Google Cloud のファイル ストレージ オプションで Microsoft ベースのワークロードを有効に
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 12 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
企業は Microsoft と Windows ベースのワークロードをクラウドへと迅速に移行することで、ライセンスの費用を削減し、クラウドネイティブのアーキテクチャの威力をフル活用するためのモダナイゼーション戦略に着手しつつあります。現在のビジネス環境においてはアジリティ、柔軟性、スケーリング、コスト最適化が求められますが、これらはデータセンターからの運用では実現が非常に困難です。Google Cloud は、Microsoft ベースのサービスとツールのための優れたエンタープライズ クラスの機能を提供します。
多くの Windows ベースのワークロードには、サーバー メッセージ ブロック(SMB)のファイル サービス コンポーネントが欠かせません。たとえば、構成ファイルとログを一元的に保管するためには、Windows Server クラスタで稼働している高可用性の SAP アプリケーション サービスに SMB ファイル サーバーが必要です。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックによって、従業員が早急にリモートワークに入るための仮想デスクトップ ソリューションの需要が増加しました。こうした仮想デスクトップのユーザーは、多くの場合 SMB ファイル サーバーにアクセスしてドキュメントを保存したり、同僚と共同作業を行ったりする必要があります。
Google Cloud には数多くの SMB ファイル サービスがあり、Microsoft 製品 / サービスのさまざまなニーズに応えることができます。こうしたオプションは、フルマネージド サービス、セミマネージド サービス、セルフマネージド サービスの 3 つのカテゴリに分類されます。この投稿では、3 つのカテゴリにわたって、複数のオプションを検証していきます(注: Google Cloud の SMB ファイル サービス プロバイダのリストを完全に網羅するものではありません。一般的なリストの一部のみを簡単にレビューしています)。
フルマネージド SMB ファイル サービス
多くの企業にとって、運用オーバーヘッドの削減はクラウド移行の重要な目標です。フルマネージド サービスは、ソフトウェアのインストールと構成、アプリケーションのパッチ適用、バックアップといった日常的なタスクを行う IT スタッフを必要とせずに、機能と結果を提供します。こうしたマネージド SMB ファイル サービスのオプションがあれば、作業負担とリスクを低減しつつ、Windows のアプリケーションとユーザーによる迅速な作業が可能になります。(これらのオプションはパートナーが提供するマネージド サービスです。ご希望のリージョンで利用可能かどうかをご確認ください)。
NetApp Cloud Volumes Service
IT 業界で仕事をして、ストレージの管理や使用経験がある、または導入を考えたことがあれば、NetApp をご存じかと思います。NetApp は、1992 年からエンタープライズ クラスのソリューションを提供してきました。NetApp Cloud Volumes Service(CVS)なら、Google Cloud と緊密に統合された、高可用性でクラウドネイティブのマネージド SMB サービスを使用できます。ストレージ ボリュームのサイズは 1 TB から 100 TB まであり、大規模なアプリケーション環境の需要に対応できます。サービスには自動スナップショットや高速ボリューム プロビジョニングなど、実証済みの NetApp 機能が含まれています。デプロイは直接 Google Cloud Marketplace から行い、Google Cloud Console で管理することが可能です。Google のサポートを利用でき、料金は Google Cloud 請求書で請求されます。
Dell Technologies の PowerScale
Dell Technologies は企業のストレージ市場におけるリーダー的存在で、Google Cloud 上の PowerScale を提供するためにパートナーとして提携しています。PowerScale はオールフラッシュ アーキテクチャを活用して、高速なストレージ操作を実現します。下位互換性があるため、PowerScale オールフラッシュ ノードや、オールフラッシュ構成、ハイブリッド構成、アーカイブ構成の Isilon ノードから選択することもできます。OneFS ファイル システムは、名前空間あたり最大 50 PB の容量を誇ります。これは驚くべきスケーリングです。また、NetApp と同様に、Google Cloud の PowerScale にはスナップショット、レプリケーション、オンプレミス ストレージとのハイブリッド統合といった、エンタープライズ クラスの機能が含まれています。Google Cloud と緊密に統合されているため、Google Cloud Marketplace で見つけることができ、Google Cloud Console と統合されています。また、Google が直接サポートを行い、Google によって課金されます。
どちらのマネージド ファイル ストレージ サービスも、SMBv3 まで対応できるため、管理オーバーヘッドを抑えながら Windows ワークロードをサポートする優れたオプションです。
セミマネージド SMB ファイル サービス
フルマネージド SMB サービスが不要な場合もあります。マネージド サービスは多くの作業を担ってくれるものの、一般的には、特定のニーズに対応するため、ソリューションをカスタマイズする選択肢が狭まります。そのため、お客様によっては、Windows ワークロードに必要とされる具体的な仕様に合わせて構成を調整できる、以下のようなストレージ サービスに代表されるセルフマネージド(またはセミマネージド)サービスが好まれます。
NetApp Cloud Volumes ONTAP
フルマネージド NetApp Cloud Volumes Service と同様に、NetApp Cloud Volumes ONTAP(CVO)なら、SnapMirror など、データセンターで使用する NetApp の使い慣れた機能とメリットが得られます。セミマネージド サービスのため、Google Cloud 上のデータに対し拡張されたコントロール機能とセキュリティ強化を必要とするお客様に適しています。CVO では Google Compute Engine インスタンス上の Google Cloud Virtual Private Cloud(VPC)にデプロイされ、すべてが Google Cloud プロジェクトに格納されます。そのため、ポリシーやファイアウォール ルール、ユーザーのアクセス権を適用することで、社内外のコンプライアンス要件を満たすよう調整が可能です。CVO は、NetApp の手順ガイド に沿って、自分でデプロイする必要があります。Marketplace は、さまざまな CVO のお支払いプランをご提供しています。料金は SMB のストレージ容量(2 TB~368 TB)と可用性によって異なります。NetApp Cloud Volumes ONTAP は、Google Cloud のすべてのリージョンでご利用いただけます。
Panzura Freedom ハイブリッド クラウド ストレージ
Panzura Freedom は、クラウド生まれのハイブリッド ファイル サービスで、グローバル企業のファイルの保管、共同編集、バックアップを実現します。Panzura CloudFS と呼ばれる単一の地域分散型ファイル システムを利用し、Google Cloud VPC、企業のオフィス、オンプレミス データセンター、その他のクラウドから同時にアクセスできます。信頼できるデータが Google Cloud Storage バケットに保存され、ローカルにデプロイされた Panzura Freedom Filers にキャッシュされます。そのため、Windows アプリケーションとユーザーは、高いパフォーマンスでファイル システムにアクセスできます。Google Cloud のグローバル ファイバー ネットワークと 100 を超える接続拠点(PoP)により、グローバルなレイテンシが短縮され、どこからでも高速なアクセスを確保できます。Panzura は Google Cloud Marketplace で見つけることもできます。
セミマネージド SMB ファイル サービス
マネージド サービスですべての要件を満たすことができない場合があります。これは、技術的要件に限りません。たとえば、業界内で、どのマネージド サービスも認定されていないコンプライアンス規制に対応しなければならないことがあるかもしれません。すべてのフルマネージドおよびセミマネージド SMB ファイル サービスのオプションを検討して、予算と要件に合うものが見つからない場合でも、ご安心ください。まだ、Google Cloud 上で独自の Windows SMB ファイル サービスを展開する方法があります。この方法は特に柔軟性が高く、それと同時にデプロイ、構成、セキュリティ保護、すべての管理の責任も伴います。しかしご心配にはおよびません。こうしたオプションは、Microsoft に注力しているスタッフにはなじみ深いはずです。
Google Compute Engine インスタンス上の Windows SMB ファイル サーバー
このオプションは、非常にシンプルです。任意のバージョンの Windows サーバーが稼働している Compute Engine インスタンスをデプロイして、ファイル サーバーのロールをインストールすれば、すぐに使用できます。Windows のすべてのネイティブ機能が利用可能になります。オンプレミスの Active Directory から Google Cloud への拡張や連携が済んでいる、または Active Directory 用のマネージド サービスを使用している場合、オンプレミスと同じように権限を適用できます。Persistent Disk を使うと、Windows ファイル サーバーの柔軟性が非常に高まります。Persistent Disk の追加または拡張により、ダウンタイムなしで SMB ファイル サーバーのストレージ容量を増やし、ディスク パフォーマンスを向上させることができます。単一の SMB ファイル サーバーは単一障害点ですが、Compute Engine のネイティブ保護と冗長性により、障害が長いダウンタイムにつながることはほぼありません。リージョン永続ディスクを使用すると、ディスクは異なる Google Cloud ゾーンに継続的にレプリケートされるため、VM やゾーンに障害が発生したときに保護と迅速なリカバリを行うための追加措置となります。
Windows クラスタリング
要件によって Windows ファイル サーバーがダウンすることが許されない場合、単一の Windows ファイル サーバーでは用が足りません。これには、Windows フェイルオーバー クラスタリングというソリューションが有効です。2 つ以上の Windows Compute Engine インスタンスと Persistent Disk を使って、Persistent Disk、VM、OS、全体的な Google Cloud ゾーンの障害を乗り切る高可用性の SMB ファイル クラスタを構築できます。ダウンタイムはゼロまたは最低限で済みます。Windows ファイル クラスタには、ファイル サーバー クラスタとスケールアウト ファイル サーバー(SOFS)の 2 つの種類があります。
Windows ファイル サーバー クラスタは、20 年ほど前から存在します。基本アーキテクチャは、ストレージ エリア ネットワーク(SAN)などの共有ストレージに接続されている、Windows フェイルオーバー クラスタ内の 2 つの Windows サーバーです。こうしたクラスタは、本質的にアクティブ / パッシブです。任意の時点で、クラスタ内のサーバーのうち 1 つだけが共有ストレージにアクセスして、SMB クライアントにファイル サービスを提供できます。クライアントは内部ロードバランサがフロントエンドとして機能するフローティング IP アドレス経由でサービスにアクセスします。アクティブ ノードに障害が発生すると、パッシブノードが共有ストレージに対する読み取り / 書き込みアクセスを確立して、フローティング IP アドレスをバインドし、ファイル サービスを開始します。クラウド環境において、物理的な共有ストレージ デバイスをクラスタ ストレージとして使用することはできません。その代わり、記憶域スペース ダイレクト(S2D)を使用できます。S2D は、複数の VM の永続ディスクを可用性の高い単一の仮想ストレージ プールと組み合わせる、クラスタ化されたストレージ システムです。これは、分散仮想 SAN と考えることができます。
スケールアウト ファイル サーバー(SOFS)は、より新しく、さらに高機能なクラスタ化されたファイル サービスロールで、Windows フェイルオーバー クラスタでも稼働します。Windows ファイル サーバー クラスタと同様に、SOFS はクラスタ ストレージに S2D を使用します。Windows ファイル サーバー クラスタと異なる点は、SOFS がアクティブ / アクティブ ファイル サーバーであることです。SOFS は、フローティング IP アドレスをクライアントに示す代わりに、SOFS ロールの各ノード用に DNS に個別の A レコードを作成します。それぞれのノードは共有データセットの完全なレプリカを持ち、Windows クライアントにファイルを提供できるため、SOFS は垂直方向と水平方向のどちらにもスケール可能です。さらに、SOFS にはいくつかの新機能があり、これによってアプリケーション サーバーの障害耐久性が向上しています。
前述のとおり、Windows ファイル サーバー クラスタと SOFS の共有ストレージは S2D に依存します。こちらに、Google Cloud の仮想マシンに S2D をインストールするプロセスが解説されています。後から、選択した SMB ファイル サービスロールをインストールすることも可能です。ファイル サーバーのクラスタロールをデプロイするプロセスと、SOFS ロールのプロセスをご確認ください。
スケールアウト ファイル サーバーとファイル サーバー クラスタの比較
ファイル サーバー クラスタと SOFS は、S2D で可用性の高い SMB ファイル共有を提供するという点では似ています。SOFS はより新しい技術のため、ファイル サーバー クラスタと比べてスループットが高く、より優れたスケーラビリティを提供します。ただし、SOFS は、エンドユーザーによるファイルの使用(開く、名前を変更する、編集する、コピーするなど)でよく見られる、メタデータの負荷が高い操作には最適化されていません。そのため、エンドユーザーのファイル サービスにはファイル サーバー クラスタを選び、アプリケーションに SMB ファイル サービスが必要なときは SOFS を選ぶのが一般的です。こちらのページで、ファイル サーバー クラスタ(リンク先ページでは「汎用のファイル サーバー クラスタ」と記載)と SOFS の機能の比較について詳細をご覧ください。
どちらを選ぶか決める
これまで、Windows のワークロードとユーザーに安全かつ高パフォーマンスでスケーラブルな SMB ファイル サービスへのアクセスを提供する Microsoft 製品 / サービス向けのいくつかの優れたオプションについて説明してきましたが、特定のニーズに最適なオプションは、どのように選べばよいのでしょうか?考慮すべき判断基準がいくつかあります。
目的は、IT 運用の簡素化と運用負荷の軽減でしょうか?そうであれば、フルマネージドおよびセミマネージドのオプションをご覧ください。
マネージド サービスでは対応できない、特別な技術構成の要件がありますか?ある場合は、単一の Windows インスタンスまたは Windows クラスタ オプションの一つとして、独自の SMB ファイル サービス ソリューションを展開することをご検討ください。
完全自動化された高可用性のためのマルチゾーンが必要でしょうか?必要であれば、NetApp Cloud Volumes ONTAP と単一インスタンスの Windows ファイル サーバーは選択肢から除外されます。これらは、単一の Google Cloud ゾーンで運用されるためです。
特定の Google Cloud リージョンの要件がありますか?あれば、そのリージョンで NetApp Cloud Volumes Service と NetApp Cloud Volumes ONTAP が利用可能かどうかを確認する必要があります。専用のハードウェアが必要なパートナー サービスなため、これら 2 つのサービスは、現時点ではすべての Google Cloud リージョンで利用できるわけではありません。
オンプレミスとクラウドにまたがるハイブリッド ストレージ機能が必要でしょうか?すべてのマネージド オプションには、ハイブリッドのオプションがあります。
予算は限られていますか?限られている場合、どの単一障害点でも発生しうるダウンタイムを最低限に抑えるために手動でプランニングや作業を行ってもかまわなければ、単一の Windows Compute Engine インスタンス ファイル サーバーで問題ありません。
多様な地域での障害復旧が必要でしょうか?ご安心ください。ご説明したすべてのオプションで、障害復旧の方法が用意されています。
次のステップ
本投稿は Google Cloud の Windows ファイル サービスについて、いくつかのオプションの概要を説明したものです。関心のあるオプションの詳細をご覧ください。いくつかの候補に絞ったら、マネージド サービスの情報が掲載されている Marketplace のページを参照し、さらに詳しい情報を得て、サービスを導入するプロセスを開始してください。上述のセルフマネージド オプションに含まれているリンクから、利用を開始するための Google Cloud 固有の手順や、選択したクラスタ オプションをデプロイするための一般的な Microsoft のドキュメントを参照できます。
-Google Cloud カスタマー エンジニア Sean Patterson