FinOps のレベルアップ: FinOps X 2024 で発表された費用管理に関する 5 つのイノベーション
Sarah McMullin
Group Product Manager, Cloud FinOps
Pravir Gupta
VP Engineering, Google Cloud Business Platform
※この投稿は米国時間 2024 年 6 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google Cloud の FinOps プロダクトの理念は、すべてのクラウド費用を可視化して割り当てること、支出を無駄なく効率的にすること、そしてもちろん、予想外の費用が発生しないようにすることです。そして、Google Cloud は再び FinOps イノベーションの最前線に立ち、FinOps X 2024 でいくつかの興味深い新製品を発表しました。なぜなら、私たちが追い求めてやまないのは、イノベーションを通じてすべての人にクラウドの価値を解き放つことだからです。
今年の FinOps X で Google がもたらした FinOps の 5 つの革命を以下に示します。
1. オープンなクラウド請求データを現実のものとする
Next’24 において、最新の FinOps Open Cost & Usage(FOCUS)仕様で定義された属性や指標に一致するように Google Cloud の費用データを変換する新しい BigQuery ビューが発表されました。BigQuery ビューは、SQL クエリの結果を表す仮想テーブルです。すでに BigQuery への課金データのエクスポートをご利用の場合、追加のデータ ストレージ料金は発生しません。今週、最新の FOCUS v1.0 仕様の一般公開リリースに適合するように BigQuery ビューがアップデートされ、この BigQuery ビューに対応する FOCUS Looker ビューが発表されました。
FOCUS Looker ビューを使用すると、以下のことが可能になります。
-
FOCUS 仕様に適合した Google Cloud 請求データを表示し、フィルタする
-
費用、変化、サービス、リージョン、アベイラビリティ ゾーンを直感的なグラフで可視化する
- 手作業を最小限に抑える。これらのテーブルは、提供されている LookML コードによって自動的に作成および管理されるため、手動で作成する必要はない
Google Cloud データが FOCUS 1.0 規格に従って正規化され、正規料金での費用順に並べ替えて表示されます。
2. テクノロジーではなくビジネスの言語で話す
Google Cloud の AI 研究チームの協力の下で Gemini Cloud Assist が進化を遂げ、レポートに組み込まれた FinOps 費用管理機能が強化されました。Gemini Cloud Assist は、正確さを何よりも優先することを明確な目標としています。クラウドの費用に関しては、いかなるときも正確さが求められるからです。以下に、Gemini がどのようにしてユーザーの時間を節約するかを示します。
-
費用レポートをその場で作成する: 必要な操作は、Gemini Cloud Assist に何の費用が知りたいかを伝えることだけです。たとえば、「Dora プロジェクトの先月のコンピューティング費用はいくらですか?」と尋ねます。あるいは、次のように、今取り組んでいるビジネス上の問題について質問することもできます。「前四半期に費用が増加した原因は何ですか?」これだけで Gemini Cloud Assist から正確な費用レポートが提供されるため、その回答を基に問題をさらに深く掘り下げることができます。
-
重要な分析情報を要約する: もはや、費用を把握するためにデータをダウンロードして手動で分析する必要はありません。Gemini Cloud Assist から提供された費用レポートに重要な分析情報がすでに記載されており、データを自ら掘り起こさなくても、最も重要な費用発生源や傾向が即座にわかります。
-
詳細な費用傾向を詳しく調べる: Billing BigQuery Export(BQE)を使用すれば、費用レポートのデータを複製するためのクエリを記述する必要はありません。Google Cloud の使用状況に対する費用レポートを表示すると、詳細な費用を詳しく調べるための BigQuery スクリプトが提供されるため、FinOps の専門家がデータ サイエンティストの役割を果たすことができます。
Gemini Cloud Assist for FinOps は、正確さとプライバシーを何よりも重視してお客様がクラウド費用をより簡単に把握できるようサポートします。また、Gemini Cloud Assist からの回答はすばやく簡単に監査できるようになっているため、安心して使えます。
3. 費用の定義を温室効果ガス排出量まで拡大する
お客様のクラウド環境を財務実績とサステナビリティの両方の観点から最適化するため、FinOps ハブに温室効果ガス排出量レポートが統合されました。このレポートを使用すると、ビジネス目標を達成しながら、二酸化炭素排出量を測定、報告、削減できます。FinOps ハブは、ロケーション ベースの二酸化炭素排出量データと Google の放置されたプロジェクトの推奨事項を通じて行動につながるインサイトを提供し、会社の収益と地球環境の双方に利益となる効果的な意思決定を促進します。Google の放置されたプロジェクトの推奨事項は、過去の使用状況に基づいてアイドル状態のリソースに対する推奨アクションを提示するもので、クラウド費用と二酸化炭素排出量の両方の削減につながります。
FinOps ハブで直接温室効果ガス排出量レポートを使用すると、お客様のクラウド環境が地球環境に及ぼす影響をより深く理解できます。これは、たとえば以下のようなことに役立ちます。
-
排出ホットスポットを特定する: 温室効果ガス排出量の多くの部分を占めるリージョン、プロジェクト、プロダクトを簡単に特定できます。この貴重な情報を使用して、サステナビリティに対する取り組みを改善するために実施可能な施策を検討できます。
-
サステナビリティの目標を設定、追跡、達成する: 温室効果ガス排出量レポートは、サステナビリティの目標を設定および追跡するためのベースラインとして使用できます。
- 炭素効率の高いリージョンを特定する: 温室効果ガス排出量の削減を図るため、報告された温室効果ガス排出量から炭素効率の最も高いリージョンを特定し、そこにリソースをデプロイできます。炭素効率の最も高いリージョンは、FinOps ハブの推奨事項に新たに追加された「低 CO2」インジケーターによって見分けることができます。
リージョン、プロジェクト、または個々の Google Cloud サービスごとに温室効果ガス排出量を把握できます。
4. 効率的なクラウドの姿を準リアルタイムでモデル化する
Google はお客様からのご意見に真摯に耳を傾けました。CUD の推奨事項はお客様に好評ではあるものの、個々のお客様に固有のビジネス実態を反映した「What-If」シナリオをモデル化するには、もっと強力な機能が必要です。こうした理由から、FinOps ハブに CUD のシナリオ モデリングが導入されました。
これにより、お客様は自社ビジネスの現実を反映したシナリオを構築し、確約利用戦略に一致する適切なレベルの確約利用を迅速に特定できます。さらに、以下によってさらなる費用の節約も可能となります。
-
使用パターンを把握する: 30 日、60 日、90 日、180 日のカスタマイズ可能なルックバック期間の履歴データを詳細に調べることができます(180 日のルックバック期間は 2024 年 7 月から提供開始)。
-
データノイズを除去する: 予測を歪める可能性のある異常や外れ値を簡単に除外できます。
-
結果を即座に確認する: モデル パラメータを調整すると、推奨される確約利用量、1 か月あたりの推定削減額、使用パターングラフが準リアルタイムで更新されます。
-
自信を持って協働する: 作成されたモデルを同僚や意思決定者と共有することで、整合性を高め、情報に基づく意思決定を促進できます。
FinOps ハブといえば、アイドル予約の推奨事項も新たに追加されました。Compute Engine の予約を使用すると、需要のピーク期間中や予期しないイベントが発生したときでも重要な Google Cloud Platform コンピューティング リソースへのアクセスが保証されるため、運用が中断されず、コストのかかるダウンタイムを防ぐことができます。ただし、予約が不要になったときに削除するのを忘れてしまうケースも見受けられます。FinOps ハブの新しいアイドル予約の推奨事項を使用すると、使用パターンを分析することでクラウド費用を最適化し、無駄を排除できます。たとえば、一定の期間(デフォルトは 7 日間で、カスタマイズ可能)利用されていない予約を識別できるため、それらを削除して不要な支出を削減できます。
使用されていない予約に関する推奨事項を FinOps ハブに表示し、詳細を確認できます。
5. ノイズではなく実用的なアラートを送信する
Next で、費用の異常検出ソリューションの限定公開プレビューが発表されました。これは、Google Cloud プロジェクトを継続的にモニタリングし、予期しない費用の超過を準リアルタイムで特定するものです。予期しない費用の急上昇が詳細な根本原因とともに説明され、SKU に至るまでの主要な要因が示されます。これを使用すれば、課金コンソール内で異常に対するアラート設定を簡単に構成できます。1 回限りの簡単なセットアップにより、個々の異常ごとにメールアラートまたは Pub/Sub アラートを設定するか、必要な受信者グループに 1 日の要約をオプトインできます。また、費用への影響のしきい値を設定して、重大と思われる異常についてのみアラートを受け取ることもできます。さらに、ワンクリックでフィードバックを提供することにより、Google のスマートな AI 駆動型異常検出アルゴリズムの改善に貢献できます。最後に、異常についてまとめた CSV を 3 か月前までさかのぼってダウンロードできます。
最後に
Google は、プロダクトの継続的なイノベーションと進化を通じて、Google Cloud のお客様が現実的な FinOps の問題を解決できるよう尽力し続けています。本稿で取り上げた新しいリリースをぜひお試しいただき、Google Cloud の FinOps ユーザー グループに登録して Google プロダクトの開発に参画してください。ご意見やご感想をお待ちしております。
-Cloud FinOps、グループ プロダクト マネージャー Sarah McMullin
-Google Cloud Business Platform、エンジニアリング担当バイス プレジデント Pravir Gupta