を得られます。

財務担当チームとクラウド運用チームでは、最低でも月に 1 度はクラウド コンピューティングの予測精度について話し合う必要があります。クラウド運用チームでは 1 か月間の予測の傾向をモニタリングし、予想外の動きが見られた場合には調整の内容を評価する必要があります。

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高い精度で予測を行うことで、経営幹部や投資家を動揺させるようなこともなくなります。オンプレミス環境の設備投資の減価償却と比較すると、クラウド コンピューティングの方が通常は変動性と季節性が高くなります。プロジェクトとスプリント アジャイル管理を調整することで、予想外の事態を避けることができます。開発における変更によって支出が予想外に増加した場合は、予想外の事態が今後発生しないように、チェンジ マネジメント プロセスを見直す必要があります。

ツールとアクセラレータに関する指標

FinOps のプラクティスを最大限に活用するには、適切なツールとアクセラレータを導入することが重要になります。初期段階では、クラウド支出の詳細な分析をフル活用できないこともあります。プラクティスの習熟度と質が向上すれば、特定のプロジェクト / チームのコストの把握、そして単価指標の確立においてリソースへのラベル付けとタグ付けがもたらすメリットを実感できるようになります。

リソースのモニタリングを自動化し、支出、価値、コンプライアンス、推奨事項に関する洞察を得ることで、こうした機能がさらに大きな威力を発揮します。  

コスト削減につながる自動生成された推奨事項のうち、何件が実際に導入されかを導入率として評価することで、ツールとアクセラレータの習熟度を測定することをおすすめします。

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組織が新しいワークロードをクラウド環境にオンボーディングする際、実用的で効果の高い推奨事項とモニタリング機能がないとクラウドの無駄が増えるため、この指標は重要です。クラウドへの投資に見合うだけの価値を組織が実現できないのも、実用的で効果の高い推奨事項とモニタリング機能がなかったことが主な原因です。

ツールの習熟度を上げる取り組みを始めるお客様には、特別な構成が不要のおすすめハブをご利用いただけます。おすすめハブは、Google Cloud Console で、推奨事項の表示、優先度設定、適用の操作が行えるページです。  VM の適切な推奨サイズの提示、BQ スロットの最適化、確約利用割引、アイドル状態のリソースに関する推奨などが利用できます。Recommendations API を使用することで、おすすめハブを既存のエンタープライズ ツールに統合することもできます。組織の習熟度が上がれば、Cloud Monitoring を活用して、独自のビジネス ロジックに基づく高度な推奨事項を作成できるようになります。

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最終的には、推奨事項を提示するツールが成熟することで、自動生成された推奨事項の 50% 以上が導入され、組織ではクラウドの無駄を最小限に抑えて、クラウドへの投資から最大限の価値を引き出せるようになると見込んでいます。

すべての指標を Cloud FinOps ダッシュボードで一元管理

時代の変化に応じてテクノロジーやビジネス目標も変わっていくため、目標が変化してもクラウド FinOps 指標を継続的に確認できるプロセスを確立することが重要です。また、特定した指標の目標において、すべての組織が「上級」状態になる必要はないことを念のためお伝えしておきます。今回ご紹介した指標は、組織の優先事項に合わせてビジネス成果を達成するためのものです。クラウド FinOps 指標の数値化と測定において各チームが部門の枠を超えて協力することで、経営幹部たちは上層部からの承認を素早く取得し、組織が一丸となって目指すべき目標を掲げて迅速に行動に移せるようになります。

今回ご紹介した指標を把握できる Cloud FinOps ダッシュボードを構築することで、変化を歓迎する企業文化を促進するとともに、主な指標に関する結果を共有、追跡できるツールを変革とビジネスを担当するリーダーにもたらすソリューションを Google Cloud では開発しました。クラウド FinOps 指標の導入を成功させることで、組織はビジネスで成果を上げることに集中できるようになります。また、ダッシュボードが実現する有意義なフィードバック ループによって、ビジネスへの影響を把握し、組織全体を見渡せるようになります。

では、お客様の現在の FinOps への取り組みはどのような状況にあるでしょうか。またどのようにして今後の課題を克服していくべきでしょうか。Google は、それについてお客様が考え、クラウドによるビジネス価値の最大化を進めるお手伝いができます。

クラウド変革への道のりのどの時点でも、Google とのインタラクティブなセッションにより、組織の経営幹部が一堂に会し、クラウドにおけるビジネス価値を加速、実現するための共通のビジョンとプランの確立に取り組むことができます。詳細にご興味がありましたら、Google までお問い合わせください。


このブログ記事には Daniel PettiboneAmitai RottemBruce WarnerJon NaseathNihar Jhawar に共同執筆者としてご参加いただきました。また、この分野の専門知識、およびクラウド FinOps 関連トピックへの継続的なサポートでは、FinOps Foundation のメンバーである J.R. Storment 氏Vas Markanastasakis 氏Anders Hagman 氏John McLoughlin 氏Mike Bradbury 氏Rich Hoyer 氏にご協力いただきました。

-プロフェッショナル サービス、テクニカル アカウント マネージャー Pathik Sharma

- Cloud FinOps 担当責任者、サービス提供リーダー Eric Lam

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