SAP HANA データベースを Google Cloud に移行する 2 つの方法

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
世界の大手企業の多くが SAP を利用しています。Google Cloud でデプロイすると、SAP のメリットがさらに広がります。現行の SAP S/4HANA デプロイを Google Cloud(会社のオンプレミス サーバー上でも別のクラウド サービス上でも可)に移行すると、ワークロードに合わせて環境を拡大できる柔軟な仮想化アーキテクチャが実現し、その時点で必要なコンピューティング容量とストレージ容量にのみ料金を払うことが可能になります。Google Cloud には Compute Engine ライブ マイグレーションや自動再起動などの組み込み機能が含まれており、インフラストラクチャの保守に要するダウンタイムを最小限に抑えることができます。また、SAP データを複数のデータソースと統合して BigQuery などの Google Cloud テクノロジーで処理し、データ分析を推進できます。
SAP サーバーサイド アーキテクチャは、SAP HANA データベースと Netweaver アプリケーション レイヤの 2 つのレイヤで構成されます。このブログ投稿では、リフト&シフトすなわち再ホスト(現在の SAP 環境を変更なしでそのまま Google Cloud に移す簡単な方法)として、データベース レイヤを Google Cloud に移動するためのオプションと手順を見ていきます。
Google Cloud 上での SAP HANA システムのデプロイ
Google Cloud には、SAP HANA および SAP HANA Enterprise Cloud や、12 TB を超える環境向けの SAP HANA 専用サーバーなど、SAP プロダクト向けに最適化された SAP 認定仮想マシン(VM)が用意されています(VM およびハードウェア オプションの一覧を確認するには、認定およびサポートされている SAP HANA ハードウェア ディレクトリにアクセスしてください)。
Google Cloud への再ホスト移行を進める前に、現在の(移行元)環境と Google Cloud(移行先)環境が次の仕様を満たしていることを確認してください。
前提事項:
Google Cloud 環境の構成(すなわちVM リソース、SSD ストレージ容量)が移行元の環境と同一である必要があります。ただし、基盤となるハードウェアが異なる場合は、オプション 2(詳細は後述)を使用して移行を行う必要があります。
両方の環境で同じオペレーティング システム(SUSE または RHEL Linux)を実行する必要があります。
HANA バージョン、インスタンス番号、システム ID(SID)が同一である必要があります。
スキーマ名は不変である必要があります。
SAP アプリケーションの再ホストをサポートするために、この段階でオンプレミス環境と Google Cloud との間にネットワーク接続を確立する必要があります。Cloud VPN または Dedicated Interconnect を使用できます。Dedicated Interconnect およびCloud VPN の詳細についてご確認ください。
注: インターネット接続と帯域幅の要件によっては、本番環境向けには Cloud VPN よりも Dedicated Interconnect の使用をおすすめします。
クラウド移行を加速するさまざまな自動化プロセスを用意しています。Google Cloud で SAP HANA システムをデプロイするには、Cloud Deployment Manager を使用するか、GitHub で入手できる Terraform と Ansible のスクリプトを構成ファイル テンプレートとともに使用して、インストールを定義できます。詳細については、Google Cloud SAP HANA プランニング ガイドをご覧ください。
注: 本番環境での使用を SAP によって認定されている Google Cloud マシンタイプで SAP HANA をデプロイする場合は、Google Cloud 上の SAP HANA に対する認定のページをご確認ください。
SAP HANA データベースを Google Cloud に移行する
SAP HANA データベースを Google Cloud に再ホストするために使用できるオプションは 2 つあります。それぞれに長所と短所があるため、それらを考慮しながら方法を決めてください。
オプション 1: 非同期レプリケーションでは、SAP の組み込みレプリケーション ツールを使用して、移行元システム(プライマリ システムとも呼ばれます)から移行先すなわちセカンダリ システム(今回の例では Google Cloud 上)に、継続的にデータ レプリケーションを行います。ダウンタイムを最小限にすることが優先されるミッション クリティカルなアプリケーションや、大規模データベースに最も適しています。また、高度に自動化されているため、手動操作の必要が少ないプロセスになっています。こちらで HANA 非同期レプリケーションの詳細をご覧ください。
オプション 2: バックアップと復元では、SAP のバックアップ ユーティリティを使用してデータベースのイメージを作成してから Google Cloud に転送し、その新しい環境内に復元します。この方法ではデータベース サイズによってダウンタイムがさまざまに異なります。大きいデータベースでは、非同期レプリケーションの場合よりも、必要なダウンタイムが長くなる可能性があります。また、手動操作もこちらのほうが多くなります。しかし少ないリソースで実行できるため、緊急性の低いユースケースには魅力的なオプションです。SAP HANA データベースのバックアップと復元の詳細をご覧ください。
非同期レプリケーションを使用して SAP HANA データベースを Google Cloud に移行する方法
現在の環境と Google Cloud の間に Dedicated Interconnect または Cloud VPN を作成、構成します。
SAP HANA 非同期レプリケーションを設定します。システム レプリケーションの設定には、SAP HANA Cockpit、SAP HANA Studio、または hdbnsutil を使用できます。SAP HANA 管理ガイドのSAP HANA システム レプリケーションの設定をご覧ください。
必ずプライマリ インスタンスと同じインスタンス番号と HANA SID をテンプレートで使用してください。
HANA 非同期レプリケーションを使用するセカンダリ ノードとして Google Cloud インスタンスを構成します。
Google Cloud で SAP HANA データベースへのデータ レプリケーションがすべて完了したら、データの検証を行います。詳しくは HANA システム レプリケーションの概要でご確認ください。
スタンバイ データベースで SAP HANA 引き継ぎを実行します。これにより、アクティブ システムが、現在のプライマリ システムから Google Cloud 上のセカンダリ システムに切り替わります。引き継ぎコマンドが実行されると、Google Cloud 上のシステムが新たなプライマリ システムになります。詳しくは HANA 引き継ぎでご確認ください。
バックアップと復元を使用して SAP HANA データベースを Google Cloud に移行する方法
現在の環境に、SAP HANA データベースの完全バックアップを作成します。
Google Cloud 環境に、新しいストレージ バケットを作成します。Google Cloud Storage ドキュメントのストレージ バケットの作成をご覧ください。
移行元の環境に gsutil をダウンロードしてインストールし、それを実行して HANA バックアップを Google Cloud Storage バケットにアップロードします。gsutil ユーティリティをコンピュータまたはサーバーにインストールする方法については、Google Cloud Storage ドキュメントの gsutil をインストールするをご覧ください。
注: gsutil では並列マルチスレッド / マルチ処理を実行できます。大きなファイルのコピー時間短縮に役立ちます。SAP の RECOVER DATABASE ステートメントを使用して、HANA データベースを Google Cloud 上で復元します。SAP HANA Platform 用 SAP HANA SQL リファレンス ガイドの RECOVER DATABASE ステートメント(バックアップと復元)をご覧ください。
注: Backint エージェントは、Google Cloud で HANA データベースに使用する統合 SAP インターフェース ツールです。SAP HANA 用 Backint エージェントを使用すると、直接 Google Cloud Storage からバックアップを保存、取得できます。Backint エージェントは Google Cloud 上の SAP でサポート、認定されています。詳細については、Google Cloud での SAP HANA Backint エージェントをご覧ください。
要約すると、ダウンタイム期間を最小限に抑える必要のあるミッション クリティカルなアプリケーションには、非同期レプリケーション(オプション 1)の使用をおすすめします。その他すべてのアプリケーションには、必要なリソースが少ないバックアップと復元(オプション 2)をおすすめします。また、Google Cloud でバックアップ機能と復元機能を実装するのもよいでしょう。
再ホスト移行は、HANA 上の SAP システムを Google Cloud で立ち上げて稼働させる手段として最も簡単です。早期に移行するほど、Google Cloud によって SAP ソリューションにもたらされる多くのメリットを早く活用できます。各種の移行オプションに関する詳細については、Google Cloud での SAP: 移行戦略をご確認ください。
Google Cloud での SAP デプロイの詳細についてご確認ください。技術リソースはこちらにあります。
-Google Cloud プロフェッショナル サービス部門 SAP クラウド コンサルタント Ajay Asthana